「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2020年2/13日分:高世仁の巻)(副題:有本嘉代子が死去)

有本恵子さん拉致の全貌 5 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2020年2/11日分:高世仁の巻)(副題:有本嘉代子が死去) - bogus-simotukareのブログで取り上げた有本恵子さん拉致の全貌 4-八尾恵の法廷証言 - 高世仁の「諸悪莫作」日記の続きです。

 八尾が証言したその夜、小泉純一郎首相はこうコメントした。
 「ご家族の気持ちを思うと実にひどい事件だ。この拉致問題をいいかげんにして北朝鮮との国交正常化はありえない」。
 拉致問題の解決なくして日朝関係の正常化なし、という「毅然たる態度」で北朝鮮にのぞむ立場が、ここで確立したのである。

 とはいえ小泉訪朝前のそうした「毅然たる態度」とは「拉致なんかしてないと北朝鮮が言い続け、拉致問題での成果が日本側に何もないゼロ回答では国交正常化なんか出来ませんよ」というものにすぎなかったでしょう。決して今、救う会や家族会が叫んでるような「即時一括全員帰国」ではない。
 そこで北朝鮮側は金大中政権の働きかけもあって「拉致を認め拉致被害者5人を帰国させた」わけですが、国交正常化妨害を狙う右翼団体救う会」が「救う会の影響下にあった」家族会と共に「たった5人の帰国か」と因縁を付け「制裁で追い詰めた方が拉致が解決する」との詭弁で「経済制裁を政府に発動させ」、今の拉致敗戦に至ってることは言うまでもないでしょう。
 いい加減高世も
1)「拉致問題の解決なくして日朝関係の正常化なし」として「即時一括全員帰国」なんて救う会、家族会の方針をとり続ける限り「日朝関係正常化(日朝国交樹立)」はもちろん拉致問題の解決もないであろう事を認めたらどうなんですかね?
 また、
2)むしろ日朝国交正常化を先行させ、日朝間の信頼関係を構築した方が「拉致の解決に資する」のではないか。
 かつ、「拉致被害者に冷たい」「北朝鮮に甘い」などの非難をあえて甘受しますが
3)「国交正常化によって得られるだろう利益*1」を「拉致解決」より上に置く理由は何もないと俺は思うわけです。
 国交正常化すれば明らかに「北朝鮮の安保環境は改善する(緊張が緩和される)」でしょう。北朝鮮にとって「核、ミサイル開発する理由」が一つ減る。そうなれば米韓連合軍から北朝鮮侵攻する危険性も減るわけです。
 あるいは国交正常化によって日本人妻の帰国や残留邦人の遺骨回収などもやりやすくなる。
 また「これをいうと」確実に「カネのために拉致被害者を見すてるのか」と家族会、救う会は言うでしょうが、日本企業の北朝鮮進出による利益も見込める。
 もちろん「日本企業の北朝鮮進出による利益」には「金儲け」という利益は当然あります。しかし「以前も書きましたが」それだけではない。
 失うものがない人間や組織というのは暴走する危険性がある。一方、失うものがある人間や組織は「今あるものを失いたくない」と思う「保身が働く」のでまず暴走しません。それどころかそう言う「失うものがある」人間は場合によっては「違法行為に暴走しない」どころか「モリカケの佐川」のように「保身から違法行為に加担すること」すらある。
 過去の凶悪犯罪者だって、「失う者がない人間の暴走」が多いわけです。
 もちろん、何にだって例外はあります。手塚治虫の成人向けマンガ「ペーター・キュルテンの記録」(1973年、漫画サンデー)で描かれた実在のレイプ殺人鬼「ペーター・キュルテン」などは「妻もあり、定職にも就いていて」「逮捕されるまではそのような凶悪犯とは誰も思ってなかった」わけですが、やはり多くの凶悪犯は「失う者がない人間の暴走」が多いわけです。
 何が言いたいかと言えば、「日本企業の北朝鮮進出」によって「失うものが増えた北朝鮮」の暴発の危険性が減ると言うことですね。
 金大中盧武鉉文在寅太陽政策も「失うものが増えれば北朝鮮は暴発しない」という思惑によっての政策です*2。決して「単純な同胞への同情意識」ではないし、ましてや「北朝鮮シンパ」などではない。

 恵子さんは石岡亨さんと結婚し、子どもをもうけただろうということだ。1988年に札幌の実家に届いた石岡さんの手紙には、腹這いで微笑む赤ちゃんの写真が同封されていたが、二人の子どもだと思われる。

 だから「拉致じゃない」「拉致でもたいした問題じゃない」とは言いませんが、幸いにも彼女はかの国で「それなりに幸せだった」ようです。

 横田めぐみさんは曽我ひとみさんや田口八重子さんと同居していた時期があったし、蓮池さん、地村さんらの家族と同じ「村」に暮らしていたこともあり、交流があったのに比べ、恵子さんたち欧州で拉致された3人は彼らとの接点がない。
 また韓国に亡命した元工作員などが、横田めぐみさんたちは工作員養成所で日本人化の教官をさせられていたと証言しているが、3人に関してはその種の証言がない。
 これは拉致した工作機関の「系統」が違っているからかもしれない。
 横田めぐみさん、蓮池さん、地村さん、曽我さんなど工作船で運ばれた人たちの拉致は、労働党の工作機関のなかでも「調査部」と「作戦部」のチームで行なわれた。一方、恵子さんたちは、よど号グループを管轄していた労働党「連絡部」が拉致を実行したと見られる。
 同じ工作機関ではあっても、基本は縦割りの組織なので、拉致被害者も組織ごとに別々に管理されたのではないか。
 有本嘉代子さんは1990年ごろ、恵子さんに宛てた家族の寄せ書きの手紙を、ある人に託したという。(嘉代子さん著『恵子は必ず生きています』神戸新聞総合出版センター2004年)
 その手紙は、よど号グループと交流のあった高沢皓司氏らによって、やや遅れて92年か93年に北朝鮮の田宮に手渡された。
 田宮はこう言ったという。
 「ここには、ようけ日本人がいるんや・・・。どこに誰がいるのか、われわれでは連絡もつかない・・」(高沢著『宿命*3』P223)
 よど号グループが連れて来た日本人たちは、途中から田宮たちからも切り離されたというニュアンスだったと高沢氏は言う。

