今日の産経ニュースほか(2020年11月12日分)

「 米大統領選と絡んだ習近平強硬路線 」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイト

 習氏が毛沢東のように全権を握り、あと15年間82歳*1まで、つまり終身、主席でいたいと考え

 もちろん「終身主席」などという主張には何の根拠もありません。そもそも習氏が「三期目に突入するかどうか」自体、現時点では不明です。
なぜなら
1)「任期制限廃止」は、単に「2期10年の制約で2期目の末期にレイムダック化することを恐れてる(2期目終了までに何とか習氏の子飼いに引き継ぎたいと思ってる)」だけであって、3期目をやる意思は実は「皆無ではない(子飼いに引き継げない場合は自分が3期目をやる)」もののあまりない
2)仮に三期目をやる意思でもそれを周囲が認めるか分からない(別に中国共産党も「習氏一強」でもないでしょう)
からです。

 毛沢東は➀国家主席として国全体を司り、➁党中央軍事委員会委員長として全軍指揮の権力を持ち、➂共産党主席として党に君臨した。誰も逆らえないオールマイティの権力を握った毛沢東はやがて暴走し始めた。

 毛沢東文革直前においては大躍進失敗の引責で「国家主席」は辞任しています(後に文革で打倒される劉少奇国家主席に就任)。
 ただし党主席と軍事委員長は辞めていません。「建国の父」「革命第一世代」の「カリスマ」毛においては「党主席でさえあれば」他の役職は「どうでも良かった」といっていいでしょう。
 なお、「中国の最高権力者」と一時呼ばれた鄧小平も「一時、軍のトップについただけ(党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席)」で党総書記、国家主席にはなっていません。何が言いたいかと言えば鄧小平においても「軍のトップになる前から」、党副主席、副首相など「さすがにそれなりの役職には就いてはいる」ものの、必ずしも「形式上のトップではない」、つまりは毛沢東同様に「革命第一世代」というカリスマ性が大きかったという話です。
 この点は江沢民胡錦濤習近平と「毛沢東や鄧小平」の大きな違いです。
 「革命第一世代」という圧倒的な権威がないからこそ、江沢民氏以降の党総書記(党トップ)は毛や鄧とは違い「党総書記(党トップ)」「国家主席(国家トップ)」「軍事委員会主席(軍トップ)」を全て一人で兼務してきました。

 日本では非常に広大な土地が中国人に買われている。豪州の事例に見られるように、国土を売ることはとても危険だ。敵対国に対してでなくとも、国土を売ることは国を売ることだ。日本国民として、北海道や沖縄の土地の中国人への売却は心配でならない。

 よしこらしい与太ですがもちろん「外国人に土地を売ること」は別にそれ自体は「売国」では全くありません。なお「北海道や沖縄の非常に広大な土地」と書きながら「北海道全体のホニャララ%」「ホニャララ㎡」など、具体的な数値を出さない辺りが実に「怪しい」ですね。


【正論】菅首相の国防認識を危惧する 防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛 - 産経ニュース

 10月21日、ベトナムインドネシアを訪問した菅首相の記者会見で、フジテレビの記者が「日本が提唱するインド太平洋構想」に言及、中国の王毅外相が同構想を「(ボーガス注:中国を仮想敵とする)インド太平洋版の新たなNATO北大西洋条約機構)を企てていると強く非難した」点について問いただすと、菅首相はこう答えている。
 「我が国としては、インド太平洋版のNATOを作るというような考えは、全くありません」

 もちろん菅がこういうのは「日中関係悪化を恐れるから」ですが、それが産経には気にくわないわけです。
 「中国の軍事的脅威に対する認識が足りない」と悪口雑言です。

 作らないと言うのだから、「インド太平洋版のNATO」を作ること自体は、潜在的に悪だくみ扱いされてはいまいか。悪だくみだとすれば、本物のNATOに加盟している30カ国は悪人、悪国ということになる。

