今日の産経ニュース(5/6分)(追記・訂正あり)

■【政治デスクノート】“大福密約”はあったのか 「覚書」所持していた園田博之*1の証言は
http://www.sankei.com/premium/news/150506/prm1505060011-n1.html
 まあ密約はあった*2んでしょうがその密約というのが

昭和五十二年一月の定期党大会において党則を改め総裁の任期三年とあるのを二年に改めるものとする。

ですからねえ。「総裁任期3年を2年に改める=総裁2年で福田がやめて大平に禅譲する」と言う意味だそうですが、少なくとも文面に明確な形ではどこにも「禅譲する」とは書いてないわけです。
 2年後、福田が再出馬しても、あるいは「大平以外に禅譲しても」文面上は反しません。
 さすがに堂々と禅譲について書くのは躊躇したんでしょうか。

 “大福密約”について、福田*3の長男の福田康夫*4元首相は「そういうものはなかった。ある人が発言したことで一気に、本当のごとく広がっただけだ。福田(赳夫)もはっきりと『ない』と言っていた」と存在を強く否定する。一方、大平の娘婿で首相秘書官を務めた森田一*5(はじめ)元運輸相は「書面を見た」と語る。両者は今も正反対なのだ。
 そこで、康夫氏が「ある人」と語った人がキーマンになる。同氏は明言こそしなかったものの、園田直*6のことを指しているとみられる。
(中略)
 (注:福田内閣外相だった)園田は、大平*7内閣で外相に再任され、54年に大平と福田がそろって首相指名選挙に臨んだとき*8は大平に投票*9した。これにより“大福密約”の存在は定着するようになった。
 また、平成16年に週刊誌「読売ウイークリー」(現在廃刊*10)が「大福密約の覚書」を“公開”し、話題になった。
 「読売ウイークリー」によると、「覚書」は園田の次男、園田博之衆院議員が所持していたもので、当時は大平派といわれた宏池会の便箋に「福田・大平了解事項」のタイトルで先の内容が記されていた。
(中略)
 そこで、博之氏に取材したら意外な回答が返った。
「あの紙はどこかにいってしまった」
(中略)
 その上で、博之氏はこう言い切った。
 「あれを『密約』というのは疑わしい。文章を見ればわかるが、署名が本人のものとは思えない。となれば、文章も本物にはならない」
 「覚書」をなくした理由はこうだった。
 「大切なものとは思わなかったから*11
(中略)
 博之氏の発言をもって“大福密約”はなかったとも十分には言い切れない。もし、“密約”がないのであれば、園田直はなぜあのような「覚書」を大事に保管していたのか。

 まあ、要するに「密約はあった」てことでしょうね。密約があったからこそ園田直も「首相指名選挙で大平に票を投じた」し自己弁護のために覚書を保管していたんでしょう。
 今となっては「密約はあった」と言って福田康夫氏など「密約を否定する」関係者と園田博之氏がもめたくないというだけのことでしょう。


■【安保改定の真実(4)】暗躍するソ連KGB 誓約引揚者を通じて各界で反米工作 岸内閣を“核”で恫喝 
http://www.sankei.com/premium/news/150506/prm1505060032-n1.html
 安保批判者をソ連の手先扱い*12するいつもの産経です。いい加減にして欲しいですね。特に酷いのが「シベリア抑留経験者(産経の言葉では引き揚げ者)をソ連の手先扱いする」ことです*13。「シベリア抑留の原因の一つは無謀な戦争だ、特定の国(この場合、米国)に肩入れすることはまた無謀な戦争の原因になりかねない」と判断し日米安保に否定的見解を持つことの何が「ソ連の手先」なのか。
 そもそも多くの「シベリア抑留経験者」は「『不毛地帯』(山崎豊子)の壱岐正(伊藤忠社長の瀬島龍三がモデル)」同様、その種の政治的言動からは距離を置いたのではないか?(ただし瀬島は後に中曽根*14首相ブレーンとして政治に密接にコミットしますが)
 というのも産経のように「あいつはシベリア帰りだからソ連の手先かも知れない」と蔑視する人間は決して少なくはなかったからです。「不毛地帯」でも総会屋が株主総会で専務の壱岐*15に「シベリア帰りの怪しい男だ!」とヤジを飛ばし、壱岐と対立関係にある里見*16副社長が「ああいうことは壱岐君の不徳ではないか」と壱岐を批判*17壱岐が「総会屋のバックは里見ではないか*18」と疑い、里見との対立を深めていくシーンがあります。
 そのような状況で政治にコミットするには相当の精神力が要求されるでしょう。


