珍右翼・高世仁に突っ込む(2022年10/31日分)

核戦争寸前だった第二次台湾海峡危機 - 高世仁のジャーナルな日々

 核兵器の使用が現実的オプションになったことがある。1958年の第2次台湾海峡危機だ。この時、米政府内で中国本土への核攻撃が真剣に検討されていた。
 この事実は、かつて「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露した元国防総省職員のダニエル・エルスバーグ氏*1が入手していた機密文書をもとに、去年春に『ニューヨーク・タイムズ』が報じた。(朝日朝刊2021年5月25日付)

 中国が「経済大国、軍事大国」となった現在ならまだしも、1958年において中国(当時、大躍進の失敗で大打撃)の台湾侵攻を「核使用しなければ、米国が食い止められない」とはとても思えませんが、それはさておき。
 おそらくこの「恐怖体験」が中国に「自前の核を持ちたい」という思いを抱かせる(そして実際に核保有に成功)と同時に、「台湾が独立宣言しない限り武力行使しない(中国にとって武力行使はリスクが大きすぎるため原則としてしない)」という現状の政策を生み出したのでしょう。

参考

中国への核攻撃、過去に米検討 台湾海峡危機の機密文書:朝日新聞デジタル2021.5.24
 中国軍が台湾の金門島に砲撃を加えた1958年の第2次台湾海峡危機の際、米政府内で中国本土への核攻撃が検討されていたことがわかった。22日、米ニューヨーク・タイムズ(NYT)が米国防総省の秘密報告書「ペンタゴン・ペーパーズ」を暴露した元同省職員で核戦略専門家のダニエル・エルズバーグ氏(90)が入手していた機密文書をもとに報じた。
 機密文書によれば、太平洋空軍司令官は、米中間の武力衝突が開始された時点で、中国本土への核の先制攻撃の許可を求めていた。
 トワイニング*2統合参謀本部議長も、中国の空軍基地への原爆投下でも中国が引かなければ、「北は上海に至るまで深く核攻撃を行う以外に選択肢はない」と強調。さらに、一連の米側の核攻撃によって「(ソ連が)台湾に対してほぼ確実に核攻撃で報復し、(ボーガス注:米軍が駐留する)沖縄にも核攻撃で報復する可能性があるだろう」と示唆した上で、「しかし、国家安全保障政策として(金門島など)島嶼部を防衛するならば、その結果は受けいれられなければいけない」と強調したという。
 中国本土への核攻撃案は最終的に、アイゼンハワー*3大統領が退けたという。

1958年の台湾危機で沖縄への報復攻撃を容認「米軍の共通認識だった」 元米高官ハルペリン氏が明らかに | 沖縄タイムス+プラス ニュース | 沖縄タイムス+プラス2021.5.31
 1958年の第二次台湾海峡危機の際、米軍内で中国本土を核攻撃する声が高まり、核による(ボーガス注:米軍が駐留する)沖縄への報復攻撃も容認するとの認識が共有されていたことが30日までに分かった。大統領が核の使用を認めなかったため、こうした事態は回避された。
 沖縄返還交渉にも携わったモートン・ハルペリン氏*4(元米政府高官)が本紙の取材に明らかにした。

