新刊紹介:「経済」2021年6月号

「経済」6月号について、俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。
 http://www.shinnihon-net.co.jp/magazine/keizai/
◆随想『『婦人と文学』にみる〈抵抗の風景〉』(北田幸恵*1
(内容紹介)
 宮本百合子の著書(1947年、実業之日本社刊行(後に宮本百合子全集第17巻(全33巻、2000年、新日本出版社)や、宮本『新編・文学にみる女性像』(2021年、新日本出版社)に収録))について論じられていますが詳細については小生の無能のため省略します。

参考

宮本百合子 婦人と文学から一部紹介
一、藪の鶯  一八八六―九六(明治初期一)(初出「改造」1939(昭和14)年7月号)
二、「清風徐ろに吹来つて」(明治初期二)(初出「中央公論」1939(昭和14)年5月号)
三、短い翼  一八九七―一九〇六(明治三十年代)(初出「文芸」1939(昭和14)年8月号)
四、入り乱れた羽搏き  一九〇七―一七(明治四十年代から大正初頭へ)(初出「文芸」1939(昭和14)年9月号)
五、分流(大正前期)(初出「改造」1939(昭和14)年7月号)(初出「文芸」1939(昭和14)年10月号)
六、この岸辺には  一九一八―二三(大正中期)(初出「文芸」1939(昭和14)年11月号)
七、ひろい飛沫しぶき  一九二三―二六(大正末期から昭和へ)(初出「文芸」1940(昭和15)年2月号)
八、合わせ鏡  一九二六―三三(昭和初頭)(初出「文芸」1940(昭和15)年4月号)
九、人間の像  一九三四―三七(昭和九年以後)(初出「文芸」1940(昭和15)年8月号)
十、嵐の前  一九三七―四〇(昭和十二年以降)(初出「文芸」1940(昭和15)年10月号)
十一、明日へ  一九四一―四七(昭和十六年―二十二年)(初出「婦人と文学:近代日本の婦人作家」1947年、実業之日本社

一、藪の鶯 一八八六―一八九六(明治初期一)
 「藪の鶯」という小説が、明治になってからはじめて婦人の作家によって書かれた小説らしい小説であるということを、つい先達てになって知った。今の三宅花圃(みやけ・かほ)が田辺龍子嬢として明治二十一年に二十一歳のとき、書かれたものである。
二、「清風徐ろに吹来つて」(明治初期二)
 三宅花圃が昭和十四年の春ごろ婦人公論にのせた「思い出の人々」は、いろいろの意味から面白い自伝であった。
 その思い出のなかに、明治十九年の秋、中島歌子の「萩の舎」で催された九日の和歌の月並会での一情景が、語られている。
「出席して見ますと、みんなの前におすしを配っている、縮れ毛で少し猫背の見なれぬ女の人が居りました。私は江崎まき子さんと床の間の前に坐ってべちゃくちゃお喋りをしておりましたが、ちょうど私たちの前へ運ばれて来たお皿に、赤壁の賦の『清風徐(おもむろ)に吹来つて水波起こらず』という一節が書いてございましたから、二人で声を出して読んで居りますと、若い女の人がそれに続けて『酒を挙げて客に属し、明日の詩を誦し窈窕(えうてう)の章を歌ふ』と口ずさんでいるではございませんか。
 私たちは、顔を見合わせて『なんだ、生意気な女』と思っておりましたが、その人が他ならぬ(ボーガス注:樋口)一葉さんで、会が終って、帰るときに、先生から『特別に目をかけてあげてほしい』とお引合せがございました。一葉さんは、女中ともつかず、内弟子ともつかず、働く人として弟子入りをなすった様子に見うけられました。」
 この数行をよめば、その時代の一葉の境遇が痛いように私たちの胸に迫って来る。
八、合わせ鏡 一九二六―一九三三(昭和初頭)
 一九二九年(昭和四年)二月の『プロレタリア芸術』に、窪川いね子(ボーガス注:後の佐多稲子のこと)という女性が「キャラメル工場から」という小説を出した。
 四十枚ほどの短い小説であったが、「キャラメル工場から」は前年『施療室にて』という短篇集を出した平林たい子の作風とは全く異っていたし、又新感覚派の傾向のつよい中本たか子の作品ともちがった。
十、嵐の前 一九三七―一九四〇(昭和十二年以降)
 この一二年間、婦人作家の活動が目立った。真杉静枝は短篇集『小魚の心』『ひなどり』などをもって、大谷藤子は『須崎屋』をもって、窪川稲子『素足の娘』、矢田津世子*2『神楽坂』、美川きよ『恐ろしき幸福』『女流作家』、円地文子『風の如き言葉』『女の冬』、森三千代『小紳士』、大田洋子『海女』『流離の岸』、中里恒子*3乗合馬車』、壺井栄*4『暦』など、出版された作品集の数も近年になくどっさりあった。そして、もし次のことがそれぞれの婦人作家の永い文学の途上で何かを意味することであるならば、中里恒子は芥川賞をうけ、大田洋子は(ボーガス注:1940年に小説『桜の国』で)朝日の長篇小説の懸賞に当選した。壺井栄は(ボーガス注:小説『暦』で)十六年度の新潮賞をうけた。昭和十四年度には、「婦人作家の擡頭」というような文字もジャーナリズムの上につかわれたのであった。


