高世仁に突っ込む(2020年6/13日分)(追記あり)

横田滋さんの逝去によせて7 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 高世仁に突っ込む(2020年6/12日分)(追記あり) - bogus-simotukareのブログで取り上げた高世記事横田滋さんの逝去によせて6 - 高世仁の「諸悪莫作」日記の続きです。

 韓国政府が(ボーガス注:反北朝鮮ビラの散布を行っていた)脱北者団体を(ボーガス注:違法行為として)刑事告発したとのニュースには驚き、また失望した。

 もちろん「太陽政策支持イコール今回の刑事告発支持」ではありません。
 今回の刑事告発については、太陽政策支持の立場でも当然批判はしていい(一方で、今回の刑事告発を批判することは太陽政策を批判することとは全く別問題です。特に『今回の刑事告発』と関係ない金大中盧武鉉太陽政策についてはそうでしょう)。
 ただしその場合、批判するにしても「救う会流の打倒北朝鮮は論外であり、太陽政策しか現実的な道はない」「今回の刑事告発を否定する場合もそれは太陽政策否定であってはならない」ということが大前提だと俺は思っています。
 「太陽政策を支持するが、今回の告発は表現の自由の観点や法治主義の観点(法律の拡大解釈の疑いあり)から不適切ではないか」というならともかく、高世や救う会のように「打倒北朝鮮」「反北朝鮮」の立場から反対だというのは非常識でお話になりません。
 まあ、俺個人は「表現の自由の観点や法治主義の観点(法律の拡大解釈の疑いあり)から今回の告発はいかがなものか」とは思います(ただし、『正当な告発で問題ない』と今後思えば考えはいくらでも変えますが)。
 とはいえ、一方で「韓国の反北朝鮮ウヨ・脱北者連中のやる『反北朝鮮ビラの散布行為』は南北関係を緊張させるだけで有害無益*1」と思ってるので、あまり韓国政府を批判する気になれないのも正直事実です。

 1997年2月初旬のこと、めぐみさん拉致疑惑が波紋を広げ、マスコミへの対応でてんてこまいの日々が続いていた横田さん夫妻に、兵本達吉氏から連絡があった。
 北朝鮮に拉致されたと見られる人々の家族が集まって「会」をつくろうという提案だった。

 この時が「兵本(橋本敦議員の元秘書)にとって栄光の時期」だったのでしょうが、奴は結局、日本共産党除名を機に反共右翼に転進。一時は週刊文春週刊新潮などに良く出ましたが、「筆坂秀世など反共右翼は他にいくらでもいるので」特に取り柄もない兵本は急速に忘れ去られていきました。今の兵本にとっては正直「こんなはずじゃなかった」「俺はどこで何を間違ったのか」でしょう。
 「党を除名されたのがまずかったのか」「党除名後に右翼活動家になったのがまずかったのか」「はたまた救う会において佐藤勝巳会長(当時)を非難し、救う会から追放されたのがまずかったのか」と後悔の日々でしょう。
 まあその点は高世仁も「ジンネット倒産なんて、こんなはずじゃなかった」「俺はどこで何を間違ったのか」「日本電波ニュース社から独立したのが間違いだったのか」「ジンネットが北朝鮮報道にはまりすぎた(その結果、他の仕事がなくなる?)のが間違いだったのか」などと後悔の日々でしょう。

 1988年3月26日の参院予算委員会で、橋本敦議員が質問に立った。
 この質疑は、(ボーガス注:金賢姫に日本語を教えたとされる)「李恩恵*2」にはじまってレバノン女性拉致事件までを網羅しており、政府から画期的な次の答弁を引き出している。
梶山清六*3国家公安委員長
 「昭和53年以来の一連のアベック*4行方不明事犯、恐らくは北朝鮮による拉致の疑いが濃厚でございます。解明が大変困難ではございますけれども、事態の重大性にかんがみ、今後とも真相究明のために全力を尽くしていかなければと考えておりますし、本人はもちろんでございますが、ご家族の皆さん方に深いご同情を申し上げる次第であります」
 はっきり「北朝鮮による拉致」の疑いと答えている。当時としては驚くほど踏み込んだ答弁だったが、この国会質疑は『赤旗』以外、わずか2紙*5がベタ記事を載せただけに終わった。

