新刊紹介:「経済」2022年12月号

「経済」12月号を俺の説明できる範囲で簡単に紹介します。「俺の無能」のため「赤旗記事の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
◆巻頭言「中井久夫さん*1を悼む」
(内容紹介)
 中井氏への追悼文ですが小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考

中井久夫 - Wikipedia
 阪神・淡路大震災(1995年)に際して被災者の心のケアにあたったことを契機に、米国の精神科医ジュディス・ハーマンの「心的外傷と回復」の翻訳(1999年、みすず書房)を行うなど、PTSD心的外傷後ストレス障害)の研究・紹介を精力的に行った。
 文筆家としても知られ、ギリシャの詩人カヴァフィスの全詩集翻訳(みすず書房)により、1989年に読売文学賞受賞。

風景構成法 - Wikipedia
 箱庭療法やなぐり描き法の示唆を受けて、中井久夫によって1969年に創案された、絵画療法(芸術療法)の技法の一つ。

中井久夫さん - jmiyazaの日記(日々平安録2)2022.8.9

中井久夫さん (続) - jmiyazaの日記(日々平安録2)2022.8.10
 中井氏は医療者を対象とした本も残している。
 「看護のための精神医学」(医学書院、2001年)は看護師さんを対象にかかれた名著である。
 「看護という職業は、医師よりもはるかに古く、はるかにしっかりした基盤の上に立っている。医師が治せる患者は少ない。しかし看護できない患者はいない。息を引き取るまで、看護だけはできるのだ。」
 中井氏の医師・看護師双方を対象とした本としては、「こんなとき私はどうしてきたか」(医学書院、2007)がある。どちらかというと看護師を主たる対象としたシリーズの中の一冊本であるが、この本は2005~2006年にかけて兵庫県の有馬病院でおこなわれた「医師・看護師合同研修会」の記録であるから、医師・看護師を対象にしている。
 どうも看護論というのは頭でっかちになる傾向があると思うが、これはまさに実践の本である。なにしろ第2章は「治療的「暴力」抑制論」で患者さんが暴れたときの「腕を押さえる方法」などが超具体的に写真入りで書かれている。
 これを読んでわたくしが心底驚いたのは、「暴力」抑制などを医師として学ぶ必要があると感じたことは一度もなかったからである。
 名医などという言葉はあまり使わないほうがいい言葉かもしれないが、「すぐれた医師」あるいは「すぐれた臨床家」を失ったのだと思う。

追悼 中井久夫 | みすず書房2022.8.22
追悼・中井久夫さん<ケアの時代を予見したひと> 斎藤環さん寄稿 | 毎日新聞2022.8.29
追悼 中井久夫先生 | ラグーナ出版2022.8.30
追悼・日本を代表する精神科医、中井久夫さん「弱さに裏うちされた強さで、全力で子どもたちを守ろうとした」 最後の著作『いじめのある世界に生きる君たちへ』をともに編んで|話題|婦人公論.jp2022.8.31
中井久夫先生に教わったこと | 漢方ことはじめ | 津田篤太郎 | 毎日新聞「医療プレミア」2022.9.12
客員論説委員・最相葉月 いじめのある世界 中井久夫さんの論に学ぶ | 針路21 | 神戸新聞NEXT2020.9.26


◆随想「医師として、被災者のそばで」(斎藤紀)
(内容紹介)
 『広島の被爆と福島の被曝』(2018年、かもがわ出版)の著者である筆者が、福島原発事故について論じていますが小生の無能のため詳細な紹介は省略します。
参考 
「共に歩き続けたい」と講演 被爆者医療に携わった福島の医師 | 毎日新聞2019.3.11


世界と日本
◆国連総会とロシアの孤立(西村央)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
「併合」非難 最多143カ国/国連総会で決議採択/ロシアの孤立 いっそう2022.10.14
主張/「併合」非難決議/ロシアは国際的な総意に従え2022.10.14


◆イタリア総選挙と新政権(宮前忠夫*2
(内容紹介)
イタリア総選挙 極右政党 不満受け皿に/起源はネオファシスト政党2022.9.28
 右翼連合が237議席と激増し、政権を奪還したことと、一時躍進した「五つ星運動」が52議席と大きく票を減らしたことが注目されます(なお、左派連合は85議席)。極右政権が「移民排斥」「EU離脱」の方向に動くことが危惧されます。