世界と日本
◆バイデン政権と労働運動(田中均
(内容紹介)
 バイデンの労働政策がまず紹介されている。
 トランプ政権によって任命された全国労働関係委員会(日本の中労委に当たる)の最高顧問「ピーター・ロブ」がバイデンによって解任された。これは労組から「ロブは過去に数々の不当労働行為について企業側に立って加担した疑いがあり、最高顧問の地位にふさわしくない」として抗議の声があったのをバイデンが受け入れた物。
 また、労働長官に「建設労組の活動家」出身でボストン市長のマーティン・ウォルシュが任命された。
 次に不当労働行為まで行って労組潰しをやってきたと言われるAmazonで労組の結成の動きが発生したこと、労組結成の動きについてバイデンが「労組を結成するかどうかは労働者の自由であり、大統領が作れとか作るなとか、何か言うべき物ではない」と断った上で「ただし、企業による違法、不当な結成妨害があれば、政府として放置するつもりはない」としてAmazon経営陣を牽制したこと、結果的にAmazonでの労組結成は挫折したが「労組結成派」が「Amazon経営陣による労働者への恫喝(不当労働行為)があった」として提訴したことが紹介されている。


◆アフリカ東部のバッタ被害(佐々木優*5
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。
アフリカ東部でバッタ大量発生 農作物に深刻被害与え西進 コロナで対策に遅れ | 毎日新聞2020.5.15
バッタ大発生20カ国以上に コロナが追い打ち食糧難も:朝日新聞デジタル2020.9.5
バッタ襲来で食料不足の恐れ WFPが警告、支援活動:東京新聞 TOKYO Web2020.10.10


◆生保裁判・大阪地裁の勝利(大口耕吉郎*6
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。なお、一方で、同様の訴訟について、北海道地裁、名古屋地裁は原告敗訴判決を出したこと(勿論原告が控訴)、大阪地裁敗訴判決について被告の国、大阪市が控訴していることに注意が必要。
【大阪地裁判決】 
生活保護減額は違法/大阪地裁 歴史的な原告勝訴判決2021.2.23
主張/生活保護訴訟判決/削減ありきの違法を断罪した2021.2.27
生活保護「減額は違法」画期的判決/利用者の運動 世論広げる/保護基準は国民生活の“岩盤”2021.3.5
【北海道地裁判決】
生活保護削る国に追従/原告の請求 すべて棄却 名古屋地裁/くじけない 控訴へ2020.6.26
「新・人間裁判」に不当判決/生活保護費引き下げ 違憲認めず/札幌地裁2021.3.30


特集1「コロナ感染とたたかう:ケアに手厚い社会を」
◆コロナ1年、保健・医療政策の課題と転換(横山壽一*7
(内容紹介)
 コロナで表面化した課題として主として病床不足が指摘される。そして病床不足の原因として「病床が余っている」との認識の元、国、自治体が病床を意図的に減らしたことが批判され、そうした「病床削減策の撤回」が求められている。

赤旗
この期に及んで病床削減・医師抑制―/政権 医療破壊2法案/受診抑制招く窓口負担増も コロナの教訓と真逆2021.3.4
病床削減誘導やめよ/高橋議員 医師不足解決こそ2021.4.3
命守れぬ病床削減法案/感染症対応常時確保 長時間労働是正こそ/倉林議員が主張/参院本会議2021.4.17

