新刊紹介:「歴史評論」5月号(その2)

http://d.hatena.ne.jp/bogus-simotukare/20180420に書いてた内容が書き切れなくなったのでこちらにも書いておきます。
■歴史のひろば「三谷太一郎*1『日本近代とは何であったか:問題史的考察』*2を読む」(原田敬一*3
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

http://www.jicl.jp/now/ronbun/backnumber/20170410.html
■法学館憲法研究所『日本の近代とは何であったか—問題史的考察』
 第一章「なぜ日本に政党政治が成立したか」では、まず日本の立憲政治の導入から考察されます。著者によれば、明治国家にとってのアンシャン・レジームである幕藩体制の中に、明治国家体制の枠組としての立憲主義を受け入れる準備がされていたとのことです。例として複数の老中、若年寄などの合議制、月番制が、権力の集中を抑制する仕組として幕府の政治的特質だったことが挙げられます*4
(中略)
 第二章「なぜ日本に資本主義が形成されたのか」は、主な産業が農業しかなかった日本の成長物語として読ませます。殖産興業の中心だったのが(ボーガス注:参議、内務卿の)大久保利通です。大久保のリーダーシップは驚異的でした。ほとんど独力で政府主導による世界市場に適応しうる資本主義的生産様式を造り出していくのです。先進産業技術の導入、資本主義化を促進するための財政的基礎の確立としての地租改正、資本主義を担う労働力の育成としての公教育制度、そして特筆すべきなのが資本蓄積を妨げる資本の非生産的消費としての対外戦争の回避*5、すなわち対外平和の確保でした。
(中略)
 大久保も(ボーガス注:征韓論をめぐって、対立する)西郷隆盛*6から「和魂の奴原」(平和好きの連中)と罵倒されているほどでした。
 第三章「日本はなぜ、いかにして植民地帝国となったのか」では、アジアにおいて歴史上最初の、そして唯一で最後の植民地を領有する国家となった日本が語られます。ここで日本の植民地となった台湾、そして朝鮮が、立憲政治、「法の支配」が及ばない非立憲的な政治空間であったことが指摘されます。現在の日本人でも忘れていることです。憲法学者美濃部達吉は、この憲法の及ばない植民地を「異法区域」あるいや「特殊統治区域」と呼びました。
 第四章「日本の近代にとって天皇制とは何であったか」も興味深い章です。伊藤博文*7憲法起草の際に、天皇をヨーロッパにおいてキリスト教が果たしている「国家の機軸」として考えていたことはよく知られています。ヨーロッパ的近代国家を日本に造る時、ヨーロッパ的近代国家が前提とした「神」にあたるものが神格化された天皇でした。しかし、明治憲法における天皇は定義上「立憲君主」でした。そこで憲法を超えた「神聖不可侵性」を体現する天皇の超立憲君主的性格を積極的に明示したのが「教育勅語」だったと著者は指摘します。大日本帝国憲法の下で国務大臣の副署がない例外的な詔勅が「教育勅語」でした。

 「台湾出兵」「江華島事件*8」の大久保が「征韓論を批判*9したからと言って」、「戦争は、莫大な戦費が、経済振興に支出する費用を圧迫し、結果として日本経済の近代化を阻害する*10」つう判断から積極的に戦争回避したといえるかどうかは疑問に思いますし、仮にそうだとしてもそれは「大久保時代には戦争してもペイしない」という判断に過ぎず、だからこそ日清戦争以降は「戦争はペイする」と判断した大久保の後継者たち(伊藤博文*11山県有朋*12ら)によって日本は積極的に海外侵略に乗り出すわけですがそれはさておき。
 「話が脱線しますが」、まあ、「軍需産業はともかく」、「戦争することは必ずしも儲かるとは限らない」つうのはその通りです(戦争による殺人という、道義的問題はひとまずおきます)。
 たとえば中国が下手に台湾侵攻なんかやったらそれこそ外資が逃げ出したあげく、欧米の経済制裁が発動されかねません。金儲けの観点からはかえって大損害です。
 だから中国にはそんなことはできない。当面は「独立宣言しないように政治的に働きかけた」上で台湾と商売して儲けた方がおいしいわけです。
 まあ、その程度の常識は中国政府首脳部にもあるでしょう。


