今日の中国ニュース(2022年11月2日分)

「習近平崇拝だけは許すな」 長老が守り切った最後の砦: 日本経済新聞

 習がこだわり続けた改正後の共産党規約全文に、彼への忠誠を示す「二つの確立」というスローガンが全く見当たらない。
 「習近平思想」「人民の領袖*1」という文言もない。長老らの抵抗で習は事実上、挫折した*2

 日経に寄れば長老とは「80歳*3胡錦濤*4、前国家主席温家宝*5前首相」「83歳*6の曽慶紅*7元国家副主席」「96歳*8江沢民*9国家主席」「105歳*10(恐らく長老としては最高齢)の宋平氏*11」等だそうです。
 「反中国、反習近平」の日経なので真偽不明ですが、仮に事実として「モリカケ桜疑惑の安倍に好き放題やらせた自民より、民主主義の観点では中国共産党の方がよほどましでは」感を感じます。
 多分「自民党応援団」日経はそうは思っておらず「ざまあ、習近平」程度の考えしかないでしょうが。

 習は党大会が終わると真っ先に、「新四人組」と評された面々を含む6人を連れて陝西省・延安に入った。
 内陸部の黄土高原にある延安は、1940年代に毛沢東が反対派を迫害した「延安整風運動*12」の地だ。毛沢東はその20年後、本当の「四人組」を使った文革の悲劇を引き起こす。習は延安の毛沢東旧居でリベンジを誓っただろう。

 「反習近平」の日経らしいですがおそらくそんな深い意味はないでしょう。そして「二つの確立」等が党規約に入れば、日経は「政治的勝利の自画自賛=延安訪問」と報じたのでしょうから、結論ありきで実に馬鹿馬鹿しい。
 それにしても、今回新しく党中央政治局常務委員に就任した

之江新軍 - Wikipedia習近平派のうち「習氏が浙江省党委員会書記だった時に部下として仕えた人間」のこと)等を参照
◆李強
 常務委員就任当時、上海市党委員会書記。2023年3月に首相に就任の見込みと報道。習氏が浙江省党委員会書記時代に、部下(浙江省党委員会秘書長)として仕えた
◆蔡奇
 常務委員就任当時、北京市党委員会書記。習氏が浙江省党委員会書記時代に、部下(台州市党委員会書記:台州市は浙江省の一都市)として仕えた
◆丁薛祥
 常務委員就任当時、党中央弁公庁主任。2023年3月に副首相に就任の見込みと報道。習氏が上海市党委員会書記時代に、部下(上海市党委員会秘書長)として仕えた
◆李希
 常務委員(党中央規律検査委員会書記兼務)就任当時、広東省党委員会書記。

がちょうど「四人」だからって「新四人組」呼ばわりは「習氏へのネガキャン」があまりにも酷すぎでしょう(ちなみに常務委員の定員は7名で残りの3名(総書記の習氏のほか、趙楽際*13、王滬寧氏は再任)。
 なお「四人組」とは「江青*14」「張春橋*15」「姚文元*16」「王洪文*17」のことです(四人組 - Wikipedia参照)。
 なお、新四人組でググったら【憲法編】司法試験・予備試験のための有益な基本書等【厳選】 - 法律解釈の手筋憲法の基本書について | 非エリートのための司法試験情報ブログ憲法の基本書(追記:2016年4月18日) : ASAP's blog 第2版憲法の基本書・演習書・判例集 - おいでよ ほうりつがくのもり(基本書レビューblog)がヒットしました。
 司法試験受験業界など「資格試験業界」では

◆野中俊彦*18、中村睦男*19高橋和之*20、高見勝利*21の共著『憲法I・II(第5版)』(2012年、有斐閣

を「四人組(旧四人組)教科書」あるいは単に「四人組(あるいは旧四人組)」と

◆渡辺康行*22、宍戸常寿*23、松本和彦*24、工藤達朗*25の共著『憲法I:基本権』(2016年、日本評論社)、『憲法II:総論・統治』(2020年、日本評論社

を「新四人組教科書」あるいは単に「新四人組」と呼び、今やこれらが「大昔の宮沢俊義*26憲法」「昔の芦辺*27憲法(40代の小生が法学部生だった20年以上前はこれが最もポピュラー)」等に取って代わった「憲法教科書(大学法学部や資格受験業界では法学教科書のことを基本書とも呼ぶのでこれらのブログは基本書と書いていますが)の主流」のようです。
 未だに芦部憲法も「芦辺の弟子である高橋和之・東大名誉教授の手」によって増補された、芦辺『憲法(第7版)』(2019年、岩波書店)として刊行はされてるようですが。何が言いたいかと言えば「日経の新四人組呼ばわりて、司法試験受験業界が高橋和之氏らを旧四人組、渡辺康行氏らを新四人組呼ばわりするのと同じくらい、流通範囲狭いよね(苦笑)」という嫌みのつもりです。