 当時のマスコミが北朝鮮拉致疑惑について全く無関心であったかのように描き出す高世ですが

1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)
◆橋本敦君
 二月九日の読売新聞は、「日本の浜を無法の場にするな」、こういう表題で、
『とまれ、「李恩恵」という人物についての真相解明を急ぐべきであり、北朝鮮側によるら致*6が事実とあれば、わが国は北朝鮮に対し、原状の回復を求め、同時に、その責任の所在を明確にするための適切な措置をとることが必要である。
 わが国からわが国民をら致するような国に対しては、それがどの国であれ、動機が何であれ、毅然として対応すべきである。わが国がそのような非人道的無法行為の現場にされるいわれはまったくない。』
 こう言っておりますし、また同じ日の朝日新聞は、
『事実とすれば、日本の主権にかかわるきわめて重大な事件である。他の国の機関が、日本国内から力ずくで日本人を連れ去るといった理不尽なことが、許されるはずはない。
 日本の警察が北朝鮮にら致されたのではないかとみている三組の男女*7についても、疑惑は大きく膨らんでいる。』
 こういうように言っておるわけですね。
 私は、政府として、こういう重大な主権侵害事件として、これから事実が明らかになるにつれて毅然たる態度で原状回復を含めて処置をしていただきたいということをもう一度重ねて要求するのでありますが、いかがですか。

ということで当時、北朝鮮拉致疑惑関係のマスコミ報道が全くなかったわけではありません。
 とはいえ、まあ当時は北朝鮮拉致問題なんてそんな扱いだったと言うことです。もちろんマスコミ各社が「梶山、宇野答弁を引き出した」共産党を軽く見ていたというのもあります。1980年代は「共産党を除く与野党協議(この場合の野党は社会党公明党民社党社民連)」などという「反共主義行為」が公然と行われていました。
 なお、この橋本質問、梶山答弁については
「拉致調査妨害」など事実無根/前参議院議員 橋本敦
拉致問題 88年以来、質問を積み重ね解決の道開いた日本共産党国会議員団/対談/橋本敦前参院議員/木島日出夫衆院議員
北朝鮮問題/日本共産党は道理ある解決へ/こんな役割を果たしてきました
拉致問題を最初に国会でとりあげたのは?
1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)
を参照下さい。
 なお、橋本質問では

1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)
外務大臣宇野宗佑*8君)
 ただいま国家公安委員長が申されたような気持ち、全く同じでございます。もし、この近代国家、我々の主権が侵されておったという問題は先ほど申し上げましたけれども、このような今平和な世界において全くもって許しがたい人道上の問題がかりそめにも行われておるということに対しましては、むしろ強い憤りを覚えております。
外務大臣宇野宗佑君)
 先ほども御答弁申し上げましたが、繰り返して申し上げますと、ただいま捜査当局が鋭意捜査中である、したがいまして、あるいは仮定の問題であるかもしれぬ、しかしながら、仮にもしもそうしたことが明らかになれば主権国家として当然とるべき措置はとらねばならぬ、これが私の答えであります。
法務大臣林田悠紀夫*9君) 
 ただいま外務大臣国家公安委員長から答弁がありましたように、我が国の主権を侵害するまことに重大な事件でございます。現在警察におきまして鋭意調査中でございまするので、法務省といたしましては重大な関心を持ってこれを見守っており、これが判明するということになりましたならばそこで処置をいたしたいと存じております。

という形で宇野答弁もありますが、高世が宇野答弁に触れないのは何故でしょうか?(林田答弁については共産党などもあまり触れないのでそれは不思議ではありませんが)。宇野氏が女性スキャンダルで辞任した「短命総理」だから「自民党の名誉のために触れない」のか? 
 なお、その後、「短命に終わったとは言え」宇野氏は首相になりました。
 「竹下派七奉行の一人(他の六人は奥田敬和*10衆院議員、小渕恵三*11元首相、小沢一郎*12自民党幹事長、橋本龍太郎*13元首相、羽田孜*14元首相、渡部恒三*15衆院副議長)」とされた大物政治家・梶山氏もその後、「宇野内閣通産相」「海部内閣法相」「自民党幹事長(宮沢総裁時代)」「橋本内閣官房長官」と言った要職を歴任しました。
 それでも「短命に終わった宇野氏は仕方がない」としても「要職を歴任した梶山氏」「梶山氏を要職に登用した竹下*16首相、海部*17首相、宮沢*18首相、橋本首相」は拉致被害者帰国という意味では何も出来ませんでした。
 お断りしておきますが小生は「梶山氏」「梶山氏を登用した竹下、海部、宮沢、橋本首相」を「拉致解決をできなかった無能」と非難したいわけではありません。『安倍首相以前の首相が悪い、安倍首相は悪くない』と醜悪な強弁をし、安倍をかばった『救いがたい馬鹿野郎』横田兄弟ならそう言う非難をするのかもしれませんが。
 「時代背景が違うので単純比較できない」「小泉氏は有能で竹下、海部、宮沢、橋本は無能とはいえない」とはいえ竹下氏らが拉致解決という意味で何も実行できなかったところ、「拉致被害者帰国」を実現した小泉氏*19については俺が拉致被害者家族なら「ただただ感謝の念しかない」と言うことが言いたい。
 しかし「たった5人か」「何故、北朝鮮に経済支援するのか」などと小泉氏に悪口雑言し、彼に拉致に取り組む気を失わせた馬鹿者が家族会です。
 一方で何の成果も上げてない安倍*20救う会の言いなりに持ち上げる。
 そのあげくが今の「拉致敗戦」です。
 改めて家族会の馬鹿さには憤りを禁じ得ません。そしてそんな家族会を持ち上げることしかしない「家族会の太鼓持ち幇間」である高世にも憤りを禁じ得ません。