■歴史の眼『自衛隊文民統制の現段階』(纐纈厚*13
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-13/2015081303_01_0.html
赤旗『これが自衛隊内部資料だ、憲法を日米同盟に従属、参院安保特 小池氏追及』
 「まるで戦前の軍部の独走だ」。
 日本共産党小池晃*14議員が11日の参院安保法制特別委員会で暴露した内部資料は、陸海空3自衛隊を運用面で統括する統合幕僚監部が、まだ国会審議中の戦争法案の「8月成立・来年2月施行」を前提に、詳細な部隊運用計画を立てていたことが明らかになり、驚きと怒りを広げています。

 なお、この件については水島朝穂*15の記事『平成の三矢作戦研究』(http://www.asaho.com/jpn/bkno/2015/0824.html)を紹介しておきます。
 三矢作戦研究については

http://www.asaho.com/jpn/bkno/2015/0824.html
 「三矢作戦研究」の極秘資料は、そうした資料を扱える防衛庁関係者が作家・松本清張の自宅に投函し、それを清張が(ボーガス注:社会党の)岡田議員に提供したことが後に明らかになっている。

ということでいわゆる創共協定の仲介といい、清張が社会党共産党にシンパシーを持ち、自民党に批判的な極めて政治的な作家であったことが改めて解ります。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik15/2015-08-23/2015082302_01_1.html
赤旗・主張『首相の開き直り、実力組織の暴走許す責任重大』
 自衛隊が戦争法案の成立を前提に部隊運用計画などの内部文書を作成していた問題で、安倍晋三首相が「(法案の)必要な研究や分析を行うことは当然」と開き直っています。しかし、事は、単なる一省庁の、単なる一法律の準備の問題ではありません。自衛隊という実力組織が、国民多数の反対にもかかわらず、憲法解釈を大転換する重大法案の成立を先取りして準備していたという問題です。しかも文書には国民や国会に一度も説明されていない内容が多数含まれています。実力組織の暴走を許し、国民と国会を欺いて平然としている首相の態度は絶対許せません。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik16/2016-04-20/2016042003_01_1.html
赤旗集団的自衛権・武器輸出、自衛隊制服組が提言、衆院委 宮本徹議員が追及』
 自衛隊上級幹部の最高教育機関である統合幕僚学校が、憲法9条の制約から政府が従来認めてこなかった集団的自衛権の行使容認や武器輸出などについて、解禁するよう提言する報告書をまとめていたことが分かりました。日本共産党の宮本徹議員が19日の衆院財務金融委員会で、報告書を示して追及しました。
 報告書名は「諸外国の最新の軍事戦略の動向に関する調査・研究」(2012年3月、全594ページ)。「将来の防衛諸計画策定の資とすることを目的」に作成されたものとされ、自衛隊トップの統合幕僚長にあげられています。防衛省が宮本議員へ提出しました。
 報告書は、米国や中国など全7カ国の軍事動向に関する記述とあわせ、「国家レベルの処置が必要な事項」などと提言を列記。「米国の戦略…を補完できるようになるためには、集団的自衛権を認めることが必要不可欠」「『国家緊急事態法』を整備し、有事において、防衛省が他省庁等を活用して任務を遂行できる態勢を整えることが望まれる」などと、憲法解釈や法体系に踏み込んで軍事政策の変更を要求しています。
 宮本氏は、安倍政権が進めてきた「戦争できる国」づくりの裏に自衛隊制服組の要求がある可能性を指摘。「シビリアンコントロール文民統制)からいって大問題だ」と文書の性格を追及しました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-05-26/2017052602_01_1.html
赤旗衆院憲法審 首相改憲賛意の統幕長批判、文民統制の原則侵す、大平・赤嶺氏』
 衆議院憲法審査会は25日、「新しい人権等」をテーマに各党の意見表明と自由討議を行いました。日本共産党から大平喜信、赤嶺政賢両議員が発言しました。
 大平氏は意見表明の冒頭、9条に自衛隊を明記するとの安倍晋三首相の改憲発言を「非常にありがたい」と述べた河野克俊*16統合幕僚長の発言について「憲法尊重擁護義務に反し、文民統制の原則を侵す」と批判し、河野氏の罷免を主張。民進党武正公一*17も「文民統制の点で問題がある」と指摘しました。

