今日の朝鮮・韓国ニュース(2019年10月20日分)(追記あり)

兵庫県外国人学校協議会、国会で発言~幼保無償化求め – イオWeb

・会長の愛新翼さん(神戸中華同文学校名誉校長)は、学校ごとに方法は違えど、それぞれに協力し合いながら、多文化共生社会の実現のため地域社会に貢献してきた経験についてのべた。その上で、「加盟校を代表して発言したい」としながら、幼保無償化からの各種学校除外について言及。
・続いて、協議会の副会長を務めるジェイ・バルクさん(芦屋インターナショナルスクール校長)が発言。

 と言うことで今回は「華僑学校」「インターナショナルスクール」など全ての外国人学校が幼保無償化から除外されており問題は「高校無償化除外(朝鮮学校のみ除外)」よりも更に問題が深刻になったと言えます。


国会に赤ちゃんを連れて~幼保無償化問題で院内集会 – イオWeb

 「すべての幼児に『幼児教育・保育の無償化』適用を求める院内集会」(主催:幼保無償化を求める朝鮮幼稚園保護者連絡会、以下、連絡会)が10月18日、東京・永田町の衆議院第一議員会館で行われ、立憲民主党初鹿明博尾辻かな子近藤昭一*1衆議院議員水岡俊一*2参議院議員社民党の吉田ただとも・参議院議員、国民民主党伊藤孝恵参議院議員らが出席し、外国人学校幼児教育施設*3や幼稚園類似施設を幼保無償化制度の対象にするため、尽力していくと決意を表明した。

 ひとまず紹介しておきます。共産党議員の名前が明確に書いてない点が少々気になるところです。「ら」に入ってるのか。はたまた「この集会には参加しなかった」のか(ただし共産党もこうした集会の趣旨「外国人学校幼児教育施設も無償化すべき」には賛同していたと思います)。

 (ボーガス注:旧民主党(現在の立民や国民民主)の)国会議員からは、民主党政権時代に高校無償化を朝鮮高校に適用できなかったことについて、反省の弁もあった。

 「今更反省されても」つう不快感は正直否定できません。正直「枝野代表」「玉木代表」レベル(つまり最高幹部レベル)でないと「また裏切るんじゃねえのか」感が否定できませんね。


◆木村幹&黒井文太郎のツイートに呆れる
【最初に追記】
 最近の木村批判記事として
これは日本の現状を直接批判できないから、韓国批判の体で間接的に日本を批判している記事なのだろうか? - 誰かの妄想・はてなブログ版を紹介しておきます。

追記あり

黒井文太郎がリツイート
‏ わからないものは「わからない」としか言いようがないです
◆Kan Kimura
 自分はこの前「日韓関係の解決策」を聞かれたので「そんな都合の良いものはない」と答えたけどなぁ。答えがないものにあたかも答えがあるかのようにいうのは、世論や視聴者を誤誘導するだけだと思う。

 一般論で言えば「どうしてもわからないこと」は「わからない」でいいでしょうが、日韓関係の改善なんて全然「分からないことではない」。
 まあ、「アホの木村とは違う」まともな人間(例:和田春樹氏)なら「まずはホワイト国除外なんか辞めることですね、それなしでは問題なんか解決しませんよ」というでしょう。
 基本的には「過去の日本の悪事(慰安婦や徴用工)を非難されたら逆ギレしてホワイト国除外(WTO違反行為の疑い濃厚)などの無法行為を働く安倍」が「100パー悪い」のであってそんな馬鹿なことは辞めれば「問題は解決します」。新刊紹介:「前衛」11月号(追記あり) - bogus-simotukareのブログで紹介した加藤圭木氏(一橋大准教授)が「問われているのは日本の植民地支配への反省」と言うとおりです。「反省」するどころか逆ギレして無法行為を働く安倍が100パー悪いわけです。
 安倍のしてること(反省すべき人間が反省するどころか逆ギレして嫌がらせ)は例えるならば「DVを理由に別れ話を持ち出された男が、逆ギレして元恋人とのセックス写真を嫌がらせで暴露する(いわゆるリベンジポルノ)」位無茶苦茶です。
 そして木村らのやってることは「そんなリベンジポルノのバカ男をかばう」位無茶苦茶です。「日本側の反省が不十分」ならまだ「日本側に同情の余地」もある。「DVを理由に別れ話を持ち出された男」が「その別れ話を認める」のならまだ「そのバカ男に同情の余地」もある。
 加藤氏も指摘していますが、逆ギレして安倍が無法行為(ホワイト国除外など)に及んだ時点で既に「安倍が100パー悪い」「日本が100パー悪い」「まずは日本が無法行為を辞めろ、話はそれからだ」と言う話になっています。安倍の無法行為で状況が「日本にとって不幸な形で」大きく変化した。
 そして木村をもじれば、むしろ木村は