関心のある方は、国会議事録(https://kokkai.ndl.go.jp/#/detail?minId=111215261X01519880326¤t=1)をお読みください。

 梶山答弁について、1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)を紹介しない辺り「さすが『反共右翼団体救う会太鼓持ち』で自らも反共右翼の高世さんですね!(失笑)。赤旗は絶対に紹介したくないんですね!」ですね。
 国会議事録なんて、「拉致関係の橋本質問&政府答弁(梶山国家公安委員長、宇野外相、林田法相)」だけが抜粋されてる1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)と違い「拉致以外の橋本質問&政府答弁(1988年3月26日の参院予算委員会において、拉致以外についても橋本氏は質問しています)」「他の議員の質問&答弁」も掲載なので読みづらいんですが。
 なお、1988年3月26日の参院予算委員会においては、北朝鮮関係では

国会会議録検索システム
◆橋本敦
 大韓航空機事件に関連をいたしまして質問いたしますが、この事件に関して我が国の偽造旅券が使われたという事実、これは極めて重大であります。この点について捜査権は日本にあることは明白だと思いますが、その点について、外務大臣法務大臣、どうお考えでしょうか。
◆政府委員(外務省アジア局長・藤田公郎君)
 偽造旅券の問題につきましては、外務省といたしましてもこれまで旅券の専門家を韓国に派遣する等の調査を進めてきております。ただ、この問題は具体的な事件の証拠の収集に関する問題でもございますので、捜査当局とも緊密に協力をしながら、今後この偽造旅券の問題につきましてはどういうふうに扱うか、あらゆる事情を総合的に勘案しながら適切に対処してまいりたいと思います。
◆政府委員(法務省刑事局長・岡村泰孝君*21
 偽造旅券の行使につきましては、偽造公文書行使罪の成立が考えられるところでございます。この罪につきましては、刑法上、何人がどこで犯してもその国外犯については処罰できるという規定が設けられております。そういう意味において我が国の捜査が行うことができるわけでございます。
 ただ、現実の問題といたしまして、外国で捜査を行います場合にはやはり外国の主権の問題があるわけでございまして、そういう意味での制約はあると思います。具体的にはやはり捜査共助という方法によることになろうかと思います。
◆橋本敦君
 捜査協力の関係で、警察庁は韓国へ派遣をして捜査をされたという事実があるわけで、それに関連して聞きますが、この蜂谷真一、蜂谷真由美名義の偽造旅券、この旅券は偽造された場所はどこだとお考えですか。
◆政府委員(警察庁警備局長・城内康光*22
 お答えいたします。
 本件の偽造旅券は蜂谷真一という実在の人の名前を使っておるわけでございます。その関係について調べましたところ、その偽造旅券の作成に、北朝鮮の秘密工作員であることが明らかな宮本明こと李京雨が関係していたということがわかっております。それからまた、金賢姫からのいろいろな事情聴取で、一九八四年、金賢姫が招待所におりましたときに、その年の七月に旅券用の写真を撮影し、それからまた八月にそれに署名をしたというようなことがわかっております。そういったいろいろな諸点を総合いたしまして、北朝鮮において偽造されたというふうに私どもは考えております。
◆橋本敦君
 この旅券の行使の関係で聞きますが、これについて、金賢姫らはこの偽造旅券をどこで受け取ったと言っておるんですか。
◆政府委員(城内康光君)
 お答えいたします。
 ブダペスト*23からウィーン*24に向かう車の中で渡されたというふうに承知しております。
(中略)
◆橋本敦君
 ウィーンへ向かう車中でこの偽造旅券を金賢姫に渡したのはだれですか。
◆政府委員(城内康光君)
 お答えいたします。
 金賢姫から聞いたところによりますと、ブダペストに駐在しております北朝鮮の外交官であるということでございます。
 当該人物の名前でございますが、米国の発表によりますと、在ブダペスト駐在の北朝鮮外交官ハン・ソンサムというふうに言うということを承知しております。
(中略)
◆橋本敦君
 ですから、したがって捜査当局の判断を聞きますが、この偽造旅券を金賢姫らが行使した事実は、(中略)その経路については客観的事実として十分裏づけられるというように思いますが、どうですか。