 おいおいですね。菅の「インド太平洋版のNATOを作るという考えは、全くありません」の是非はともかく「インド太平洋版のNATO」と「NATO」はもちろん「性格が違う」ので「NATOを悪扱いしている」ということにはなりません。王毅外相発言もNATO否定ではないでしょう。
 例えば「中国、韓国を含むアジア版のEUをつくる考えは当面ありません(恐らく反中国の産経はそう言う考えでしょうが)」と言ったらそれは「EUを悪扱いしていること」になるのか。もちろんそうではないわけです。


維新・吉村氏「極めて異例」 大阪市財政局の対応非難 - 産経ニュース
 市長の松井に報告が無かったなどと言うのは明らかに嘘でしょう。松井に報告しないでそんな発表をするわけがないし、当初、松井はマスコミ報道に何一つ抗議しませんでした。信じられないことですが、松井は当初「コスト増発表」を事実上、容認したし、それが新聞記事となったことも問題視していなかった。「新聞記事になっても大して話題になどならない。むしろ何の試算も出さない方が批判される」と甘く考えていたんでしょうか?
 松井が騒ぎ始めたのは「都構想反対派」による「コスト増批判」が維新にとって無視できない広がりを見せてからの話です。
 しかしそのような嘘をはいて財政局を悪者にして恥じないのが維新一味であり、だからこそ小生のような維新批判派は維新連中を全く評価しません。評価する連中の気が知れません。
 そもそも「報告がなかった」としか言わない辺りも「情けない奴ら=維新」ですね。そんなことよりも「コストはどうなるのか」、まともな試算を出したらどうなのか。維新信者ならともかく、俺のような維新批判派にとっては「まともな試算も出さずに財政局を悪者にしてごまかせると思ったら大間違いだ!。ふざけんな!」ですね。


国民投票法改正案 条件付きで採決応じる 国民民主・玉木氏 - 産経ニュース
 自民党応援団という本性を日夜露呈する玉木一派です。
 しかしこんなことをすればするほど「自民批判派」は立憲民主、共産を支持し、一方、自民党支持層は勿論玉木など支持しないので自滅行為もいいところです。


日米安保条約5条、北方領土・竹島は適用外 加藤官房長官が見解 - 産経ニュース
 「日本が実効支配する尖閣」ならともかく、韓国やロシアが実効支配する土地を「日米安保の対象内」などといえば「日米合同で韓国やロシア相手に領土奪還戦争でもやるのか?」という疑念を招くのである意味当たり前の発言です。「バイデン政権は勿論」さすがに菅政権だってそんな無茶苦茶をやる気は無いでしょう。


【主張】女川原発の同意 グリーン社会への弾みに - 産経ニュース
 「CO2削減のためには火力発電削減が必要」迄は正論ですが、そこから「危険性の高い原発の稼働」を持ち出すのは暴論でしょう。何もCO2を出さない発電方法は原発に限らない。水力、太陽光、地熱、潮力、風力といろいろあるわけです。何故ここまで原発固執するのか、いつもながら謎です。


【産経抄】11月12日 - 産経ニュース

山口県は今年度、「貴賓用」として、トヨタの最高級車センチュリーを2090万円で購入していた。兵庫県では昨年、知事公用車をトヨタのレクサスからセンチュリーに変更している。税金の無駄使いとの批判に対して、井戸敏三知事は見直す考えはないとしている。一方、長野県では今年の走行距離がたった3キロだったという、公用車のセンチュリーの売却を決めた。知事の考え方に違いがあって当然である。ただ一つ、はっきりさせておきたい。知事は「殿様」ではない。

 「知事は」というより「政治家は」ですね。
 選挙で選ばれたからと言って何でも許されるわけではない。とはいえ、こんなことを産経が言うのは「産経にとって都合が悪くないとき限定」です。産経にとって山口県知事や兵庫県知事の高額公用車調達は「かばう必要の無い行為」なのでしょう。
 例えば「アベノマスクは税金の無駄遣い」などという批判には「自民党は政権与党だ、悔しければ野党が政権奪還すればいい」と「政権与党を殿様であるかのように言い出して居直る」のが産経ですが。
 なお、産経が想定している「殿様」とは

