■毎日新聞『共産党:衆院選で議席増 84歳の元「プリンス」に聞く』
http://mainichi.jp/select/news/20141225k0000m010013000c.html
・不破さんも昔は若かったわけでその頃は「共産党のプリンス」と呼ばれたわけです。何せ40歳の若さで「共産党書記局長」という「党のナンバー2」になってますからね(ちなみに現委員長の志位氏も36歳で書記局長に抜擢されている)。いい悪いはともかく、そこまでの若手大抜擢て他の党ではあまりないんじゃないか。
・あの山本太郎が今ちょうど40歳ですから、「山本太郎が書記局長になれるか*1」を考えれば「さすが不破さん」てところですね。
・不破さんはやはり「よくわかってらっしゃる」という感じですね。「自民党が保守本流だった」昔ならともかく今「安倍自民という戦後最悪の極右政権」が誕生している以上、「右(穏健保守)にもウイングをのばす必要があるし、それは可能だ」という理解を彼がするのはまさに当然でしょう。しかしここで不破氏が言ってる程度の事は自民党支持者が言っても本来おかしくないんですけどね。「安倍政権の極右性は問題だ」て、全然共産主義と関係ないわけですから。
寒い夜だった。選挙戦最終盤の10日、不破さんは京都は四条河原町にいた。議長を退いて8年、宣伝カーの上で黒いコートを着込んだ不破さんは「矢も盾もたまらず駆けつけてまいりました!」。その気迫に埋め尽くした支持者から大きな拍手、おばちゃんたちは「やっぱりかっこいい。ええ声やわ」。演説を私も聞いた。「自共対決」構図を強調しつつ、持ち出したのは週刊誌「アエラ」(8月11日号)に載った元官房長官、野中広務*2さんのインタビュー(聞き手はジャーナリストの青木理さん)だった。
こんなやりとりがある。
野中:
だいたい安倍さんは「戦後レジームからの脱却」と言うが、それは自分の祖父である岸信介*3元首相がA級戦犯(容疑者)にされた東京裁判を否定したいということなんだ。
青木(インタビュアー):
それは戦後世界秩序の否定です。中国や韓国ばかりか、欧米だって認めない。
野中:
自滅しますよ、こっちが。中国と韓国に外交的な攻撃をされるだけでも国の形がなくなっちゃう。それほど危険な状態になっている。不破:
「演説でも言ったけど、驚きましたよ。野中さんがここまで言ってるとはね。だって、あれだけの侵略戦争をやっておいて、侵略ではありません、正義の戦争でしたでは……。アメリカやヨーロッパでは安倍政治について、歴史修正主義だとの評価が定着してるんですから。それを野中さんは国の形がなくなっちゃうと表現した。同じ自民党(元幹事長)の古賀誠*4さんにしたって、日本遺族会の会長だったけど、遺骨収集して回れば、日本の兵隊はどんな戦場で、どんな死に方をしたかよくよくわかるわけでしょ。そうした人たちがいまの自民党に居場所がない。発言する場所がない」
毎日記者:
それで「しんぶん赤旗」が受け皿になっていると?
