今日のロシアニュース(2022年3/3日分)

中国、五輪中の侵攻回避をロシアに要請か 米紙報道: 日本経済新聞
 中国政府はその事実を否定しており、真偽は不明ですが、仮に事実だとしてもこれを「ロシアが侵攻意思を伝えたこと」に対する「侵攻容認(五輪閉会後なら侵攻OK)」と見なしていいかは現時点では疑問符がつくでしょう(「侵攻容認」と根拠もなく主張するコメントがこの記事についていてうんざりしますが)。情報をリークしたと思われる米国も現時点ではそんな主張はしてない。
 「米国などが言うようにロシアはウクライナ侵攻を計画してるのか?(つまりロシアは侵攻意思の有無について中国に対して正直に語ってない)。ロシアは中国の友好国だというなら北京五輪のイメージを破壊するな」と「一般論」でロシアを牽制すると共に「時間の経過」によってロシアが侵攻を諦めることを期待していたのではないか。
 むしろ

中国 北京五輪閉幕まで侵攻しないよう事前要請か 複数メディア | ウクライナ情勢 | NHKニュース
 現地の中国大使館が避難に向けた通知を出したのは、ロシアが軍事侵攻に乗り出したあとの2月25日でした。

という事実からは「中国はロシアの侵攻を予想してなかった」と見るべきでしょう。まさか「ロシアのだまし討ち(そもそもウクライナが侵攻を警戒している状況で、中国国民が撤退しない程度でだまし討ちになるとも思えませんが)に協力するため」国民を見殺しにするようなまねもしないでしょう。
 なお、浅井先生もプーチン・ロシアのウクライナ侵攻:寺島実郎氏及び遠藤乾氏の見解に対する疑問で指摘していますが、「安保理で棄権した」のは中国だけではなくインドとUAEもそうです。
 「中国の棄権」を批判するのは別に構いませんが「棄権イコール侵攻を事前に知っていた」ではない。まさか「インドやUAEが事前に知っていた」という人はいないでしょう。


浅井基文ブログ『プーチン・ロシアのウクライナ侵攻:寺島実郎氏及び遠藤乾氏の見解に対する疑問
 「プーチンの行為は無法であること」を認めた上で「NATOの東方拡大に対す危機感」は「プーチン一人の価値観」ではおそらくなく「プーチン政権が仮に崩壊したところ(崩壊するかわかりませんが)」で、そうした危機感へのNATO側の配慮がなければ「第二、第三のプーチン」がロシアに登場し「NATOとの対立が再燃するだけではないのか(今回のプーチンほど無法でないにせよ)」という懸念を表明する浅井先生です。
 俺も同感ですね。
 正直「うかつなことをいう」と「プーチンシンパにプーチン支持と曲解されかねない」あるいは「反プーチン派にプーチン支持と悪口されかねない」現状でのこうした浅井発言には「勇気ある発言」として大いに共感します。
 また、浅井氏が

「今回の危機が両国にブロックを形成させ、分断された世界秩序につながっていく可能性もあります」(寺島氏*1
「中国は、ロシアの行為を侵略と呼ばず、同国産小麦の買いつけに走った。現状変更への力と意志をもつ権威主義国同士の接近は、米ソ冷戦の比喩ではすまされないほど、今後の国際環境が厳しいことを示唆する」(遠藤氏*2)という主張

という主張(「民主主義(G7諸国など)VS権威主義(中露)」)について「安保理でロシア非難決議について、中国だけでなく非常任理事国インドが棄権したことをどう理解するのか。インドのモディ首相はヒンズー至上主義の右翼で『大阪の維新』『米国のトランプ』『フィリピンのドゥテルテ』『トルコのエルドアン』のように独裁色が強いとはいえ、一応選挙で選ばれている」「ドイツもロシアから購入している天然ガスを理由に当初は制裁に及び腰だった(最終的には対米関係などに配慮して制裁を認めたが)」「中国もロシア非難は避けてるが全面支持はさすがにしておらず距離を置いている(ウクライナも中国に和平仲介を依頼した)」として「中露を同盟関係と見なしたあげく、一方的に非難する単純な勧善懲悪はおかしい」と批判している点にも共感しますね。中露の関係はお互い、もっとビジネスライクでドライでしょう。
 従って浅井先生も指摘していますが、今回の侵攻では「両国にブロックを形成」どころか中国の「ロシアからの離反」すらありうるでしょう。どう見てもロシアは「中国の事前了解もなく勝手に侵攻」し、そのことに中国は驚くと共に不快感を感じているからです。

*1:三井物産戦略研究所所長、日本総合研究所理事長、多摩大学学長など歴任。著書『国家の論理と企業の論理』(1998年、中公新書)、『われら戦後世代の「坂の上の雲」』(2006年、PHP新書)、『世界を知る力』(2009年、PHP新書)、『何のために働くのか』(2013年、文春新書)、『若き日本の肖像』(2014年、新潮文庫)、『二十世紀と格闘した先人たち』(2015年、新潮文庫)、『シルバー・デモクラシー』(2017年、岩波新書)、『ジェロントロジー宣言』(2018年、NHK出版新書)など

*2:北海道大学教授。2022年4月から東大教授に着任予定。著書『統合の終焉:EUの実像と論理』(2013年、岩波書店)、『欧州複合危機』(2016年、中公新書)など