澤藤統一郎の憲法日記 » 「台湾に国際法の保護は及ぶ」 – 伊藤一頼論文紹介
以前も
◆澤藤統一郎の「常軌を逸したアンチ中国」を嗤う(2020年7/15日分)(副題:法輪功は間違いなく邪教ですよ!、澤藤さん)(追記あり) - bogus-simotukareのブログ
◆澤藤統一郎の「非常識な反中国」に呆れる(2021年12/14分) - bogus-simotukareのブログ
で批判していますが。なお俺は「浅井基文先生」には敬称をつけますが、今回澤藤には「氏」等の敬称はつけません。
台湾有事とは、民主主義の一角が独裁体制に飲み込まれる危機のこと
「何だかなあ」ですね。
「台湾が独立宣言しない限り、武力侵攻はない」と中国が公約してること、従って「中国がその公約」を遵守*1し、「台湾が独立宣言」しない限り「台湾有事」はありえないことに澤藤が触れないのは明らかに不適切でしょう。
そうした「中国の公約」については
◆「台湾独立」問題を考える|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ2021.10.15
◆台湾統一問題:武力統一か平和統一か|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ2021.11.5
◆浅井ブログ『中国共産党の「一国二制」と香港・台湾』2021.12.13
◆海峡両岸論NO.126 虚構の「台湾有事」切迫論 武力行使は一党支配揺るがす(岡田充)2021.5.10
を紹介しておきます。
現在、「台湾有事」が云々されるのは
◆バイデン主催のいわゆる「民主主義サミット」にバイデンが中国を招かない一方で台湾を招待(ただし、中国の反発に配慮して、総統(大統領)、首相レベルは招かず、招待したのはデジタル担当相)
など「蔡英文政権は台湾独立を画策しているのでは?」「台湾が独立を宣言した場合、米国が容認するのでは?」と疑われる行為を「米国や台湾(蔡英文政権)がするから」なのですが。
これについては「バイデンの対中国外交」に批判的な
◆浅井ブログ『台湾駐米事務所の名称変更の動き:最悪事態を招く「火遊び」』2021.9.13
◆「デモクラシー・サミット」への台湾招請|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ2021.11.25
◆海峡両岸論NO.133 分断と対立煽る冷戦思考の舞台 「帝国の落日」際立たせた民主サミット2021.12.16(岡田充)
を紹介しておきます。
澤藤が「台湾が独立宣言して何が悪い。それを米国などが容認して何が悪い」という立場でないなら「一方的に中国を非難できる話」ではありません。
「馬総統時代(蔡英文の前任者)」は既に「中国は習近平政権」でしたが、馬政権が中国ビジネスに配慮して「独立を画策していると疑われる言動を自重した」ため、今ほど関係は悪くなかった。
もし澤藤が「台湾が独立宣言して何が悪い。それを米国などが容認して何が悪い」という立場なら「最初からそう言え」という話です。
中国は、台湾併合の方針を「核心的利益」に関するものとして、絶対に譲ろうとしない。
ここで澤藤が「台湾統一」ではなく
◆戦前日本の韓国併合(1910年)
◆ナチドイツのオーストリア併合、ズデーテン併合(1938年)
◆スターリン・ソ連のバルト三国併合(1940年)
◆プーチン・ロシアのクリミア併合(2014年)
という「武力併合(武力恫喝による併合を含む)」を連想させる「併合」と言う言葉を使用することには「中国への悪意がある」と疑わざるを得ません。
勿論、既に指摘したように中国の方針は「基本は平和統一(ただし台湾が独立宣言した場合は武力統一の選択肢もあり得る)」というものです。
なお、日本では「上に書いた」ように併合という言葉は「武力併合」をイメージさせるように思いますが、「併合」と言う言葉「それ自体」には「武力併合」と言う意味は無く「平和的併合(例:西ドイツによる東ドイツ吸収(1990年))」も含むと俺は理解しています。
台湾に居住する2300万の人々は、圧倒的な実力による中国の併合圧力に対抗する国際法上の権利はないのだろうか。この素朴な疑問に対する良質の回答として、「台湾に国際法の保護は及ぶか」(伊藤一頼)という「法律時報」(22年2月号)の論文の存在を教えられた。伊藤一頼(いとう・かずより)は、東大の国際法教授である。その概要を紹介したい。
(中略)
自衛権を定めた国連憲章51条では、国連加盟国が権利主体となっているが、自衛権は慣習国際法においても存在する権利であって、「事実上の統治体」も政治的独立を守るため自衛権を行使しうると考えられている。とすれば、台湾からの要請を受けて他国が集団的自衛権を行使することも可能になるだろう、*2という。
赤字強調は俺がしました。
赤字部分での「他国」とは明らかに「米国」でしょう。
伊藤論文は明らかに「中台有事の際に、台湾の要請を理由に米国が軍事介入すること(つまり米中間の武力衝突)」を「支持している」と見なすべきでしょう。
澤藤はそうした米国の軍事介入を支持するのか?