 つまりは拉致問題において「信用できる情報を得ることは難しい」ということですね。帰国拉致被害者が知ってる情報にも限界がある。
 高沢が語った「田宮発言」が「高沢の虚言」ではなくかつ「田宮の本心」だとするなら田宮も「拉致日本人のこと全てを知っているわけでは全くない」。せいぜい知っているのは「よど号グループが関わった拉致だけ」でしょう。その「よど号グループが関わった拉致」ですら「途中から田宮らには情報が行かなくなった可能性」がある。
 であるのなら、「日本側にまるで情報がない」のだから、日朝交渉を進め「少しずつ北朝鮮から情報を得ること」によってしか「拉致解決の道はない」のですが交渉を阻害する「経済制裁」に家族会が固執するのだから心底呆れます。

 2002年9月、小泉訪朝が電撃的に発表された。
 有本嘉代子さんは、いよいよ恵子さんが帰国できると大きな期待を寄せた。

 で、その期待は裏切られるわけですが、小生は正直「そこまでの期待はしていません」でした。多くの日本人はそうでしょう。
 何せずっと北朝鮮は「拉致などしていない」と言い続けたわけです。ここで「実は嘘でした」とは言いづらい。
 もちろん小泉氏が訪朝するに当たって「拉致などしていない(北朝鮮)→そうですか、わかりました(小泉氏)」で成果ゼロでは「小泉氏の政治生命が危うくなる」。そんなことは小泉氏は出来る相談ではない。拉致で成果ゼロではそもそも訪朝しないでしょう。
 一体「どうやって、北朝鮮にとっても日本にとっても利益がある落ちを付けるつもりか」さっぱりわからなかったのですが、「拉致を認めた方がいい」という金大中政権の働きかけ*4もあって*5「一部の末端分子が暴走してやったことであり、上層部は把握してなかった」と「モリカケでの安倍のような逃げ口上」をし、その上で「5人帰国させる」とは意外でしたね(もちろんバーター取引として日朝平壌宣言で国交正常化時の経済支援を約束)。
 この時に「経済制裁」などという馬鹿なことをせずに交渉を推進していけば、事態は大きく変わったでしょう。
 拉致は解決に向けて進展したでしょうし、拉致を口実に安倍なんて「クズ政治家」が成り上がることもなかった。安倍なんて「拉致の安倍」をウリにする前は明らかに小泉氏に評価されてませんからね。
 小泉政権官房長官だった福田氏が退任した後に「後任官房長官」になったのは「細田官房副長官」でした。同じ官房副長官だった安倍ではない。
 首相退任後も、「小渕、森内閣財務相となった宮沢氏」「森内閣行革等担当相になった橋本氏」のような例がありますが、安倍には首相退任後、そんなこともなかった。つまりはその政治能力をろくに評価されてないと言うことでしょう。
 そもそも安倍は

・池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、福田内閣経済企画庁長官、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相になった宮沢氏
・大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、海部内閣蔵相、自民党幹事長(宇野総裁時代)、政調会長(河野総裁時代)、村山内閣通産相などを経て首相になった橋本氏

と違い、自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房副長官官房長官(全て小泉首相時代の役職)以外にろくな役職をやっていません。
 そもそも「小渕首相の急死→急遽登板した森氏が不人気→いわゆる加藤の乱が起こるが失敗し、加藤氏が失脚。しかし結局、森氏は退陣→主流派が担いだ橋本氏を反主流派の小泉氏が破って首相」という異例の形での「傍流・小泉氏の首相就任」であり、小渕氏の急死がなければ、おそらく小泉氏首相就任はなく、そうなれば安倍が首相になることもなかったでしょう。
 そして、むしろ安倍が成り上がる前に小泉氏に評価されていたのは長く「小泉内閣財務相を務めた谷垣氏」でしょう。安倍が成り上がらなければ、ポスト小泉最有力候補は谷垣氏だったでしょう。谷垣首相ならば自民党も「今のような惨状」はなかったのではないか。
 いずれにせよそうした期待が裏切られた事で有本夫妻は逆上し、増元照明などとともに「ガキの使いか」「万死に値する」などと非常識な悪口をし、小泉氏に拉致問題に取り組む気を失わせ、今の拉致敗戦となるわけです。

*1:個人的にはそうした利益には実は「拉致解決」も入ってるとは思いますが。国交がない状況よりある状況の方が拉致解決に資すると俺個人は思います。

*2:それ以外にももちろん「韓国企業の経済的利益」もあるし、「今のまま統一したら、ズタボロの北朝鮮経済によって韓国経済が沈没しかねないので、少しでも北朝鮮経済を立て直す」という思惑もあるでしょうが。

*3:2000年、新潮文庫

*4:たとえば米国のキューバへの対応から、日本の北朝鮮への対応を考えてみる - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)が紹介する林東源氏(金大中政権で大統領安保担当補佐官、統一担当相、国家情報院長など歴任)の話。

*5:正直、家族会は救う会などより金大中氏に感謝すべきでしょう。もちろん金氏も「日朝関係改善が韓国の利益になる」と思って動いたのであって単純な善意ではありませんが。