今日の中国ニュース(2019年12月30日分)

【地球コラム】習近平の国賓訪日は日本の国益にならず~識者に問う日中外交(1)~:時事ドットコム

 欧州におけるアジア研究の第一人者であるヴァレリー・ニケ仏戦略研究財団アジア研究主任・上席研究員は時事通信社のインタビューに応じ、現在の日中関係などについて見解を明らかにした。この中で、習近平*1国家主席国賓としての訪日について、米欧の対中認識がますます厳しくなる中、日本が親中国の姿勢を示すのは適切でないと指摘、「習主席(ボーガス注:国賓)訪日は日本の国益にならない」との見方を示した。(聞き手は時事通信社解説委員 市川文隆)

・(1)と言うことは最低でも(2)があり、ニケ氏とは別の人間からも話を聞くんですかね?
・「時事通信って反中国だったのか?」「でも産経新聞に比べたらまだましだな(産経はもっとレベルが低いので)」感がありますね(まあ、(2)以降で国賓訪中賛成派が登場すればこの見解は修正しますが)。まあ、安倍はこんなんは無視して習氏を国賓として招く*2でしょうし、俺も「習主席国賓訪日は日本の国益になる」と思いますけどね。まあこういうのは「何を国益と考えるのか(中国ビジネスによる経済的利益日中友好それ自体を国益と考えれば国賓訪日賛成になります)」「米中対立をどう理解するのか(習主席国賓訪日批判派は『米ソ対立のような全面対立』と解釈する傾向がある一方、国賓訪日賛成派は『日米貿易摩擦のような代物に過ぎない』と解釈する傾向がある)」など「価値観や情勢認識」によって大きく変わってきます。

Q、
 米中の覇権争いですが、中国は将来果たして米国を経済面、軍事面で追い越すことが可能でしょうか。

 「え、なんでそう言う話になるの?」ですよねえ。
 何も安倍は『将来、中国が米国を経済面、軍事面で追い越すから国賓として招待しよう』『米中の覇権争いでは中国を支持しよう』とは思ってないでしょう。
 国賓訪日賛成派だって何もそんな見解に立ってるわけではない。そもそも今の米中対立を単なる貿易摩擦にとどまらない「覇権争い」と見なすことが適切かどうかも争いがあるわけです。

ニケ氏
 中国は経済的に米国に次ぐ世界2位ですが、(ボーガス注:豊かな都会と貧乏な田舎の格差が大きいので、平均値である)1人当たりの国内総生産(GDP)でみると、欧州の貧しい国、例えばブルガリア程度です。

 今はそうなんでしょうね。ただ将来はどうなるかはわかりません。

ニケ氏
 共産党の幹部が子弟を外国留学させていることをみれば、彼らが自国の将来に悲観的なことは明らかでしょう。

 「え、なんでそう言う話になるの?」ですよねえ。外国留学させたら何でそう言う話になるのか。
 外国留学って単に「今は中国より欧米の教育機関の方がレベルが高いと評価してる」つうだけの話でしょうよ。そもそも日本人だって欧米に留学する人は居るわけです。その日本人は「日本の将来に悲観的」なのか?

ニケ氏
 米中の覇権争いについて、私は戦略的にはトランプ大統領が中国にかけているプレッシャーは、中国に国際規範を守ること、知的財産を尊重すること、企業への国家規制を減らすことなどで、(中国の保守派に対する外圧となり、結果的に)習近平国家主席を利していると個人的に思います。

 その認識の是非はともかく、「結果的に習近平国家主席を利していると個人的に思います」とは「習近平政権の危機」を叫ぶ産経とは大分価値観が違いますね。

 とはいえリスクもあります。まず、トランプ大統領が意見を変え中国との安易な取引に走ること。次に米国が中国にかけているのと同程度のプレッシャーを日本や欧州などの同盟国にかけ、これにより民主主義各国による対中国共同戦線を構築できにくくなること。三つめは、米中貿易戦争は中国経済に否定的な影響を与え、日本や韓国などアジア諸国の経済を弱めかねないことです。

 「トランプは中国だけでなくEU諸国や日本にも報復関税をしている」「中国経済が沈没すると巻き添えで世界経済や日本経済が沈没しかねない」、いずれも「産経など反中国・右翼メディアには見られない」重要な指摘かと思います。

Q、
 中国は共産党創設100年に当たる(ボーガス注:約30年後の)2049年に向け、豊かで強力な国にするとの目標に定めています。
ニケ氏
 (前略)予想は難しい。