「胡錦濤と目を合わすな」 病が招いた軍団完敗の悲劇: 日本経済新聞
 日経記事の「病」とはパーキンソン病胡錦濤氏)であり、「軍団」とは「胡錦濤前国家出席、李克強首相の出身である共青団中国共産主義青年団)」であり、完敗とは「7人の中国共産党政治局常務委員」に共青団出身者が入らなかったことです。
 なお、例の退出については日経は「パーキンソン病を理由とした退出」であり、強制退出ではないとみています。


豚肉の中国・万州国際、欧州で攻め 買収「積極的に」: 日本経済新聞

 グローバル企業にのし上がったのは、2013年に約71億ドルを投じて米国の豚肉加工大手、スミスフィールドを完全子会社にしたからだ。
 2017年にはポーランドの同業3社を相次ぎ買収した。このほか、ポーランドでは同年にこの3社とは別のピニ・ポロニア社に33%強を出資し、2019年に完全子会社にした。2021年にはスロバキアハンガリーに加工拠点などを持つメコムグループを傘下に収めた。

 「中国の経済大国化」を象徴する話だと思います。


台湾の人気パンダが衰弱し中国が“異例の対応” その思惑とは?
 「緊張する中台関係」を理由にパンダを見殺しにして「パンダ(あるいは動物園)と『蔡英文政権の対中国外交』は関係ないのに中国は酷い。何故専門家を派遣しない」等と中国側が非難されてはかなわないと言うだけの話であり、中国にとって「異例の対応」と言うほどの話でもないでしょう。
 むしろ台湾 中国パンダ専門家受け入れ 異例の速さで許可 関心集める | NHK | 台湾が書くように「台湾の方が異例」ではないか。
 中国パンダ専門家の受け入れを拒否した場合、パンダを助けるだけの技術力が台湾にないために、パンダを死なせた場合の「パンダ(あるいは動物園)と『習近平政権の対台湾外交』は関係ないのに蔡英文政権は酷い。何故中国から受け入れなかった!」という非難を恐れ、受け入れざるを得なかった、中国人専門家を受け入れても救出できなければ「仕方がなかった」で済むと判断したと言うことでしょうか?
 これを契機に蔡英文が反中国路線を修正すればいいですが残念ながらそうはならないのでしょう。

*1:以前も別記事で書きましたが中国では「領袖という言葉には特別な意味合いがある」と日本メディアが報じていますが少なくとも日本においては「自民党派閥の領袖(ボス)」等として普通に使われる言葉です。

*2:日経は「党中央政治局常務委員を習氏と近い人間で固め、共青団出身者が入らなかったこと」を「『二つの確立』等の語を党規約に入れられなかったが故に、習氏が行った巻き返し、意趣返し」、あるいは逆に「党中央政治局常務委員を習氏と近い人間で固め、共青団出身者が入らなかったことへの反習派の巻き返し、意趣返し」とみなし、両者に関連があると見いています。

*3:つまり1942年生まれ。同じ年に生まれた政治家としては「小泉元首相」「小沢一郎自民党幹事長、元民主党幹事長」「山東昭子参院議長」「河村建夫官房長官麻生内閣)」「東門美津子沖縄市長」「市田忠義日本共産党副委員長(元書記局長)」「吉井英勝・元衆院議員(共産党)」「金正日北朝鮮国防委員長(既に故人ですが)」等がいます(1942年 - Wikipedia参照)。

*4:共青団中央書記処第一書記、貴州省党委員会書記、チベット自治区党委員会書記、党総書記、国家主席、党中央書記処書記等を歴任

*5:党中央弁公庁主任、副首相、首相(党中央政治局常務委員兼務)など歴任

*6:つまり1939年生まれ。同じ年に生まれた政治家としては「二階元自民党幹事長」「森内閣通産相小泉内閣経産相等を歴任した平沼赳夫」「加藤紘一自民党幹事長(既に故人ですが)」等がいます(1939年 - Wikipedia参照)。

*7:江沢民氏が上海市党委員会書記時代に部下(副書記)として仕えた。江氏の総書記就任を契機に中央政界入り。党中央弁公庁主任、党中央組織部長、国家副主席など歴任。反江沢民の立場だった陳希同(汚職摘発当時、北京市党委員会書記)の汚職を暴いて失脚させるなど、習政権の基盤強化に貢献したとされる(曽慶紅 - Wikipedia参照)。