■【ADB総会閉幕】改革迫られたアジア開銀 影の主役・インフラ投銀(AIIB)に背中押され
http://www.sankei.com/economy/news/150506/ecn1505060008-n1.html

 5日閉幕した日本が主導するアジア開発銀行(ADB)の年次総会では、ADBが年間融資枠の拡大や官民連携の強化を打ち出すなど、改革の進展を大きくアピールした。ただ、中国主導のアジアインフラ投資銀行(AIIB)が存在感を高める中、改革の加速を迫られたのが実態
(中略)
 年間約7500億ドル(約90兆円)が見込まれるアジアのインフラ需要に対し、ADBの年間融資枠は約131億ドル(2014年)にとどまり、途上国がAIIB創設を歓迎する要因となっていた。
 会期中にもAIIBの浸透ぶりをみせつける一幕があった。大地震に見舞われたネパールのマハト財務相は、3日に開かれた復興支援策を検討するADBの臨時会合で各国に支援を呼びかける一方、共同通信のインタビュー*19でAIIBにも支援要請する方針を明らかにしている。
 こうした状況下、ADBは加盟国に、改革の進展を示す必要に迫られていた。5日にADBの中尾武彦*20総裁が呼びかけた増資の検討も、新興国側が求めていた措置。第一生命経済研究所の西浜徹*21主席エコノミストは、「ADBには、自分たちの存在意義が希薄化するとの危機感があったのでは」と分析する。

 「ADBて今ひとつ使い勝手が悪いから」「ADBって日米が牛耳ってて他の国の意見なんか反映しないジャン」「そう言う意味ではAIIBには期待するね」などといった声にそれなりに応えざるを得なくなったようです。


■【国際政治経済学入門】人民元の国際通貨化に動く中国人民銀行・周小川総裁の野望とその危うさ
http://www.sankei.com/premium/news/150505/prm1505050011-n1.html
 アンチ中国・田村秀男が今日も中国バッシングです。もう「人民元の国際通貨化」は時期はともかくそれ自体は不可避じゃないかと思いますけどね。ラガルドIMF専務理事が「人民元の国際通貨化はいずれはすることになるだろう」と言ってるわけですし。


■【米次期大統領選】共和党は6人乱立 ハッカビー*22出馬表明 民主党はヒラリー氏の独走態勢 両党ともリスク抱え
http://www.sankei.com/world/news/150506/wor1505060017-n1.html
 候補者乱立状態の共和党は「結局、誰も党内の絶対的支持を得られない→大統領選挙で敗戦」のリスクがあり、一方「ヒラリー元国務長官の圧倒状態」の民主党は「今後彼女がスキャンダルや健康不安などでこけたら」後釜誰にするかというリスクがあるつう話です。


■米NYで拉致シンポ めぐみさん弟「姉は日本での時間よりはるかに長く自由を奪われてる」 山谷担当相は米司法長官に協力要請
http://www.sankei.com/affairs/news/150506/afr1505060006-n1.html
 アメリカもそんなもん要請されても、「え、北朝鮮関係はむしろ中韓に要請したら?」「あっちの方がたぶん情報もたくさん持ってるし北朝鮮とのパイプも色々あるから」「ああ、中韓と関係が悪いからそれができないのか」「つうか単なるパフォーマンスだから米国に情報やパイプがあるかなんかどうでもいいのか」としか思ってないでしょう。


■【正論】世界史に刻まれる「昭和」の時代 東京大学名誉教授・平川祐弘
http://www.sankei.com/column/news/150506/clm1505060001-n1.html
 揚げ足取りすれば「鎖国してて完全に外国とつきあいがない状態*23」でもなければ外国とつきあいあるんですから「昭和以外の時代」も世界史には刻まれますよねえ。要するに「昭和史すげえ」「昭和の日本すげえ」(産経)て話なんですが。
 そして産経の言う「昭和史すげえ」は「世界(連合国)を敵に回して闘ったのはすげえ」とかろくな評価じゃないんだから呆れます。

