常岡浩介に悪口する(2023年3月13日分)

常岡浩介
 中国がなかなか戦争をしない国に分類されてるのはおかしくないかな。国境を接した全ての隣国と軍事衝突したり進攻したりしてるのに。「台湾有事は起きない」と考えていらっしゃるのか?
ロシアになくて中国にはある、戦争しにくい国の特徴 鍵はコスト意識:朝日新聞デジタル

 朝日記事は多湖淳*1早大教授のインタビュー記事です。有料なので途中までしか読めませんが、多湖氏は「中国はなかなか戦争をしない国(中台有事の可能性は低い)」と見ているようです。俺も同感です。
 なお、常岡の揚げ足取り(?)をすれば「韓国(朝鮮戦争)」「インドや旧ソ連(国境紛争)」「ベトナム中越戦争)」とは軍事衝突していても、例えば「ネパール」「パキスタン」「ブータン」「ミャンマー」「モンゴル」「ラオス」とは軍事衝突しておらず「全ての」とは言えないと思います。
 いずれにせよ「1970年代の中越戦争」以降、中国は本格的戦争などしてない(尖閣問題の日本、南沙問題のフィリピン、ベトナムなど)ので「なかなか戦争をしない国に分類」するのは何らおかしくない。朝鮮戦争は1950年代、中印、中ソ国境紛争は1960年代の話ですし、朝鮮戦争のメインプレーヤーは中国でなくて北朝鮮ですし、中印国境紛争は今も続いていますが、中ソ国境紛争は外交で解決しました。むしろ米国(イラク戦争やアフガン戦争など)やロシア(シリア内戦介入やウクライナ戦争)の方がよほど「戦争する国」でしょう。
 中国が「台湾が現状維持に留まる限り(つまり独立宣言や国連加盟申請などしない限り)侵攻しない」と公言してる以上、「台湾が現状維持に留まる」限りは台湾有事の可能性も低いでしょう。公約を破って侵攻すれば欧米の経済制裁は不可避だからです。そうしたリスクを犯してまで侵攻する理由はないでしょう。

常岡浩介がリツイート
細谷雄一
「日本にとって今後、蓋然性が高い戦争は、「日本が攻める戦争」なのか「日本が攻められる戦争」なのかと言えば、これは明確に後者なわけです」という鶴岡さんの重要な発言は重いです。
鶴岡路人×細谷雄一|戦争が日本へ突きつける「教訓」とは ウクライナ侵攻から一年 #3:鶴岡路人,細谷雄一 | 記事 | 新潮社 Foresight(フォーサイト) | 会員制国際情報サイト

常岡浩介がリツイート
細谷雄一
 北朝鮮は明確に日本に敵意を示してミサイル発射実験を繰り返し、中国は台湾統一での武力行使の可能性を否定せず。そして、ロシアも昨年来、日本を武力で威嚇。

 「はあ?」ですね。あえて言えば「蓋然性が高い戦争」は前者でしょう(勿論前者の発生をハト派として望んでいませんが)。細谷*2(慶応大教授)や鶴岡*3(慶応大准教授。東野篤子筑波大教授の夫)、常岡は本気ならバカだし、虚言なら人格低劣です(恐らく後者でしょうが)。
 「世界有数の軍隊」自衛隊が存在し、「世界最強の米軍」が駐留する日本を何処の国が攻めるというのか。
 戦争とは酔っ払いの喧嘩ではない。勝って「利益にならない」と意味が無いわけで「勝てるか分からない(と言うか負ける可能性の高い)戦争」をやるバカはいません(まあ酔っ払いだって、喧嘩が強そうな相手に挑む人間は少ないでしょうが)。
 こうした物言いは
【1】「自衛隊や米軍の軍事力を著しく過小評価する」か
【2】「日本相手に勝ち目もない戦争をやる(あるいは日本相手に勝ち目があると判断する)ほど著しくバカな国家指導者がいると認識するか
【3】「むしろ日本相手に無謀な戦争で、国民を道連れに自殺したい」と考えるほど「すさまじい自滅願望の国家指導者」がいると認識するか
いずれにせよおよそ非常識な設定でしかない。
 細谷のあげた例(中朝露)は全て「アホか」で終わります。
 「ウクライナ戦争で苦戦するロシア」に当面「日本に限らず」ウクライナ以外に侵攻できる余力があるわけがない。
 「ポーランドへのミサイル着弾」が当初から「むしろウクライナ誤爆では?(実際そうだった)」「ロシアの行為だとしても故意ではなく恐らく誤爆」と見なされたのは「故意にポーランド日米安保で米国と軍事同盟関係にある日本と同様に、NATOで米国等と軍事同盟関係)攻撃する余力」などロシアにないからです。プーチン政権に一定の常識があればそういう無謀な行為はしない。
 「自衛隊や韓国軍に比べ通常兵器が著しく劣る(だからこそ核、ミサイル開発に打ち込む)」北朝鮮も日本や韓国に侵攻する能力などあるわけもない。
 この点は

もはや韓国(人)にとっては、北朝鮮は「脅威」「打倒の対象」よりもメロドラマのネタ程度のものなのだろう(たぶん日本も同じ 関川某も自分の書いたことを撤回しろとおもう) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)2020.5.18
つまりは、韓国大統領にとっても大した脅威ではないということだ - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)2022.6.15

の指摘の通りです。
 中国も「台湾侵攻」は「独立宣言、国連加盟申請など、台湾側が現状変更した場合は侵攻もあり得る」という条件付きの話です。
 「いつでも何処でも侵攻がありうる」などとは言ってない。そして中国は「欧米の経済制裁」「中国に比較的融和的な国民党まで完全に敵に回すこと」というリスクを犯してまで「現状変更がない」のに「公約を反故」にして台湾侵攻はしないでしょう。
 また軍事的威嚇(といえるのかどうかも議論の余地があるでしょうが)は「軍事侵攻」とは違う。
 一方「ベトナム戦争での韓国軍」「NATO軍のユーゴ空爆」「イラク戦争での英国軍」のような形で「米軍と共同軍事作戦する(日本が攻める戦争)」の可能性は十分あります。
 そもそも安倍の「安保法制」や「九条改憲」による「集団的自衛権行使」は日本が攻める戦争という設定以外では理解不能です。
 「専守防衛違憲ではない、改憲は不要(政府見解)」のだから「日本が攻められる戦争」が「日本の戦争のメイン」だというなら、九条改憲する必要が無い。
 なるほど「一応、九条護憲」の高世が「改憲・常岡から距離を置く理由」がよくわかります。

*1:著書『武力行使政治学』(2010年、千倉書房)、『戦争とは何か:国際政治学の挑戦』(2020年、中公新書

*2:著書『外交による平和:アンソニー・イーデンと二十世紀の国際政治』(2005年、有斐閣)、『倫理的な戦争:トニー・ブレアの栄光と挫折』(2009年、慶應義塾大学出版会)、『国際秩序』(2012年、中公新書)、『迷走するイギリス: EU離脱と欧州の危機』(2016年、慶應義塾大学出版会)、『安保論争』(2016年、ちくま新書)など

*3:著書『EU離脱』(2020年、ちくま新書)、『欧州戦争としてのウクライナ侵攻』(2023年、新潮選書)等