 そりゃ「30年後の予想は難しい」でしょうね。
 「1941年に日本が米国と戦争するなんて30年前(1911年)に誰か予想していたか」。
 まあ、いませんよねえ。米国との対立理由になった「中国との全面戦争」なんてこの時期、誰も予想できませんし。
 「1972年にニクソンが訪中して毛沢東らと会談するなんて30年前(1942年)に誰か予想していたか」。
 そもそも1942年には中国(中華人民共和国)という国自体がないわけです。1942年時点で中国内戦において毛沢東が勝利すると予想していた人は少ないでしょう。
 「2002年に小泉*3訪朝があり、北朝鮮が拉致を認めると30年前(1972年、当時は田中*4内閣)に誰か予想していたか」。
 まあ拉致自体「1972年にはまだ起こってない」と見られていますが、それはさておき。横田めぐみさんが拉致された1977年時点(当時は福田赳夫*5内閣)で「これは北朝鮮拉致で約25年後の2002年に北朝鮮はそれを認めることになる」なんてわかるわけがない。
 「2009年に自民党が下野し鳩山*6内閣ができると、30年前(1979年、当時は大平*7内閣)に誰か予想していたか」。
 まあ、民主党自体存在しませんがそれはともかく、「ロッキード事件」で自民党が批判をあびていたとはいえ「野党(当時の最大野党は社会党)が果たして政権を奪取できるのか?」といえば社会党支持者ですら大半は「うーん、どうだろう?」でしょう。
 「2019年に安倍*8政権がここまで日韓関係を破壊すると、30年前(1989年、当時は海部*9内閣)に誰か予想していたか」。
 いませんよねえ。むしろソウル五輪で日本の韓国イメージは比較的良かったでしょう。

Q、香港の民主派デモは続いています。今後の展開をどうみますか。

 ニケ氏の回答は引用しませんが、要約すれば
1)香港デモ側は簡単に妥協しないだろう。一方、中国側もデモ側の意見(特に行政長官の直接選挙)を受け入れるとは思えない
2)しかし香港デモ側、中国側ともに決め手を欠いている(中国側も軍隊で鎮圧のような無法は国際世論を考えれば出来ないが、デモ隊側も中国に要望を受け入れさせるだけの力が無い)
3)当面、ゴタゴタは続くだろう。最終的にどうなるかはまだ見通せない
という「大多数の見方と同じ意見」です。間違っては居ないでしょうが取り立てて彼女の独自性、個性があるわけではない。

Q、新疆ウイグル自治区に関する内部文書が流出する事態は、習近平体制への不満分子が政権内部にいるということでしょうか。

 「流出させた人間が誰か知っているならともかく、そんなんわかるかよ?」としか言いようがないですよねえ。「いるかもしれません」程度のことしかニケ氏も言わない。
 「モリカケ桜を見る会の情報がリークされるのは安倍首相への不満分子が政権内部にいるのか?→いるかもしれません」と同じ話です。

Q、
 日本政府は来年春に習主席の国賓としての訪日を予定していますが、日本国民は歓迎一色という状況には程遠いです。
ニケ氏
 日本には経済的な理由、つまり重要な貿易相手国である中国との関係改善を願う人がいて、その人たちは習主席の訪日を歓迎しています。しかし、一方で同時に多くの要素、例えば国賓として天皇が迎えるという対応について、香港への圧力や新疆ウイグル自治区の問題があり、こうした問題を抱える国の首脳を天皇が迎えるのはイメージとしてもふさわしくないとの意見が多いのでしょう。一方、習主席にとっては、国賓以外の訪日形式を選択することはありえないのでしょう。

 まあ、当初はともかく「安倍が国賓訪日を発表した今」となっては「国賓以外の訪日形式を選択することはありえない」でしょうね。それは習氏にとって「日本国内の反中国分子に対する政治的敗北」を意味するでしょうから。
 なお、「大歓迎」ではないのは確かですが、一方で「猛烈な反発」があるわけでもない。大半の日本人は無関心でしょう。

ニケ氏
 日本の戦略としては、中国との関係を示すことで、もしトランプ大統領が(ボーガス注:貿易交渉で?)さらに日本に圧力をかけ続ける場合には良くない結果を招くのだということを示したいのでしょうが、それは大変危険な計算です。つまり、米国が日本と中国の接近を警戒し、さらに大統領選を控えたトランプ氏の支持者の中に「日本は同盟国として信頼できない」という世論を喚起し、米政権がさらなる圧力を日本にかけかねないからです。