特集「大軍拡と日本経済:戦争する国づくりの危険 」
◆「軍事費2倍化」は何をもたらすか(垣内亮*3、友寄英隆*4佐々木憲昭*5、山田博文*6、金子豊弘)
◆「軍事費GDP2%」の財政構造(梅原英治*7
◆軍事大国と社会保障:大砲かバターか(芝田英昭*8
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
主張/防衛省概算要求/前代未聞の大軍拡阻止しよう2022.8.28
主張/軍事費の概算要求/平和と生活壊す大軍拡許すな2022.9.2
徹底検証 大軍拡 平和と暮らし破壊/異次元の膨張路線/5兆円超に60年以上→岸田政権5年2022.10.30
主張/トマホーク導入/常軌を逸した軍拡への大暴走2022.11.5
 なお、以前も別記事で書きましたが大軍拡を実行すれば、1)大増税、2)福祉等の切り捨てのいずれかの形*9で国民生活が破壊されることは必定でしょう。平和主義の観点だけでなく「国民生活」の観点からも大軍拡は阻止されるべきです。
 なお、柴田論文のタイトルですがこれは

ゲーリング
 ヒトラー再軍備を進めていた1936年、ゲーリングは国民を前に次のような演説をした。
『わたしははっきり話さねばならぬ。なかには耳の遠い連中もいる。彼らは耳もとで発砲でもされなければ話に耳を傾けようとしない。いいか同志諸君、われわれにはバターがない。しかしわたしは質問したい。
 諸君はバターと大砲のいずれを欲するか?。いいか諸君、備えあれば憂いなしという。バターはわれわれを太らせるだけだ!*10
 聴衆はどっと笑い出した。確かにゲーリングの言う通りだった。彼らはバターではなく大砲を欲していた!
 しかし一見人のよさそうなこの太っちょの道化師面のかげには、人殺しの心が隠されていた。
<スナイダー/永井淳訳『アドルフ・ヒトラー』1970 角川文庫 p.90>

ということでもともとは「大砲よりバター」と言う形でナチドイツのスローガンでした。
 しかし、「言うまでもないことですが」、ナチドイツが「大砲よりバター」路線の結果、滅んだことで、このスローガンは「バターより大砲を!(ナチドイツの二の舞ははごめんだ!)」という形で軍縮スローガンとして世間に広まっていくことになります。
 こんな演説をしたゲーリングも戦後、皮肉にも戦犯として死刑判決が下り、不当判決と主張する彼は「抗議の服毒自殺」をすることになります(ヘルマン・ゲーリング - Wikipedia参照)。


◆経済安保法の危険な仕掛け:軍事技術研究開発の推進(井原聡*11
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
軍事研究推進に警鐘/経済安保法案 参考人「問題多い」/塩川氏が質問 衆院内閣委2022.4.1
経済安全保障法案に対する井原東北大学名誉教授の陳述(要旨)/衆院内閣委 参考人質疑2022.4.1
主張/経済安保法の成立/軍事と一体化許さぬ声大きく2022.5.13

軍事に学問動員するな/研究者ら 軍拡反対シンポ2022.11.8
 井原聰・東北大名誉教授は「軍事研究への研究者の囲い込み」が狙われているとして、政府有識者会議では国立研究開発法人を中心に防衛省・防衛装備庁、民間、大学などの科学技術分野と安全保障分野の「協力枠組み」が議論されていると指摘。「政府の『デュアルユース』(軍民両用)の考え方は、米国では民生技術を軍事運用するための戦略だ」と批判しました。


自衛隊はどう変わりつつあるのか(山田朗*12
(内容紹介)
 「安倍の安保関連法」「安倍『台湾有事は日本有事』発言」「岸田の敵基地攻撃論主張」などで自衛隊が「専守防衛」から「米国と海外(台湾有事、北朝鮮有事、中東有事など)で戦争する軍隊」に変質する危険性が指摘されている。