中国への核攻撃、米が検討 58年の台湾海峡危機で証言:朝日新聞デジタル(ワシントン=園田耕司)2021.5.29
 1958年の第2次台湾海峡危機をめぐる機密文書を公開した元国防総省職員の核戦略専門家ダニエル・エルズバーグ氏(90)が朝日新聞のインタビューに応じた。当時のアイゼンハワー大統領らがソ連との核の報復合戦へと至る事態を覚悟しながらも、中国本土への核攻撃を真剣に検討していたと証言。台湾海峡をめぐる現在の米中対立にも強い危機感を示した。
 エルズバーグ氏は自らも執筆に携わった米国防総省ベトナム戦争の機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」を入手し、71年に暴露したことで知られる。同氏はこの際、モートン・ハルペリン元国防次官補代理が検証・執筆した第2次台湾海峡危機をめぐる最高機密文書もコピーしていた。エルズバーグ氏は「米国が中台間の紛争に再び武力介入する可能性があると言われる今、機密文書の内容を一般の人々にも広く共有してもらいたい。議論・検討してもらうことが大切だと感じた」と語る。
 機密文書によれば、アイゼンハワー大統領や米軍高官らが会議で戦術核を使って中国本土への先制攻撃を行うことを真剣に検討。同時に、米国の核攻撃に対してはソ連が参戦し、核による報復合戦に発展すると想定。トワイニング統合参謀本部議長も、米側の中国本土への核攻撃で「(ソ連が)台湾にはほぼ確実に、沖縄にも核攻撃で報復するだろう」と示唆した。
 エルズバーグ氏によると、のちの検証では、ソ連・中国にも米国と武力衝突にまで発展させる「意図はなかった」ことが判明。だが、ケネディ政権下のキューバ危機のように、「第2次台湾海峡危機でも(米側の核の先制攻撃で)全面戦争に発展する可能性は十分にあった」と語る。
◆記者
 ベトナム政策に関する機密文書「ペンタゴン・ペーパーズ」と一緒に、今回の台湾海峡危機に関する機密文書を入手した。
◆エルズバーグ
 そうです。私は1945~68年のベトナム政策をめぐる米政府内の政策決定過程を検証した『ペンタゴン・ペーパーズ』の執筆にかかわりました。私の担当は、61年の政策決定過程でした。その後の69年、私はベトナム戦争が落ち着いた後、この『ペンタゴン・ペーパーズ』をベトナムでの失敗から学ぶべき教訓として公表しようとコピーしましたが、そのとき、モートン・ハルペリン元国防次官補代理が第2次台湾海峡危機について検証した最高機密文書も同時にコピーしたのです。
(以下は有料記事のため読めません)

 小生も無知なので今回の高世の記事でこの事実を初めて知りましたが、赤字部分は本当に酷いですね。沖縄県民を何だと思ってるのか(勿論、米兵に対しても冷酷極まりないですが)。しかしこの記事ほど「在沖縄米軍の存在がいかに沖縄にとって危険な代物であるか」が分かる記事もないでしょう。
 それにしても朝日に比べて沖縄タイムスが「沖縄が核攻撃されたかもしれない」という点に重点を置いたタイトルなのは「当事者だから当然」とはいえ「本土と沖縄の温度差」を感じますね。

*1:著書『国家機密と良心:私はなぜペンタゴン情報を暴露したか』(2019年、岩波ブックレット)、『世界滅亡マシン:核戦争計画者の告白』(2020年、岩波書店

*2:1897~1982年。空軍参謀総長統合参謀本部議長など歴任

*3:1890~1969年。参謀本部作戦部長、ヨーロッパ戦域連合国軍最高司令官、連合国遠征軍最高司令官、陸軍参謀総長北大西洋条約機構NATO)軍最高司令官等を経て大統領

*4:ジョンソン政権国防次官補代理、ニクソン政権国家安全保障会議メンバー、クリントン政権大統領特別顧問、国家安全保障会議メンバー、国務省政策企画本部長など歴任。ハルペリンについては赤旗“日本の秘密法は最悪”米元高官が批判/東京でシンポ(2014.5.11)、盗聴とたたかったハルぺリン氏と22年ぶり再会/秘密保護法反対の東京の講演会で/警察による電話盗聴事件元原告・日本共産党副委員長 緒方 靖夫さん 手記(2014.5.26)、47年ぶり訪沖の米政府元高官/“辺野古の思い米国に”/現地を視察・日本政府批判(2014.9.19)、沖縄核密約「今も有効」/米政府元高官・ハルペリン氏、本紙に証言(2014.9.22)、“「沖縄に核」容認”メモは本物/当事者の元米高官 本紙に証言(2018.3.15)を紹介しておきます。