■河野克俊(ウィキペ参照)
・2014年(平成26年)12月に訪米した際、アメリカ陸軍参謀総長レイモンド・オディエルノに「平和安全法制は来年夏には成立する見込み」と伝えていたことが発覚し、文民統制違反の実例として国会で中谷元防衛大臣が質される事態に発展した。
安倍晋三首相が新聞紙上にて、憲法自衛隊の存在を明記するべきとしたことに対し、2017年(平成29年)5月23日の講演にて「非常にありがたいこと」と発言し文民統制違反の実例として国会で野党から批判がされた。これに対し25日の参議院外交防衛委員会にて稲田朋美*18防衛大臣が政治目的がないのは明らかとして問題ないと答弁した。

 過去にはいわゆる栗須発言で「栗須統合幕僚会議議長が更迭されたこと」を考えると、河野が更迭されないことには複雑な思いを禁じえません。

参考

栗栖弘臣ウィキペディア参照)
陸上幕僚長を経て統合幕僚会議議長。1978年(昭和53年)7月、「週刊ポスト」誌上で「現行の自衛隊法には穴があり、奇襲侵略を受けた場合、首相の防衛出動命令が出るまで動けない。第一線部隊指揮官が超法規的行動に出ることはありえる」と有事法制の早期整備を促す「超法規発言」を行う。文民統制の観点から不適切として、金丸信*19防衛庁長官統合幕僚会議議長を事実上解任された。
 なお、2代後の竹田五郎も専守防衛政策を批判し解任されている。