 「え、なんでそう言う話になるの?」ですよねえ。
 何も安倍は「米国牽制」のために習主席訪日を要請したわけではないでしょう。国賓訪日賛成派だって何もそんな見解に立ってるわけではない。
 単に「日中経済交流の進展が目的」にすぎないわけです。
 米国が「習の国賓訪日などやめろ」と圧力をかけないのもそんな理解をしていないからです。
 習、安倍会談で「米国にとって容認できない合意」でもされない限り、米国は安倍に反発しないでしょうし、安倍にそんな合意はとても出来ないでしょう。仮に安倍と米国の間に「意思の不疎通」があって「安倍が問題ないと思った合意を米国が敵視」する場合でも、「安倍が米国の反発を無視して突っ走ること」もあるいは「激怒した米国が安倍を政治的に追い詰めること」もないでしょう。
 米国は「普通に安倍に不快感を表明し」、それに対し、安倍は「誤解を解きたい」などと日米の関係融和に努めるでしょう。

Q。
 欧州諸国の対中国政策とは。
ニケ氏
 欧州にとって、中国に対する見方はこれまでに比べ厳しい方向に進んでいます。欧州、特にフランスはますます日本との戦略的関係を重視してきており、特に「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想について肯定的にとらえています。こうした観点からも、日本の対中接近は中国と距離を置こうとする欧州との差が際立つことになってしまいます。

 どうですかねえ、それは。日本だけでなく、欧州にとって中国は重要な「貿易相手国」ですからね。
 イタリアは一帯一路参加を表明したし、フランスはエアバスを中国に大量購入してもらって大喜びの訳です。イギリスやドイツにしても中国市場を軽視は出来ないでしょう。欧州諸国のうち、G7諸国(英仏独伊)ではない「経済が立ち後れており中国の進出を期待する」東欧諸国などはなおさらです。
 ウイグルチベット、香港デモなどで一定の苦言は呈するにしても決定的な対立は避けるでしょう。
最近も

英首相、対米関係で苦慮 ファーウェイやFTA交渉めぐり - 産経ニュース
 対米関係の悩みはこれだけではない。その一つが、トランプ氏が安全保障上の理由から5G通信網からの排除を呼びかける中国通信機器大手の華為技術(ファーウェイ)への対応だ。
 ジョンソン氏*10は4日、ロンドンで開かれた北大西洋条約機構NATO)首脳会議で「ハイテク分野に関して中国の課題を認識すべきだ」と述べ、トランプ氏に同調する姿勢を見せた。だが、その翌日、テレビ番組でジョンソン氏が華為のスマートフォンを用いて「自撮り」する様子が放映され、英メディアは華為を完全に排除することはできないと予測する。
 ジョンソン氏は年内に華為への対応を決めるとしていたが、まだ結論は示されていない。オブライエン米大統領補佐官は今月下旬、英紙で華為使用に伴う危険を改めて警告したが、英国ではインフラ整備に中国マネーも流れ込んでおり、離脱後の経済パートナーとして中国にも配慮せざるをえない事情を抱えている。

なんて記事があります。
 そもそも「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」構想なんてもんに一帯一路ほどの実質的内容があるのか。

*1:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*2:まあ、来年春(習氏の訪日予定日)まで安倍政権などうんざりなのでその前に安倍には首相辞任してほしいですが。そして「仮に習主席訪日前に幸いにも安倍が首相辞任したとして」安倍の首相辞任後「自民党首相(石破元幹事長や石原元幹事長、岸田政調会長など)」だろうと「野党の政権交代(枝野立民党代表など)」だろうと「習氏国賓訪日」の計画は変わらないでしょう。「前政権(安倍政権)がきめたことで我々には関係ない」「政権が変われば考えも変わる」でぽしゃらせるとは思えません。そんなことしたら日中関係が悪化しますし。

*3:宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相を経て首相

*4:岸内閣郵政相、池田内閣蔵相、佐藤内閣通産相自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)などを経て首相

*5:岸内閣農林相、自民党政調会長(池田総裁時代)、幹事長(佐藤総裁時代)、佐藤内閣蔵相、外相、田中内閣行政管理庁長官、蔵相、三木内閣副総理・経済企画庁長官などを経て首相

*6:細川内閣官房長官新党さきがけ代表幹事、民主党幹事長などを経て首相

*7:池田内閣官房長官、外相、佐藤内閣通産相、田中内閣外相、三木内閣蔵相、自民党幹事長(福田総裁時代)などを経て首相

*8:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官を経て首相

*9:自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田、中曽根内閣文相などを経て首相

*10:ロンドン市長、メイ内閣外相などを経て首相