三浦小太郎に突っ込む(2020年9月5日分)

ラグタイムララバイ(三浦小太郎)のアマゾンレビュー『チベット人だからわかる 中国は消防士のフリをした放火魔』(ペマ・ギャルポ、2020年、ハート出版)
 どうも「消防士のフリをした放火魔」とはコロナ問題の件での悪口のようですが、「初期対応の遅れ」でコロナ蔓延を招いたとは言え、それはもちろん過失ではあっても故意ではないし、中国側も必死の巻き返し(コロナ終息)に務めてるのに放火魔呼ばわりとは誹謗でしかありません。
 大体「韓国や台湾がコロナをほぼ押さえ込んでる」のに対し、米国やブラジルがコロナを蔓延させてることで分かるように各国のコロナ蔓延は「各国の対応の是非」によるところが大きく全てを中国のせいにできる話では無い。

(2)今回日本政府に、対コロナ対策に問題があったとしたら、それは基本的に「有事」を前提としていない今の政治や法体制に問題があること

 「緊急事態条項・改憲ガー」と言ういつもの与太です。そんなことをしなければ、「新型コロナ感染が予防できないのか」といえばそんなことはないでしょう。問題は「PCR検査の徹底」など「医学的に適切な対応」であって緊急事態条項云々など全く関係ない。全く火事場泥棒も大概にしたらどうなのか。
 また、「コロナを封じ込めたところ」で、コロナ不況を解決するためには何らかの経済政策を打つ必要がありますが、そんな問題意識は三浦には「かけらもない」ようです。

(3)安倍首相外交の最も優れた指摘は、「自由で開かれたインド太平洋構想」を打ち出し、インドと日本を結ぶ(それは当然東南アジアと台湾を含む)中国に対峙する包囲網を、自由民主主義の価値感と、インドと日本の歴史的、文化的関係に基づいて作り出そうとしたこと。

 安倍が今秋に習主席訪日を予定しているのに、つまりは「自由で開かれたインド太平洋構想」など事実上「死滅している」のに良くも馬鹿げたことが言えたもんです。
 そもそも「インドと日本の歴史的、文化的関係」とは一体何のことなのか。まあそこで「東京裁判のパル判事」「自由インド国民軍のボース」などが出ることが容易に予想はできますが。
 それにしてもこんなデタラメなことを「安倍の最大の外交成果」というとは『安倍には外交成果などない』と言ってるのも同然ですね。
 そして近年、やたら中国に対して敵対的言動をする「台湾の蔡英文」はともかく、インドにせよ東南アジア諸国にせよ「中国ビジネス」を犠牲にしてまで「対中国包囲網」に参加するわけも無い。

(4)しかし同時に安倍首相外交の問題点は(3)を貫くことができず、おそらく政権内の力関係からか、次第に中国に融和的な方向にずれてきてしまったところにあること

 おいおいですね。さすがに「習主席訪日」を無視することはできなかったようですが、それでも「政権内の力関係(勿論根拠レス)」として「二階幹事長(二階派ボス)や岸田政調会長(岸田派ボス)、麻生副総理・財務相麻生派ボス)など周囲が悪いんだ、安倍さんは悪くない」でかばおうというのだからいい度胸です。