■竹田五郎(ウィキペディア参照)
航空幕僚長を経て統合幕僚会議議長。1981年(昭和56年)、統幕議長在任中において、雑誌記事(月刊宝石3月号)にて「徴兵制を違憲とする政府統一見解」及び「防衛費GNP比1%枠」の二点に異を唱え専守防衛政策を批判した。これに対し社会党衆議院予算委員会において文民統制に反する発言として竹田の更迭を要求。大村襄治・鈴木*20内閣防衛庁長官が竹田を戒告処分とし、これを受けて責任を取る形で同年2月16日付で退官した。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik17/2017-12-07/2017120702_04_1.html
赤旗『佐藤外務副大臣 自衛隊「宣誓」引用し就任決意、井上氏 “文民統制に反する”』
 参院外交防衛委員会で5日、佐藤正久*21外務副大臣が、自衛隊員が入隊する際に署名する「服務の宣誓」を引用して副大臣の職務にあたる決意を表明し、野党側から批判が相次ぎました。
 佐藤氏は「事に臨んでは危険を顧みず、身をもって責務の完遂に務め、もって国民の負託にこたえる決意だ」と発言。これに対し日本共産党井上哲士議員は「実力組織である自衛隊の宣誓を引用するのは、戦前の教訓から文民条項を持った憲法の精神からしても不適切だ」と批判しました。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-06/2018040601_02_1.html
赤旗イラク日報隠ぺい 文民統制を崩す事態、井上議員 稲田氏の参考人招致要求、参院外防委』
 日本共産党井上哲士議員は5日の参院外交防衛委員会で、「存在しない」とされていた陸上自衛隊イラク派兵部隊の日報を陸自の研究本部などが昨年3月27日に確認していたにもかかわらず、当時の稲田朋美防衛相や政務三役などに報告しなかった問題について「シビリアンコントロール文民統制)の根幹を崩す深刻な事態だ」と批判しました。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-06/2018040601_05_1.html
赤旗・主張『自衛隊日報隠ぺい:こんな組織 憲法に明記できぬ』
 イラクに派兵された陸上自衛隊の日報が「あった」とされる問題で、陸自で見つかったのは実は1年以上も前だったことを小野寺五典防衛相が認めました。長期にわたって大臣などにも報告せず、国会答弁も訂正せず欺いていたというのは、「文民統制」(シビリアンコントロール)にも関わる重大問題です。情報隠ぺいや公文書改ざんが相次ぐ安倍晋三政権の強権体質に加え、ことは自衛隊という実力組織についての問題です。首相は自衛隊憲法に明記する改憲を企てていますが、こんな自衛隊憲法に書き込めばそれこそ暴走の歯止めがなくなります。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-07/2018040702_03_1.html
赤旗『「日報」隠蔽 「法の支配問われる」、藤野議員 首相責任ただす』
 日本共産党藤野保史議員は6日の衆院法務委員会で、自衛隊イラク派兵部隊「日報」の隠蔽(いんぺい)について「政権全体が問われている」として、上川陽子*22法相の認識をただしました。
 藤野氏は「日報」隠蔽について、自衛隊法7条をもとに「自衛隊の最高指揮監督権は首相にある。安倍首相の責任は免れないのではないか」と追及。上川法相は「防衛省の文書管理について所感を述べることは控える」と言うだけで、首相や政権全体の責任については答えませんでした。
 藤野氏は、小野寺五典防衛相の“文民統制が機能しているから日報が出てきた”との発言について「(日報隠蔽が問題になった)1年前に文民統制が機能していれば、こういう事態にはならなかった」と批判しました。
 さらに、憲法学者や法学者でつくる「立憲デモクラシーの会*23」が一連の公文書改ざん・隠蔽をめぐって発表した「法の支配の大前提が崩壊しつつある」「権力者が法を超越するのか、法が権力者を規制するのか、まさに瀬戸際である」との声明を紹介。「『法の支配』か『人の支配』かが問われている認識はあるか」と迫りました。上川法相は公文書の重要性を認めつつ、質問には答えませんでした。

https://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-19/2018041903_02_1.html
赤旗『幹部自衛官の暴言、文民統制 機能不全に』
 防衛省統合幕僚監部の3等空佐が民進党小西洋之参院議員に対して「おまえは国民の敵だ」などと暴言を浴びせました。国民の代表である国会議員を、国民全体の奉仕者である公務員が「敵だ」と罵倒する異常事態です。しかも、単なる公務員ではなく、実力組織である自衛隊の幹部による暴言であり、問題はより深刻です。
 自衛隊はこの間、隠ぺいや国会での虚偽答弁など文民統制を崩すような問題が相次いでおり、国民の厳しい批判にさらされています。文民統制は、戦前の日本で軍部が暴走し、政府がそれを抑えきれずに戦争に突き進んだ教訓から生まれました。今回の暴言を機に、文民統制が機能不全に陥っているのかどうか、徹底的な検証が必要です。
 野党からは河野克俊統合幕僚長小野寺五典防衛相の辞任を求める声が上がっています。河野氏自身、2015年9月、日本共産党の仁比聡平参院議員が国会で暴露した内部文書で、まだ審議中だった安保法制の成立の見通しを米側に伝えていたことが明らかになっており、文民統制逸脱の重大な“前科”があります。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-20/2018042002_03_1.html
赤旗自衛官暴言 問われる文民統制、防衛相陳謝 井上氏が強調』
 小野寺五典防衛相は19日の参院外交防衛委員会で、統合幕僚監部の3等空佐が民進党小西洋之議員に「国民の敵だ」などと暴言を吐いた問題について「自衛官としての身分上言動には気をつけなければならない」と改めて陳謝しました。自民党猪口邦子*24議員に対する答弁。
 小野寺氏は、同自衛官の暴言行為について「自衛官を含む防衛省職員としてはあってはならない」として、事実関係を調査したうえで厳正に対処すると答弁。小野寺氏が「国民の一人として当然思うことはあると思う」(17日)と発言し、同自衛官を擁護していると批判されていることに対し「不適切な発言を行った自衛官を擁護するつもりはない」と否定しました。
 その上で「自衛官にも国民として憲法で保障された内心の自由は認められるものの、自衛官としての身分上、勤務時間外であっても言動には気をつけなければならない」と言及しました。
 日本共産党井上哲士議員は同委員会で「不快な思いをさせたということにとどまらない。イラク日報隠ぺいなどを通じて、文民統制そのものが問われているという中で起きている問題だ」と強調しました。

