新刊紹介:「歴史評論」2021年9月号

 小生がなんとか紹介できるもののみ紹介していきます。正直、俺にとって内容が十分には理解できず、いい加減な紹介しか出来ない部分が多いですが。
特集「帝国日本の植民地教育:被支配民族教育を中心に」
◆総論に代えて:朝鮮の家事・裁縫教育(崔誠姫*1
(内容紹介)
 植民地朝鮮においては「李氏朝鮮時代からの儒学の影響」もあり「女性教育(女学校)=いわゆる良妻賢母教育」でありそこで重要視されたのは「家事・裁縫教育」であった。
 なお、「家事・裁縫教育」は専ら「日本式の教育」であり、そのため、1927年にはそうした教育への反発から「淑明女子高等普通学校」で生徒による「同盟休校(登校ストライキ)」が起こっている。
 植民地朝鮮での「同盟休校の例」については例えば(白球の世紀:49)覇者に「異変」、空白3年 高校野球 - 高校野球:朝日新聞デジタル(2018.3.19)という記事を参照。
 なお、同盟休校については「数は少ない物」の日本でも狭山同盟休校 - Wikipedia茨城)全県立高の休校求め「ストライキ」 日立一高生 [新型コロナウイルス]:朝日新聞デジタル(2020.4.11)などの例がある。


◆植民地社会のなかの修学経験:台湾南部のある家族の軌跡(北村嘉恵*2
 傅祥露なる「台湾先住民族(平埔族)の男性」の「修学経験」について論じられていますが、小生の無能のためうまく要約できず、詳細な紹介は省略します。


樺太のマイノリティはどう生きたのか(池田裕子*3
(内容紹介)
 週刊少年ジャンプ連載(その後、東京MXテレビなどでアニメ放送)の漫画「ゴールデンカムイ - Wikipedia(明治期の北海道と樺太が舞台で、主人公の一人はアイヌ人少女)」でも描かれていたように樺太(サハリン)には少数民族として「アイヌその他」が居住していたわけです。本論文においては「日露戦争での南樺太(南サハリン)取得後」の「日本政府」による「アイヌなどへの同化教育」が論じられていますが、小生の無能のためうまく要約できず、詳細な紹介は省略します。


南洋庁にみる現地児童の公学校教育:時期の異なる「学校要覧」を手がかりに(小林茂*4
(内容紹介)
 我々日本人は「植民地」というと「台湾、朝鮮」をすぐ連想しますが、実は「第一次大戦」で日本は「ドイツ領南洋諸島パラオなど)」などを「国際連盟の委任による委任統治*5」と言う形で植民地化しています。論文タイトルの「南洋庁」とは「南洋諸島」を管理するために設置された官庁です。
 ただし

明仁天皇夫婦によるパラオ追悼訪問(2015年)
・『ヤングアニマル』(白泉社)に2016年4号から2021年8号まで連載されたマンガペリリュー 楽園のゲルニカ - Wikipedia

などで最近では「パラオも日本の植民地だった」ということは「以前よりは知られています」し、日本ウヨに至っては「天皇パラオ訪問など」に悪乗りして

「大日本帝国時代は本当にいい時代だった」 パラオの人はなぜ今も親日なのか | デイリー新潮
・荒井利子『日本を愛した植民地・南洋パラオの真実』(2015年、新潮新書)
井上和彦『「美しい日本」パラオ』(2021年、産経NF文庫)

と「まーた、『世界にはこんなに親日国があります!』だの『日本の植民地支配には問題はなかったのです!、パラオは感謝してます!』かよ。自画自賛乙。いい加減にしろ」ですが。
 なお、副題の『時期の異なる「学校要覧」』とは「1933年と1940年」です。1933年は「連盟脱退直後」のため、それほど戦時色は強くないものの、「連盟脱退から7年が経過」し、また翌年1941年に「対米開戦」が開始される1940年になると「戦時色」がかなり強まってくるという指摘です。しかし、小生の無能のためうまく要約できず、詳細な紹介は省略します。