日本の植民地支配を問題とするなら、英*24*25*26*27の植民地支配こそ問題とせねばならない。

 やれやれですね。いつもの「俺だけが悪いんじゃない」という居直りです。

 習近平国家主席が唱える「中国の夢」が実現し、華夷秩序が復活*28、東アジアの人が中国語を強制される日がきたら、一大事だと思っている。

 今後「今の英語教育のように中国語教育が日本で義務教育になることがある」としても別に「中国による強制」はされないでしょうね。そもそも日本の英語教育だって「英国や米国に強制されてるわけ」じゃありません。
 単に「英語利用者が多いから」「英米が世界の大国だから」という理由でやってるに過ぎません。
 今後「中国語利用者が多いから」「中国は世界の大国だから」と言う理由で「中国語教育義務教育化」つうのは「長い目で見れば」あり得ることだとは思います。
 江戸時代なんかは「開国するまではつきあいがある外国はオランダ」だったから「オランダ語教育(蘭学)」が盛んだったわけでこういう語学教育はもろにその国の国情が出ます。

*1:新党さきがけ幹事長、村山内閣官房副長官自民党政務調査会長代理(麻生総裁時代)、たちあがれ日本幹事長などを歴任。

*2:なお福田は密約の存在を否定、首相就任2年後に退陣しなかったため、田中角栄元首相の支援を受けた大平が総裁選で福田と激突。福田に勝利することによって自民党総裁に就任した。

*3:岸内閣農林相、佐藤内閣蔵相、外相、自民党幹事長(佐藤総裁時代)、三木内閣副総理・経済企画庁長官などを経て首相

*4:森、小泉内閣官房長官を経て首相

*5:元大蔵官僚。大平の死後、大平の選挙区を引き継いで政界入り。森内閣で運輸相。

*6:佐藤内閣厚生相、福田内閣官房長官、外相などを歴任

*7:池田内閣官房長官、佐藤内閣通産相、田中内閣外相、三木内閣蔵相、自民党幹事長(福田総裁時代)などを経て首相

*8:いわゆる自民党40日抗争後の首相指名選挙。自民党は候補を一本化できず大平支持(主流派)と福田支持(反主流派)に分裂した。

*9:この投票を理由に園田は福田派を除名された。

*10:正確には「休刊」。実際には「休刊雑誌が再刊行されることはまずない」ので確かに「事実上の廃刊」だが。

*11:「父が大事に保管していた物」、そして「博之氏自ら読売ウイークリーの求めに応じて外部に公表した物」をなくした理由としてはあまりにも苦しすぎる説明です。

*12:その理屈だと「安保賛成者は米国の手先か?」とは少しも考えないのが勿論産経です。

*13:ちなみに中国帰還者連絡会中帰連)など中国抑留経験者を中国スパイ扱いするのも産経です。

*14:岸内閣科学技術庁長官、佐藤内閣運輸相、防衛庁長官、田中内閣通産相自民党幹事長(三木総裁時代)、総務会長(福田総裁時代)、鈴木内閣行政管理庁長官などを経て首相

*15:後に副社長。次第に会社を私物化する大門社長と刺し違えて、大門を社長辞任、相談役就任に追い込んだ上で会社を去る。

*16:後に壱岐との権力抗争に敗れ近畿商事子会社の社長として出向させられる

*17:ただし壱岐を評価している大門社長は「あんなのは言いがかりだ」と壱岐を擁護、かえって里見を批判する。

*18:ただし小説でも映画やドラマでも「里見の謀略」を匂わせるだけではっきりと「里見が総会屋を使って工作している」と言う描写はなかったと思います。

*19:共同通信『ネパール、AIIBに支援要請へ、大地震復興で財務相表明』(http://www.47news.jp/CN/201505/CN2015050401001565.html

*20:財務官僚出身。著書『アメリカの経済政策』(2008年、中公新書

*21:著書『ASEANは日本経済をどう変えるのか』(2014年、NHK出版新書)

*22:アーカンソー州知事。2008年大統領選で共和党予備選挙に出馬(なお2008年選挙では共和党マケインと民主党オバマが戦い、オバマが勝利した。)。

*23:なお、いわゆる鎖国時代も「自由貿易や自由渡航がされてなかっただけ」で「長崎出島」を舞台にしたオランダ、中国との交流がありましたし、「対馬」を舞台にした朝鮮との交流もありました。

*24:インド、マレーシアなど

*25:ベトナムラオスカンボジアアルジェリアなど

*26:インドネシア

*27:フィリピン

*28:前近代のような文字通りの「華夷秩序」が復活するわけもないでしょう。