◆政府委員(城内康光君)
 お答えいたします。
 偽造旅券の行使につきましては、バーレーンにおけるものはおおむね捜査的には確定しております。現在外交ルートを通じてバーレーン当局に調書作成を要請するなどの証拠化の措置をとりつつある、こういうことでございます。
◆橋本敦君
 そうすると、警備局長に伺いますが、先ほど法務省刑事局長がおっしゃったように、この偽造旅券の行使、つまり偽造公文書の行使という罪は成立するということについては確信がありますね。
◆政府委員(城内康光君)
 お答えします。
 先ほど法務省の刑事局長から答弁がありましたように、この事件につきましては偽造有印公文書行使被疑事件として現在捜査中であるということであります。
(中略)
 金賢姫の供述は、いろんな点で信憑性があるというふうに私ども考えております。金賢姫は、全く自己にとって不利益な供述をしておりまして、それは大変自然であり、また具体的な内容になっております。そういったことは、一月十五日のテレビなどの公開記者会見のインタビューなどでも明らかでございますし、また私どもの捜査員、警察庁の係官が韓国に赴きまして二回にわたって事情聴取をしたということからも、大変心証を得ておるわけでございます。それからまた、金賢姫の供述につきましてはいろんな点で裏づけがとれておるわけでございます。
 そういったような点を総合的に考えて、私どもは北の関与があるというようなことを考えているわけでございます。
◆橋本敦君
 ところで、この金賢姫を教育したリ・ウネあるいはリ・ウンへなる人物の問題ですが、この人物については鋭意調査を遂げられておるようですが、経過はどうですか。
◆政府委員(城内康光君)
 お答えします。
 この恩恵の所在捜査の進捗状況でございますけれども、李恩恵なる人物を割り出すために、身元に関する情報及び似顔絵をもとにしまして、家出人の手配データなどを利用して、現在幅広く類似の行方不明者について調べておるところでございます。また、ポスター、チラシなどを全国に配布して、広範な広報活動をやっておるわけでございます。
 特に、本件につきましては捜査というよりはむしろ人捜しという分野でございますので、情報などを国民にできるだけ多く提供して御協力を得たいということでございまして、現在進行形であるということでございます。
◆橋本敦君
 これは、警察としてはこの恩恵なる人物は日本女性で、日本から拉致された疑いが強いと見ているんじゃありませんか。
◆政府委員(城内康光君)
 お答えします。
 そのように考えております。
◆橋本敦君
 それが事実はっきりいたしますと、これはまさに外国からの重大な人権侵犯事件であり、我が国の主権をも侵害する重大な事犯の可能性を含んでいる重大な事件である。ですから、これがはっきりしますと、当然本人の意思を確認して、主権侵害の疑いがあれば原状回復を要求するなど、政府としての断固たる措置をとる必要がある。
 外務大臣、今までの捜査の経過、答弁をお聞きになってどう御判断でしょうか。
国務大臣宇野宗佑君)
 警察当局からの答弁どおり、ただいま鋭意捜査中でございますから仮定の問題なのかもしれません。しかし仮に、真相究明の結果主権が侵害されたということが確認された場合には、当然日本は主権国家でございますから、それに対する措置を講じなければならない、かように考えています。
◆橋本敦君
 国家公安委員長として、この恩恵の拉致事件についてどう御判断ですか。
国務大臣梶山静六君)
 問題の女性の身元割り出しは困難な面があることは否めないことでありますけれども、日本から拉致をされた疑いの持たれることから、事態の重大性にかんがみ、今後とも国民の協力を得つつ力を尽くす所存でございます。

という質疑応答がされていますが、これは1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)には掲載されていません。  
 1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)では(前略)とされてる部分が上で紹介した部分です。
 ちなみに、1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)で1988年に「梶山国家公安委員長」に拉致質問をした橋本議員はその9年後に