*8:つまり1926年生まれ。同じ年に生まれた政治家としては「竹入元公明党委員長」、既に故人ですが「梶山静六官房長官(橋本内閣)」「ジスカールデスタン元フランス大統領」「フィデル・カストロキューバ首相」等がいます(1926年 - Wikipedia参照)。

*9:電子工業大臣、上海市長、党委員会書記等を経て党総書記、国家主席

*10:つまり1917年生まれ。同じ年に生まれた政治家としては既に故人ですが「ケネディ元米国大統領」「朴正熙元韓国大統領」「インディラ・ガンジー元インド首相」(単なる偶然ですが上記政治家は皆暗殺で死亡)等がいます(1917年 - Wikipedia参照)。

*11:甘粛省党委員会第一書記兼革命委員会主任(省長)、国家計画委員会主任(大臣級)、党中央組織部長、党中央政治局委員、党中央政治局常務委員など歴任。胡錦濤温家宝氏の上司だったことがある。

*12:確かにそういう地ではありますが、習字氏にとっての延安は「そうした地」ではなく「国民党への巻き返しを展開した地(1937~1947年まで中国共産党中央委員会が存在)」でしかないでしょう。

*13:西寧市党委員会書記、青海省長、陝西省党委員会書記、党中央組織部長、党中央規律検査委員会書記等を歴任。2023年3月に全人代委員長に就任見込み

*14:1914~1991年。毛沢東の妻。中央文革小組第1副組長。1981年に死刑判決(2年間の執行猶予付き)。1983年に無期懲役減刑。1991年に自殺

*15:1971~2005年。党中央文革小組副組長、副首相を歴任。1981年に死刑判決(2年間の執行猶予付き)。1983年に無期懲役減刑。1997年、懲役18年に再減刑。1998年1月、健康状態を理由に仮出所。2005年4月21日、胃癌のため88歳で死去

*16:1931~2005年。1981年に懲役20年の判決。1996年に出所し、2005年12月23日に糖尿病により74歳で死去。

*17:1935~1992年。1981年、終身刑判決。1992年8月3日、肝臓病により獄死

*18:1939年生まれ。法政大学名誉教授。著書『憲法訴訟の原理と技術』(1995年、有斐閣)、『選挙法の研究』(2001年、信山社

*19:1939~2020年。北海道大学名誉教授。元・財団法人アイヌ文化振興・研究推進機構理事長。『社会権法理の形成』(1973年、有斐閣)、『社会権の解釈』(1983年、有斐閣)、『アイヌ民族法制と憲法』(2018年、北海道大学出版会)など

*20:1943年生まれ。。東大名誉教授。著書『現代憲法理論の源流』(1986年、有斐閣)、『国民内閣制の理念と運用』(1994年、有斐閣)、『憲法判断の方法』(1995年、有斐閣)、『現代立憲主義の制度構想』(2006年、有斐閣) 、『体系憲法訴訟』(2007年、岩波書店)など

*21:1945年生まれ。上智大学名誉教授。著書『宮沢俊義憲法学史的研究』(2000年、有斐閣)、『芦部憲法学を読む』(2004年、有斐閣)、『現代日本の議会政と憲法』(2008年、岩波書店)、『政治の混迷と憲法政権交代を読む』(2012年、岩波書店)、『憲法改正とは何だろうか』(2017年、岩波新書

*22:1957年生まれ。一橋大学教授。著書『「内心の自由」の法理』(2019年、岩波書店)、『憲法裁判の法理』(2022年、岩波書店

*23:1974年生まれ。東大教授。著書『憲法裁判権の動態』(2005年、弘文堂)

*24:1964年生まれ。大阪大学教授。著書『基本権保障の憲法理論』(2001年、大阪大学出版会)、『事例問題から考える憲法』(2018年、有斐閣

*25:1956年生まれ。中央大学教授。著書『憲法の勉強』(1999年、尚学社)、『憲法学研究』(2009年、尚学社)

*26:1889~1976年。東大名誉教授

*27:1923~1999年。東大名誉教授。宮沢俊義の弟子。著書『憲法と議会政』(1971年、東京大学出版会)、『憲法訴訟の理論』(1973年、有斐閣)、『現代人権論』(1974年、有斐閣)、『憲法訴訟の現代的展開』(1981年、有斐閣)、『憲法制定権力』、『司法のあり方と人権』(以上、1983年、東京大学出版会)、『憲法判例を読む』(1987年、岩波書店)、『人権と憲法訴訟』(1994年、有斐閣)、『人権と議会政』(1996年、有斐閣)、『宗教・人権・憲法学』(1999年、有斐閣)など