自治体民営化はどこまで来たか:PFIの実態と「再公営化」への動き(尾林芳匡*13
(内容紹介)
 赤旗等の記事紹介で代替。

「自治体の民営化を考える」学習会を行いました。 | トピックス | 日本共産党川崎市議会議員団2022.3.31
 「自治体の民営化を考える―公共サービスの変質と再生―」と題して、八王子合同法律事務所で活動されている尾林芳匡弁護士に、お話しいただき、学習会を行いました。
 尾林弁護士は、まず、1999年にPFI法ができてから法整備が進み、指定管理者制度ができ公共施設などの運営が営利企業を含む団体を管理者として指定できることになった自治体民営化のあらましについて説明されました。地方自治体から、営利企業に運営が移ると利益を上げなければいけないため、人件費が削減されたり、現場の担い手が非正規、派遣職員に置き換えられてしまったりする。それにより、事故がおき、市民の命が失われたことなど紹介し、問題点を指摘されました。その後PFI導入をめぐる問題を全国の自治体の例を紹介しながら説明され、民営化したところが再び公営化された例や、民営化の前に住民運動の力によって食い止められた経験も紹介されました。

生放送!とことん共産党/脱民営化が世界のトレンド/軍拡・新自由主義組み合わせ最悪/小池書記局長と岸本さんが議論2022.6.3


統一協会:被害の救済と防止、政治との癒着の一掃へ(宮本徹*14
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
解散命令請求ただちに/統一協会の不法行為明らか/衆院予算委 宮本徹議員、首相を追及/自民党としての総括と反省必要2022.10.19
論戦ハイライト/統一協会との癒着 政府の責任を問う/宮本徹議員が追及 衆院予算委2022.10.19
自民は調査・公表せよ/宮本氏 協会と地方議員の関係/衆院厚労委2022.11.5


◆中東政治を動かすものと変革の課題(長沢栄治*15
(内容紹介)
 いわゆる「アラブの春」が

チュニジア
 2011年にベン・アリ政権は崩壊し、民主化が進展。しかし、2019年10月に就任したカイス・サイード大統領は、2021年7月25日に議会停止と首相解任を発表。2022年2月には、「司法の独立」のためにジャスミン革命後に設立された最高司法評議会を解散し暫定司法評議会を置いて裁判官の解任権を得たと主張し、同年6月1日に裁判官57人を「腐敗し、テロリストを擁護している」という理由で解任(チュニジア - Wikipedia参照)
【エジプト】
 2011年にムバラク政権は崩壊。しかし、新たに誕生したムルシ政権を、2013年に軍部がクーデターで打倒。シシ軍事政権が誕生(2013年エジプトクーデター - Wikipedia参照)
リビア
 2011年にカダフィ政権が崩壊したが現在、内戦状態

と「強権支配の方向に逆戻り」、あるいは「内戦の混乱」にあることを指摘。こうした事態をどう打開していくかが、「中東の市民運動」や国際社会に問われているとしている。なぜならこれらの国の「国民が苦しむことが理不尽」なのは勿論ですが、「アラブの春」の挫折によって「どうせ革命を起こしてもエジプトやチュニジアリビアの二の舞」という諦めムードを中東社会に広げかねないからです。
 なお、米国には批判的な「経済」誌なのである意味当然ですが「反イラン」重視のためにエジプトやチュニジア(米国の批判を避ける為もあるでしょうがイランには批判的)のこうした「強権支配復活」状況に「自称・民主主義の擁護者」米国が「大甘」なことについて長沢氏はかなり批判的です。勿論、一方で長沢氏が「最近のヘジャブ女性変死事件→抗議のデモ隊と治安警察が衝突」等を理由にイランの強権体制も批判しており「反米側(例:イラン)に甘いわけではないこと」は公平のために指摘しておきます。

参考

混乱続くリビア 首都で武装組織が衝突 一般市民含む32人が死亡 | NHK2022.8.28
 国が東西に分裂し、混乱が続く北アフリカリビアの首都トリポリで、武装組織どうしが衝突し、巻き込まれた一般市民を含む32人が死亡しました。
 「アラブの春」でカダフィ政権が崩壊したあと、11年にわたって混乱が続く中、情勢が一層悪化するのではと懸念が強まっています。
 リビアでは、2011年にカダフィ大佐による独裁的な政権が崩壊したあと、東西に分裂して内戦状態に陥っていました。
 おととし、停戦が実現したものの、西部のトリポリで実権を握るドゥバイバ暫定首相が率いる勢力と、東部を拠点とする元内相のバシャガ氏が率いる勢力が対立して、東西に分裂した状態が続いています。