(5)対中国融和外交により最も危険にさらされるのは実は沖縄

 ばかばかしい。沖縄の米軍は「沖縄防衛用にあるわけでは無い」し、中国に「尖閣での小競り合い」(それだってたぶんする気は無いでしょうが)ならまだしも沖縄本島侵攻の意思なんかあるわけも無いでしょう。
 こうした「偽りの危機(中国の沖縄侵略の恐怖)」をでっちあげたあげく、基地県外移設派の翁長前知事や、デニー現知事を「中国が沖縄を侵略してもいいのか」などと「中国の手先」であるかのように誹謗中傷し「ならば基地被害軽減をお前たちはどう考えてるのか!」という批判には『国が言うように辺野古移設すればいい』の一言で終わり。
 「辺野古だって沖縄県内じゃねえか!」というわけで、これで翁長氏らが三浦らウヨに激怒しなかったらその方が変です。しかし例の野原さんも「翁長支持」を公言しながら翁長氏らを誹謗する三浦を何一つ批判しないのだから呆れた嘘つきです。
 ついでに言えば「そもそも中国に沖縄侵攻計画など無い」のですが、「宥和外交した方が日中の軍事衝突の危機が遠のく」でしょう。
 敵対的関係にあれば、いつ軍事衝突が起こってもおかしくありませんが友好的関係を構築し、かつその中で「日中双方に経済的利益がある」のなら、「その経済的利益を今後も維持するため」に軍事衝突の危機は当然遠のくわけです。

(6)日本でほとんど報じられないインドと中国の軍事的衝突

 そりゃ報じられないでしょうねえ。インドと中国の領土紛争に興味のある人はほとんど居ないでしょう。

 インドとパキスタンの関係をなぜか一方的に反インドの立場から論じ、パキスタン側のテロや背後にいる中国の姿勢を問わない朝日新聞の報道批判

 まあペマ本を読まないとなんとも言えませんが、朝日が「インド、パキスタン対立」についてそこまでパキスタンに肩入れする記事を書くとも思えません。せいぜい「ヒンズー右翼」のモディ首相は「初代首相ネール」など「インド国民会議派」と違い、ヒンズーびいきで、「イスラム教徒」、ひいては「イスラム教徒が多いパキスタン」に極めて敵対的であり、緊張関係を悪化させている程度の記事でしょう。そしてその程度なら朝日云々では無くインドに対する通説的見解でしょう。もちろん「モディが事態を悪化させてる」と言う指摘は「だからパキスタンは悪くない」と言う話では無い。
 それにしても「領土紛争ならパキスタン、中国の間にもある」し、パキスタンは中国の属国や保護国でも無いのにそのような描き方(中国がパキスタンの親分としてインドへの喧嘩をけしかけてる)をしたいらしい、ペマと三浦のデマ屋ぶりには心底呆れます。

(7)この危機の時代に、日本は、国土防衛の意思、自由民主主義陣営の側に立ち中国に代表される独裁体制と対峙する側に立つという政治的意思と共に、ここ数十年「改革」「国際化」の掛け声のなかで軽んじられてきた日本の伝統的価値観の復興であること

 もっと分かりやすく書けよ、ですね。「中国に代表される独裁体制」とは一体何のことなのか。
 「冷戦時のソ連を盟主とし、東欧を保護国とした共産圏」と違い、別に中国は「盟主では無い」のですが。
 「中国に代表される独裁体制」とは「北朝鮮ベトナムラオスキューバ」といった「共産党一党独裁体制」のことなのか。それともそれに限定されないのか。
 「自由民主主義陣営」とは一体何のことなのか。
 「日本の伝統的価値観」とは一体何のことなのか。まあ戦前礼賛敵、極右的な代物だろうと予想はつきますが。
 「ここ数十年」とは一体いつからのことなのか。「十年前」を「数十年」とは普通言わないことを考えると短くても「20年前(2000年、小泉政権時)」は入るのでしょうが。
 「改革」「国際化」の掛け声とは具体的に「誰(小泉首相ら政治家?)のどんな声」でなぜその声は「日本の伝統的価値観」を軽んじることになったのか。「日本の伝統的価値観を復興すること」と「中国に代表される独裁体制と対峙すること」の間には何の関係があるのか。