 答えがあるもの(安倍が無法を辞めればいい)にあたかも答えがないかのようにいうのは、世論や視聴者を誤誘導するだけだと思う。

でしょう。
 まあ、まともな人間なら木村に意見なんか聞かなくても「安倍が悪い」「日韓関係を改善するには安倍が馬鹿なことを辞めればいい*4」「嫌韓国の安倍なんか首相を辞めさせた方がいい。石破や枝野の方が何倍もましだ」なんて答えは速攻で出ます。「難しい問題ではない」ので、ほとんど考える必要すらない。
 とはいえ今の日本で「安倍を恐れる」マスコミ(雑誌やテレビ)で「日韓関係悪化は安倍が100パー悪い」「安倍以前はあんなことなかった。小渕首相時代は金大中大統領が訪日してるし、小泉首相時代には日韓共催ワールドカップをしている」「歴史認識問題なら日中間にもあるが、中国相手にはあんな無法してないから今のところ関係は悪化してない」といったら「正論」なのに、二度と呼ばれなくなる可能性大ですが。前衛記事では加藤氏は「安倍が100パー悪い」「安倍以前はここまで酷くなかった(俺の要約)」と言ってますが、それは前衛が安倍批判を恐れないメディアだからですね(岩波世界、週刊金曜日などもそうでしょう。まあ例は何でもいいですが)。
 それはともかく、できれば「馬鹿なこと(ホワイト国除外など)」を辞めるだけではなく、「過去の愚行への深い反省(都内に慰安婦博物館でもつくる等)」もしてほしいところですがひとまずそこまでは「高望みしません」。
 まあ、「安倍は悪くない」だの「100パー韓国が悪い」だの思ってるらしい木村や黒井はそういう考えではないようですが。
 しかし木村みたいなバカが韓国研究者面してるんだから頭痛がしてきますね。これについては
新刊紹介:「前衛」11月号(追記あり) - bogus-simotukareのブログで紹介した加藤圭木氏も、木村や浅羽祐樹、武藤正敏らについて「今や、研究者の肩書きを持つ人間が嫌韓国をデマで扇動する時代になった」と嘆いておられましたが。
 まあ「加害者は自分の非を認めたがらない」と言う意味では確かに「日韓関係の解決策」は難しい。
 ただそれいったら、何も「日韓間の問題」に限らず「旧ソ連(加害側)と東欧(被害側)」「米国(加害側)と被爆者(被害側)」なんかも同じでしょうよ(例は何でもいいですが)。結局、木村らの言ってることは「ただの加害者の居直り」でしかありません。


ルポ 訪朝から考える金正恩政権の狙い(1)(立岩陽一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
ルポ 訪朝から考える金正恩政権の狙い(2)(立岩陽一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース

 今日の朝鮮・韓国ニュース(2019年6月16日分) - bogus-simotukareのブログ「北朝鮮帰国者の生命と人権を守る会」を笑おう(2019年6/24日分:黒坂真の巻) - bogus-simotukareのブログで紹介した
ジャーナリストが訪朝して感じた「閉ざされた国」北朝鮮のリアル(立岩 陽一郎) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)スマホが普及した「平和な独裁帝国」北朝鮮で忘れられていく日本(立岩 陽一郎) | 現代ビジネス | 講談社(1/4)と内容的に当然かなり重複しますが紹介しておきます。
 なお、ルポ 訪朝から考える金正恩政権の狙い(2)(立岩陽一郎) - 個人 - Yahoo!ニュースは(続く)となっていますがまだ(3)は掲載されてないようです。掲載されたらここにも(3)を記載します。

