産経の一部記事が意外にもまともだった(2024年11月13日)(副題:無縁遺体ほか)

限界迎える家族での葬送 増える「無縁遺体」、社会全体で再考を 「薄縁」時代㊦ - 産経ニュース(三宅陽子)
 「未婚者の増加」等による「単身高齢者の増加」によって、誰も引き取り手のない「無縁遺体が増えてる」という話です(その場合、行政が遺体処理する)。
 親族が見つからない場合もあれば、みつかっても「生前付き合いがほとんどなかった疎遠な関係だから引き取りたくない(引き取る法的義務はない)。行政で処理してくれ」という場合もあるとのこと。
 「無縁遺体」については以下の記事も紹介しておきます。
「無縁遺体」5年間で3割増、独り暮らし増加や親類の引き取り拒否広がり…読売調査 : 読売新聞2024.6.2

「無縁遺体」取り扱いに苦慮、厚労省が手順作成を検討…策定済みの自治体は11% : 読売新聞2024.11.3
 「無縁遺体」が増える中、取り扱いを定めたマニュアルや内規がある自治体は、11・2%にとどまることが厚生労働省による初の実態調査でわかった。自治体は無縁遺体の火葬や遺骨の保管に苦慮しており、厚労省は今後、統一的な手順を示すことも検討する。
 マニュアルがないのは、(ボーガス注:町村など)小規模自治体に多かった。親族の探し方のほか、連絡が取れない場合、遺体や遺骨の保管期間の判断に困るケースが目立った。厚労省幹部は「問題が顕在化したのは最近で、マニュアルの整備が追いついていないのではないか」と指摘する。
 内閣府によると、1990年に162万人だった65歳以上の独居高齢者は、2020年に671万人に達した。2040年には1000万人超になると推計され、対策が急務となっている。

 また、「無縁遺体」でググると以下の本もヒットします。

【刊行年順】
NHKスペシャル取材班『無縁社会*1』(2012年、文春文庫)
◆森下香枝*2『ルポ無縁遺骨』(2023年、朝日新聞出版)


散乱した部屋に亡き妻の骨壺残し… 街にあふれる「孤独死予備軍」 「薄縁」時代㊥ - 産経ニュース(三宅陽子)

 周囲の支援の手が届いていない高齢者を目にすることも少なくないという。
「多いのは非正規雇用で働いてきて、貯蓄はゼロ、入ってくるわずかな年金で生活し、施設に入ることもできないといった人たち。家族や周囲との関わりも薄く、独居生活の中で孤立を深め、『孤独死予備軍』ともいえる存在になっている」(一般社団法人「LMN」(東京都渋谷区)代表理事の遠藤英樹さん(57))

 産経には珍しくまともな記事です。
 現状ですらそうなら「今後、単身高齢者が増えていく」でしょうから事態はさらに深刻になるでしょう。

 特殊清掃業*3を担う「武蔵シンクタンク」(八王子市)代表の塩田卓也さん(53)の下には、物件のオーナーや不動産関係者などから依頼が絶えない。
 業務を請け負うのは、孤独死の現場だ。誰にも見つからず、数週間~1カ月近く故人が放置されていた家に入ることも珍しくはない。部屋は死臭が染みつき、腐敗した遺体が横たわっていた床部分から下の階まで体液が漏れ出してしまっていることもある。
 塩田さんはそこで、持てる技術を駆使して臭いや汚れを落とし去り、部屋を元の状態へと回復させていく。
 塩田さんの下に寄せられる相談は約10年前は年間50件ほどだったが、現在は3倍近い。