病床削減法案 倉林議員の質問/参院本会議2021.4.17
 法案は、病床削減のための財政支援を法定化します。病床機能再編支援補助金は、削減する1病床あたり114万~228万円交付するものです。「社会保障の充実」を理由に増税した消費税195億円をあて、補助単価は稼働率が高い病床ほど高く設定されています。これがなぜ「社会保障の充実」なのですか。
 地域医療構想における「2025年の病床必要量」はパンデミックを想定せず、高度急性期、急性期を中心に約20万床削減するものです。いのちが守れる必要病床数の再検証が必要です。
 医学部定員数の削減方針は中止し、抜本的に増員すべきです。

病床削減案 廃案迫る/医療・介護拡充へ署名9.7万/全労連・中央社保協2021.4.22


【地域の現場から】
◆都立・公社病院の独法化中止のたたかい(白石民男*8
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
医療後退の独法化推進/都の病院「ビジョン」 党都議団が抗議2020.4.2
中止署名5万人の声聞け/病院独法化 星見都議が代表質問2020.12.10
都立病院 独法化で稼ぐ医療!?/都が医療ツーリズム検討/白石都議追及2021.3.11
都議選で独法化ノーへ/都立病院の充実求め集会2021.4.25


◆世田谷区のPCR・社会的検査での区政の動向(中村重美*9
◆保健所・検査実施の体制は(世田谷区職労)
(内容紹介)
 保坂・世田谷区長が進めるPCR検査の拡充策が好意的に紹介されるとともに、PCR検査拡充に消極的な菅政権が批判されている。
参考
「誰でも いつでも 何度でも」検査の世田谷モデルを応援しよう! - 高世仁の「諸悪莫作」日記2020.7.31
世田谷区がPCR検査を拡充へ「誰でも いつでも 何度でも」:東京新聞 TOKYO Web2020.8.3
赤旗
世田谷モデルでPCR拡大 抜本拡充へ国の財政支援を/小池書記局長ら 保坂区長と懇談2020.8.14
介護職員など継続検査/東京 世田谷 実施5倍超へ2020.8.25
PCR拡大へ財政支援を/党世田谷区議団が政府に要請/小池氏同席2020.8.29
新型コロナ: PCRで感染力の強さ判別 世田谷区・慶大研究者が公表: 日本経済新聞2021.4.28

無症状者から多量のウイルス 世田谷区の実態調査で確認 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル2021.4.29
 今月19日から、区は検体を五つまとめて検査し、陽性が出たら個別に再検査する「プール検査」も導入。時間も試薬量や費用も節約できるという。西原教授は「マスクをはずした会話や食事の際に唾液(だえき)を介しての感染が最大のリスク。唾液を用いたプール法PCR検査が効率的」と指摘した。分析と検証を進め、感染を抑えつつ経済社会活動を維持する対策を国へも提言する。


◆大阪の保健師・職員を増やして!(小松康則*10
(内容紹介)
 大阪での深刻なコロナ蔓延について、「大阪府大阪市が保健所職員を減らしたこと」が助長しているとして、職員の増加を求めている。
参考

大阪の公立病院・保健所/橋下氏“僕の改革で今、現場が疲弊”/元首長のSNS投稿に批判の嵐2020.4.5
 新型コロナウイルス感染で検査・医療体制が問題になるなか、前維新代表の橋下徹氏(元大阪府知事大阪市長)のツイッターが「何をいまさら」と炎上しています。
 橋下氏は「僕が今更言うのもおかしいところですが、大阪府知事時代、大阪市長時代に徹底的な改革を断行し、有事の今、現場を疲弊させているところがあると思います。保健所、府立市立病院など。そこは、お手数をおかけしますが見直しをよろしくお願いします」とツイート。さらに「平時のときの改革の方向性は間違っていたとは思っていません。ただし、有事の際の切り替えプランを用意していなかったことは考えが足りませんでした」とつぶやきました。
 これに「今更何言うてるんやろ。こんな状態になって見直しをとか言う前に要らん改悪しなければよかったやん。やっぱり維新の改革は害悪でしかなかったって事がよくわかる」などのコメントが相次ぎました。「『謝って済む問題じゃない』とよく言うが、まさか謝りもしないとは。今から見直したってもう手遅れです。有事に対応出来ない行政に改悪したんだから根本から間違いなんですよ」「ほんとにおかしいです。徹底した、改革したと言ってもそれが市民、府民とって悪ければ改革じゃあない!壊しただけで」と痛烈な批判も。