1997年6月5日/参議院法務委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)
◆橋本敦君
 いわゆる日本人拉致事件の問題でありますが、私はもう十年も前にこの問題について予算委員会で質問をさせていただきました。当時の国家公安委員長、今の梶山官房長官は、昭和五十三年以来一連のアベック行方不明事件、恐らくは北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚でございます、解明が大変困難ではあっても、事態の重大性にかんがみて、今後とも真相究明に全力を尽くしますとおっしゃっていただきました。
 自来、長い年月がたちました。
 しかし、今日になってもその音さたが、政府の責任で解明されるという方向に進まないこの問題で、私は、重要な人権問題でありますから、ぜひ一刻も早い解決を望んでおるんですが、警察庁に伺います。これまで北朝鮮の拉致と見られる、認定された事件の件数と人数はどうなっておりますか。
◆説明員(米村敏朗*25君)
 お答えいたします。
 私どもの方でこれまで北朝鮮による拉致の疑いのある事件と判断しておりますのは七件、十人でございます。なお、これ以外に未遂であったと思われるものが一件、二人であると判断しております。
◆橋本敦君
 私は、この問題については、まさに日本の国家主権の侵害にかかわるという問題であるし、国民の人権にかかわる問題ですから、これから北朝鮮との国交の関係という難しい壁をどう乗り越えて、どう早くこの人たちに救済の手を差し伸べるか、政府としても本当に大事な問題だと思っておるわけであります。
 外務省として現在、この事件の解決に向けてのめどというのはどうなんでしょうか。
◆説明員(別所浩郎*26君)
 お答えします。
 先生御指摘の北朝鮮による拉致の疑いが持たれている事件につきましては、もちろん捜査当局によって所要の捜査が進められているものと承知しております。そういった面につきましては、もちろん外務省としても関係機関と連携しながら情報の収集などやっておるわけでございますが、それと別にまた、今後ともこの問題の解決のためにどういった方法が効果的か、真剣に考えながら努力してまいりたいと思っております。
 いずれにせよ、先生も御指摘のとおり、この件は我が国の国民の安全にかかわる重要な問題でございます。そういう認識に立ちまして、関係省庁等とより一層緊密に連絡をとりながら真剣に対処してまいりたいというふうに思っておるわけでございます。
◆橋本敦君
 内閣官房にもお越しいただいて御意見を伺いたいんですが、それぞれの省庁の横の連携も深め、政府の対応として、この問題については必要な情報連絡会議あるいは関係閣僚会議、そのもとで必要な対策室を設けるなど、そういった体制をつくっていただくことが大事かと思いますが、いかがでしょうか。
◆説明員(門司健次郎君*27
 本件につきましての関係省庁の対応につきましては先ほど御答弁ありましたけれども、内閣官房といたしましても、今後とも本件については関係省庁間の一層緊密な連携を図り、あるいは連絡をとり、いかなる対応が最も効果的かという観点から検討してまいりたいと思っております。
◆橋本敦君
 そこで、この問題で最後に法務大臣にお願いしたいんですが、(中略)法務大臣として、警察庁あるいは(ボーガス注:池田行彦*28外務大臣、あるいは(ボーガス注:白川勝彦国家公安委員長、あるいは(ボーガス注:梶山静六官房長官等とこの問題について御協議をぜひ進めていただきまして、適切な対策なり方法なりを見出していただきますように、連絡体制の強化、対策本部でも結構でございますが、一段の努力をぜひ法務大臣に私はお願いして、この件の質問は終わりたいと思いますが、いかがでしょうか。
法務大臣(松浦功*29君)
 委員御指摘のとおり、大変重要な問題でございます。関係機関と十分に連絡をとって、いかなる方法が最も効果的であるかということについて前向きに検討を進めていく必要があるんではないかと思っております。最大限の努力をお約束申し上げます。