今井正監督映画『武士道残酷物語』(1963年4月公開)のバカ殿たち
◆映画『十三人の刺客』(1963年12月公開、後にリメイク版も制作)の明石藩主・松平斉韶(菅貫太郎*2
小林正樹監督映画『上意討ち_拝領妻始末』(1967年公開、原作は滝口康彦『拝領妻始末』、脚本は橋本忍)のバカ殿

あたりでしょうが、実際の殿様がそんなに好き勝手できたわけではないらしいこと(自らの行動について家臣の了解を得る必要があったらしいこと)は主君押込 - Wikipediaが指摘しているところです。
 なお、話が脱線しますが、1960年代はこの三作品以外にも

小林正樹監督映画『切腹』(1962年公開、原作は滝口康彦『異聞浪人記』、脚本は橋本忍
◆『人斬り』(1969年公開、原作は司馬遼太郎『人斬り以蔵』、脚本は橋本忍

がつくられており「権力の非道に苦しむ下級武士」という「ブラックテイストで社会派的な時代劇(もちろんきちんと娯楽性はキープしていますが)」が多数つくられたわけです。


【阿比留瑠比の極言御免】勝負あった学術会議問題 - 産経ニュース
 「理屈が通っているかどうか」と言う意味では「まともに任命拒否理由を説明できない菅の敗北」であり、そう言う意味では「勝負は決着がついた」わけですが、阿比留ですからそう言うまともな話ではない。
 「マスコミ(典型的には御用マスコミの産経、読売)も必ずしも批判的な報道でないし、この件で野党支持率が大幅上昇したり、与党支持率が大幅下落したりしてるわけでもない」というただの居直りです。
 そう言う居直りの理屈なら

竹島北方領土の問題は韓国やロシアの勝利で勝負あった(まあ今のままではいつまで経っても島の返還はないでしょう)
北朝鮮拉致問題は、日本の敗北で勝負あった(まあ今のままではいつまで経っても拉致被害者の帰国はないでしょう)
・習主席国賓訪日問題は、反対派の敗北で勝負あった(どう見ても菅は国賓訪日を撤回する気は無いでしょう)
・香港問題は国家安全維持法制定によって中国政府の政治的勝利で勝負あった(今のところ、民主派には事態打開の展望がないですし、欧米諸国も天安門事件後の制裁のような強硬路線は取らないでしょう)

といってもいいでしょう。そういったら阿比留ら産経のウヨ連中は怒り出すでしょうが。
 そんな居直りは

大阪都構想問題は二度の反対派勝利で勝負あった

のような「まともな話」とは全然違う。
 そもそも、こういうことを阿比留が言い出すのは「ある種の泣き言」です。
 本気で「勝負あった」と思ってるなら黙ってればいい。黙っていられないのは「この問題が今後、安倍政権時代のモリカケのように菅政権にボディブローのように効いていくこと」を恐れてるからでしょう。だからこそこうしたことを言って、「自民党に体質が近い野党議員(立憲民主の福山幹事長など)」が追及を妨害する状況が発生することを狙っているだけでしょう。
 したがってこんな寝言には勿論耳を傾けず、今後も追及することは大切です。
 それにしても「モリカケ桜を見る会」擁護で想定の範囲内ですが「不正でも容認」とは全く阿比留ら産経はふざけています。

*1:82歳とは毛沢東が死去した年齢です。ちなみに周恩来は77歳で、鄧小平は92歳で、『習氏の父』習仲勲は88歳で死去しています(ウィキペディア参照)。

*2:菅貫太郎 - Wikipediaによればこれがあまりにも当たり役となったため、悪役の依頼ばかりが来るようになったとのこと