「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2021年12/7日分:荒木和博の巻)

拉致被害者の北朝鮮脱出(R3.12.7): 荒木和博BLOG

 「拉致被害者北朝鮮を脱出することはできないのですか」という質問*1をときどき受けます。韓国人拉致被害者の中には脱出して韓国に戻った人もいます。

 6分51秒の動画です。タイトルと説明文で予想がつきますが、見る価値のない馬鹿馬鹿しい代物です。
 荒木ももはや「毎日動画を流すと言ったからメンツの維持のために何でも流そう」つうくだらない考えじゃないか。
 何が馬鹿馬鹿しいか。まず第一に拉致被害者帰国と何一つ関係ない。
 荒木ら巣くう会の目的は「拉致被害者が独力では帰れない」という前提の上での「拉致被害者救出」ではないのか。
 そこで「レアケースだけど、韓国人拉致被害者で自力脱出した例(例:映画監督の申相玉、女優の崔銀姫)があるから、日本人でもできるかもしれない」と言って何の意味があるのか?
 何の意味も無い。まさか、「スパイ大作戦夜逃げ屋本舗的な形で俺たち救う会拉致被害者の自力帰国を支援する」とでもいうのか?(「自衛隊北朝鮮に突っ込む」というのはもはや「自力帰国」とはいえないのでここでは考えません。荒木ら巣くう会だと「自衛隊を突っ込むこと」すら「自力帰国」と言いかねませんが)。
 そんなことができるわけがないでしょう。「そんなことが救う会にできるのなら、小泉訪朝から19年間も放置しないでその間にとっくにやってろ」つう話です。
 第二にそんなこと(日本人拉致被害者の自力帰国が可能かどうか)は荒木ではなく「5人の帰国拉致被害者」に聞くべきことでしょう(まあ、そもそもこの話、あまりにも非常識なので、そんな質問者はどこにもおらず、荒木のデマの疑いが濃厚ですが)。例えば「蓮池透氏や地村保志氏や曽我ひとみ氏」に「彼らの講演」後にでも聞いたらどうか。
 とはいえ、彼らも「一応答える」にしても、そんなことは「彼らに質問しなくても答えが予想できる」。
 彼らも「私が知る限り、そんなことはできないと思いますね。そんなことができるようなら私たちも小泉訪朝前に自分で帰国しました」というでしょう。さすがに「何でこの人はこんなバカな質問するんだろう」と呆れ顔になるんじゃないか。

【映画監督の申相玉、女優の崔銀姫

1988年3月26日/参議院予算委員会での橋本敦議員の質問(抜粋)から『申相玉崔銀姫』関連部分のみ一部引用
◆橋本敦君*2
 外務省、こういう事実を知っていますか。つまり、昭和五十三年六月のことですが、韓国の映画監督の申相玉とその夫人の崔銀姫、この二人、これの拉致事件が起こっていた。この二人はその後脱出をして今アメリカに在住しているようですが、御存じですか。
◆政府委員(藤田公郎君)
 私ども承知いたしておりますのは、女優の崔銀姫さんが五十三年の一月、映画監督の申相玉さんが同じ年の七月にそれぞれ香港で北朝鮮に拉致をされ、特に監督の方は後を追って行かれたわけですが、投獄をされたりしてしばらく北朝鮮におられた後映画作製に従事をされ、すきを見て昭和六十一年三月、オーストリアにおきまして米国大使館に逃げ込まれた、日本のジャーナリスト*3の協力を得て逃げ込まれたそうですが、ということが三月に報道が行われまして、五月にお二人が米国において記者会見をされて詳細な事実関係の発表をしておられます。
 ちなみに、明らかになります前に、五十九年には韓国の国家安全企画部*4が既にこのお二人が北朝鮮に拉致されたという発表を行いまして、これがうそだという応酬などが双方であったわけですが、結果的にお二人が出てこられた。それで、真相と申しますか、韓国側の発表どおりのことをお二人が詳細に説明をされたということでございます。
◆橋本敦君
 外務省にもう一点聞きますが、その申相玉あるいは崔銀姫ですが、北朝鮮に連行されたときに、いわゆる東北里招待所、これは訓練所とも金賢姫は言っておりますが、その訓練所で日本人を目撃したということを言っているという情報があるようですが、事実はどうですか。
◆政府委員(藤田公郎君*5
 私もこの金賢姫事件の起こりました後報道で拝読した覚えがありますが、現物は今持っておりません。
(中略)
◆橋本敦君
 いずれにしても、その訓練所から脱出をしてきて現にアメリカにいるというこの二人については、十分な情報を収集するという意味で関心を持って調査をしてもよいと私は思って聞いておるんですが、どうですか。
◆政府委員(城内康光*6
 お答えいたします。
 今の監督とそれからその女優さんのことにつきましては、我が国の法令違反ではございませんので捜査対象というふうなことではありませんが、十分関心を持っているところでございます。
(中略)
◆橋本敦君
 そこで外務大臣、この問題*7北朝鮮工作グループの犯行だという疑いがぬぐい切れないわけですけれども、そうだといたしますと、大臣が先ほどからおっしゃったように、誘拐された国民に対する重大な人権侵犯、犯罪行為であると同時に、我が国の主権に対する明白な侵害の疑いが出てまいるわけですね。だからそういう意味では、そういう立場で大臣がおっしゃったように主権国家として断固たる処置を将来とらなくてはならぬ、これは当然だと思います
(中略)
 私は、政府として、こういう重大な主権侵害事件として、これから事実が明らかになるにつれて毅然たる態度で原状回復を含めて処置をしていただきたいということをもう一度重ねて要求するのでありますが、いかがですか。
国務大臣梶山静六*8
 昭和五十三年以来の一連のアベック行方不明事犯、恐らくは北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚でございます。解明が大変困難ではございますけれども、事態の重大性にかんがみ、今後とも真相究明のために全力を尽くしていかなければならないと考えておりますし、本人はもちろんでございますが、御家族の皆さん方に深い御同情を申し上げる次第であります。
◆橋本敦君
 外務大臣、いかがでしょうか。
国務大臣宇野宗佑*9
 ただいま国家公安委員長が申されたような気持ち、全く同じでございます。もし、この近代国家、我々の主権が侵されておったという問題は先ほど申し上げましたけれども、このような今平和な世界において全くもって許しがたい人道上の問題がかりそめにも行われておるということに対しましては、むしろ強い憤りを覚えております。