チュニジア大統領の支配 新憲法案が権限強化: 日本経済新聞2022.7.12
 チュニジアは、2011年の中東・北アフリカ民主化運動「アラブの春」の後、民主主義への移行を遂げた唯一の成功例としての地位を固めたようにみえた。今、同国国民の承認を待つ新憲法案は、議会を停止するために戦車を送り込んだサイード大統領の下、20日足らずで作成された。
 大統領は昨年9月から強権で国を支配し、司法の独立を守る評議会を解散した。野党の政治家は、7月25日に国民投票にかけられる新憲法案が一層の権威主義に陥っている新たな兆候だと話す。
 先週公表された憲法改正案は大統領権限を大幅に強化する内容だ。改正案では、政府と司法に対する究極の権限を大統領に与える。大統領は議会を解散できるようになり、国家に対する差し迫った危険を理由に、現行法で許されている2期(1期5年)を超えて大統領の座にとどまれる。大統領が取った行動を「問いただすことは許されない」とも記されている。

独裁者を追放した若者が、強権政治に歓喜する 「革命の物語」はいま:朝日新聞デジタル2022.11.4
 あの日、彼は革命を叫んでいた。
 ラミー・スガイェル。当時24歳。2011年1月のことだ。
 夢は現実となった。23年間君臨した独裁者(ボーガス注:ベン・アリ大統領)が飛行機で(ボーガス注:サウジアラビアに)国外逃亡した。
 それから11年。今年7月25日夜、ラミーはあのデモの現場からほど近いカフェにいた。
 集まったのは男女7人。
 あの当時、革命を叫んだ同志たちは、みんな30代半ばになっていた。
 この日、革命は重大な転機を迎えていた。(ボーガス注:カイス・サイード)大統領が議会を閉鎖し、再び独裁に道を開く新憲法案の国民投票が強行された。
 「大統領はいつか、こういうことをやると思っていた」
 「彼はそういう男だ」
 午後10時すぎ、国営テレビが速報ニュースを流した。
 「新憲法への賛成は9割以上」
 路上で賛成派が歓声を上げている。
 黙ってたばこを吸っていたラミーが私に言った。
 「実は朝、投票に行った。賛成に印をつけた。たぶん俺だけじゃない」
 独裁を倒すため、路上デモに青春をかけた革命世代。彼らに何があったのか。
(以下は有料記事なので読めません)

チュニジアで改憲の是非を問う国民投票 大統領の権限強化か 「独裁的」との批判も既存政党への失望根強く:東京新聞 TOKYO Web2022.7.24
 中東の民主化運動「アラブの春」で唯一、民主化に成功したチュニジアで25日、憲法改正の是非を問う国民投票が実施される。新たな憲法案ではサイード大統領の権限が大幅に拡大されており、国民代表議会の議員からは「独裁的だ」と批判の声が上がる。ただ、市民らの間には既存政党への失望から強権的なサイード氏を支持する声が強い。
 サイード氏は昨年7月、緊急事態時の大統領権限の特別措置(憲法第80条)を適用し、首相解任や議会停止を発表。以降、憲法を拡大解釈しながら権限を自身に集中させてきた。新憲法案には、大臣の任命・解任▽裁判官の任命▽首相と閣僚の任命▽政府支援下で行政機能の行使▽法案の議会提出ーなどの権限が盛り込まれた。
 サイード氏が権力集中を図る背景には、対立する第1党のイスラム政党「アンナハダ」を抑え込む狙いがある。チュニジアでは2011年、20年以上続いた世俗主義のベンアリ独裁政権民主化デモで倒れ、その後にアンナハダが躍進。10年以上政府や議会を牛耳り、「権力の独占だ」との批判が高まっていた。
 首都チュニスの美容師ヘンダ・ヘメイリーさん(46)は取材に「経済悪化も政治混迷もアンナハダが政治を支配してきたせいだ。国民投票憲法改正の是非というより、アンナハダに反対を突きつける投票だ」と怒りをにじませた。
 また、民主化デモで市民が求めていた経済回復は達成されずアンナハダ以外の政党にも失望の声は強い。チュニジア政治に詳しいナイル大(エジプト)のサイド・サデク教授は「市民らは経済を改善できない政治家にうんざりしている。多少独裁的でも事態を打開してくれる強い指導者を求めている」と話した。