保健所の職員定員増求め署名提出 大阪府職労が6万人分 「疲弊は限界」 | 毎日新聞2021.1.15
 新型コロナウイルスの感染拡大で保健所の業務が逼迫しているなどとして、大阪府関係職員労働組合(小松康則執行委員長)は15日、保健師や保健所職員の定数増などを求める約6万人分の署名を、吉村洋文知事と田村憲久厚生労働相に提出した。

「保健所職員増やして」/大阪府職労 知事・国に署名提出・・・今日の赤旗記事 - (新版)お魚と山と琵琶湖オオナマズの日々2021.1.16

保健所からの電話が来ない 職員「普通の状態じゃない」 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル2021.4.22
 新型コロナウイルス感染者数が最多を更新し続けている大阪府内では、患者を支える保健所もパンク状態だ。ウイルス検査で「陽性」と診断されても連絡に1日以上かかり、問い合わせが相次ぐ事態に。職員からも「もうギリギリのところ」と悲鳴があがっている。


◆介護事業:コロナで浮き彫りになった現実と課題(林泰則*11
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

介護体制 崩壊の危機/全日本民医連事務局次長 林泰則さんに聞く2020.4.14
 介護事業所は、低い介護報酬によって人手不足や経営難に苦しんできました。そこに新型コロナ問題が起きたことで、地域の介護サービス基盤が致命的なダメージを受けようとしているのです。介護報酬や給付費の抑制路線を転換すべきときです。

コロナ禍でみえた高齢者介護の「現在」「過去」「未来」――ポストコロナに必要なのは〈回復〉ではなく〈転換〉(林泰則)|大月書店|note2020.5.12
◆当面の、そして今後の課題
 介護事業所がコロナ禍で直面している困難の打開は、政府が総力を挙げて取り組むべき喫緊の課題であることを訴えたい。とりわけマスク、消毒液などの衛生材料の安定的な確保と供給には一刻の猶予も許されない。必要な介護サービスを切らさず、地域の介護基盤を維持していくうえで、すべての事業所を対象とした減収分・新たな支出分に対する損失補償は不可欠だろう。事業所で感染が生じた場合、必要とされる対応策を具体的に明示したり、地域の中でのバックアップ体制をつくることも必要だ。不安と緊張に日々苛まれ、厳しい職員体制のもとで利用者の生活を必死に守り支えている介護従事者を激励し、その奮闘を後押しする政府の思い切った支援を求めたい。来春(2021年)の介護報酬改定で報酬を引き下げることは絶対にあってはならないし、感染症の収束が見通せないもとでの低所得者の施設入所費用の引き上げ(補足給付の見直し-第8期介護保険の「改正」)は即刻中止すべきだろう。


社会福祉事業:福祉・保育の現場と労働条件改善(澤村直*12
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

コロナ対策 国の責任で/福祉保育労が第2次要請2020.4.18
 全国福祉保育労働組合の土田昭一委員長らは17日、新型コロナウイルス対策をめぐり、内閣府厚生労働省に第2次緊急要請をおこないました。 
 施設にマスクや消毒液などの資材配布▽感染者が出た場合のガイドライン作成▽職員が休みを取るための代替者の確保と財政的措置▽休業・閉所した際には通常の報酬や委託費を支給すること―などを求めています。

福祉職場抜本改善へ/梅村党子どもの権利委責任者と福祉保育労懇談2020.6.19


◆ワクチン接種でみえる日本の課題(杉山正隆*13
(内容紹介)
 日本企業がワクチン開発に失敗したこと、日本政府が「ワクチン確保」に失敗した上、医師不足を理由に接種が遅れていることが批判されている。
 なお、ワクチン接種によって米国、英国が事態を改善したことを指摘する一方で、変異種についてはどれほど効果があるかは不明であり、ワクチンの過大評価は禁物としている。
参考
赤旗
具体的な行程を示せ/ワクチンめぐり小池書記局長2021.4.20
ワクチン完了時期/首相発言と現場かい離/野党聞き取りで浮き彫り2021.4.27
ワクチン供給量示せるよう製薬企業と再協議を/田村氏2021.5.1
ワクチン有効性を評価/学術会議などが集会「過度な期待危険」2021.5.9