(8)今は弾圧下にあっても、チベット仏教に代表される各民族の精神文明は、かならず中国共産主義の独裁に打ち勝つこと

 もっと分かりやすく書けよ、ですね。「チベット仏教に代表される各民族の精神文明」ってチベット仏教以外は一体何のことなのか。「各民族」とはチベット以外は一体誰のことなのか。ウイグルや、最近「楊海英に乗っかって、三浦らウヨ連中が中国批判を始めた」内モンゴルのことか。
 いずれにせよ「絶対に勝つ!」と雄叫びを上げたところで勝つ戦略、計画が無いなら勝てはしません。全くばかばかしい。
 さて三浦の「書評」も酷いですが、アマゾンの「内容紹介」も実に酷い。

 日本の領土である尖閣列島への侵攻

 上陸してない以上「侵攻」とはいえないでしょう。

 インド軍に対する、専門の格闘訓練を受けた中国人による暴力的攻撃、香港における一国二制度を完全に消滅させ、中国の植民地にすることを目指す香港国家安全維持法の制定。これらの中国の行為をそのまま放置すれば、遠からぬ内に、インド同様に格闘訓練を積んだ中国人たちが尖閣列島に上陸し既成事実を作ろうとするかもしれない。

 香港はそもそも「中国領土」である以上「植民地」と言う表現は不適切でしょう。
 いずれにせよ「インドと中国の領土紛争での暴力沙汰」や「香港問題」と尖閣問題と何の関係があるのか。
 「インド軍と中国軍が衝突したから自衛隊と中国軍も衝突するかも」などというのは状況や背景を全く無視した与太でしか無い。


ラグタイムララバイ(三浦小太郎)のアマゾンレビュー『ウイグルの民話・動物譚』(2020年、鉱脈社)

ウイグル人で日本在住のムカイダイス女史が、河合直美氏との共訳で、おそらく日本で初めて、ウイグルの民話集「ウイグルの民話・動物譚」(鉱脈社)を翻訳・発行しました。
・個人的にとても印象的だったのが、傲慢な暴君の虎を賢いキツネが罰する話「狐の虎退治」(103頁)。狐が虎に、貴方の父上はとても偉大な方だった、と語り、ある深い谷に導いて、貴方の父上は、この谷から谷へと一瞬で飛んでいきました、貴方が父上のように飛ぶならば、あなたは世界を支配できるでしょう、とおだて挙げます。調子に乗った虎は断崖絶壁の谷を飛び越そうとし、墜落して死んでしまいます。
 もちろんこれは民話です。ですが、現在の暴君である習近平の未来を暗示しているように思えてなりません。

 三浦の「習氏への悪口」には吹き出しました。マジレスすれば「安倍のような親の七光だけの無能」はともかく、習近平氏のような「たたき上げの切れ者」はそう簡単には潰れたりしませんね(そもそも毛沢東のようなカリスマならまだしも、現状の中国について、それほど習氏個人の影響が大きいとは思いませんが)。
 習氏は「習仲勲(副首相、全人代副委員長など歴任)」という大物政治家の息子とは言え、習仲勲は「毛沢東共産党主席)」「劉少奇全人代委員長、国家主席を歴任)」「周恩来(首相)」「鄧小平(党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席を歴任)」に比べれば知名度は落ちます。
 正直、日本人の多くは習近平氏が党総書記、国家主席になるまで習仲勲のことは知らなかったでしょう。
 一方で

李鵬 - Wikipedia
 周恩来の養子の一人。電力工業大臣、国家教育委員会主任(日本の文科相に当たる)、副首相、首相(党中央政治局常務委員兼務)、全人代委員長(日本の国会議長に当たる)など歴任。

のような例はありますが、毛沢東劉少奇周恩来、鄧小平の子どもが軒並み、習氏のような高位高官になったわけでは無い。もちろん「大物政治家の子ども」であることは有利ですがそうした七光り「だけ」で偉くなれるほど中国の政界は甘くない。
 そして習近平氏も「福州市党委員会書記」「福建省長」「浙江省党委員会書記」「上海市党委員会書記」と地方回りの経験を積んで、他の有力ライバルとの戦いに勝って、今の地位に就いたのであり、その点はボンボンの安倍とは全然違います。