今日のロシアニュース(2023年6月25分)(副題:プリゴジンの反逆)

プーチン氏の権威失墜 ワグネル反乱、不問の超法規的措置で決着 - 産経ニュース
 プリゴジンに対してワグネルやロシア政府からの影響力は排除したが「刑事訴追」ではなく「ベラルーシへの国外亡命」で処理したことは確かに「一定の痛手」ではあるでしょうが、反乱が長引くよりは「短期決着」の方が痛手が少ない(そして国外亡命したプリゴジンにはもはや何もできないだろうし、何か仕掛けてくるようなら今度こそ潰す)というプーチンの判断であり、実際「その通り」ではないか?。これでプーチン体制が大きく揺らぐことは恐らくないでしょう。


米政権、ワグネル制裁延期か 背景に「プーチン氏利する」 - 産経ニュース
 プリゴジンの反乱後、「制裁延期でむしろ内紛の種になる」との判断なのでしょうが「本当か?」ですね。
 ワグネルに制裁し、軍事能力を低下させることは「ウクライナの反転攻勢を有利にする」ということは容易に考えつくからです。またプリゴジン亡命後、ワグネルが「プーチン政権に忠実な組織」に変化することも考えられます。


プリゴジンの反逆

「行き過ぎた野心で反逆」 プーチン大統領、反乱糾弾:東京新聞 TOKYO Web2023.6.24
 プリゴジン氏の名指しは避けながらも「行き過ぎた野心と、個人的利害が反逆につながった」と非難した。

プーチン大統領「われわれが直面しているのは裏切りだ」 | NHK | ロシア2023.6.24
 ロシアの治安当局は、民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏が反乱を呼びかけた疑いがあるとして、捜査に着手しました。
 これについてロシアのプーチン大統領は24日、緊急にテレビ演説を行い「われわれが直面しているのは裏切りだ」と述べ、ロシア軍に断固たる措置をとるよう指示を出したことを明らかにしました。
 プーチン大統領は、民間軍事会社ワグネルの代表プリゴジン氏が反乱を呼びかけた疑いがあるとして治安当局が捜査に着手したことをめぐり「われわれが直面しているのは裏切りだ。いかなる反乱も、われわれの国家としての存続を脅かすものだ。そのような脅威から祖国を守るための行動は厳しいものになるだろう。処罰は避けられない」と述べ、ロシア軍に断固たる措置をとるよう指示を出したことを明らかにしました。ワグネルの戦闘員を念頭に「この犯罪に巻き込まれようとしている人々が致命的で悲劇的な過ちを犯さぬよう、唯一の正しい選択を強く求める。つまり犯罪行為に加担することをやめるということだ」と述べ、ワグネルの戦闘員に対して、反乱に加わらないよう強く呼びかけました。

 プーチンがここまで言った以上「国防省FSB対ワグネルにすぎない(プーチンは距離を置いてる)」「ガス抜き狙いの行為(プリゴジンプーチンの間で事前に『適当なところでお茶を濁すこと』で話はついてるインチキ行為)」ではないのでしょう。
 親密な関係にあったとされる「ワグネル創設者」プリゴジンプーチンの間に何があったのか気になるところです。いずれにせよ「プリゴジンらワグネル幹部がすげ替えられるだけ」で、プーチンが「ワグネルをウクライナ侵攻に活用すること」は変化ないのでしょうが。いくら何でも「民間軍事会社」ごときがロシア軍に勝てるとは思えず、プリゴジンは失脚するでしょう。良くもこんな無謀なことをやったもんです。
 白頭氏がこの事件をプリゴジン氏は何の根回しもしていなかったのか?: 白頭の革命精神な日記において、「226事件のよう」と表現してるのには
1)226事件が「犯行実行者の処罰と彼らに近い皇道派の失脚(その反動としての、東条英機ら統制派の繁栄)」をもたらしただけで「陸軍の力の衰退」「日中戦争の終了」をもたらさなかったのと同様、「プリゴジンの処罰と彼に近い政権幹部の失脚」をもたらすとしても、プーチン体制やウクライナ戦争に影響を与えることはないのではないか
2)226事件青年将校が「日中戦争反対派でなかった」ように、プリゴジンも「ウクライナ戦争反対派ではない」
3)「君側の奸物(プリゴジンの場合は彼が非難していたショイグ国防相、ゲラシモフ参謀総長等、226の場合は暗殺された斎藤内大臣、高橋蔵相等)を討っただけ、主君(プリゴジンの場合はプーチン大統領226の場合は昭和天皇)への反逆ではない」とプリゴジン226事件青年将校も主張(但し、本当に昭和天皇を崇拝していた226の場合と違い、プリゴジンの場合は強弁でしょうが)
と言う意味で上手い表現かと思います。