不破:
「ハハハ。かつての自民党の良さは『総保守連合』というところにあったんです。いろいろニュアンスの違う政治家が保守層を結集していましたから。三角大福中*5(三木武夫*6、田中角栄*7、大平正芳*8、福田赳夫*9、中曽根康弘*10)もそう。戦争を体験している世代でもありますから、あの戦争について、そう単純、単細胞的なことは言えない。それがいまや単色。それも日本にとって一番、危険な色ですよ。年が明ければ戦後70年を迎える。あの戦争は正しかったと、安倍さんがこだわればこだわるほど、国際的に歴史修正主義の国=日本との見方が激しくなります」
(中略)
それにしても永田町の風景がつまらない。「1強多弱」は野党のふがいなさのせいだけなのか。政界の生き字引は小選挙区制導入と政党助成金が元凶とみる。
不破:
「そもそも2大政党制は歴史が生み出すもの*11。アメリカの共和党と民主党も、イギリスの労働党と保守党*12もそう。日本は違う。人為的に2大政党制をつくるなんて無理ですよ。そうした無理なことの総決算がきている。私が国会にいたころは各政党、組織、政策、綱領を持ち、自民党に対抗する何ものかがあった。いまは政党助成金をいかにもらうか。こんなに政党の離合集散の激しい国はない。中選挙区時代は自民党も各派が立って、切磋琢磨(せっさたくま)したけどね」
次世代の党(注:最高顧問)の石原慎太郎*13さんが、引退会見で、民意は何を示したか、と問われ、こう答えた。
石原:
「共産党の躍進だと思う。共産党への支持は、自分たちを囲んでいる社会的な現実に対する、漠として感じている現況への不満の社会心理学的なリアクションだ」。
石原さんなりの皮肉交じりかもしれないが、共産党大嫌い人間の弁だけに不破さん、まんざらでもなさそう。
不破:
「うふふふ、辞めるとき、共産党のことを言ったとは聞きましたけど……。彼とはね、1回だけ共闘した。首都移転構想に反対する集会だったなあ」
いつしか不破節、往年の国会論戦のごとくエンジン全開である。安倍さんが「この道しかない」と訴えたアベノミクスは「日本の資本主義の前途を暗くする」、沖縄の米軍基地移設問題は「海兵隊は遠征軍。出撃基地を貸している国など日本しかない」と一刀両断。さらにアメリカとキューバの国交正常化の動きは「遅すぎた」とぴしゃり。熱のこもった解説が続く。
(中略)
選挙中、メディアの話題をさらった高倉健さんの死。健さん好きでした?と尋ねたら「ほとんど見てないんです。論評しにくいな」。
がっかりしたが、そこが実直さか。いまどきの政治家なら2、3本の映画をみただけで、ぺらぺらしゃべるだろうな、と思ったりした。
(中略)
1月には85歳になる。
不破:
「誕生日を祝ったことなどありません。共産党は躍進しましたが、(注:まだまだ少数野党だし安倍政権も下野しないし)めでたさも中くらいなりおらが春*14じゃなく、小くらいなりですよ」。
まだ老け込むわけにはいかないようだ。
*1:どう見てもつとまりそうにない
*2:村山内閣自治相・国家公安委員長、小渕内閣官房長官、自民党幹事長(森総裁時代)などを歴任
*5:イデオロギー的には三木がハト派、福田と中曽根がタカ派で、大平、田中が保守本流と言っていいと思います。職歴も「戦前からの代議士(三木)」、「元大蔵官僚(大平、福田)」、「元内務官僚(中曽根)」、「田中土建社長(田中)」と多様と言えるでしょう。
*6:鳩山内閣運輸相、自民党幹事長(石橋総裁時代)、岸内閣科学技術庁長官(経済企画庁長官兼務)、自民党政務調査会長(池田総裁時代)、佐藤内閣通産相、外相、田中内閣副総理・環境庁長官などを経て首相
*7:岸内閣郵政相、自民党政務調査会長(池田総裁時代)、池田内閣蔵相、自民党幹事長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣通産相などを経て首相
*8:池田内閣官房長官、佐藤内閣通産相、田中内閣外相、三木内閣蔵相、自民党幹事長(福田総裁時代)などを経て首相
*9:岸内閣農林相、自民党政務調査会長(池田総裁時代)、佐藤内閣外相、田中内閣蔵相、三木内閣副総理・経済企画庁長官などを経て首相
*10:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相、自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相
*11:そもそも英米においても小選挙区制への批判はあります。
*12:イギリスには小規模ながら「第三政党の自由民主党(現在、キャメロン内閣に、党首のクレッグ氏が副総理として、副党首のケイブル氏がビジネス・イノベーション・職業技能大臣として入閣)」や「アルスター統一党、スコットランド国民党などの地域政党」があるので単純な二大政党制でもありません。