 国や自治体等が何の対策も打たなければ「誰にも看取られず、腐敗が進行した孤立死体」は今後も増え続け、塩田さんの下に寄せられる相談、つまり「腐敗遺体で汚れた部屋を清掃して欲しい」という「特殊清掃の依頼」は増え続けるでしょう。何ともかんともです。しかし、朝日や毎日、東京新聞赤旗辺りに乗ってもおかしくない記事が産経に載るとは意外です。
 それにしても「今日も松竹に悪口します」がこういうこと(孤立死の恐怖)こそが、多くの人間にとって「身近な危機」ではないのか。
 「外国(中国やロシア?)が日本に侵攻したら」という話ばかりしたがる「安保バカ」松竹には「侵攻しねえよ、バカ。ふざけんな」「とりあえずこの産経記事を読んでどう思うか、『安保バカ』松竹や、松竹の類友連中(例えば紙屋)は感想文でも書いてみろ」「庶民生活にまるで関心ないらしい『安保バカ』松竹や類友連中よりこの記事書いた三宅陽子記者の方がよほど人間としてまともじゃないか?。阿比留や古森みたいな異常な産経記者もいるけど(そして残念ながら産経では異常な連中の方が数が多い上に幹部。阿比留は何と論説委員に出世)」と心底呆れます。
 実際、過去の三宅記者の記事が三宅 陽子 - 産経ニュースで確認できますが

救急搬送急増、病床逼迫…悲鳴上げる小児医療 - 産経ニュース2022.8.12
 新型コロナウイルスの流行「第7波」で子供たちへの感染が拡大し、小児医療の現場がかつてない緊迫感に包まれている。子供はコロナに感染しても重症化しにくいとされているが、自治医科大とちぎ子ども医療センター(栃木県下野市)小児科の村松一洋准教授は「爆発的に感染が拡大する中では重症化する子供が増える」と危惧。重症化を防ぐ手段として、「5歳以上はワクチン接種を検討してほしい」と呼びかける。
コロナ後遺症収束程遠く 5類移行で患者増も 苦悩の医療現場 - 産経ニュース2023.7.13
 新型コロナウイルス感染症法上の位置づけが5類に移行し、社会が日常を取り戻しつつある中、コロナ後遺症に苦しむ患者は今も多くいる。原因不明の症状で日常生活を奪われていく患者は後を絶たず、後遺症外来では手探りの診療が続いている。
「させたいが、お金と時間が…」 深刻な子供の「体験格差」 困窮家庭などへの支援急務 - 産経ニュース2024.3.4
 運動、音楽、美術などの習い事、登山やキャンプ、海水浴。学校外で子供らが行う「体験」の重要性が指摘されている。心身の成長を促すとされるが、時間と資金を投資できる家庭と、そうでない家庭との「体験格差」も深刻だ。どう支援につなげるか、模索が続いている。
新型コロナウイルス5類移行から1年 次のパンデミックに備え、議論を 濱田篤郎東京医科大客員教授 明解説 - 産経ニュース2024.5.11
 新型コロナウイルス感染症法上の位置付けが、季節性インフルエンザと同じ「5類」となって1年がたった。社会は平時の姿に戻りつつあるが、ウイルス流行の脅威が消えたわけではない。東京医科大の濱田篤郎客員教授は、新たな変異株や新興感染症の出現も踏まえた「備え」を怠ってはいけないと訴える。
人材不足なのに報酬減額 訪問介護現場で悲鳴「実態見ていない」「もう限界」 - 産経ニュース2024.7.17
 高齢者らの在宅生活を支える訪問介護サービスが「崩壊の危機」に直面している。深刻度を増している人材不足に加え、今年度からは基本報酬が引き下げられ、業界からは「もう限界」と悲痛な声があがる。
 国は今年度、訪問介護サービスの基本報酬を引き下げる一方、特別養護老人ホームなどの介護保険施設は引き上げ、全体で1・59%プラスとする介護報酬の改定を行った。訪問介護サービスの事前調査で、「事業所経営が良好だった」ことが減額の理由に挙げられたが、業界団体からは「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)など入居者を効率よく訪問できる事業所の利益率が高いためで、地域を回る事業所とは経営状況が異なる」と不満が渦巻く。東京都新宿区に拠点を置く訪問介護事業所「でぃぐにてぃ」の吉田真一代表(50)は、「苦しい現状にとどめをさされたかのようだ」と憤る。