特集2「日本の学術・高等教育を考える」
◆日本の学術と大学教育に希望ある未来を(山本健慈*14
(内容紹介)
 主として「国が大学にまるで財政支出していない問題(財政危機を理由とした国立大学運営交付金や私学助成の削減方針)」が批判されている。

参考

安倍流「国立大改革」の暴走(下)/「交付金増額を」15大学が声明2015.5.11
 和歌山大学の山本健慈前学長は自著のなかで、文科省から「大改革をしていない」と評価されれば「そんな大学は退場してもらいますということに追い込まれていくと思います。まさに地方国立大学は『壊死』してしまう」と批判しています。

交付金削減許さず増額を/国大協と党国会議員が懇談2016.12.3
 山本専務理事は、財務省財政制度等審議会(11月17日)で行った建議で、運営費交付金について「メリハリある配分を継続して行う」と表明したことに言及し、「われわれの要望に沿わない形で進行するのではないかと心配している」と懸念を表明。国立大学の法人化後に運営費交付金が1470億円削減されたことで、不安定な職しかなくなり、若手研究者が減少し、老朽化した施設・設備が増えているなどの大学の現状からも、同交付金の削減は限界に達していると述べました。


◆コロナ危機下の私学教育の惨状:教育の崩壊の危機とその原因、改革の展望(佐久間英俊*15
(内容紹介)
 主として「国が私立大学にまるで財政支出していない問題(財政危機を理由とした私学助成の削減方針)」が批判されている。
参考
赤旗
私立大助成減額を批判/畑野氏 抜本的拡充こそ必要2018.6.18


◆学術研究体制の途上性を克服し学術の再生を(兵藤友博*16
(内容紹介)
 論文発表数、論文引用件数の減少など、日本の科学研究の成果が近年著しく低下していることを指摘。日本政府が財政危機を理由に研究予算を減らしている影響が大きいとして予算増額を求めている。
参考
赤旗
科技予算が「過去最大」という政権のトリック/公共事業や軍拡も“混入” 集計方法を改変2019.2.11
学術研究予算の「選択と集中」/研究力低下は明らか 田村氏追及2019.4.16
研究力 予算減り低下/畑野氏「背景に競争資金化」2020.6.29