プリゴジン氏がベラルーシに出国へ、「反乱」収拾か…衝突回避でプーチン氏譲歩の可能性 : 読売新聞

 タス通信によると、ロシアの大統領報道官は24日、露民間軍事会社「ワグネル」の創設者エフゲニー・プリゴジン氏に対する武装反乱を扇動した容疑での捜査が中止される見通しを明らかにした。プリゴジン氏はベラルーシに出国するとも述べた。報道官の発言に先立ちプリゴジン氏は自身のSNSで、ワグネルの戦闘員に対し、モスクワへの進軍を停止するよう命じたと明らかにしていた。プリゴジン氏による反乱は収拾する見通しになった。プーチン大統領は24日、国民向けのテレビ演説で、武装蜂起の開始を宣言したプリゴジン氏を「裏切り」と非難し、厳しく処罰すると宣言していた。プーチン氏がモスクワでの本格的な武力衝突を避けるためプリゴジン氏に譲歩した可能性がある。

 今後事態の推移で明らかになるでしょうが
プリゴジン「自らの力を過大評価して蜂起。しかし、勝ち目がないことに気づく→但し身の保身は図りたい」
プーチン「ロシア軍が勝つことは確実だが、市民に犠牲が出かねないモスクワ市街戦はさすがに避けたい」
ルカシェンコ「この機会にプーチンに恩を売りたい」
という三者の思惑から
1)プリゴジンは降伏
2)プリゴジンの犯行をロシア政府は刑事追及しないし、暗殺もしないが、ワグネル代表の座は降り、ベラルーシに国外追放
3)ベラルーシプリゴジンが「ベラルーシからワグネルを操り、反プーチン活動をする」等の問題行為をしないように監視
4)プリゴジンがもし問題行為をすれば、合意違反として「ロシア側による刑事訴追(その前段階としてベラルーシによるロシアへの強制送還)や暗殺」もあり得る
ということで決着したと言うことでしょうか。
 ここまで早期に解決することを予想した論者は少なかったでしょうが、さすがにプリゴジン氏は何の根回しもしていなかったのか?: 白頭の革命精神な日記が批判する中村筑波大名誉教授ほどの楽観論は少なかったでしょう。
 しかし中村氏も大手出版社から以下の著書があるのに何でこんなにトンデモなのか。

【2000年のプーチン政権成立後の著書】
◆『帝政民主主義国家ロシア:プーチンの時代』(2005年、岩波書店
◆『虚栄の帝国ロシア』(2007年、岩波書店
◆『ロシアはどこに行くのか』(2008年、講談社現代新書
◆『ろくでなしのロシア:プーチンロシア正教』(2013年、講談社
◆『シベリア最深紀行』(2016年、岩波書店→2020年、文春学藝ライブラリー)

1)大手出版社から本を出していたとき(2014年のクリミア編入前や2022年のウクライナ侵攻前)もこのレベルのトンデモだったことが明らかだったが、何故か著書刊行(出版社の頭が明らかにおかしい)
2)大手出版社から本を出していたときも、実は「このレベルのトンデモ」だったが、何故か当時は中村氏がそうしたトンデモさをうまく糊塗していた(出版社が気づかなくても仕方がなかった)
3)大手出版社から本を出していたときはまともだったのに急速に劣化
のどれでしょうか?。どれでも衝撃的ではありますが。
 なお「国外追放では甘い」と反発する軍部タカ派は一部いるでしょうが、とはいえそれでプーチン政権が揺らぐこともないでしょう。
 また、ロシア ワグネル プリゴジン
【1】プリゴジンにすり寄るであろう国内不満分子(勿論、反戦派や西側に近いリベラル派ではなく、ウクライナに核ミサイルぶち込んでも構わない、プーチンはとっとと戦争を終わらせろ、態度が生ぬるいと考えるレベルの極右分子)をあぶり出し、潰す
【2】危機感を煽って総動員令や戒厳令の発動を正当化するための布石
等が目的の「プーチンプリゴジン八百長」を主張してるようですが、さすがにそれはないでしょう。
 確かに「短期で決着した」とはいえ「死人が出なかったわけではない」ようですからね。
 それを「国内不満分子をあぶり出す等の目的のためには、ロシア人に多少死人が出ても構わないと思うのがプーチンプリゴジン。だから国外追放で済んだ」とするのはもはや「陰謀論がすぎる」でしょう。