http://www.jcp.or.jp/akahata/aik18/2018-04-20/2018042002_02_1.html
赤旗『幹部自衛官暴言 「絶対許されない」と処分要求、志位氏 “防衛相の擁護は批判されるべきだ”』
 日本共産党志位和夫委員長は19日、国会内で記者会見し、統合幕僚監部の現職幹部自衛官民進党小西洋之参院議員に「おまえは国民の敵だ」などの暴言を浴びせた問題への見解を問われ、「選挙で選ばれた国民全体の代表者である国会議員に、国民全体の奉仕者である国家公務員が、とりわけ実力組織である自衛隊の幹部が罵詈(ばり)雑言を吐くなど、絶対に許されない」と厳しく批判し、「関係者の処分が必要だ」として、小野寺五典防衛相には「厳しい監督責任が問われる」と指摘しました。
(中略)
 戦前の陸軍幹部*25が国会の国家総動員法の審議中に「黙れ」とどう喝して議員の発言を封じた事件(「黙れ事件」=1938年)が侵略戦争への道を開いたことにも言及し、「歴史の教訓としてよく銘記すべきだ」と主張しました。
 また志位氏は、小野寺防衛相が17日、記者団に問題の幹部自衛官について「彼も国民の一人であり、当然思うことはあると思う」と述べたのは「明らかな擁護発言であり、批判されるべきだ」と述べました。

参考

佐藤賢了ウィキペディア参照)
 1938年(昭和13年)3月3日、いわゆる「黙れ事件」を起こす。陸軍省軍務課国内班長として衆議院国家総動員法委員会において陸軍省の説明員として出席。国会審議で佐藤が法案を説明し、法案の精神、自身の信念などを長時間演説した事に対し、他の委員(佐藤の陸軍士官学校時代の教官でもあった立憲政友会の宮脇長吉など)より「やめさせろ」「討論ではない」などの野次が飛んだが、これを「黙れ!」と一喝。政府側説明員に過ぎない人物の国会議員に対する発言として、板野友造らによって問題視されるも、佐藤が席を蹴って退場したため、委員会は紛糾し散会となった。その後杉山元*26陸相により本件に関する陳謝がなされたが、佐藤に対し特に処分は下らなかった。
 戦後は東京裁判終身刑の判決を受けて服役し、いわゆるA級戦犯では最も遅くまで拘留され1956年(昭和31年)3月31日に釈放。その後は東急管財(現・東急ファシリティサービス)社長を務めた。


