志位講演についての記事タイトルを見てみる(追記あり)

共産・志位氏、党の長期低迷に危機感 党勢は1965~66年の水準 [共産]:朝日新聞デジタル*1
志位委員長が共産党創立100周年で講演 分派許さず「民主集中制」堅持 - 産経ニュース
「政治モラルの退廃が底なし」共産 志位委員長が政権批判 | NHK | 旧統一教会
共産、統一地方選で「反転攻勢」 結党100年、志位氏講演:東京新聞 TOKYO Web

 朝日が「党勢衰退ガー」で産経が「民主集中制ガー、分派禁止ガー」でネガティブな印象を与えようとしているところ、東京新聞のタイトルが「特にその種の印象操作をしない中立的なタイトル」であるところが「俺的に」実に興味深い。
 意外にもNHKに至っては「(統一教会との癒着など、自民党の)政治モラルの退廃ガー」で「共産党に対して好意的で自民に対して批判的(というのは言い過ぎかもしれませんが)」とも見えるタイトルです。
 なお、志位講演については以下を紹介しておきます。
赤旗2022年9月19日(月)(PDF版)
7面
8面
9面
10面
 産経の「民主集中制」云々は10面に出てきます。
11面
 朝日の「党勢衰退」云々、東京の「統一地方選」云々、NHKの「(統一協会疑惑など自民党の)政治モラル崩壊」云々は11面に出てきます。
赤旗2022年9月19日(月)日本共産党創立100周年記念講演会/日本共産党100年の歴史と綱領を語る/幹部会委員長 志位和夫
 産経の「民主集中制」云々(紙では10面)は以下の通りです。

 日本共産党は、2000年の第22回党大会での規約改定で、日本共産党と日本社会の関係の新しい発展にそくして、党の組織と運営の民主主義的な性格をいっそう発展させました。
(中略)
 それまでは民主集中制を、「民主主義的中央集権制」とも表現していましたが、「中央集権制」という表現も、(ボーガス注:誤解を避けるために)この時に削除しました。
(中略)
 わが党が民主集中制を組織原則にしていることをもって、「上意下達の党」「閉鎖的な党」などと非難し、この原則を放棄せよと迫る攻撃が、半世紀前から繰り返されています。
 2020年に行われた第28回党大会の場合、党大会の議案は、大会の2カ月半前に発表され、2カ月半にわたって、すべての支部、地区委員会、都道府県委員会が、会議を開いて議論をつくし、全体で1800件の意見・提案等が寄せられました。党の会議では多数にならず、大きな流れのなかでは現れてこない少数意見も含めて、214通の個人意見が寄せられ、「しんぶん赤旗」の臨時号に掲載されました。それらの意見は一つひとつ吟味され、大会議案に修正・補強が加えられ、採択されました。
 全党討論で寄せられた意見の一つに、党綱領の一部改定で「ジェンダー平等」を明記したことにかかわって、1970年代、「赤旗」に掲載された論文などで、同性愛を性的退廃の一形態だと否定的にのべたことについて、きちんと間違いと認めてほしいというものがありました。この意見についても集団的に吟味したうえで、党大会の結語で、「これは当時の党の認識が反映したものだが、間違いであったことを大会の意思として明確に表明したい」と真剣な反省をのべました。
 たとえ半世紀近い前のものであっても、事実にそくして間違いはきっぱりと正す。これが日本共産党の大原則なのであります。
 民主集中制に対する攻撃は、わが党の民主的運営のこうした生きた実態や、自己改革能力を見ようとしない不当な独断に満ちたものといわなければなりません。
 ところで、自民党の党大会はどう開かれているでしょうか。今年の党大会は3月13日、1200人を集めて開かれていますが、午前10時開会、12時には終わっています。大会の「次第」を見ますと、その2時間に、国歌、党歌の斉唱、来賓あいさつ、党務報告、運動方針報告、党則改正報告、優秀党員などの表彰、総裁演説、特別企画の空手演武の披露、参院候補者紹介、必勝コールが行われています。驚くことに、報告・提案に対する質疑も討論も、大会の「次第」にまったくありません。この党の「自由」と「民主」はいったいどこにあるのか。そのことが問われてくるのではないでしょうか。

 朝日の「党勢衰退」云々、東京の「統一地方選」云々、NHKの「(統一協会疑惑など自民党の)政治モラル崩壊」云々(紙では11面)は以下の通りです。

【朝日】
 現在、党員の現勢は約26万人、「しんぶん赤旗」の読者数は約90万人となっています。歴史的に見ると、わが党の党勢は、1965年~66年の水準であることを、率直にお伝えしなければなりません。
 私は、この事実を直視し、1961年に綱領を確定した党が、党建設の新たな前進をつくっていった1960年代の初心にたって、党づくりに取り組むことを、また党づくりへのご協力を、心から訴えたいと思います。
(中略)
 1960年代の党建設の飛躍的発展は、70年代の第一の躍進を準備するものとなりました。全国のみなさん。60年代から70年代のような、「強く大きな党をつくり、その力で選挙に勝ち、さらに強く大きな党をつくる」という法則的な発展を、今日の新しい情勢のもとで、みんなの力でつくりだそうではありませんか。

