浅井基文『すっきり!わかる 集団的自衛権Q&A』(2014年2月、大月書店)

 既に『集団的自衛権日本国憲法』(2002年、集英社新書)という著書のある浅井氏ですが「安倍政権の登場」という政治的状況変化により改めて集団的自衛権について書いた本が本書です。
 本書については浅井氏も「はじめに」の部分を自ブログ(http://www.ne.jp/asahi/nd4m-asi/jiwen/thoughts/2014/571.html)で紹介しています。

つうことで、Q&A方式で本書を要約してみましょう。

Q1「そもそも集団的自衛権って何なの?。何故反対派がいるの?」
A1
 まず確認しておくべき事は「第二次大戦後、戦争は違法化された」ということです。
 その例外が「集団的安全保障(国連軍と同じと考えればいいでしょう)」「集団的自衛権」「個別的自衛権」のわけです。
 建前では「集団的安全保障」と「個別的自衛権」ではカバーし切れない部分を埋めるのが集団的自衛権で、「A国が攻撃された時、B国がA国を守る権利」のことです。
 これだけ聞くと「問題ない」と思うかも知れませんが問題は
ア)「NATO」「ワルシャワ条約機構」などの軍事同盟が集団的自衛権を口実に生まれたこと
イ)アメリカのベトナム戦争ソ連のアフガン侵攻、NATOのユーゴ空爆など「集団的自衛権の行使」で正当化していいか疑問な行為、侵略戦争ではないかと思われる行為が「集団的自衛権の行使」で正当化されてきたこと
です。
 「自国への反撃」である「個別的自衛権」と違って「集団的自衛権」は拡大解釈される傾向にあるため「自衛隊集団的自衛権行使を認めること」は「自衛の名による侵略戦争への荷担」になりかねないのです。


Q2「何故安倍政権は集団的自衛権行使に熱意を燃やすの?」
A2
 安倍政権誕生前から「NATOのユーゴ空爆」「イギリス軍のアフガン戦争、イラク戦争参戦」のような行為を米国が求め続けてきたことに注意が必要です。
 こうした米国の要望に出来る限り答えようとして行われたのが、たとえば小泉政権下での「インド洋での給油」や「自衛隊イラク派兵」のわけですが、ついにそれが「最終目的たる日米共同軍事行動」、そしてそれを正当化するための「集団的自衛権行使の正当化論」にいたったわけです。


Q3「安倍政権が集団的安全保障正当化において中国脅威論、北朝鮮脅威論、韓国との竹島紛争などを持ち出すことはどう理解したらいいの?」
A3
 安倍政権がそうした問題を持ち出すからと言って「集団的自衛権行使」がそれに限定されると考えることは全く不適切です。すでに述べたように「NATOのユーゴ空爆」「イギリス軍のアフガン戦争、イラク戦争参戦」のような行為を米国は求めており、基本的に行使には「地理的限定」はありません。
 安倍政権が中国、北朝鮮、韓国を持ち出すのは
ア)遠く離れたアフガン、イラクなどを持ち出すより国民の理解が得やすいと安倍首相が考えてる
イ)安倍首相が中国、韓国、北朝鮮を異常に敵視する極右だから
に過ぎないのです。なお、米国にとって安倍首相の極右性は大変頭の痛い問題です。彼が集団的自衛権行使に積極的なことは米国にとって大変ありがたいことです。
 一方で彼が中国、韓国、北朝鮮への敵意をむき出しにすればするほど「極東での戦争の危険が高まる」し、一方、米国は「中国、北朝鮮に一定の牽制」を行いたいものの、戦争までは望んでおらず、安倍首相ほどの極右的態度では、状況がコントロールできなくなる恐れがあります。


Q4「集団的自衛権行使は違憲なの?」
A4
 「自衛隊、安保条約は合憲」としてきた歴代自民党政権も「集団的自衛権違憲である」という点は保持してきました。そうした解釈の背景には戦前への反省があると言えるでしょう。
 集団的自衛権行使を認めた場合、何の歯止めもなくなってしまうという危機感が保守の側にもあったわけです。


Q5「集団的自衛権を認めないとどんな不都合があるの?」
A5
・米軍が攻撃されてるときに行使できないと日米関係が悪くなると言う主張がありますがこうした主張は以下の点で問題があります。
・政府の従来解釈では「日本の領土内での米軍に対する攻撃に自衛隊が反撃すること」は「個別的自衛権の範囲内」とされています(個別的自衛権の範囲外であるとする批判もありますがそれはひとまずおきます)。
 そうすると集団的自衛権行使が必要なケースとは「米軍が日本の領土外で攻撃されてるケース」ということになります。問題はそうしたケースが具体的に何を指しているのか、そうしたケースにまで自衛隊が出動する必要があるのか、でしょう。
 安倍政権は集団的自衛権行使について基本的に「何の制約も加えていません」ので「ユーゴ空爆への参加(NATO軍)」「アフガン、イラク戦争への参加(英国軍)」のようなケースも集団的自衛権行使に含まれますがそれは適切ではないと考えます。