国会会議録検索システム
◆橋本敦君
 私はきょうは、最近新聞紙上でも大きな問題になっておりますが、三十四年前の昭和三十八年五月に十三歳で二人のおじと石川県の沖に出漁に出た少年、それが昭和六十二年一月になって北朝鮮で金英浩という名前で生存をしておられることが明らかになった事件についてお伺いしたいと思います。
 この寺越武志さんについては、戸籍の上では死亡ということで戸籍が抹消されております。それによりますと、昭和三十八年五月十二日、推定午前二時ごろ、石川県の福浦灯台沖約二百三十数海里、ここで亡くなったということで、海上保安本部長の報告に基づいて除籍をされているわけであります。しかし、うれしいことに生きておられた。そのことがお母さんによって確認をされた。こういうことで戸籍の回復の申請が出されているわけであります。
 まず法務省に伺いますが、こういう場合、戸籍の回復はどういう手続によって可能になるんですか。
◆政府委員(法務省民事局長・濱崎恭生君)
 御指摘の事例は、今お話がございましたように、海上保安庁の死亡認定に基づきまして本籍地の市町村に死亡報告がされ、それに基づいて死亡の戸籍上の処理をしたという事案と承知しております。こういった場合に、海上保安庁の方からこの死亡認定が誤っていたということで死亡報告取り消しの通知があれば、それに基づいて本籍地の市町村長がその戸籍を回復する手続をとるということになります。
◆橋本敦君
 お説のとおりですね。したがって、お母さんは、寺越友枝さんですが、海上保安庁に対して死亡認定の取り消しの申請をなさいました。その死亡認定の取り消しをするには、これは当然本人の生存を確認する必要がございます。お母さんはこれまで、昭和六十二年から平成七年の間、四回にわたって北朝鮮に行かれて息子さんと会いまして、そして一緒に写真も撮り、また武志さんから来た手紙もあり、また録音のテープも提供して、海上保安庁にぜひこの認定の取り消しをしてほしいという申請をなさいました。
 海上保安庁に伺いますが、この手続は今どうなっているでしょうか。
◆説明員(海上保安庁警備救難部救難課長・島坂治朗君)
 お答えいたします。
 先週の五月三十日に金沢海上保安部に死亡認定の取り消し願が提出されまして、既に調査を開始しておるところでございます。
 この調査の結果、従来の決定を変更すべき事由があれば速やかに認定の取り消しを行うことになるわけでございますけれども、一刻も早い死亡認定取り消しを希望されております御家族の意向も踏まえまして、現在、本件調査につきましては最大限の努力を払いまして行っておるところでございます。
◆橋本敦君
 今お話しのように、最大限の努力を払ってやっていただいていることは、私もそのとおり信頼をし、ぜひお願いしたいと思うわけであります。
 取り消しのためには生存の確認が必要ですね。この生存の確認ということは、お母さんが提出された資料で疑問の余地がない、私はこう考えておるんですが、海上保安庁としてはこれらの資料を厳正に御検討いただいて、あとどんなふうに、どのくらいの期間でこのお母さんの願いがかなえられるようなそういう手続が進捗するのか、その見通しについてはいかがでしょうか。
◆説明員(島坂治朗君)
 ただいま申し上げましたとおり、現在最大限の努力を払いまして本調査をしているところでございます。
◆橋本敦君
 この調査の困難は、まさに国交のない、海を越えた向こうに武志さんが生存しているというその事実です。そうでなければ、本人と直接会って確認することが可能であれば直ちにできる問題なんです。そこにこの問題の人権上の重要な問題があり、政府として全力を挙げて一日も早くやっていただきたいという大きな問題があるわけです。そういう意味では前例のないケースと言っていいでしょう。
 お母さんはそういったことも十分承知の上で、この申請をなさった後の記者会見で、武志さんが自分の生まれた国に一回でもいいから戻ってくるようにしてやりたいんだ、皆さんの御協力をお願いしますと、こう言って泣き崩れておられた姿をテレビで私も見たんです。こういう願いにこたえて、まさに国民の人権を守ってあげなくちゃならない法務省として、私は法務大臣にも特段の御尽力をお願いしたいと思うのですが、法務大臣いかがでしょうか。
国務大臣(松浦功君)
 当省の事務として御協力できる問題があれば、事情をそんたくして全面的に協力をしてまいりたい、こういう気持ちでございます。
◆橋本敦君
 海上保安庁にお伺いしますが、この審査のために外務省を通じていろいろ知りたいことを知る、そういう手続をやる必要があるんでしょうか。あるとすれば外務省にもぜひその協力をお願いしなきやなりません。海上保安庁は自分が死亡と認定したことですから自分の責任で取り消すということで、今までの資料の範囲でこれは可能であるということでやっていただけるんでしょうか、各省庁の協力がどうしても必要だという御判断なんでしょうか、その点はいかがですか。
◆説明員(島坂治朗君)
 ただいま申し上げておりますように、先週の三十日に取り消し申請を受けまして、現在最大の努力を払って調査をやっておるところでございますが、何をどこまでやるかというようなことも含めまして、必要があれば関係省庁にお願いをするということも含めまして検討もいたしております。
◆橋本敦君
 外務省、お越しと思いますが、外務省も海上保安庁から相談なり協力要請があれば全面的に協力していただけると思うのですが、いかがでしょうか。
◆説明員(外務省アジア局北東アジア課長・別所浩郎君)
 先ほどから海上保安庁さんの方から御説明のとおり、死亡認定取り消し願ということについては海上保安庁さんの方で今調査検討をしておられるというふうに伺っているわけでございますが、外務省といたしましても、当然のことながら、寺越さんの件につきましては重大な関心を有しておりまして、今後も御本人や家族の御意向がかなっためにいかなる方法が効果的か探りながら、海上保安庁ほか関係省庁とも連絡しつつ努力してまいりたいと思っております。
◆橋本敦君
 その協力はぜひお願いしたいんですが、海上保安庁に重ねてお伺いします。全力を挙げて協力をして進めていきたいというお話がございました。海上保安庁の気持ちとして、まさに今出された資料で武志さんが生きておられるという心証を強くお持ちだと私は思うんです。したがって、手続はいろいろ要りますが、あらゆる努力や省庁との協力もお願いしなきやなりませんが、可能な限り早くこの死亡認定の取り消しをして戸籍の回復が可能になるようにしてあげたい、そういう気持ちでやってもらっていると私は信じておりますが、よろしいですか。
◆説明員(島坂治朗君)
 海上保安庁といたしましては、先ほども申し上げましたとおり、御家族の御意向も十分踏まえて最大限の努力をしておるところでございます。
◆橋本敦君
 事は人権にかかわる重大な問題でありますから、ぜひともよろしくお願いをいたします。
 北朝鮮側から海難で救助したとかなんとか、いろんなアンサーがあればこれまたそれも進むんでしょうが、私も私なりに手続の困難であることはわかりますけれども、たとえ北朝鮮の対応がどうであれ、こちら側だけの資料でも生存しているという状況が十分確認できるということの蓋然性がこれは確定的に強くなれば、日本政府の決断として死亡認定を取り消すというぐらいの英断があってこそ人権が守られると私は思いますよ。
 そういう強い立場でこの問題に対処していただくことができるように重ねて海上保安庁に、今あなたがおっしゃった御家族の気持ちを考えて全力を尽くすという意味は、政府の責任においてそういった腹をくくってやるということのように理解したいと思いますが、よろしいですか。
◆説明員(島坂治朗君)
 繰り返しになりますけれども、御家族の御心情も踏まえまして全力でこの作業を進めておるところでございます。