 赤字強調は俺がしましたがこれが有名な「梶山、宇野答弁」ですね。ただしこの答弁(1988年)から「小泉訪朝(2002年)」までは残念ながら「14年」の年月がたち、その間の内閣が「竹下(答弁時点)→海部→宇野→宮沢→細川→羽田→村山→橋本→小渕→森→小泉(訪朝当時)」だった。
 そして小泉訪朝(2002年)から今年(2021年)で19年がたち、その間が「小泉(訪朝当時)→第一次安倍→福田→麻生→鳩山→菅直人→野田→第二~四次安倍→菅義偉→岸田(今)」のわけです。

申相玉 - Wikipedia
 1926~2006年。韓国の映画監督。
 1952年に 映画『悪夜』で本格的な映画監督デビュー。 映画女優崔銀姫と1953年に結婚。夫婦の間には実子はなく、養子が二人いた。また、シンは不倫相手の女優との間に二人の子どもをもうけている。この不倫をきっかけに、夫婦は1976年に離婚した。
 1978年香港で北朝鮮によって崔銀姫が拉致された後、彼自身も拉致された。ただし事件当時、北朝鮮側は自発的な亡命と発表した。1983年には崔銀姫と再婚している。彼が北朝鮮で映画『帰らざる密使*10』、『プルガサリ・伝説の大怪獣*11』などの製作に携わったため、自発的亡命説は一般に信じられた。しかし1986年3月13日、オーストリアのウィーン滞在中に崔銀姫とともにアメリカ大使館に亡命し、自発的亡命ではなく拉致だったと語った。1987年には北朝鮮の体験を記した著書『闇からの谺』(邦訳は文春文庫)を上梓した。同書によれば、二人を拉致するよう指示したのは当時、朝鮮労働党宣伝部長を務めていた金正日である。

*1:あまりにも「非常識な質問」なので、勿論、そんな質問が本当にあるかは疑問です。 荒木和博も、朴正煕や全斗煥をそんなに高く評価するのなら、拓殖大学の紀要や極右雑誌でないまともな学術誌に彼らの時代制約もふくめて論じる論文でも投稿したらどうか - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)が批判する『友人である元工作員李氏』、『韓国のある大学教授』のような『いつもの荒木のデマ』かもしれません。

*2:1928~2021年。日本共産党参院議員

*3:崔銀姫 - Wikipediaによれば『共同通信社論説委員の榎彰』

*4:現在の国家情報院の前身に当たる諜報機関。「韓国中央情報部(朴正熙)→国家安全企画部(全斗煥盧泰愚、金泳三)→国家情報院(金大中以降)」ですね。

*5:外務省アジア局長、国連日本代表部統括公使、オランダ大使、インドネシア大使、国際協力事業団総裁など歴任

*6:警視庁公安部長、警察庁警備局長、警察庁警務局長、警察庁次長、警察庁長官など歴任(城内康光 - Wikipedia参照)

*7:アベック失踪事件(蓮池夫妻、地村夫妻、増元るみ子&市川修一氏)のこと

*8:1926~2000年。竹下内閣自治相・国家公安委員長、宇野内閣通産相、海部内閣法相、自民党幹事長(宮沢総裁時代)、橋本内閣官房長官など歴任(梶山静六 - Wikipedia参照)

*9:1922~1998年。田中内閣防衛庁長官自民党国対委員長(三木総裁時代)、福田内閣科学技術庁長官、大平内閣行政管理庁長官、中曽根内閣通産相、竹下内閣外相などを経て首相(宇野宗佑 - Wikipedia参照)

*10:いわゆるハーグ密使事件 - Wikipediaを描いた。

*11:怪獣映画。映画「ゴジラ」の制作チームが招かれて協力したことで有名(プルガサリ - Wikipedia参照)。