『海を渡る友情』以外にもあった望月優子監督映画、ほか(2021年12/29版)

新潟へ遠征して、北朝鮮人権映画祭を観てきた(初日のみ)(海を渡る友情) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)関連記事です。

発掘された映画たち2018(2018年1月30日(火)~3月4日(日):東京国立近代美術館フィルムセンター
 望月優子の『ここに生きる』(1962、オオタ・ぷろだくしょん)や池部良の『ヴェトナム戦争』(1967、池部良プロ)といった独立プロの作品の上映。

 ちなみにこの企画ですが、他にも

ヤスジのポルノラマ やっちまえ!! - Wikipedia参照
 2014年には、谷岡まち子(谷岡ヤスジの妻)から委託を受け、谷岡作品の著作権エージェントを担当している株式会社ソニー・デジタルエンタテインメント・サービスが本作の原版フィルムを入手し、2016年1月に同社から東京国立近代美術館フィルムセンター(現・国立映画アーカイブ)に寄贈された。
 この原版フィルムから改めて作成されたニュープリント版は、2018年1月30日から同年3月4日にかけてフィルムセンターで開催された「発掘された映画たち2018」で2月6日と3月3日の2度にわたりリバイバル上映され、都内では1971年の初公開以来、実に47年ぶりの再上映となった。

ということで『ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!』など「この企画が行われた2018年当時、見ることが難しいマイナー映画*1」の上映がされたようです。
 それにしても「池部良も監督やってたのかよ!」ですね。ただし池部良・蜷川親博「ヴェトナム戦争」 : 昔の映画を見ています宝前庵のブログ: ヴェトナム戦争(池部良) 昭和42年によれば「米軍全面協力」なので左派的な立場から米軍批判してるわけではありません。なお、池部良 - Wikipediaにはこの映画についての記述はありません。

[貸館]望月優子特集上映 | プログラム|神戸映画資料館2018年12月28日(金)13:00〜16:00
「ここに生きる」
(1962/40分/DVD上映)協力:国立映画アーカイブ
製作:オオタ・ぷろだくしょん 全日自労(全日本自由労働組合
監督:望月優子 撮影:安承玟(アン・スンミン) 音楽:伊藤翁介 ナレーション:矢野宣
 朝鮮帰国事業に関する第1作『海を渡る友情』(東映教育映画、1960年)、混血児差別問題に関する第2作『おなじ太陽の下で』東映教育映画、1962年)に続く、望月優子監督の第3作目。全日本自由労働組合の委託により、当時国会に提出されていた緊急失業対策法改正案に対する反対運動の一環として製作された。炭鉱離職者、被差別部落出身者、女性など、全国の失業対策事業の日雇労働の現場で働く人びとの日々の労働と生活を、実際の作業現場や組合事務所・託児所などの現場で撮影した記録映像と、職業俳優を交えた再現ドラマパートを交錯しつつ映し出す。

世界各国のフェミ映画が集結! 「ソウル女性国際映画祭2021」で見えた韓国フェミニズムのいま
 「第23回ソウル国際女性映画祭」が2021年8月26日から9月1日までソウルで開かれた。
⑦邦画からは松竹の名俳優・望月優子監督作『ここに生きる』を上映
 松竹の名俳優として有名な望月優子が監督として制作し、1962年に公開された「ここに生きる」という映画がある。全日本自由労働組合の委託で企画されて、当時、国会に提出されていた緊急失業対策法改正案に対する反対運動の一環として製作されたドキュメンタリー映画だ。日雇労働の現場で働く女性のような高度成長期の日本社会で疎外され、差別されている様々な群像劇を映像でみられる。

 ナレーション:矢野宣氏ですが、

矢野宣 - Wikipedia
 1957年、日本共産党に入党し、赤旗まつりの司会も行ってきた。

「一九二八年三月十五日」 朗読(矢野 宣)
 2007年2月16日、東京都内で催された「第19回 杉並・中野・渋谷多喜二祭」のプログラムの一つ、矢野宣さんによる小林多喜二「一九二八年三月十五日」の一節の朗読をお聴きください。

矢野宣 | 劇団俳優座映画放送部
 俳優座に所属していた俳優・矢野宣が、日本国民救援会によってその実績が評価され、東京・港区の青山霊園にある解放運動無名戦士墓*2に合葬されました。

ということで筋金入りの左翼ですね。
 出演作も

真昼の暗黒 (映画) - Wikipedia今井正監督、1956年公開)
・冤罪・八海事件がテーマ。
・青木昌一(矢野宣)
 真犯人である小島武志(松山照夫)の虚偽自白によって、本当は小島の単独犯行であるのに、無実の植村清治(草薙幸二郎:彼がこの映画の主役です)、宮崎光男(牧田正嗣)、清水守(小林寛)とともに強盗殺人の共犯として逮捕起訴される。
荷車の歌 - Wikipedia山本薩夫監督、望月優子主演、1959年公開)
武器なき斗い - Wikipedia山本薩夫監督、1960年公開)
 山本宣治代議士を描いた西口克己*3の小説『山宣*4』を映画化。
松川事件 - Wikipedia山本薩夫監督、1961年公開)
◆金環蝕(山本薩夫監督、1975年公開)
 池田首相の九頭竜川ダム疑惑を描いた石川達三の同名小説の映画化。

と社会派作品が多い。
 混血児差別問題に関する第2作『おなじ太陽の下で』今井正キクとイサム - Wikipedia(1959年)みたいな作品でしょうか。
 いずれにせよ3作品とも「政治色が極めて強いこと」が注目されます。何せ第3作の制作主体は全日自労です。
 なお残念ながら望月優子 - Wikipediaには彼女の監督業についての記述はありません。
 なお、彼女の監督業については望月優子 | 日本映画における女性パイオニア(コピー禁止設定なので文章をコピペできない)も紹介しておきます。

*1:なお、他の上映映画はともかく『ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!』は2019年にDVD化されている。これについては例えばなんだかまたすごいソフトが発売される(ヤスジのポルノラマ やっちまえ!!) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)ヤスジのポルノラマ やっちまえ!! - Wikipedia参照

*2:「解放運動無名戦士墓」については解放運動無名戦士墓 - Wikipedia赤旗記事解放運動無名戦士の墓とは?参照

*3:1913~1986年。小説「郭」第一部・第二部を1956年に刊行、ベストセラーとなり、小説家として認められる。同作は第35回直木賞候補となり、「『廓』より 無法一代」(1957年、監督滝沢英輔)として映画化された(1958年に第三部を刊行)。日本民主主義文学同盟の結成(1965年)に参加し、1967年から1975年まで幹事もつとめた。1959年に京都市議に当選し四期務める。1975年に京都府議となるが、三期目の1986年3月15日に急逝した。(西口克己 - Wikipedia参照)

*4:2009年に新日本出版社から復刻版が刊行されている。