 長沢論文も同様の指摘をしていますが、赤字部分が重要ですね。「混乱し、治安が悪化するくらいなら独裁でも安定した方が良い」「豊かなら独裁でもいい、貧乏は嫌だ」という話ですね。そうした思いにつけ込んだサイード大統領が「経済的に豊かで安定した社会」をアピールし、その「妨害者」として最大野党アンナハダ(以前の与党)をつるし上げて拍手喝采という困った事態にあるわけです。
 「民主化が挫折する場合」によくあるパターンです。そしてこれこそが「中国政府が国民の一定の支持を得ている理由(中国政府は毛沢東時代など昔と比べ、経済発展により、ある種の豊かさを提供してるし、西欧ほどではないとは言え民主的面でも昔よりはまし)」であり、ある種の経済のほうが政治よりよっぽど現実(実状)に正直だ - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)といっていいでしょう。
 あえて言えば「天安門事件」が軍の弾圧を契機にぽしゃった理由の一つも「混乱し、治安が悪化するくらいなら独裁でも安定した方が良い」「豊かなら独裁でもいい、貧乏は嫌だ。改革開放の鄧小平を支持しよう」「学生連中は民主化を叫ぶばかりで経済のことなんかまるきり考えてない」という国民意見の存在ではあるでしょう。
 勿論「だから独裁でもいい」という話ではなく「政治的安定と経済的豊かさ」を民主勢力が提供することが「民主化実現の上で重要だ」と言う話です。
 大抵の人間は「治安が悪化しても、貧乏でも民主化が大事だ」というほど立派ではない。例えば、そういうことを無視して「中国を豊かにした」鄧小平氏習近平氏を天安門事件や香港デモ鎮圧で非難しても「ある意味空しい」と思います。まあ、こういうことを書くから一部の人間には「ボーガスは中国に甘い」呼ばわりされることは分かっていますが、しかし「大抵の人間にとっては理想(民主主義や人権擁護)よりメシが大事だ」は「一面の真理」ではないのか。そもそも日本の自民党政治も支持層の考えはそんなもんでしょう。「メシのため」に自民党を支持してるに過ぎない(昔はともかく今の『大軍拡画策の自民』が大多数の国民にとって、メシのためになるのかは疑問ですが)。
 「話が脱線します」がそういう意味では松竹伸幸オフィシャルブログ「超左翼おじさんの挑戦」Powered by Amebaが経済の話をまるきりしないのには心底呆れます。「お前は霞食ってる仙人なのかよ、松竹?」と小一時間説教したい。


パキスタン:債務問題と国際環境の変化(西海敏夫)
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

大洪水と債務に苦しむパキスタン 「国土の3分の1が冠水」 - 産経ニュース2022.9.2
 多額の債務返済や財政赤字などにより、輸入代金の決済などに用いられる外貨準備高は8月26日時点で76億ドルで、前年同月比で6割減少した。米誌フォーリン・ポリシー(電子版)は「パキスタンスリランカ同様、国の生命が脅かされる状況に直面している」と指摘した。
 経済難の中、雨期に入った6月中旬から洪水が続き、約3300万人が被災し、1000人以上が死亡した。避難所で暮らす住民は約50万人とみられる。IMF支援は経済損失の10分の1ほどにとどまることから、地元有力紙ドーンは、これでは「パキスタンを救うことはできないだろう」と指摘した。
 危機に直面しても政界は一枚岩になれない状況だ。パキスタン議会は4月、野党が提出したイムラン・カーン前首相に対する不信任決議案を可決。最大野党のシャバズ・シャリフ党首が新首相に就任した。
 カーン氏はクリケットの元スター選手で国民的人気があり、退陣後も反シャリフ政権デモを繰り返し主導している*16。警察当局は8月下旬、カーン氏が国民を不安と混乱に陥れたとして、反テロ法違反罪で捜査を始めた。シャリフ政権が政権批判を封じるため捜査機関を動かした可能性が高く、両者の溝は深まっている。
 中国は洪水被害に対し人道支援を行う方針を示したが、債務返済の猶予など条件緩和に応じるかは不明だ。