ルポ 訪朝から考える金正恩政権の狙い(1)(立岩陽一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
 2019年4月27日から5月3日にかけて私、立岩陽一郎*5は訪朝した。これは拓殖大学海外事情研究所の求めに応じてその時の体験をまとめたもので、同研究所の季刊誌「海外事情*6」の2019年9・10月号に掲載された。今回、同研究所の了解を得てその内容をここに掲載させて頂く。それはあまりにも北朝鮮に対する報道が偏っていると感じるからだ。1回目はピョンヤン市内で見られた新たな動きについて伝える。(立岩陽一郎)
平壌の夜
「日本人にはウリナラで今起きている変化というのは、見えてないんだと思うんですよ」
 そう話したのは、朝鮮対外文化交流協会(以後、対文協)の幹部。日朝関係を長く見続けてきた政府機関の男性職員だ。ウリナラとは朝鮮語で「私たちの国」という意味だ。彼はそう言って私の顔を見た。2019年5月2日、翌日に帰国を控えた晩の平壌市内のホテルのバーだ。
高麗航空のCA
 高麗航空のCAが美人揃いだというのはよく言われる話だ。だが、あまりフレンドリーではなく、素っ気ない感じとも言われる。最初の訪朝時の私の印象もそうだった。客と話すことを避けていたという印象も有った。
 ところが、今回の機内では様子が少し違った。離着陸のとき、たまたまCAの1人が私と向かい合って座った。せっかくなので、隣にいた在日朝鮮人の同行者に通訳を頼み、離陸時から早々に話しかけてみると、にこやかな表情で対応してくれた。
 どうやって高麗航空のCAになったのだろうか?
 尋ねてみると、「大学を卒業して高麗航空に入り、それからCAの専門学校に通いました」との答えだった。誰でもなれる、特別な資格や身分などは無いということだろうか。
 CAと会話をしていたのは私だけではなかった。食事やお茶のサービスのとき、あるいはトイレに立つときなど、いろいろな乗客がCAに話しかけ、彼女たちもそれに答えていた。それは1年前には見られなかった姿というのが印象だ。
 これをCAの属人性や高麗航空という一組織の意識の変化と見た方が良いのだろうか?
 当然、その答えを私は持ち合わせていないが、そう考えるのはこの国では難しい気もする。この国では、いろいろな職場や生活の場で、その時々の国の政策を反映した思想教育が行われている。外国人乗客に対してCAがフレンドリーになったという対応の変化は、この国の変化を反映させているとは考えられないだろうか?
 このCAの雰囲気は平壌空港に着いても同じだった。飛行機からターミナルビルに入ってすぐのところに、空港職員の女性が2人立っていた。私と目が合うと、2人とも「アンニョンハシムニカ」とにこやかに挨拶してくれた。これも去年にはなかったことだ。
 確実に違いを感じたのは最後の税関検査だった。去年は衣類の数まで報告させられチェックされたが、今回はほぼ素通り状態だった。去年はスマホに入っている画像のチェックが行われたが、今年はスマホこそ提出を求められたものの、結局、スマホの中のチェックは行われず直ぐに返却された。
 勿論、対文協の出迎えが有るので税関当局もそれを考慮したとは考えられる。しかし、(中略)去年の訪朝時も対文協の出迎えを受けている。空港での対応マニュアルは変更されていないものの、実際の運用でかなり簡素化されているということではないだろうか。
◆始まったWi-Fiサービス
 ホテルに着いてすぐに目に入ったのは、「Wi-Fi」の文字だった。フロントデスクに大きく掲示されている。これは去年はなかった。新たにWi-Fiサービスが始まったということなのか?
 早速、フロントでWi-Fiサービスを使いたいと頼んでみた。
 こうして申し込んだホテルのWi-Fi経由で、いったい何につながるだろうか。さっそく試してみたが、まず、グーグルはつながらない。これは中国も同じだが、使用が規制されているからだ。面白いことに、直ぐにヤフーニュースが入ってきた。次々と記事が入ってくる。
 LINEも使えそうだ。日刊ゲンダイの私のコラムの担当者にメッセージを送ってみた。すると、「おー、平壌で繋がるとは!」とのメッセージが届き、その直後、10分の接続時間が終わった。
 勿論、このホテルの宿泊客は外国人だ。だから外国人限定のサービスということだろう。しかし、限定的にではあるにせよ、Wi-Fiが使えるようになったことは、この国の変化の1つであり、金正恩委員長の意向が反映された動きとみて良いだろう。