【東京】
 この攻防は現在進行形であります。全国のみなさん。次のたたかい*2では必ず反転攻勢を実現しようではありませんか。(拍手)

NHK
 安倍・菅・岸田政権の10年が、日本の政治・経済・社会をどれだけ悪くしたか。
(中略)
 「森友・加計・桜を見る会」問題、統一協会自民党などの深刻な癒着、憲法違反の安倍元首相の「国葬」強行など、政治モラルの退廃が文字通り底なしになっているではありませんか。

【追記】
 志位講演日本共産党創立100周年記念講演会/日本共産党100年の歴史と綱領を語る/幹部会委員長 志位和夫に適当にコメントしておきます。
 共産党が結党された1922年は

1922年 - Wikipedia
◆3月3日
 全国水平社創立
◆4月20日
 日本農民組合創立

などがありました。なお、結党時の面子は山川均*3、高津正道*4など「戦後の社会党左派」、佐野学、鍋山貞親など「戦後の極右活動家」があり、結党メンバー全てが「死ぬまで共産党員だったわけではないこと」を指摘しておきます。

日本共産党創立100周年記念講演会/日本共産党100年の歴史と綱領を語る/幹部会委員長 志位和夫
 命を落とした先輩たちのなかには、川合義虎*5、渡辺政之輔*6、上田茂樹*7、岩田義道*8小林多喜二*9野呂栄太郎*10、国領五一郎、市川正一*11などの諸先輩がいます。
 わが党の歴史には、不屈のたたかいを貫き命を落とした多くの若い女性党員のたたかいが記録されています。伊藤千代子*12、高島満兎*13、田中サガヨ*14、飯島喜美*15――この4人の同志*16は、それぞれ24歳という若さで命を落としています。

 脚注をつけておきました。

 治安警察法*17は、女性の政党への加入を禁じていました。世論と運動におされて(ボーガス注:治安警察法5条改正で)女性の政治集会への参加までは認められましたが、政党への加入は治安警察法が撤廃された戦後まで禁圧されたままだったのです。

 これについては治安警察法5条改正運動を主導した女性団体である新婦人協会 - Wikipedia市川房枝*18奥むめお*19平塚雷鳥*20らがメンバー)を紹介しておきます。

 1981年には全国革新懇が結成されました。

 過大評価は禁物ですがこの時点で「無党派対策」を始めたことはやはり評価されるべきでしょう。

 瀬長亀次郎さん*21の著作――『民族の悲劇*22』『民族の怒り*23』『沖縄の心――瀬長亀次郎回想録*24

 脚注をつけておきました。

 1999年に本格的に開始した野党外交

 これについては、「日本共産党、野党外交」でググってヒットした、この時期に刊行された緒方靖夫*25日本共産党の野党外交』(2002年、新日本出版社)、『イスラム世界を行く:中東・湾岸六カ国の旅』(2003年、新日本出版社)を紹介しておきます。

 1993年の総選挙では、新たにいくつもの保守新党が生まれ

 具体的には日本新党(細川代表)、新生党(羽田党首、小沢代表幹事)、新党さきがけ(武村代表、鳩山代表幹事、菅政調会長)ですね。羽田*26、小沢*27、武村、鳩山*28は自民離党組です。
 しばらくは

日本新党の細川代表:首相
新生党の羽田党首:細川内閣副総理・外相を経て首相
新党さきがけ
 武村代表:細川内閣官房長官、村山内閣蔵相
 鳩山代表幹事:細川内閣官房副長官。後に菅と民主党を結党(菅、鳩山が共同代表)
 菅政調会長:橋本内閣厚生相。

ということで、こうした「保守新党の面子」が注目を集める「共産党としては苦しい時期」でした。但し皮肉なことに保守新党への失望から1990年代後半に共産党に「一定の躍進」が生まれますが。

 2004年には各界の著名人9氏の呼びかけにより「九条の会」がつくられ

 9人が誰かは九条の会 - Wikipediaで確認できます。残念ながら7名が死去し、現在も存命なのは作家・大江健三郎澤地久枝の2人です。

 「革命」という言葉を何度も使ってきましたが、革命とは、恐ろしいことでも、混乱でもありません。私たちが目指している革命とは、平和的で、合理的な方法で、同時に、根本から、社会変革をすすめるということであります。

 ふと思いついたので「革命」でググったら以下の記事がヒットしました。
 少し「革命」の扱いが「軽い」気がしないでもない(苦笑)。
映画に破壊と興奮もたらした革命児 【評伝】ゴダール監督死去|【西日本新聞me】2022.9.14
『ベルばら』生誕50周年。少女漫画に革命を起こした作者・池田理代子さんに学ぶ後悔しない人生と夢の持ち方(クウネル・サロン) - Yahoo!ニュース2022.9.17
「革命が起きた」途中出場で流れを変えた久保建英を地元紙が激賞!「クレイジーな20分、これで十分だった」(SOCCER DIGEST Web) - Yahoo!ニュース2022.9.17
横野すみれ、デジタル写真集が異例ヒット「グラビア界に革命」「凄すぎて衝撃」(オリコン) - Yahoo!ニュース2022.9.18

