今日の産経ニュース(5/8分)(追記・訂正あり)

■【安保改定の真実(6)】岸信介の誤算 社会党の転向と警職法改正で一転窮地に 禅譲密約で乗り切ったが…
http://www.sankei.com/premium/news/150508/prm1505080010-n4.html

 昭和33年5月の衆院選中には、ソ連、中国の露骨な“選挙介入”もあった。
 5月2日に長崎市内で開かれた中国物産展に男が乱入し、中国国旗を踏みつけ破損させる「長崎国旗事件」が発生すると、中国外相の陳毅*1は日中貿易の全面停止を通告した。

 一応お断りしておくと中国がこういう強硬手段に打って出たのには岸内閣が「外国国旗損壊罪での処罰を要求する中国」に対し「いやー、うちはおたくを正統政府として認めてないから(もちろん正統政府として認めるのは田中首相の訪中以降です)。うちにとっては中華民国が外国(台湾)だから。おたくは外国じゃないから外国国旗損壊罪では処罰できませんね」「器物損壊などほかの法令でも処罰する気はありません」なんて木で鼻をくくった態度を取ってしまったからです(何故か産経はそのことに触れないが)。選挙介入とかそう言う話じゃない。面子を潰された中国が対抗措置に出たわけです。
 まあ、当時の日台関係、日米関係(米国はまだ台湾を正統政府としていた)を考えれば「中国を国と認めてる国(例:英国)も少なくないし、日中関係もそれなりに大事だから日本は中国を正統政府としていませんが外国国旗損壊罪で処罰します*2」つうわけにもいかんのでしょうが、もう少し向こうの面子を考えた対応をしろよとは思います。
 ちなみに判例はなかったと思いますが「日本が国家承認してない国の旗は外国国旗損壊罪の『外国国旗』にあたらない」というこのときの岸内閣見解が今も確か政府見解です。つまりは「台湾国旗*3」を足でぐちゃぐちゃに踏みつけても、はさみで滅多切りにしても「政府の立場」では「見解変更しない限り」「外国国旗損壊罪」で処罰できないと言う事ですね。
 まあ、そういうことはないでしょうが仮にそう言うことがあったとしても中国の反発を考えれば、外国国旗損壊罪処罰はできないし、とはいえ「処罰できません、以上」では台湾が怒り出すので「処罰はしない代わりに何か別の代替案*4を出して台湾に納得してもらう」つうことになるでしょう。

昭和34(1959)年3月28日、社会党は総評などとともに「安保改定阻止国民会議」を結成し、議会制民主主義を否定したかのような激しい反対闘争を繰り広げることになる。

 デモをすることは議会制民主主義否定ではないし、この時期のデモは一部の新左翼を除いて暴力的なものでは全然ないんですけどね。
 むしろ岸の強行採決の方がよほど独裁的だし、強行採決後は「岸の反民主主義的態度」への批判が強まっていきます。

「私が世の中で一番嫌いな奴は三木だ。陰険だよ。あの顔つきをみてごらんなさい。あの顔を…」
 後にこう語るほど三木を嫌っていた岸

 まあ岸はタカ派で、三木はハト派ですからね。ただそんな三木でも岸は「自民党幹事長、政務調査会長(岸総裁時代)」「岸内閣経済企画庁長官(科学技術庁長官兼務)」として取り込まざるを得なかったわけです。そしてその後も三木は「池田内閣科学技術庁長官」「自民党政務調査会長(池田総裁時代)」「佐藤内閣通産相、外相」「田中内閣副総理(環境庁長官兼務)」と要職を歴任しついに首相にもなります。
 三木にはそれだけの力があったということでしょう。


■【正論】ファシズム国家は日本か中露か(帝塚山大学名誉教授・伊原吉之助)
http://www.sankei.com/column/news/150508/clm1505080001-n1.html
 ばかばかしいですね。戦前日本がファシズム国家だったことも、そのファシズム国家・日本が中国や東南アジアなどを侵略し多大の被害を与えたことも「まともな人間なら」否定しようがない事実です。
 それに対して「今のプーチン政権や習政権の方がよほど独裁的だ」と言ってもそれで戦前日本のファシズム性が否定できるわけではない。何もプーチン政権や習政権だけが戦前日本を「ファシズム国」と見なしてるわけでもない。
 そして、もちろんプーチン政権や習政権を批判することは「適切な批判」なら何ら問題はないですが、こんな「日本の戦争犯罪を免罪するための相殺論」なんて不純な動機では全くお話になりません。むしろ「未だに戦前を美化しようとは日本はなんて無反省で時代錯誤な国だ」と呆れられるだけです。
 なお、この伊原論文、産経文化人らしく書き出しから

5月9日にモスクワで開く対独戦勝70年の記念式典に、プーチン露大統領が習近平中国国家主席らを招いて、「対ファシスト戦争勝利」を祝ふ由です。

と「祝う」を「祝ふ」と書いてる辺りに苦笑させられます。実は旧かな文字表記の書き方は結構難しくてこの人の書き方が正しいかどうかは素人の俺にはよく分かりません。
 たとえば「今日(きょう)」というのを「きょふ」と書いたら間違いで、確かここは「けふ」と書かないといけません。そういう素人だとわからないことがたくさんあるわけです。

*1:上海市長・党委員会書記、副首相(外相兼務)を歴任。

*2:こういう学説もありますし、まあ、「中国を正統政府と認めない上でこの件で処罰するロジック」は「日中関係はそれなりに大事」「中国を国扱いしてる国(例:英国)もたくさんあるからそう言う場合は日本の国家承認に関係なく国扱いする」というロジックしかないでしょう。勿論この時点で「中国を日本が国家承認する可能性」はまずないでしょう。

*3:ちなみにこの場合の国旗は「大使館」「物産展」など公的な場にある国旗であり、自分の私物(どこぞで買ってきた外国国旗)ならばいくら損壊してもこの罪にはあたらないとするのが確か通説です。

*4:勿論中国が反発しない案