本多勝一『リーダーは何をしていたか』(1997年、朝日文庫)

最低レベルのメンテナンスが不備で遊覧船が沈没した(しかも全員死亡の可能性が高い)というのは、かなりやばい話だと思う(たぶんトムラウシのツアー登山と同じようなものもあったのではないか) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)

 ツアー登山でも、本来なら撤退すべき状況で、会社がキャンセル料を払うのを嫌がるので、雇われガイド(ツアー会社の社員にあらず)がやばい状況でもツアーを遂行するなんて言う話がいろいろ言われます。

◆『憧憬のヒマラヤ』(1986年、朝日文庫)
◆『山とスキーとジャングルと』(1987年、山と渓谷社
◆『植村直己の冒険』(編著、1991年、朝日文庫
◆『新版・山を考える』(1993年、朝日文庫)
◆『山登りは道草くいながら』(本多勝一集27巻)(1995年、朝日新聞社
◆『五五歳*1のときに登った山山』(1997年、朝日新聞社
◆『60歳*2の記念に登った山山』(1997年、悠々社)
◆『50歳*3から再開した山歩き』(2000年、朝日文庫)
◆『『日本百名山*4』と日本人:貧困なる精神T集』(2006年、金曜日)
◆『六五歳*5 ますます愉しい山山』(2009年、朝日新聞出版)
◆『初めての山へ六〇年後に』(2009年、山と渓谷社
◆『日本人の冒険と「創造的な登山」』(2012年、ヤマケイ文庫)

といった登山関係の著書がある本多勝一氏の著書『リーダーは何をしていたか』(1997年、朝日文庫)にもそんな話が書かれていたかと思います(ここでのリーダーは『ツアー登山や学校の授業登山、部活登山』でのリーダー限定です。正直『登山』ということがタイトルだけでは分からないのであまり良いタイトルとは思いません)。
 「うろ覚えで書いていますが」本多氏は「信頼できる登山経験の持ち主である*6」とリーダーを信じて初心者が「登山すること」が多い『ツアー登山や学校の授業登山、部活登山』では『リーダーとそれ以外の登山者』の関係は「対等ではない(特に学校の部活登山の場合、通常、リーダーは教師か部活OB、他の登山者は生徒で明らかに上下関係がありますし、授業としての登山は言うまでもありません)」ので、リーダーの責任は格段に重いと主張していますね。
 そして本多氏の主張に寄れば、彼が著書で取り上げた「死亡事故が起きた学校登山、ツアー登山」は「御嶽山噴火*7」のような「回避不可能な事故」ではなく今回の「遊覧船事故」のような「重大な過失」によって発生した、回避可能な「無謀登山」だったわけです。
 本多著書については
我孫子山の会リーダーは何をしていたか
リーダーは何をしていたか | 那須雪崩事故遺族・被害者の会
 那須雪崩遭難事故(2017年)については那須雪崩事故 - Wikipediaによれば『2018年3月19日付で、栃木県教育委員会は、安全への配慮が欠如していたとして、委員長と1班講師を停職5ヶ月、2班講師を停職3ヶ月の懲戒処分とした』『2022年2月10日、宇都宮地方検察庁が男性教諭3人(委員長、1班講師、2班講師)を業務上過失致死傷罪で在宅起訴』とのこと。
 また那須雪崩事故、遺族が提訴 県側に約3億8千万円求め(共同通信) - Yahoo!ニュース(2022.2.2)なので過失事故であることは間違いないでしょう。阿部幹雄*8那須雪崩事故の真相:銀嶺の破断』(2019年、山と渓谷社)という著書もあるようです。
本田勝一『リーダーは何をしていたか』 - のぼる・すべる
「リーダーは何をしていたか」本多勝一 再読記 - Mr.Dashのぶろぐ館
「リーダーは何をしていたか」本田勝一を読んだよ。 - gaku88さんの日記 - ヤマレコ
「リーダーは何をしていたか」本多勝一: 本読みと山歩き
を紹介しておきます。
 なお、上記記事の一部の「本田」表記は勿論、「本多」の誤記です。本多著書(1997年刊行)は「25年前の著書」なので現状は多少なりとも改善されてると思いたいところですが、上で触れた「那須雪崩遭難事故(2017年)」なんて事故もあるので、その辺りは素人には分かりません。

*1:本多勝一 - Wikipediaによれば、本多氏は1932年生まれなので1987年で55歳

*2:本多氏は1932年生まれなので1992年で60歳

*3:本多氏は1932年生まれなので1982年で50歳

*4:深田久弥の著書『日本百名山』(新潮文庫)、またはそこで取り上げられた山のこと。本多氏は「百名山ばかりに登山客が集まる傾向」に「日本人は付和雷同で大勢順応が酷すぎる」「深田という権威に盲従している」と批判している。「日本人の権威主義を考えれば深田は百名山をそもそも書くべきでなかった」と深田批判もされてはいる物の、批判の対象はむしろ深田よりも「百名山をありがたがる日本人登山客」。

*5:本多氏は1932年生まれなので1997年で65歳

*6:というかツアー登山の場合は客集めのために当然ながらそう宣伝します

*7:これについては例えば最悪のタイミングで起きた噴火 - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)参照

*8:著書『ドキュメント雪崩遭難』(2016年、ヤマケイ文庫)、『生と死のミニャ・コンガ』(2017年、ヤマケイ文庫)