そして
◆台湾問題と安倍晋三「妄言」|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ2021.12.2
が批判する安倍放言「台湾有事は日本有事」や
◆赤旗主張/米中対立と日本/緊張高める軍拡路線の転換を2021.10.17
◆「台湾有事」と日米合同作戦計画(共同通信報道)|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ2021.12.26
◆海峡両岸論NO.135 戦争シナリオを放置していいのか 日米が台湾有事で共同作戦計画2022.02.03(岡田充)
が批判する「台湾有事を想定していると思われる日米合同軍事演習」を考えれば、伊藤のような立場は「台湾有事」での「自衛隊の海外での戦闘」を招きかねません。
澤藤の紹介だけでは「伊藤の政治的立場」についての「適切な評価」は不可能です。あくまでも「俺の邪推」ですが、伊藤自身がそうした台湾有事での「自衛隊の海外での戦闘」を容認している「右派の疑い」があるし、伊藤論文も「安倍発言」など「日本の台湾ロビー」の「政治活動」に呼応した「政治的応援団」の疑いがある。
恐れ入るのは「自衛隊の海外派兵反対」の立場の「はず」の澤藤がそうした事について全く無頓着なことでしょう。
「私は集団的自衛権を理由とした自衛隊の台湾有事参戦には反対だ」などと言う言葉が何一つ出てこない。
反中国をこじらせた澤藤には「そうした配慮をすることも出来ない」ようです。澤藤には心底呆れます。
この短い論文は大きな影響をもつことになるだろう。
というのは澤藤の単なる「個人的願望」にすぎません。実に馬鹿馬鹿しい。
なお、今回も「敬愛する浅井基文先生の論文」を多数紹介させて頂きました。
コロナ感染記|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ2022.2.18
今後順調に回復が進めば、13日発症の翌日から起算して10日経過した24日には自宅隔離解禁という運びになります。
私の場合は、いわゆる基礎疾患と呼ぶべき不具合はないのですが、かかりつけの医師は、肺のレントゲン写真も異常はないことを確認した上でなお、私が高齢者*3であることもあり、肺炎対策として最近緊急使用が承認されたラゲブリオ*4という新薬を服用することを勧めると言い、私もためらいなく服用を選択しました。
カプセルを1回4錠、朝と夜の2回服用するのは結構きついです。しかし、80才以上の死亡率が高いという最近の報道も頭をちらつく中、服用することでの安心感を考えれば、少しぐらいの不都合には目をつぶるべきでしょう。
以上、簡単ではありますが、私の事例をご報告する次第です。
ということで不幸にも浅井先生も「コロナ感染」されたようですが、「今後、危惧される後遺症の問題」はともかく、現時点では「死亡」という最悪の事態を招くこともなく、「無事、回復される見込み」だそうで「浅井ファンの一人」として大変喜んでいます(残念ながら24日の「自宅隔離解禁」まではブログ更新はないのでしょうが、それ以降のブログ再開を心待ちにしています)。
何せさいたま市で「基礎疾患のない10代」がコロナ死亡 - bogus-simotukareのブログですからコロナについては「細心の注意が必要」で「舐めてはいけない」でしょう。
今後も浅井先生のますますのご活躍を祈念して、この拙文章を終わりにします。
*1:なお、浅井氏、岡田氏も指摘していますが「香港デモ」において「国際世論の批判」を恐れて「実効支配する香港」に「警察は投入しても軍は投入しなかった」中国が「実効支配できてない」台湾を「独立宣言もないのに武力侵攻すること」は常識的に考えてあり得ない話です。
*2:集団的自衛権と個別的自衛権は別物であって、「個別的自衛権は慣習国際法上、当然に存在する」が「集団的自衛権は国連憲章で創設された権利」と一般には理解されています。しかも集団的自衛権が創設された理由は第二次大戦終了後、米ソ対立が深刻化する中で「米ソが自らの軍事同盟(米国はNATOや米州機構、ソ連はワルシャワ条約機構)を正当化したかった」という極めて「政治的な理由」でした。米ソ対立が「集団的自衛権を生んだ」のであり「米ソ対立」がなければおそらく「集団的自衛権」は生まれなかったでしょう(以上については浅井『集団的自衛権と日本国憲法』(2002年、集英社新書)、『すっきり!わかる集団的自衛権Q&A』(2014年、大月書店)を参照)。従って「「事実上の統治体」も政治的独立を守るため自衛権を行使しうる」と理解してもそれは「個別的自衛権」ならまだしも「集団的自衛権の行使」を当然には正当化しません。1)伊藤論文に「意図的な論理の飛躍(つまりは詭弁)がある」か、2)無能な澤藤が「伊藤論文をまともに紹介できていない」のかはともかく、どっちにしろ「澤藤がバカなこと」には変わりが無く、澤藤の「法律家としての能力」に疑問を感じざるを得ません。そもそもこの「澤藤が紹介する伊藤説の集団的自衛権理解」では「日本の自衛隊」が「日米安保条約」を根拠に集団的自衛権を行使することも「何の問題も無い」ことになってしまうでしょう(なお、澤藤は「日米安保を根拠とした集団的自衛権行使」には批判的な立場です)。また「米国のベトナム戦争(南ベトナムの要請)」「ソ連のアフガン侵攻(アフガン政府の要請)」などは「集団的自衛権」を根拠に行われましたが、そうした「過去」の「集団的自衛権を根拠にした軍事行動」を澤藤はどう評価するのか。
*3:浅井先生は1941年生まれ(略歴|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページや浅井基文 - Wikipediaを参照)。浅井先生と同じ「1941年生まれ」の著名人としては「宮崎駿(アニメ映画監督)」「金正日(北朝鮮国防委員長、2011年死去)」「徳光和夫(フリーアナウンサー)」「萩本欽一(コメディアン)」「江田五月(元社民連代表、2021年死去)」「雁屋哲(『美味しんぼ』で知られるマンガ原作者)」「李明博(元・韓国大統領)」などがいます(1941年 - Wikipedia参照)。
*4:一般には「モルヌピラビル」と呼ばれる薬の商品名(メルク社)