 なるほどパキスタン首相が、

中国、パキスタンの財政安定化支援へ=習主席 | ロイター2022.11.2
 外交部の汪文斌報道官は26日、国務院の李克強総理の招きに応じ、パキスタンのシャバズ・シャリフ首相が11月1日から中国を公式訪問することを明らかにしました。

ということで「習主席の三期目突入(10/23に正式に三期目突入)」の後の11/1にすぐに訪中した理由は何か、不思議に思っていたのですが「洪水で経済が大変な状況だから債務免除をお願いします」と頭を下げに行ったのでしょう。
 ただ、中国との関係は重要とは言え、「米中関係がギクシャクする」中、下手をすると米国との関係がまずくなりかねない事(パキスタンが支援を受けたがってる世界銀行IMFは米国の影響力が強い)、その点でパキスタンも頭が痛いことは西海論文も指摘しています。
 一方、中国も「債務免除をおいそれとはできないが、債務問題で厳しい態度を取って、パキスタンが中国から離反して米国支持に向かっても困る」という難しい立場にあります。
 なお、「過大評価は禁物(基本的にパキスタンにおいて反中国テロが猛威を振るってると言うことはない)」ですが、そうした中、中国に反発する一部の「パキスタン反政府勢力」は

パキスタンの大学で自爆攻撃、中国人教師ら4人死亡 - BBCニュース2022.4.27
 パキスタン南部カラチ市の大学で26日、自爆とみられる爆発があり、中国語教師3人とパキスタン人運転手が死亡した。警察が発表した。
 分離主義の「バルチ解放軍*17」(BLA)が犯行声明を出した。

のような無法(民間人相手のテロ)までやらかしています。

中国、パキスタンに自国警備会社の受け入れ要請: 日本経済新聞2022.6.30
 中国が、自国の警備会社のパキスタンにおける活動の容認を同国に求めていることがわかった。パキスタンは中国主導の広域経済圏構想「一帯一路」の要の一つだが、中国人や同国の資産に対するテロが相次いでいるためだ。パキスタン側は拒否しているが、中国側は多額の経済支援をテコに、受け入れを迫る構えだとみられている。

が報じるように、客観的に見てこんなことをやっても「パキスタンの中国に対する立場が弱くなるだけ」で「アホと違うか」と言う話でしょう。

*1:1934~2022年。神戸大学名誉教授。著書『治療文化論』(2001年、岩波現代文庫)、『精神科医がものを書くとき』(2009年、ちくま学芸文庫)、『隣の病い』(2010年、ちくま学芸文庫)、『「思春期を考える」ことについて』、『「つながり」の精神病理』、『世に棲む患者』(以上、2011年、ちくま学芸文庫)、『「伝える」ことと「伝わる」こと』(2012年、ちくま学芸文庫)、『私の「本の世界」』(2013年、ちくま学芸文庫)、『私の日本語雑記』(2022年、岩波現代文庫)など

*2:著書『あなたは何時間働きますか?:ドイツの働き方改革と選択労働時間』(2018年、本の泉社)、『増補改訂版・企業別組合は日本の「トロイの木馬」』(2019年、本の泉社)など

*3:著書『消費税が日本をダメにする』(2012年、新日本出版社)、『「安倍増税」は日本を壊す』(2019年、新日本出版社

*4:著書『「新自由主義」とは何か』(2006年、新日本出版社)、『変革の時代、その経済的基礎』(2010年、光陽出版社)、『「国際競争力」とは何か』(2011年、かもがわ出版)、『大震災後の日本経済、何をなすべきか』(2011年、学習の友社)、『「アベノミクス」の陥穽』(2013年、かもがわ出版)、『アベノミクスと日本資本主義』(2014年、新日本出版社)、『アベノミクスの終焉、ピケティの反乱、マルクスの逆襲』(2015年、かもがわ出版)、『「一億総活躍社会」とはなにか』(2016年、かもがわ出版)、『「人口減少社会」とは何か:人口問題を考える12章』(2017年、学習の友社)、『AIと資本主義:マルクス経済学ではこう考える』(2019年、本の泉社)、『コロナ・パンデミックと日本資本主義』(2020年、学習の友社)、『「デジタル社会」とは何か』(2022年、学習の友社)、『「人新世」と唯物史観』(2022年、本の泉社)など

