高世仁に突っ込む(2021年2/17日分)

「ISの人質」は再びカメラをもった - 高世仁の「諸悪莫作」日記

 『ある人質~生還までの398日』という映画が19日から全国で封切られる。
 これはIS(イスラム国)に誘拐されたデンマーク人ジャーナリスト、ダニエル・リュー氏が帰還するまでを実話にもとづいて描いている。
 家族たちがカンパを集めてプロの「保安コンサルタント」に交渉の仲介を依頼してリュー氏を救出したのだった。
 この事件については、自身が危険地を取材するジャーナリストであるプク・ダムスゴー氏がリュー氏はじめ関係者に広く取材して『ISの人質*1』(The ISIS Hostage)というノンフィクションを書いている。おそらくこの本が映画のベースになったのだろう。
出来上がった映画を観たリュー氏
交渉の結果、身代金を払って解放されたことについては;
 「ISにとって私は金をもたらす有益な“モノ”にすぎなかったのです。
 生きて帰ることができたのは、身代金が支払われたから、ただそれだけです。」
 しかし、人質のみんながリュー氏のように助かったわけではない。
 身代金を払わない場合は、殺された。

 前も書いたことですが、結局
対価なくして北朝鮮から拉致被害者が帰ってくるのか - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
そういう例を出すのなら、拉致問題だってやっぱり金(対価)次第じゃないか - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
けっきょく人質の解放なんて金しだいということだ(拉致問題もご同様) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
と言う話ですね。
 高世は北朝鮮拉致問題では、詭弁で「対価」を否定するから呆れますが。そして例の安田純平氏も「自らの武装勢力からの身柄解放」について「日本政府が金を払ったか分からない」と「自分のちっぽけなプライドを守りたいから」か、強弁しますが、普通に考えて身代金を払ってるでしょう。単に「身代金目的の誘拐を助長したくない」などの理由でその点を日本政府が曖昧にしてるだけで。
 小生も「対価を払わないで拉致被害者が救出できる」ならそれに反対する理由はありません。でもそんなことは現実的に無理なわけです。
 「対価で取り返すか」、諦めるかの二択しか現実的にはない。
 「対価を否定しながら」救出したいというのは例えるなら

抗がん剤の副作用(脱毛、嘔吐など)は嫌だが延命したい(ただし客観的に見て抗がん剤以外に延命方法がない)
◆プロの俳優になりたいが主役以外はやりたくない(ただし客観的に見て主役が務まる器ではない)

のような無茶苦茶な話です(例は何でも良いですが)。
 そりゃ高倉健吉永小百合レベルのトップスターなら「主役以外はやらない」も可能かもしれない(注:とはいえ「(他の多くの俳優に比べ)ずっと主役が多い」「主役でない場合も重要な役が多い」とはいえトップスターの彼らですら脇役をやってはいますが)。
 でもほとんどの俳優はいかにプロでも「主役しかやらない」なんていえるようなトップスターではありません。

◆TBSドラマ『半沢直樹』(2013年、2020年)、NHK大河ドラマ真田丸』(2016年)で主演の堺雅人
テレビ朝日ドラマ『相棒』(2000年~)主演の水谷豊
◆映画『釣りバカ日誌』(1988~2009年)主演の西田敏行

など、人気ドラマ、映画で主演を務めた人気俳優だって、多くの場合は「脇役だってやっている(もちろんそれなりに重要な役であることがほとんどですが)」。ましてや大抵の俳優は「主演しない脇役の人間がほとんど」です。
 家族会の「対価なしで救出」は「主役以外やりません」と「トップスターでもない普通の俳優」が言うくらい馬鹿げてます。もちろん、それで主役が出来るわけもない。
 当然ながら「対価なしで救出」で「小泉訪朝(2002年)の後、18年間の拉致敗戦」の家族会については「本気で救出する気は無い」か「身の程知らずのバカ」としか評価できません。

*1:邦訳は2016年、光文社新書