■科学運動通信『日本史研究会の「世界遺産天皇陵古墳を問う」シンポジウム』参加記(白谷朋世)
(内容紹介)
 いろいろ書いてありますが、一つ指摘されているのは「百舌鳥・古市古墳群世界遺産登録を目指す堺市など」はこうした世界遺産登録を学術的観点よりは観光的観点で捉える傾向が強いし、その結果「天皇陵か疑わしい」として、「百舌鳥・古市古墳群」の一部で、大山古墳(大仙古墳)と呼ばれるようになった古墳が今だに行政によって「仁徳天皇陵古墳」と呼ばれてるということですね。
 観光の観点から言えば「天皇陵」と呼んだ方が宣伝はし易いわけです。そういう状況下において必ずしも天皇陵の発掘調査は進んでないし、未だに宮内庁天皇陵指定を変更しない。
 つうか「いつものように話が脱線しますが」本当、日本では世界遺産って観光ネタですよねえ。
 俺も「富岡製糸場」に「世界遺産登録前と登録後」に各1回行ったことがありますが、登録後は、最近できたとみられる飲食店とかがそこかしこににあって「観光への影響すげえな」と思わずにはいられませんでしたね。外国人観光客も明らかに増えてましたし。


■荒井信一さん*27を偲ぶ(伊藤定良*28
(内容紹介)
 荒井氏への追悼文。

*1:著書『日本政党政治の形成:原敬の政治指導の展開』、『新版・大正デモクラシー論:吉野作造の時代』(1995年、東京大学出版会)、『近代日本の戦争と政治』(1997年、岩波書店)、『ウォール・ストリートと極東:政治における国際金融資本』(2009年、東京大学出版会)、『増補・政治制度としての陪審制:近代日本の司法権と政治』(2013年、東京大学出版会)、『戦後民主主義をどう生きるか』(2016年、東京大学出版会)など

*2:2017年、岩波新書

*3:著書『国民軍の神話:兵士になるということ』(2001年、吉川弘文館)、『帝国議会誕生』(2006年、文英堂)、『日清・日露戦争』(2007年、岩波新書)、『「坂の上の雲」と日本近現代史』(2011年、新日本出版社)、『兵士はどこへ行った:軍用墓地と国民国家』(2013年、有志舎)、『「戦争」の終わらせ方』(2015年、新日本出版社

*4:読まないとなんともいえませんが、とはいえ「自由民権運動」などといった「下からの運動」の意義を否定しているわけではないでしょう。

*5:もちろん大久保が主張した「征韓論反対のこと」です。

*6:参議、陸軍大将、近衛都督

*7:首相、貴族院議長、枢密院議長、韓国統監など歴任

*8:まあ台湾出兵江華島事件日清戦争などと比べれば小規模な軍事進出ですが

*9:もちろん(?)ハト派の俺は征韓論批判一つだけでも「大久保の方が西郷より賢明な政治家だ」と思います。まあ、「西郷=豪放磊落」「大久保=神経質」なイメージで日本的にも鹿児島的にも西郷の方が人気がある気がしますが。