*5:日本共産党名誉役員。元衆院議員。著書『現代エネルギー危機論』(1978年、新日本出版社)、『暮らしのなかのエネルギー危機』(1981年、新日本出版社)、『転換期の日本経済』(1983年、新日本出版社)、『どうみる世界と日本の経済』(1986年、新日本出版社)、『おしよせる大失業』(1987年、新日本出版社)、『財界支配』(2016年、新日本出版社)、『日本の支配者』(2019年、新日本出版社)など

*6:群馬大学名誉教授。著書『国債管理の構造分析』(1990年、日本経済評論社)、『国債がわかる本』(2013年、大月書店)など

*7:大阪経済大学名誉教授。著書『関西、その活力の源をさぐる』(2000年、法律文化社

*8:立教大学教授。著書『社会保障の基本原理と将来像』(2004年、法律文化社)、『社会保障のダイナミックスと展望』(2005年、法律文化社)、『国民を切り捨てる「社会保障と税の一体改革」の本音』(2012年、自治体研究社)、『医療保険「一部負担」の根拠を追う』(2019年、自治体研究社)、『社会保障のあゆみと協同』(2022年、自治体研究社)

*9:国債を発行したところでいずれ償還しなければならない借金なので、結局1)か2)にしかなりません。

*10:ゲーリングは過食のために太っており、赤字部分の「バターは太る」云々は明らかに自虐ギャグです。

*11:東北大学名誉教授

*12:明治大学教授。著書『昭和天皇の戦争指導』(1990年、昭和出版)、『大元帥昭和天皇』(1994年、新日本出版社→2020年、ちくま学芸文庫)、『軍備拡張の近代史:日本軍の膨張と崩壊』(1997年、吉川弘文館)、『歴史修正主義の克服』(2001年、高文研)、『護憲派のための軍事入門』(2005年、花伝社)、『世界史の中の日露戦争』(2009年、吉川弘文館)、『これだけは知っておきたい日露戦争の真実:日本陸海軍の〈成功〉と〈失敗〉』(2010年、高文研)、『日本は過去とどう向き合ってきたか』(2013年、高文研)、『近代日本軍事力の研究』(2015年、校倉書房)、『兵士たちの戦場』(2015年、岩波書店)、『昭和天皇の戦争:「昭和天皇実録」に残されたこと・消されたこと』(2017年、岩波書店)、『日本の戦争:歴史認識と戦争責任』(2017年、新日本出版社)、『日本の戦争Ⅱ:暴走の本質』(2018年、新日本出版社)、『日本の戦争III:天皇と戦争責任』(2019年、新日本出版社)、『帝銀事件と日本の秘密戦』(2020年、新日本出版社)など

*13:著書『自治体民営化と公共サービスの質』(2006年、自治体研究社)、『自治体民営化のゆくえ』(2020年、自治体研究社)など

*14:衆院議員。日本共産党中央委員

*15:東京大学名誉教授。著書『アラブ革命の遺産』(2012年、平凡社)、『エジプト革命』(2012年、平凡社新書)、『エジプトの自画像』(2013年、平凡社)、『近代エジプト家族の社会史』(2019年、東京大学出版会

*16:つまりは「米国のトランプ(次期大統領選出馬可能性あり)」「イタリアのベルルスコーニ(過去に首相への返り咲きを果たしたことがあり、今も無視できない政治力がある)」「イスラエルのネタニヤフ(先日の総選挙で勝利し首相に返り咲き)」のようなもんで今も侮れない人気があり「復権の可能性」も否定できないわけです。

*17:パキスタン南西部(バルチスタン)でバルチ人の分離独立国家を目指しているパキスタンの反政府武装勢力バルーチスターン解放軍 - Wikipedia参照)