阿部治平とリベラル21は「台湾独立論」を応援したいのか?

リベラル21 平和・護憲勢力は鄭也夫氏の声に応えよう(阿部治平)
 阿部とリベラル21は

◆台湾が独立を宣言したら、中国はそれを認めろ。平和・護憲勢力(革新勢力)も独立論を支持しろ
◆現状の『独立宣言しない限り侵攻しない』路線を放棄し『台湾が独立宣言しようが、国連加盟を目指そうが、何があろうが、侵攻しない』路線に中国は変更しろ

と言いたいのかと疑いたくなる文章です。
 阿部曰く「中国による台湾武力解放に反対する鄭也夫氏の主張を平和・護憲勢力、革新勢力(阿部の言う『平和・護憲勢力』『革新勢力』が何を意味するのかよく分かりませんが。まあ、自民と維新はそれに該当しないし、社民と共産はそれに該当するとは思いますが)は支持しよう」。
 「はあ?」ですね。
 「鄭也夫氏の主張」も「台湾独立論支持なのか?」と言いたくなる理解困難な代物ですが、それはさておき。
 どこの世界に「中国による台湾武力解放」に賛成する日本人(平和・護憲勢力に限らず、改憲勢力の自民も含めて)がいるのか。
 そんな日本人は「仮にいたとしても」超少数派でしょう(勿論、俺も支持しません)。少なくとも社民党日本共産党はそんな立場ではない。
 そもそも中国自体が「独立宣言しない限り侵攻しない」であり「平和統一が原則、武力侵攻は例外」という立場なのですが。
 しかし阿部曰く「平和・護憲勢力(革新勢力)は鄭也夫氏の声に応えるべきだ」。
 どうも「中国の武力侵攻には賛成しない」という今の「社民党日本共産党の立場」では阿部やリベラル21は不満らしい。
 そこで出てくる疑問は、冒頭に書いた

阿部とリベラル21は
◆台湾が独立を宣言したら、中国はそれを認めろ。平和・護憲勢力(革新勢力)も独立論を支持しろ
◆「現状の『独立宣言しない限り侵攻しない』路線を放棄し『台湾が独立宣言しようが、国連加盟を目指そうが、何があろうが、侵攻しない』路線に中国は変更しろ
と言いたいのか

という疑念です。正直、この阿部の文章はそのような「台湾独立論支持」にしか理解できないでしょう(阿部は卑劣にも「そのあたりを明らかに故意にごまかしています」が)。
 なるほど

◆台湾が独立を宣言したら、中国はそれを認めろ。
◆現状の『独立宣言しない限り侵攻しない』路線を放棄し『台湾が独立宣言しようが、国連加盟を目指そうが、何があろうが、侵攻しない』路線に中国は変更しろ

という立場には「日本共産党社民党」は立っていません。
 例えば

日本共産党の自主外交:台湾問題の平和的解決をめぐって(2001年5月14日、東京・武道館での不破議長(当時、現在は常任幹部会委員(党附属社会科学研究所長))の演説からの抜粋)
 私どもは、中国と台湾の問題に関しては、日本は「一つの中国」という国際法の枠組みを守らなくてはいけないと、確信しています。
 日本と中国の間でも、アメリカと中国の間でも、「中国は一つ」という原則が確認されています。破るわけにはゆかない国際的原則です。

として明らかに日本共産党は「一つの中国」支持の立場です。
 しかし、それは

◆「台湾独立支持」は「日中国交正常化」の前提である、いわゆる「一つの中国」に反する
◆「台湾独立支持の公然表明」など、「日本の自民党政権」も含めて中国と国交のある国の政府はどこもとっていない
◆「独立宣言しない限り侵攻しない、という約束を遵守せよ」という要求ならまだしも「台湾が独立を宣言してもそれを容認せよ」などという要望に中国が応じる可能性はまずない
◆「独立宣言しない限り侵攻しない」という今の中国の立場でも、中国がその約束を遵守し、一方、台湾が「独立宣言」しなければ「中台軍事衝突の阻止」という意味においては何の問題も無い

という意味で「当たり前」ではないのか。
 自民党支持層ですらよほどの極右で無い限り

「台湾が独立を宣言したら、中国はそれを認めろ。平和・護憲勢力も独立論を支持しろ」
「現状の『独立宣言しない限り侵攻しない』路線を放棄し『台湾が独立宣言しようが何があろうが、侵攻しない』路線に中国は変更しろ」