*10:有名なアイゼンハワー大統領の軍産複合体批判演説なんかはこれに近い認識でしょう。日本共産党軍縮を主張する理由の一つもこうした考えであるわけです。

*11:首相、貴族院議長、枢密院議長、韓国統監など歴任。元老の一人。

*12:陸軍卿、内務卿、第1次伊藤、黒田内閣内務相、第2次伊藤内閣司法相、首相、枢密院議長、参謀総長など歴任。元老の一人。

*13:著書『防諜政策と民衆』(1991年、昭和出版)、『日本海軍の終戦工作:アジア太平洋戦争の再検証』(1996年、中公新書)、『日本陸軍の総力戦政策』(1999年、大学教育出版)、『侵略戦争:歴史事実と歴史認識』(1999年、ちくま新書)、『有事法制とは何か:その史的検証と現段階』(2002年、インパクト出版会)、『近代日本政軍関係の研究』、『文民統制自衛隊はどこへ行くのか』(2005年、岩波書店)、『「聖断」虚構と昭和天皇』(2006年、新日本出版社)、『監視社会の未来:共謀罪・国民保護法と戦時動員体制』(2007年、小学館)、『憲兵政治:監視と恫喝の時代』(2008年、新日本出版社)、『「日本は支那をみくびりたり」:日中戦争とは何だったのか』(2009年、同時代社)、『田中義一:総力戦国家の先導者』(2009年、芙蓉書房出版)、『私たちの戦争責任』(2009年、凱風社)、『総力戦体制研究:日本陸軍国家総動員構想』(2010年、社会評論社)、『侵略戦争と総力戦』(2011年、社会評論社)、『領土問題と歴史認識:なぜ、日中韓は手をつなげないのか』(2012年、スペース伽耶)、『日本はなぜ戦争をやめられなかったのか』(2013年、社会評論社)、『日本降伏:迷走する戦争指導の果てに』(2013年、日本評論社)、『集団的自衛権容認の深層』(2014年、日本評論社)、『反“安倍式積極的平和主義”論:歴史認識の再検証と私たちの戦争責任』(2014年、凱風社)、『逆走する安倍政治』(2016年、日本評論社)、『暴走する自衛隊』(2016年、ちくま新書)、『権力者たちの罠:共謀罪自衛隊・安倍政権』(2017年、社会評論社)など

*14:党政策委員長、副委員長などを経て書記局長

*15:著書『はじめての憲法教室:立憲主義の基本から考える』(2013年、集英社新書)、『戦争とたたかう:憲法学者・久田栄正のルソン戦体験』(2013年、岩波現代文庫)、『ライブ講義 徹底分析! 集団的自衛権』(2015年、岩波書店)、『平和の憲法政策論』(2017年、日本評論社)など

*16:海上幕僚長を経て統合幕僚長

*17:鳩山、菅内閣外務副大臣、野田第3次改造内閣財務副大臣を歴任

*18:第二次安倍内閣行革相、自民党政調会長(第二次安倍総裁時代)、第三次安倍第2次改造内閣防衛相など歴任

*19:田中内閣建設相、三木内閣国土庁長官福田内閣防衛庁長官自民党国対委員長(大平総裁時代)、総務会長、幹事長(中曽根総裁時代)、副総裁(宮沢総裁時代)を歴任

*20:池田内閣郵政相、官房長官、佐藤内閣厚生相、福田内閣農林相、自民党総務会長(大平総裁時代)などを経て首相

*21:第二次安倍内閣防衛大臣政務官を経て、第四次安倍内閣外務副大臣

*22:第1次安倍改造、福田内閣少子化等担当相、第二次安倍内閣総務副大臣などを経て第三次、第四次安倍内閣法相

*23:公式サイト(http://constitutionaldemocracyjapan.tumblr.com/)。共同代表が樋口陽一東京大学名誉教授・憲法学)、山口二郎(法政大学教授・政治学

*24:上智大学名誉教授。小泉内閣少子化等担当相。著書『ポスト覇権システムと日本の選択』(1992年、ちくま文庫)など。

*25:佐藤賢了のこと

*26:陸軍省軍務局長、陸軍次官、陸軍教育総監、林、近衛、小磯内閣陸軍大臣参謀総長など歴任。戦後、自殺。

*27:『日本の戦争責任資料センター』共同代表、茨城大名誉教授。著書『ゲルニカ物語:ピカソと現代史』(1991年、岩波新書)、『戦争責任論』(2005年、岩波現代文庫)、『歴史和解は可能か:東アジアでの対話を求めて』(2006年、岩波書店)、『空爆の歴史:終わらない大量虐殺』(2008年、岩波新書)、『コロニアリズム文化財:近代日本と朝鮮から考える』(2012年、岩波新書)など

*28:著書『ドイツの長い一九世紀:ドイツ人・ポーランド人・ユダヤ人』(2002年、青木書店)、『近代ドイツの歴史とナショナリズム・マイノリティ』(2017年、有志舎)など