等、それなりにまともそうです。


<主張>自殺対策白書 事前のサインを見逃すな 社説 - 産経ニュース

 日本は先進7カ国で最も自殺死亡率の高い国だ。
 ひとり親、無就業、非正規雇用など、(ボーガス注:自殺の恐れがある)立場の弱い人への目配りを強めていくべきだ。
 女性の自殺では、妊娠中と産後1年以内に生じた「妊産婦の自殺」も課題である。
 予期せぬ妊娠や貧困、家庭内暴力(DV)などが引き金になっているケースもあろう。妊娠したという悩みをひとりで抱えていたケースも考えられる。電話やメールなどで相談できる態勢を充実してほしい。

 産経が珍しく正論なのでメモしておきます。
 しかしこういうまともな社説を書く一方で

<主張>第2次石破内閣 外交安全保障を忘れるな 信なき首相の続投は残念だ 社説 - 産経ニュース
 有事を想定した空港、港湾、シェルター建設も課題だ。
 自民は衆院で、予算委員会や法務委員会の委員長、憲法審査会の会長などの重要ポストを立民に譲った。憲法審会長に就く立民の枝野幸男元代表改憲の動きにブレーキをかけてきた人物だ。憲法審の議論が滞るなら改憲に前向きな政党で改憲原案の条文化を進めるべきだ。
 野田氏は衆院法務委員長を得たのは選択的夫婦別姓の実現が狙いだとSNSで明かし、「自民党を揺さぶるには非常に効果的だ」とも語った。石破首相と自民は、家族や社会のありように関わる基本問題の変更は絶対に受け入れてはならない。

という「常軌を逸した右翼社説も平然と書く」産経です。


性暴力の「駆け込み寺」サチコ、医師不在で存続危機 支援団体が府議会に請願書提出へ - 産経ニュース(鈴木源也)

 性暴力被害に遭った女性を支援する大阪府松原市の「性暴力救援センター・大阪SACHICO(サチコ)」が存続の危機に陥っている。
 大阪で唯一の「女性の駆け込み寺」の存続に向け、性被害の当事者でつくる支援団体は12月に府議会に要望書を提出する。
 運営は国と府の補助金(年計約1500万円、令和4年度)頼み。
 久保田理事長らは10月、大阪市内で窮状を訴える記者会見を開催。
 サチコ存続に向け、かつて性暴力被害に遭いサチコに駆け込んだ女性たちも支援団体を結成。約9千人分の署名を集め、12月に大阪府議会に要望書を提出する予定だ。支援団体の関係者は「サチコは24時間いつでも相談できる心のよりどころ。泣き寝入りする被害者が増えないためにも、存続が必要だ」と訴えた。

 国連女性差別撤廃委員会から勧告され、ジェンダーギャップ指数が低い国らしいと言うべきでしょうか。それにしても産経がこうした記事を書くことが意外です。それにしても「大軍拡や大阪万博リニア新幹線よりこうした福祉分野に金を使え」と改めてげんなりします。

*1:周囲の支援がない単身世帯(特に独居老人)の増加を表す言葉。2010年に放送されたNHKスペシャル無縁社会」をきっかけに広く使われるようになり、2010年12月1日にはユーキャン新語・流行語大賞トップテンにノミネートされた(無縁社会 - Wikipedia参照)

*2:1970年生まれ。「週刊文春」記者を経て、2004年、朝日新聞入社。週刊朝日編集長、朝日新聞編集委員等を歴任(アマゾンの著者紹介による)。著書『史上最大の銀行強盗』(2003年、幻冬舎:1994年の福徳銀行5億円強奪事件 - Wikipediaを取り上げた)、『グリコ・森永事件「最終報告」』(2010年、朝日文庫

*3:一般には犯罪事件、事故、自殺等の変死現場や独居死、孤立死孤独死により遺体の発見が遅れ、遺体の腐敗や腐乱によりダメージを受けた室内の原状回復業務を指す。参考文献として、竹澤光生『特殊清掃会社:汚部屋、ゴミ屋敷から遺体発見現場まで』(2012年、角川文庫)、菅野久美子『超孤独死社会:特殊清掃の現場をたどる』(2019年、毎日新聞出版→2024年、毎日文庫)(特殊清掃 - Wikipedia参照)。なお、菅野氏(フリーライター)には他にも、菅野『孤独死大国』(2017年、双葉社)、『家族遺棄社会』(2020年、角川新書)の著書がある。