*1:党の最盛期とされる1970年代前半レベルに持って行こうという話のようです(しかしそうはタイトルに朝日が書かない辺りが何とも)。なお朝日記事タイトルの「長期低迷」と言う表現には相当に問題があるでしょう。なぜなら1990年代にはささやかながら『足立区長選、狛江市長選での共産党候補の当選(1996年)』などがあり、党の躍進があったからです。

*2:統一地方選とは書いてありませんが意訳するとそうなると思います。

*3:戦後、社会主義協会代表

*4:衆議院副議長や社会党両院議員総会長など歴任

*5:亀戸事件による虐殺。日本共産青年同盟(共青:後の民主青年同盟(民青)の前身)委員長。評伝として加藤文三『川合義虎:日本共産青年同盟初代委員長の生涯』(1988年、新日本新書)

*6:著書として『左翼労働組合の組織と政策』(復刻版、1990年、而立書房)。評伝として加藤文三『渡辺政之輔とその時代』(2010年、学習の友社)

*7:上田については赤旗特高に逮捕され闇に葬られた党創立者の一人、上田茂樹とは?(2007.10.20)参照

*8:岩田については赤旗中国侵略に反対し殺された岩田義道とは?(2005.6.11)参照。評伝として平井利果『岩田義道』(2019年、風媒社)

*9:評伝として倉田稔『小林多喜二伝』(2003年、論創社)、藤田廣登『小林多喜二とその盟友たち』(2008年、学習の友社)、手塚英孝『小林多喜二(新装版)』(2008年、新日本出版社

*10:野呂については赤旗野呂栄太郎ってどんな人なの?(2004.2.11)参照。著書として『日本資本主義発達史』(岩波文庫)。評伝として鷲田小弥太『野呂栄太郎とその時代』(1988年、北海道新聞社)

*11:市川については赤旗 敗戦を前に獄死した市川正一とは?(2007.8.16)参照

*12:評伝として東栄蔵『伊藤千代子の死』(1979年、未来社)、藤森明『こころざしいまに生きて:伊藤千代子の生涯とその時代』(1995年、学習の友社)、藤田廣登『時代の証言者・伊藤千代子(増補新版)』(2020年、学習の友社)、ワタナベ・コウ『漫画・伊藤千代子の青春』(2021年、新日本出版社

*13:高島については赤旗反戦平和の信念を貫いた共産党員、高島満兎とは?(2005.8.20)参照

*14:田中については赤旗命をかけて反戦の信念を貫いた田中サガヨとは?(2005.8.17)参照

*15:飯島については赤旗コンパクトに「闘争・死」と刻み 獄死した飯島喜美とは?(2005.8.18)参照

*16:4人全てを取り上げた評伝として『こころざしつつたふれし少女:戦前の日本共産党員のたたかいは国民の宝』(1993年、日本共産党中央委員会出版局)がある。

*17:1900年に第二次山県内閣が制定。1945年に廃止された

*18:戦後、参院議員

*19:戦後、主婦連合会初代会長

*20:戦後、日本婦人団体連合会婦団連)初代会長、世界平和アピール七人委員会委員など歴任

*21:那覇市長、沖縄人民党書記長、衆院議員、日本共産党副委員長など歴任

*22:復刻版が2013年、新日本出版社

*23:復刻版が2016年、新日本出版社

*24:復刻版が2014年、新日本出版社

*25:参院議員。共産党副委員長(国際委員会責任者兼務)。著書『激動のアフガニスタンを行く』(1980年、新日本出版社)、『世界60カ国見たまま聞いたまま』(1986年、新日本出版社)、『フランス左翼の実験』(1987年、大月書店)、『楽しくつきあう外国語』(1994年、新日本新書)、『「おくれた日本」と「すすんだ日本」』(1994年、新日本出版社)、『視点を変えるとこんな日本が見えてくる』(2000年、新日本出版社)、『つながる9条の絆』(2014年、新日本出版社)など

*26:自民党時代に中曽根、竹下内閣農水相、宮沢内閣蔵相を歴任。いわゆる竹下派七奉行の一人。竹下派の内部抗争で小渕恵三(竹下の後を継ぎ小渕派会長。自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相などを経て首相)に敗れ反主流派に追いやられたことで小沢と共に自民を離党し新生党を結成

*27:自民党時代に中曽根内閣自治相・国家公安委員長自民党幹事長(海部総裁時代)を歴任。いわゆる竹下派七奉行の一人。

*28:自民党総裁、首相の鳩山一郎は祖父。福田赳夫内閣外相の鳩山威一郎は父。宮沢内閣文相、第一次安倍、福田内閣法相、麻生内閣総務相を歴任した鳩山邦夫は弟