◆青島における小中学校生徒の作文:中華民国臨時政府期を中心に(山本一生*6
(内容紹介)
 日本の傀儡政権(いわゆる親日派政権)である中華民国臨時政府(1937~1940年)での青島における小中学校生徒の作文について論じられています。
 なお、今回取り上げる作文は青島市教育局(つまり政府当局)発行の雑誌『青島教育週刊』に掲載されたものであり、筆者も指摘するように
1)官製雑誌掲載の論文なので「教育局にとって望ましい内容」が当然セレクトされた
2)そうしたことは生徒も解ってるので「書かれた内容が本心とは必ずしも言い切れない」
と言う点に注意が必要です。但し、筆者も指摘するように少なくとも「青島市(そしてそのバックである中華民国臨時政府や日本政府)が生徒に対して何を望んでいたか」という分析には使用可能でしょう。なお、小生の無能のためうまく要約できず、詳細な紹介は省略します。


◆歴史の眼『朝鮮高校の「無償化」裁判と「国民」教育:「反ヘイト」の時代』(藤永壯*7
(内容紹介)
 「朝鮮高級学校無償化を求める連絡会・大阪」共同代表で、朝鮮・韓国史研究者でもある筆者によって、
1)朝鮮学校無償化除外という「違法、無法な差別」を実行した「行政府」と
2)「大阪地裁の違憲判決」を除き、それを「合法として容認した裁判所」への批判がされています。なお、小生の無能のためうまく要約できず、詳細な紹介は省略します。というか、精神的に重い問題であり、安易に触れたくないという思いが強いですね。ググればいろいろと批判記事がヒットするかと思います(一方で精神衛生に悪いウヨの朝鮮学校誹謗記事もヒットするでしょうが)。訴訟がすべて最高裁まで結審(朝鮮学校側敗訴という不当判決ですが)し「再審請求も容易でないこと」を考えれば、今後は「困難なこと」ではありますが、
1)行政府や立法府への「違法行為是正」の働きかけ
2)それとは別途、朝鮮学校への経済支援活動
ということになるわけです。

【参考:藤永氏の批判】
朝鮮学校無償化除外問題 「植民地主義的な認識」 下京で講演、大阪産業大の藤永教授 /京都 | 毎日新聞2020.12.8
「無償化連絡会・大阪」第4回オンライン学習会/裁判闘争の意義、今後の課題を共有 | 朝鮮新報2021.2.5


◆歴史の眼・リレー連載『人類はいかに感染症と向き合ってきたか?』(5)「肺ペスト流行下の大連」(福士由紀*8
(内容紹介)
 1910~1911年において大連で流行した肺ペストについて『大連を当時支配した関東都督府*9の防疫政策』を中心に論じられています。
 なお、この論文がテーマとする1910~1911年当時は関東都督は大島義昌 - Wikipedia、民政長官(民生部門の最高責任者、防疫を担当)は白仁武 - Wikipediaです。
 なお、今回の新型コロナでも
1)劣悪な労働状況に置かれた外国人労働者にコロナが蔓延していること
2)その結果、外国人労働者排斥の右翼的運動を助長していること
が指摘されていますが、今回の福士論文においては「1910~1911年の肺ペスト」においても「中国人苦力(クーリー)」に肺ペストクラスターが発生し、同様の日本人による「中国人への差別感情助長」があったと見られることが指摘されています。
 

◆歴史の眼・リレー連載『21世紀の歴史資料・文化遺産』(3)「2018年豪雨における愛媛県の資料保全活動」(胡光*10(えべす・ひかる))
(内容紹介)
平成30年7月豪雨 - Wikipediaでの「愛媛資料ネット」による資料保全活動について論じられていますが、小生の無能のためうまく要約できず、詳細な紹介は省略します。


◆歴史の眼『社会運動の息遣いを伝える:立教大学共生社会研究センターの経験から』(平野泉*11
(内容紹介)
 立教大学共生社会研究センターの活動について、

吉川勇一*12寄贈資料など、「ベ平連」関係資料
・楠原彰*13寄贈資料など、「反アパルトヘイト運動」関係資料

など「社会運動関係資料」を元に論じられていますが、小生の無能のためうまく要約できず、詳細な紹介は省略します。


◆科学運動通信『ラムザイヤー論文批判オンラインセミナー参加記』(関原正裕*14
(内容紹介)
 『Fight for Justice緊急オンライン・セミナー もう聞き飽きた!「慰安婦は性奴隷ではない」説 ~ハーバード大学ラムザイヤー教授の歴史修正主義を批判する~』(2021.3.14開催)の参加報告です。ネット上の記事紹介で代替します。
Fight for Justice緊急オンライン・セミナー もう聞き飽きた!「慰安婦は性奴隷ではない」説 ~ハーバード大学ラムザイヤー教授の歴史修正主義を批判する~ – 日本史研究会2021.3.1
日本の「慰安婦」研究の第一人者「ラムザイヤー論文、でっち上げも含まれる」 : 日本•国際 : hankyoreh japan2021.3.15
ラムザイヤー氏「慰安婦=売春婦」論文 日本の学界からも批判の声 l KBS WORLD2021.3.15