ということで政府に拉致関係や北朝鮮関係の質問をしています。なお「拉致問題には政府の全力で取り組む」と答弁した橋本内閣ですが、実際に成果が出たのはもちろん小泉内閣になります。

 そのころ、北朝鮮による拉致が疑われる新たなケースが浮上した。
 めぐみさんと同じ13歳の中学生が北朝鮮に連れ去られたという事件である。
(つづく)

 「何のこっちゃ?」ですね。そんな事件があれば「横田めぐみさん拉致事件並に騒がれて有名になってる」でしょうから、そんな事件はなかったと思いますが。
 「特定失踪者とか言うガセネタ」のことか。まあ、(つづく)を待つことにしましょう。

【追記】
 横田滋さんの逝去によせて8 - 高世仁の「諸悪莫作」日記によれば「めぐみさんと同じ13歳の中学生=寺越武志さん」だそうです。
 なるほどねえ、ただ彼の場合、当人が拉致を否定していますけどね。なお、横田滋さんの逝去によせて8 - 高世仁の「諸悪莫作」日記については高世仁に突っ込む(2020年6/15日分) - bogus-simotukareのブログでコメントしています。

*1:一方、高世や救う会はアンチ北朝鮮の立場から大絶賛なのでしょう。

*2:現在では政府認定拉致被害者田口八重子氏と推定されている

*3:いずれ直すでしょうが「梶山静六」が正しい。高世も「自称ジャーナリスト」の分際で全くお粗末で無能な野郎です(苦笑)。

*4:新潟で拉致された蓮池薫、奥土(後に結婚し蓮池姓)祐木子氏、福井で拉致された地村保志、浜本(後に結婚し地村姓)富貴恵氏、鹿児島で拉致された市川修一、増元るみこ氏のこと。なお現在は「アベック」と言う言葉は死語だと思います。

*5:つまりは産経ですらそんな扱いだったわけです。

*6:1988年当時は「拉」が常用漢字ではないので「ら致」と表記していました。

*7:新潟で拉致された蓮池薫、奥土(後に結婚し蓮池姓)祐木子氏、福井で拉致された地村保志、浜本(後に結婚し地村姓)富貴恵氏、鹿児島で拉致された市川修一、増元るみこ氏のこと