平壌市民のスマホ
 もっとも、スマホ的な外見の携帯端末は多くの平壌市民が利用している。それは去年もそうだった。市民はいたるところで写真をとり、携帯で話をしている。お洒落な恰好をした女性が「スマホ」を耳に当てて歩く姿は平壌でも珍しい光景とは言えない。
 では、平壌市民が使っている「スマホ」は、実際のどのような機能を持っているのか?私を出迎えてくれた対文協は去年も対応してくれた日本局員の2人で、ともに「スマホ」を時折使っていた。その1人に、どのような機能なのか尋ねてみた。
──スマホでメールのやり取りに使ってるんですか?
「ええ、メールにも使いますよ」
──他には何に使うのですか?
「もちろん電話に使いますし、写真を撮ったり、辞書機能を使ったり……。あと、ゲームもあります。私はやりませんけど」
──いろいろなことをスマホで検索して調べたりもしますか?
「検索?」
 この「検索」との言葉に首を傾げた。なるほど、そうか……と私は思った。恐らくこの国では、政府機関の職員と言えどもインターネットへの接続はできないのではないか。メールの送受信についてはどうやら、対文協の組織内向けのイントラネットを使っているらしい。つまりスマートフォンと言っても、私たちが言うところのそれとは違うということだろう。
◆高級デパート
 訪朝に際して窓口である在日本朝鮮人総連合会(以後、総連)には、テソン百貨店を見たいとの希望を伝えていた。開業直前に、金正恩朝鮮労働党委員長が視察したことが広く報じられた。しかし金正恩委員長が視察した際に公開されたのはスチール写真であり、それを見ただけでは店内の様子はよくわからない。
 どのようなデパートなのか?
 何を売っているのか?
 どんな客がどのくらいいるのか?
 その辺を確認してみたかった。
 まず2階に上がった。そこは衣料品の売り場で、日本のデパートとよく似た雰囲気だった。紳士服、女性用衣料品、子供服などが各コーナーに分かれて売られていた。
 3階には高級衣料品の売り場があり、ヨーロッパの有名ブランドの服などが並んでいた。欧米や日本の高級ブランド化粧品が置かれているスペースもあった。
 最上階はフードコートになっていて、何組かのカップルと家族連れが食事をしていた。ランチタイムではなかったからかもしれないが、比較的空いている感じだった。しかし1階の食料品や生活雑貨の売り場は多くの人でごった返していた。
 中国から入ってきているのか、日本のビールもアサヒ、サッポロ、キリンが揃っていた。
 対文協の担当者は、「別に、ここは特別なところではありません」と私にくぎを刺すことを忘れなかった。ただ、正直な印象を言えば、やはりテソン百貨店は、この国の中でもきわだって特別な場所である。それは客の雰囲気から感じた。
 この国の国民で首都平壌に住めるということは一種の特権だと説明される。しかし、その平壌市内でも、私など外国人を見た人々の反応は、ぎこちないものだ。一瞬だが動揺している様が見て取れる。外国人にあまり慣れていないのだろうし、また、外国人に関わり合うことで不利益を被るのではないかという怖れがあるのかもしれない。
 しかし、このテソン百貨店の客たちは、私や同行した日本人を見ても、まったく動じる様子がなかった。特に関心も示す風もなく、こちらを見ることも避けることも一切なかった。自然体だった。つまり、国民のうちでも特別な平壌市民の中で、さらに特権的な人たち(と言うと、対文協は否定するだろうが)、つまり外国人を見ても驚かず、世界的な高級ブランド品を買えるだけの経済力を持つ富裕層が確実に存在し、このデパートの客となっているということだろう。
 客の多くがタクシーでテソン百貨店に乗りつけていたことにも、そうした層が一定程度存在していることをうかがわせた。
 去年もタクシーはかなり走っていたが、実はあまり利用者はいないという印象も受けていた。当然とも言えるのは、公共交通機関が格安だからだ。地下鉄もバスも路面電車もすべて、どこまで乗っても運賃は5ウォンですむ。
 タクシーの値段の詳しい状況はわからなかったが(対文協はこういう細かい数字を開示することには消極的な面が多い)、当然、それはバスとは桁違いの高額な乗車賃となるだろう。そのタクシーに乗ってデパートに来る層が一定程度生まれているということは、その実態がどうであれ、金正恩委員長の目指す方向性を示唆しているようにも思える。
(続く)