という立場には立っていない。
 そして

「台湾が独立を宣言したら、中国はそれを認めろ。平和・護憲勢力も独立論を支持しろ」
「現状の『独立宣言しない限り侵攻しない』路線を放棄し『台湾が独立宣言しようが何があろうが、侵攻しない』路線に中国は変更しろ」

というのはもはや「中台紛争反対」というレベルの話ではなくなっています。「中台紛争反対」は「台湾独立支持」とイコールではない。
 そのあげく、

赤旗主張/21年版防衛白書/台湾問題で軍事緊張あおるな2021.7.14
 麻生太郎副総理は、「(台湾で)大きな問題が起きると、存立危機事態に関係してきても全くおかしくない。そうなると、日米で一緒に台湾を防衛しなければならない」と述べ、台湾海峡有事を安保法制が定める「存立危機事態」に認定し、日本が集団的自衛権を行使することもあり得るとの考えを示しています(7月5日)。
 中国が台湾に対し軍事的圧力・威嚇を強化していることは厳しく批判されなければなりません。しかし、日米が台湾問題に軍事的に関与する方向に進むことも決して許されません。台湾問題の解決のため非平和的な手段は排除されるべきであり、あくまでも平和的な話し合いで行われるべきです。
 今、何より重要なのは、中国の覇権主義国際法に基づいて冷静に批判し、外交的に包囲することです。いたずらに軍事緊張をあおり、軍事対応の強化に突き進むことではありません。

赤旗台湾有事 沖縄が核攻撃の標的に/米議会諮問機関報告書で指摘/知事「あってはならない」/渡久地議員が告発2021.12.9
 米議会の諮問機関「米中経済安全保障調査委員会」が11月17日に公表した報告書で、「台湾有事」で米国が軍事介入の動きを見せた場合、米空母とグアム、沖縄の米軍基地が核兵器による先制攻撃の標的になる可能性があると指摘していることが分かりました。日本共産党の渡久地修議員が8日の沖縄県議会で明らかにしました。
 玉城デニー知事は「台湾有事で沖縄が標的になることはあってはならない」として、政府に地域の緊張緩和と信頼醸成を求める立場をあらためて表明。

海峡両岸論 第135号 2022.02.02発行 - 戦争シナリオを放置していいのか 戦争シナリオを放置していいのか - | ちきゅう座
 台湾有事を念頭に、日米共同「戦争シナリオ」が出来つつある。日米両政府は1月7日の外務・防衛閣僚による日米安全保障協議委員会(「2プラス2」)で、台湾有事の初期段階に米海兵隊自衛隊とともに南西諸島を「機動基地」として使い、中国艦船の航行を阻止する「共同作戦計画」推進にゴーサインを出し、日米首脳会談(同21日)もこれを追認した。菅義偉前首相とバイデン大統領が、昨年4月の日米首脳会談で「台湾有事」に向けて日米安保を「地域の安定装置」から「対中同盟」に性格変更してからわずか1年足らず。憲法違反の疑いが濃厚な共同作戦計画という「戦争シナリオ」が、野党の反対*1や議論もなく独り歩きする日本の現状は、戦争に近づく危険に満ちている。

といった「日米の軍事タカ派路線」への「共産党などの批判(社民党も同様の立場ですが)」に対して

 日米両国の軍備増強を批判するばかりでは、日本国民の多くの信頼を得ることはできない。革新勢力は主要打撃の方向を間違ってはならない。

として「中国が一番悪い」「中国が主要打撃の方向だ」として「日米両国政府の軍事タカ派路線を事実上免罪する」阿部とリベラル21です。
 これのどこが

 私たちは護憲・軍縮・共生を掲げてネット上に市民メディア、リベラル21を創った

なのか。 

 私たちは改憲・軍拡・反中国を掲げてネット上に右翼メディア、リベラル21を創った

の間違いではないのか。
 阿部とリベラル21の「中国敵視」は「常軌を逸してる」というべきでしょう。
 せめてもの救いは「阿部とリベラル21がどんなに大言壮語しようとも」、彼らの社会的影響力が「ほぼ皆無」ということです。

*1:日本共産党社民党はこうした動きに反対ですので「野党の反対が未だ弱く」ならまだしも「なく」というのは表現として不適切です。