“科学技術強国”中国の躍進と日本の厳しい現実|まるわかりノーベル賞2018|NHK NEWS WEB
 「科学技術力をたゆまず増強させれば、中国経済はもっと発展できる」
 中国の習近平国家主席が繰り返し強調している言葉だ。
 いま、中国は国を挙げて科学技術力の強化に取り組んでいる。
 文部科学省の科学技術・学術政策研究所によると、2016年の中国の研究開発費は45兆円余りと、10年で3倍以上に増えている。その額は日本の倍を超え、1位のアメリカに迫る勢いだ。
(日本:18.4兆円、アメリカ:51.1兆円)
 その成果は着実に形となって現れている。
 中国の研究論文の引用数は、2006年までの3年間の平均では世界で5位だったが、2016年までの3年間では2位に上昇。同じ時期に4位から9位に下がった日本とは対照的だ。
◆中国に移る日本人研究者も
 恵まれた環境は、外国人研究者にとって大きな魅力だ。
 中国の名門、復旦大学の服部素之教授(36)は、日本やアメリカでタンパク質の構造などを研究していたが、3年前、「千人計画」に応募して中国にやってきた。
「日本だと、私の同僚で私より業績がある人でも、研究室をまだ持てないという人がたくさんいます。日本だとほぼ不可能な環境なので、非常に感謝しています」
「中国では、博士課程での研究経験はとても評価され、給料も高くなります。ですから、みんな積極的に博士課程に進みます*17し、研究成果を出したいという熱意を持っています。復旦大学の学生は、東京大学の学生とまったく遜色ないどころか、むしろ上ぐらいに私は思っています」(服部さん)
◆地方大学が陥る深刻な事態
 一方、日本の科学技術研究はどうなっているのか。現場を歩くと、躍進を続ける中国と対照的に悲痛な声が相次いでいた。
◆削られ続ける運営交付金
 使えなくなる機械。減っていく研究者。いずれも背景にあるのは大学の資金不足だ。
 国は10年余り前から、競争力があると見込まれる分野に研究予算を選択的に投入。その一方で大学の運営費は減り続けている。
 静岡大学の場合、この13年で13億円削られた。
(H16年度:108億円、H29年度:95億円)
◆“中国に抜かされている”トップランナーの嘆き
 危機感を募らせているのは地方大学だけではない。
「ここ数年、『先に論文を出された』と思って調べると、たいていは中国人なんです。ネイチャーやサイエンスなどの科学誌に論文を出しても、必ずっていうほど中国人に負けるんですね」
 こう話すのは、東京大学大学院理学系研究科の濡木理教授。
 タンパク質の構造を調べる構造生物学の世界的権威だ。
 濡木教授は、近年、中国の急成長を肌で感じている。
 その背景にあるのが豊富な資金力だという。
 たとえば、「クライオ電子顕微鏡」という最新鋭の装置。定価は1台10億円で、東京大学でも配備されたばかり。国内でも5台しかないが、中国ではすでに数十台も稼働しているのだ。
「研究者の数と研究費、それはすなわち設備になるわけですが、それらが大量に投入されると、どうしても負けてしまうという状況ですね。もうわれわれも抜かされていますね」
 もう1つ濡木教授が危惧しているのが、日本の将来を担う若い研究者の海外流出だ。
 実は、「千人計画」で復旦大学に移った服部素之教授は、かつての濡木教授の教え子。
 服部さんの研究室の映像を見た濡木教授は、こうつぶやいた。
「これではみんな、中国に行ってしまいますよ。こういう環境は、日本はさせてくれない。彼は中国に行ってよかったのでしょう。日本のことを考えると残念ですけど」
「若手研究者がいないということは、日本のサイエンスがもう伸びないということです。海外から若手を呼び戻せなければ、サイエンスが途切れてしまう。日本全体の社会問題だ」
 中国の科学政策に詳しい笹川平和財団海洋政策研究所の角南篤所長は、中国に学ぶべき点があると話す。
「中国の科学技術が伸びた背景には、世界のトップレベルの知とつながっていることがあげられます。世界のトップレベルの科学者と中国の科学者が常に一緒に研究しており、国際共同の論文数は日本よりもかなり伸びているのです。日本の科学も、中国を含めて、もっともっと世界とつながっていくということが必要になってくる」 

 以前も紹介した記事ですが改めて紹介しておきます。


国立大学法人の「戦略的経営」は何をもたらすか(光本滋*18
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

国立大学法人法改定案/国の支配体制 強化を狙う/学内構成員の意向 ますます排除/土井誠2021.4.20
 重大なのは、文科省が第4期(2023年度~)の中期目標については、大綱(素案)を示して、その枠内での選択を迫り、大学の自主的・自律的な原案作りに介入し、評価指標の内容にまで口を出していることです。国立大学協会は、記述が詳細に過ぎ、ここから選択するのでは中期目標が画一的になるとの意見を提出しています(1月27日)。大綱は、手直しして6月確定の予定です。
 素案には、大学に「戦略的経営」を強いる目標が並んでいます。
 例えば、「財務内容の改善」では「効率的な資産運用や、保有資産の積極的な活用、研究成果の活用促進のための出資等を通じて、財源の多元化」について記述することが必須となっています。

財界発の大学改革/衆院本会議 国大法改定案を可決/共産党は反対2021.4.23
 国立大学法人法改定案が22日の衆院本会議で日本共産党以外の賛成多数で可決され、参院に送られました。
 21日の文部科学委員会日本共産党の畑野君枝議員は、学問の自由を保障するため各大学が主体的に策定すべき中期目標に対し、文科省が詳細な「大綱(素案)」を示すなど介入を強めていることを告発。今回の「大学改革」の発信源をただしました。
 萩生田光一文科相は、同省の検討会議提言に基づき、今回の法案に加え、新たに創設する官製「大学ファンド」から資金を受けるにふさわしい大学統治を求める方向性を経済財政諮問会議に説明したと答弁。経団連会長ら財界人が名を連ね、大学ファンド創設を主張してきた諮問会議の求めに沿った「大学改革」という法案の本質が鮮明になりました。


◆ポスト・コロナ型ニューディール構想の対抗(二宮厚美*19
(内容紹介)
 コロナ禍により日本における「医療・福祉の欠乏」と「(コロナ感染予防が当初は大きな目的であるが)オンラインを利用した教育・文化活動の重要性」が表面化したという認識から、ポスト・コロナ型ニューディール(新規まき直し)構想として
1)医療・福祉分野の充実
2)「オンラインを利用した教育・文化活動の充実」
を主張しているが、現時点では「大雑把な提案」に止まっている。