ルポ 訪朝から考える金正恩政権の狙い(2)(立岩陽一郎) - 個人 - Yahoo!ニュース
 今年訪朝した際の体験から、金正恩政権が何を目指しているのかを考えるシリーズ。2回目は、ITに力を入れる姿と、朝鮮人民軍の軍人に見える変化。この記事は拓殖大学海外事情研究所の季刊誌「海外事情2019年9・10月号」に寄稿したものに一部加筆、修正して掲載している。掲載については同研究所の許可を得ている。(立岩陽一郎)
◆IT重視の強調
 訪朝時の視察先は、1回目に書いた通り、先ず在日本朝鮮人総連合会(総連)に希望を伝える。それを朝鮮対外文化交流協会(対文協)の日本局とで調整して決まる。拉致被害者に関係する施設なども希望するが、それは簡単に了承されない。
 つまり私が視察できる場所は、対文協も問題ないと考えるか、或いは、率先して見てもらいたいと考える場所となる。それは言い換えれば、金正恩政権が見せたいと考えている場所とも言える。
 今回の訪朝で保育士と小学校教諭を要請する平壌教員大学を視察したのも、その文脈で考えると興味深い。これは私が希望したものではなく、対文協の方で調整してくれたものだ。
 そこでは学生たちが、CGを駆使した授業の進め方を学んでいた。
 こうしたことからも、金正恩政権の目指す方向性は見える気はする。やはりIT技術の強化ということだろう。
「ここを金正恩委員長閣下が視察に来られた際、この小学生らが涙を流して歓迎しました」
「は?」
 対文協が通訳してくれた言葉に、思わず聞き返した。
金正恩委員長がこの部屋に来られたということですね?」
「はい」
 責任者は自信満々で答える。考えてみれば不思議なことではないのかもしれない。この国の状況を考えれば驚くことではないが、先進技術を求める姿と厳格な政治体制の混在した姿を見せられた気がした。
◆優遇される科学者
 未来科学者通りを視察する機会もあった。この通りは、金策工業総合大学や金日成総合大学の研究者が優先的に住む街として整備されたもので、広い道路の両脇にいくつもの高層マンションが立ち並んでいる。その一つ、64階建てのマンションの1室を見せてもらった。そこは金策*7工業総合大学の教授の住居ということで、ご夫人が家の中を案内してくれた。
 家は200平米以上あり、夫婦二人と息子夫婦の4人で住んでいるという。ソファーや大型テレビなどが揃えられており、特権的な生活を享受していることは明らかだった。
 こうした状況をどう見れば良いのだろうか?
 (ボーガス注:荒木和博氏のような反北朝鮮右翼の)ある人は、私に家を紹介した夫人は実際の教授夫人ではないと考えるかもしれない。平壌教員大学の授業も、外国人向けのただのパフォーマンスだと指摘するかもしれない。勿論、それに答える材料を私は持ち合わせていない。そうかもしれないし、そうではないかもしれない。
 ただ、私には(ボーガス注:ある意味で)それはどちらでも良いことのように思う。つまり、実態がどうであれ、少なくとも金正恩政権下では、IT技術を強化することが尊重され、工学系の研究者が特権的な待遇を与えられていることが内外に紹介されているということだ。これは間違いない。つまり、そこに金正恩委員長の狙いを見て取ることは可能だろうと思う。
板門店で感じた軍人の変化
 この訪朝でもう一つ感じたのは、平壌市内で軍事的なスローガンが目立たなくなっていたことだ。私自身は一度も見ることが無かった。多くが、「自立強盛」や「科学技術強国」といった標語を掲げたものだった。これは、IT強化という側面と関係しているのかもしれない。去年は、陸海空の軍人がこぶしを振り上げるようなポスターがいたるところに掲げられていた。
 独裁政権は国の外に常に脅威を設定する必要が有ると言われるが、金正恩政権は逆に国内で緊張緩和に向けた演出をしているのだろうか?
 仮にそうだとすると、それは二度にわたる米朝会談を受けたものなのか?
 取り敢えず、板門店に向かった。
 板門店は去年に続き2度目の訪問だ。ただ、売られている物が以前よりも魅力的になっていた。たとえば、国旗の絵と「Pyongyang」の文字が刺繍されたキャップ帽やTシャツ。美しい朝鮮の女性を描いた絵ハガキなども置かれている。いずれも観光地にありがちな土産物かもしれないが、前回訪れた際にはそうしたものが置かれていた記憶が無い。外国からの観光客を念頭に置いた品ぞろえといった印象を持った。
 軍事境界線の説明に立ったのは朝鮮人民軍のファン・ミジョン中佐。興味深かったのは、ファン中佐が淡々とした状況説明に終始していたことだ。
 去年は、説明役の大尉が「卑怯なる帝国主義者の米軍は…」などと、米軍にしきりと罵倒語を冠して話していたが、今回は単に「米軍は…」だけだった。淡々した説明に終始していたという印象に、意外な感じがした。
 ファン中佐が「安全のためにご一緒します」と言いながらマイクロバスに乗り込んできた。傍らに、ヘルメットとサングラス姿の部下を伴っている。
 中佐も部下もピストルを携帯していなかった。それを尋ねると、「ええ、昨年までは(軍事境界線で)軽武装が許されていましたが、今は非武装ということになっています。我々はピストルも持っていません」と話した。韓国軍も対応は同じだと説明した。
──最近、金正恩委員長が米国と首脳会談を行うなど、対米交渉を進めており、その結果、名実ともに朝鮮半島に平和が実現する可能性が生まれています。
金正恩元帥閣下は明快におっしゃっています。『米国との第3回首脳会談が取り沙汰されているが、我々の自主権を実現できないような会談には興味はない』と」
──では、仮に米国との交渉が決裂すれば、朝鮮人民軍は米軍と戦うのですか?
 この質問に対する中佐の次の答えは次のようなものだった。
「もちろん、我々はいつでも(戦う)準備をしています。ただし今、我々は新しい平和な歴史のために努力しています。もし我々が米軍と戦うという決断をしていれば、すでに戦争になっているはずです」
 この答えには通訳をした対文協の担当者も驚いていた。
 表向きは緊張とは無縁な状況を見るに、少なくとも金正恩政権は、緊張緩和を演出したいと考えても良いのかもしれない。
アメリカと仲良くすることは良いこと
 それは、朝鮮戦争で米国に勝利したことを祝うための「祖国解放戦争勝利記念館」でも感じた。ここには朝鮮戦争で米軍が置き去りにした戦車、戦闘機などが展示されている。案内してくれたのはすらりとした宝塚歌劇団の男役の様なチョン・ウンヘ上尉。
 この記念館の最大の展示物は朝鮮人民軍に捕獲された米軍のスパイ船「プエブロ号」だ。船内にも入ることができる。チョン・ウンヘ上尉の案内で内部を見て回った。
 一通り彼女の説明をしたのち、「あなたは今、米軍を朝鮮人民軍が撃破してきたという歴史を語ったが、今、米朝は対話を始めています。それについてはどう思いますか?」と尋ねてみた。
 彼女は一瞬戸惑った表情を見せたが、直ぐに短く答えた。
アメリカと仲良くするのは良いことだと思います」
 それは極めて短い言葉だったが、金正恩委員長の考えを端的に述べているように感じられた。
(続く)

