松本清張と森村誠一(2023年7月25日記載)(追記あり)

『人間の証明』は、『砂の器』のパクリだと思う(たぶん森村誠一は、第二の松本清張を目指したところもあったのではないか) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
 とはいえ清張と森村にはいろいろと違いもあります。
1)シリーズ探偵がいる森村とシリーズ探偵がいない清張

森村誠一 - Wikipedia
 推理小説のシリーズキャラクターとして、棟居弘一良(棟居刑事シリーズ)、牛尾正直(終着駅シリーズ)を生み出している。

と言う森村に対し、清張にはシリーズ探偵はいなかったと思います。
 あえて言えば『点と線』(JTBの雑誌『旅』1957年2月号~1958年1月号に連載)、『時間の習俗』(JTBの雑誌『旅』1961年5月号~1962年11月号に連載)の三原警部補がシリーズ探偵ですがこれはJTB側の依頼でやむなくそうしたにすぎないとされます。
 但し「探偵・明智小五郎江戸川乱歩」「探偵・金田一耕助横溝正史」「霧島検事の高木彬光」「鬼貫警部の鮎川哲也」「十津川警部の西村京太郎」等「シリーズ探偵」のいる作家の方がむしろ多く、清張の方が例外だと思いますが。
 これが「清張にとってシリーズ探偵を書くのはむしろ苦手で苦痛」だったのか、「清張にとってシリーズ探偵を書く方が楽だったが、あえて書かなかった」のか気になるところです。
2)ミステリがやはりメインの森村と、ミステリ以外も多数作品がある清張
 森村誠一 - Wikipediaによれば森村にはミステリ以外に「平家物語」「太平記」「忠臣蔵」「新選組」を題材にした歴史小説があるようですが失礼ながら知名度はミステリや『悪魔の飽食』に比べ落ちる気がします。
 一方、清張は『西郷札』(第25回直木賞*1候補作)、『或る「小倉日記」伝』(芥川賞受賞作)など「ミステリ以外でも代表作が多数ある」わけです。とはいえ、これまた清張のようなミステリ作家の方が例外的でしょうが。

参考

(2ページ目)12の短編に12のトリック――トリックを重視した清張さん 『絢爛たる流離』(松本 清張) | 書評 - 本の話佐野洋*2
 私は、大学を出るとすぐ、新聞記者として札幌の警察廻りをしたが、警察の実際の捜査方法を知れば知るほど、探偵小説(当時はそう呼ばれていた)中の警察描写が、余りにも現実のそれと違うことに驚かされた。その結果、国産の探偵小説からしばらく離れ、外国物だけを読んでいた。
 私が清張作品と出遭ったのは、その頃だった。宿直の夜、編集室の机に置かれた「週刊読売」の目次に、「松本清張の探偵小説」とあるのを見かけ、読んでみる気になったのである。松本清張と言えば、芥川賞作家のはずだが、探偵小説も書くのか、といった野次馬気分*3の方が多かったと言える。
 その小説「共犯者」を、最初のうちは、単なる犯罪小説らしい、と考えながら読んでいたのだが、最後の数行で私は思わず手を打った。見事などんでん返し、しかもその伏線は周到に張られていた。
 翌日、同じ警察記者クラブの探偵小説好きに、その話をすると、「ああ、松本清張なら、『張り込み』という短篇もよかったよ。新しい探偵小説という感じだ」と、教えられた。

【追記その1】

731部隊の犯罪行為を暴露した森村誠一氏の死去に中国が哀悼の意--人民網日本語版--人民日報
【記者】
 森村誠一氏が24日に死去した。享年90歳だった。森村氏はかつて多くのベストセラーを著し、その中には中国侵略日本軍731部隊について暴露したルポルタージュ悪魔の飽食」もあった。これについてコメントは。
【毛報道官】
 我々は森村誠一氏の死去に哀悼の意を表し、遺族の方々に心からお悔みを申し上げる。森村氏は正義感のある日本の著名な作家であり、その多くの作品は人間の良心を体現していた。特にルポルタージュ悪魔の飽食」は日本が当時中国に対して発動した細菌戦の犯罪行為を深く暴き出した。歴史の真実を直視し、暴いた森村氏の勇気は称賛に値する。

 731部隊の被害国としては当然の記事でしょう。


【追記その2】

森村誠一死去 - kojitakenの日記
 私は森村誠一の作品はそんなにいくつも読んでいないが、彼の作品の中では山岳ミステリが好きだ。

 山岳ミステリと言えば清張も

映画化、テレビドラマ化された遭難 (松本清張) - Wikipedia

があります(他にもあった気がするがググってもヒットしません)。
 「遭難」の落ちについては黒い画集 ある遭難('61) 杉江敏男監督 松本清張原作の、傑作山岳ミステリー!: metoLOG : The World of Mystery Moviesを紹介しておきます。

*1:この時は東宝映画『三等重役』『続三等重役』(以上、1952年)、『新・三等重役』(1959年、後に社長シリーズ - Wikipediaに発展)の原作者で、サラリーマン小説で知られる源氏鶏太が受賞。なお、「三等重役」とは創業社長やオーナー社長、創業者一族重役でない「サラリーマン重役」のことで源氏鶏太の造語である。映画においては前社長が公職追放され、総務部長が社長になる。

*2:1928~2013年。1953年、読売新聞に入社、1958年、『週刊朝日』と『宝石』の共催コンクールで短編『銅婚式』が入選しデビュー。1959年に読売新聞を退社。1964年、 長編『華麗なる醜聞』で第18回日本推理作家協会賞受賞。1973~1979年まで6年間にわたり日本推理作家協会理事長。(佐野洋 - Wikipedia参照)

*3:ということで当初は清張はミステリ作家扱いではなかったわけです。