アグリビジネスと食料主権(福田泰雄*20
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

経済・食料主権の侵害/TPP11法案可決 田村氏が反対討論2018.6.29
日英EPA コメ際限なく自由化/笠井議員が批判 「日欧」超え明らか/衆院本会議2020.11.13
食料主権軽視と決別を/RCEP承認案審議入り 紙氏ただす/参院本会議2021.4.22

*1:元・城西国際大学教授。著書『宮本百合子の時空』(編著、2001年、翰林書房)、『はじめて学ぶ日本女性文学史(近現代編)』(編著、2005年、ミネルヴァ書房)、『書く女たち:江戸から明治のメディア・文学・ジェンダーを読む』(2007年、學藝書林)など

*2:1907~1944年。1936年に小説『神楽坂』が第3回芥川賞候補に選ばれる(実際の受賞作は小田嶽夫『城外』、鶴田知也コシャマイン記』)(矢田津世子 - Wikipedia参照)。

*3:1909~1987年。1939年に国際結婚をテーマにした『乗合馬車』『日光室』で女性初の芥川賞を受賞(中里恒子 - Wikipedia参照)。

*4:1899~1967年。一般にはキネマ旬報ベスト・テン第1位となっら映画『二十四の瞳』(1954年、木下恵介監督、高峰秀子主演)の原作者として知られる(壺井栄 - Wikipedia参照)。

*5:順天堂大学講師

*6:全大阪生活と健康を守る会連合会(大生連)会長

*7:仏教大学教授。著書『社会保障の市場化・営利化』(2003年、新日本出版社)、『社会保障の再構築』(2009年、新日本出版社)など

*8:都議(日本共産党)。個人サイト白石たみお東京都議会議員

*9:世田谷地区労働組合協議会議長、世田谷自治問題研究所事務局長。著書『公契約条例がひらく地域のしごと・くらし』(共著、2019年、自治体研究社)

*10:大阪府関係職員労働組合(大阪府職労)委員長

*11:全日本民主医療機関連合会(全日本民医連)事務局次長

*12:福祉保育労(全国福祉保育労働組合)書記長

*13:全国保険医団体連合会理事

*14:学校法人明浄学院大阪観光大学の経営母体)顧問。和歌山大学名誉教授。元和歌山大学学長。元国立大学協会専務理事。著書『地方国立大学:学長の約束と挑戦』(2005年、高文研)

*15:中央大学教授。著書『グローバル競争と流通・マーケティング』(編著、2018年、ミネルヴァ書房

*16:立命館大学名誉教授。著書『科学と技術のあゆみ』(編著、2019年、ムイスリ出版)

*17:一方で日本では企業が博士課程を評価しないので大学研究者を目指す人間以外は博士課程に進みたがらないとされる。

*18:北海道大学准教授。著書『危機に立つ国立大学』(2015年、クロスカルチャー出版)

*19:神戸大学名誉教授。著書『生きがいの構造と人間発達』(1994年、労働旬報社)、『現代資本主義と新自由主義の暴走』(1999年、新日本出版社)、『自治体の公共性と民間委託:保育・給食労働の公共性と公務労働』(2000年、自治体研究社)、『日本経済の危機と新福祉国家への道』(2002年、新日本出版社)、『構造改革とデフレ不況』(2002年、萌文社)、『構造改革と保育のゆくえ』(2003年、青木書店)、『憲法25条+9条の新福祉国家』(2005年、かもがわ出版)、『ジェンダー平等の経済学』(2006年、新日本出版社)、『福祉国家の姿とコミュニケーション労働』(2007年、文理閣)、『格差社会の克服』(2007年、山吹書店)、『新自由主義破局と決着』、『保育改革の焦点と争点』(以上、2009年、新日本出版社)、『新自由主義からの脱出』(2012年、新日本出版社)、『橋下主義解体新書』(2013年、高文研)、『安倍政権の末路:アベノミクス批判』(2013年、旬報社)、『終活期の安倍政権』(2017年、新日本出版社)など

*20:一橋大学教授。著書『現代日本の分配構造』(2002年、青木書店)、『コーポレート・グローバリゼーションと地域主権』(2010年、桜井書店)