*1:菅内閣で環境副大臣

*2:野田内閣で首相補佐官

*3:何も朝鮮幼稚園だけではなく今回は全ての外国人幼稚園が除外されています。

*4:それが「嫌韓国が酷い今の日本でどれほど可能か(情けない話ですが)」と言う問題はひとまずおきます。「間違ってることは辞めるべきだ」なんてのは当たり前の話です。それが「嫌韓国のバカ」なのか、「安倍にびびってるのか」知りませんが言えないようでは、木村は韓国研究者の看板なんて下ろした方がいい。まあ、まともな人間は木村なんぞ既に評価してないでしょうが。

*5:NHKテヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクとして主に調査報道に従事。「パナマ文書」の取材を中心的に関わった後にNHKを退職。現在は認定NPO「ニュースのタネ」編集長、公益財団法人「政治資金センター」事務局長(アマゾンの著者紹介による)。著書『NPOメディアが切り開くジャーナリズム:「パナマ文書」報道の真相』(2018年、新聞通信調査会)、『トランプ王国の素顔』(2018年、あけび書房)、『ファクトチェックとは何か』(共著、2018年、岩波ブックレット)、『トランプ報道のフェイクとファクト』(2019年、かもがわ出版)、『ファクトチェック最前線:フェイクニュースに翻弄されない社会を目指して』(2019年、あけび書房)

*6:荒木和博が所属する拓殖大海外事情研究所が良く載せたと思いますね。勿論荒木は立岩記事を紹介しませんが。

*7:1903~1951年。1948年9月、北朝鮮が建国されると副首相兼産業相に就任。1950年6月25日の朝鮮戦争勃発時には朝鮮人民軍前線司令官に就任。1951年、戦争中に死亡した。金日成国家主席が死去の直前に公刊した回想録『世紀とともに』によれば、前線指揮の激務による過労で心臓麻痺を起こして死んだ、としている。死後、彼の功績をたたえ、出身地に近い城津市は、1953年に金策市に改名された。また、金策製鉄所(清津市、清津製鉄所から改名)、金策工業総合大学(平壌市、平壌工業大学から改名)、金策軍官学校(第二軍官学校から改名、現・金日成政治大学)も改名されている。1956年に設立された空軍の教育機関金策航空大学(清津市)と命名された(ウィキペディア金策」参照)。