*8:田中内閣防衛庁長官自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田内閣科学技術庁長官、大平内閣行政管理庁長官、中曽根内閣通産相、竹下内閣外相などを経て首相(宇野宗佑 - Wikipedia参照)

*9:元農林官僚。京都府知事、竹下内閣法相など歴任(林田悠紀夫 - Wikipedia参照)

*10:自民党時代は、中曽根内閣厚生相、海部内閣自治相・国家公安委員長、宮沢内閣運輸相など歴任。自民離党後は太陽党(新進党が解散して誕生した政党の一つ、羽田孜が代表)最高顧問、民政党(太陽党と国民の声(新進党が解散して誕生した政党の一つ、鹿野道彦が党首)、フロム・ファイブ新進党が解散して誕生した政党の一つ、細川護熙が代表)が合併し誕生、羽田が党首)最高顧問、民主党最高顧問を歴任(奥田敬和 - Wikipedia)参照

*11:竹下内閣官房長官自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相、首相など歴任(小渕恵三 - Wikipedia)参照

*12:中曽根内閣自治相・国家公安委員長自民党幹事長(海部総裁時代)、新生党代表幹事、新進党党首、自由党党首、民主党幹事長、「国民の生活が第一」代表、「生活の党」代表など歴任(小沢一郎 - Wikipedia参照)

*13:大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、自民党幹事長(宇野総裁時代)、海部内閣蔵相、自民党政調会長(河野総裁時代)、村山内閣副総理・通産相などを経て首相。首相退任後も森内閣で行革等担当相(橋本龍太郎 - Wikipedia参照)

*14:中曽根、竹下内閣農水相、宮沢内閣蔵相、新生党党首、細川内閣副総理・外相などを経て首相。首相退任後も新進党副党首、太陽党党首、民政党代表、民主党幹事長、最高顧問など歴任(羽田孜 - Wikipedia参照)

*15:中曽根内閣厚生相、海部内閣自治相・国家公安委員長、宮沢内閣通産相新進党総務会長、副党首、衆院副議長、民主党国対委員長、最高顧問など歴任(渡部恒三 - Wikipedia参照)

*16:佐藤、田中内閣官房長官、三木内閣建設相、大平、中曽根内閣蔵相、自民党幹事長(中曽根総裁時代)などを経て首相(竹下登 - Wikipedia参照)

*17:自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田、中曽根内閣文相などを経て、首相。首相退任後は自民党を離党し、新進党党首、自由党最高顧問、保守党最高顧問など歴任(後に自民党に復党)(海部俊樹 - Wikipedia参照)

*18:池田内閣経済企画庁長官、佐藤内閣通産相、三木内閣外相、福田内閣経済企画庁長官、鈴木内閣官房長官、中曽根、竹下内閣蔵相などを経て首相。首相退任後も小渕、森内閣で蔵相(宮澤喜一 - Wikipedia参照)

*19:宮沢内閣郵政相、橋本内閣厚生相などを経て首相(小泉純一郎 - Wikipedia参照)

*20:自民党幹事長(小泉総裁時代)、小泉内閣官房長官などを経て首相(安倍晋三 - Wikipedia参照)

*21:東京地検特捜部長、法務省刑事局長、法務事務次官、東京高検検事長検事総長など歴任(岡村泰孝 - Wikipedia参照)

*22:警視庁公安部長、警察庁警備局長、警察庁次長、警察庁長官など歴任(城内康光 - Wikipedia参照)

*23:ハンガリーの首都

*24:オーストリアの首都

*25:この答弁当時は警察庁警備局外事課長(国会会議録検索システム参照)。警察庁警備局外事課長、警視庁公安部長、大阪府警本部長、警察庁警備局長、警視総監、内閣危機管理監内閣官房参与など歴任(米村敏朗 - Wikipedia参照)

*26:この答弁当時は外務省アジア局北東アジア課長(国会会議録検索システム参照)。外務省国際協力局長、総合外交政策局長、駐韓大使、国連大使など歴任。2020年1月から侍従次長に就任(別所浩郎 - Wikipedia参照)

*27:この答弁当時は内閣官房内閣外政審議室内閣審議官(国会会議録検索システム参照)。駐イラク大使、駐カタール大使、駐カナダ大使など歴任(門司健次郎 - Wikipedia参照)

*28:宇野内閣総務庁長官、海部内閣防衛庁長官、橋本内閣外相、自民党総務会長(小渕、森総裁時代)など歴任(池田行彦 - Wikipedia参照)

*29:消防庁長官自治事務次官などを経て自民党参院議員。橋本内閣で法相(松浦功 - Wikipedia参照)