◆科学運動通信『「旧海軍大社基地遺跡群」(島根県出雲市)の保存に向けて』(板垣貴志*15
(内容紹介)
 「旧海軍大社基地遺跡群」保存運動について紹介されています。ネット上の記事紹介で代替します。
ホーム | 大社基地の明日を考える会(保存運動を行う市民団体のサイト)
■旧「大社基地」跡 市民グループが調査・保存を出雲市に要望 島根県松江市、出雲市、雲南市の戦争遺跡をまとめガイドブックを出版(戦後史会議・松江 2021/04/11 投稿) - クラウドファンディング READYFOR (レディーフォー)2021.4.11
大社基地遺跡群の学術調査、文化財指定と保存に関する要望についての賛同署名 – 日本史研究会2021.5.25
大社基地跡、県は史跡指定しない方針:朝日新聞デジタル2021.7.8
大学生が「大社基地」を学ぶ|NHK 島根県のニュース2021.8.11

*1:日本女子大学客員准教授。中央大学政策文化総合研究所客員研究員。著書『近代朝鮮の中等教育:1920~30年代の高等普通学校・女子高等普通学校を中心に』(2019年、晃洋書房

*2:北海道大学准教授。著書『日本植民地下の台湾先住民教育史』(2008年、北海道大学図書刊行会)

*3:東海大学教授。

*4:中央大学非常勤講師。著書『「国民国家」日本と移民の軌跡:沖縄・フィリピン移民教育史』(2010年、学文社)、『砂糖と移民からみた「南洋群島」の教育史』(2019年、風響社ブックレット)、『戦前期日本人学校の異文化理解へのアプローチ:マニラ日本人小學校と復刻版『フィリッピン讀本』』(編著、2020年、明石書店

*5:つまり、この頃になると露骨に植民地支配することはとても無理になります。ただし「建前は委任統治」でありながら、「例の国際連盟脱退後」も日本の統治は(連盟を脱退した以上委任統治の根拠はなくなりますが)勿論「続いていきます」。

*6:鹿屋体育大学准教授。著書『青島の近代学校』(2012年、皓星社)、『青島と日本:日本人教育と中国人教育』(2019年、風響社ブックレット)

*7:大阪産業大学教授

*8:東京都立大学准教授。著書『近代上海と公衆衛生:防疫の都市社会史』(2010年、御茶の水書房

*9:1905年に関東総督府として設置。1906年関東都督府に組織改編。関東都督府の長官である関東都督は関東軍司令官を兼務し絶大な権力を保持した。1919年に関東都督府は廃止され軍事部門は関東軍、民生部門は関東庁の所管になった。なお、関東庁長官は関東都督と異なり、法制度上は「関東軍司令官の兼務」ではなかったが、満州事変以降は、事実上「関東庁長官」は「関東軍司令官」の兼務となっている。(関東都督府 - Wikipedia参照)

*10:愛媛大学教授

*11:立教大学共生社会研究センター学術調査員

*12:1931~2015年。「ベ平連」事務局長など社会運動の分野で活躍(吉川勇一 - Wikipedia参照)。

*13:1938年生まれ。国学院大学名誉教授。ブラジルの教育学者パウロ・フレイレの『被抑圧者の教育学』(1979年、亜紀書房)を翻訳出版し紹介したことや、「日本での反アパルトヘイト運動」の草分け的存在として知られる。著書『アフリカは遠いか』(1981年、すずさわ書店)、『アフリカの飢えとアパルトヘイト』(1985年、亜紀書房)、『アパルトヘイトと日本』(1988年、亜紀書房)など。(楠原彰 - Wikipedia参照)。

*14:日朝協会埼玉県連会長。著書『知っておきたい日本と韓国の150年』(共著、2020年、学習の友社)

*15:島根大学准教授。著書『牛と農村の近代史:家畜預託慣行の研究』(2014年、思文閣出版