今日の産経ニュース(11/18分)(追記あり)

■【日中首脳会談】「『日中は明日にでも戦争になる』欧米にそう思われてもいいのか」…習氏を会談にかりたてた福田元首相の老練外交術
http://www.sankei.com/premium/news/141118/prm1411180001-n1.html
 事情が何でアレ、あの産経が福田氏を「老練外交術」と言うとは思っても見ませんでした。

 北京に乗り込んだ福田氏は、習氏に次の点を強調したという。
「欧米では、日中がどう思われているか。『明日にでも戦争になる(注:かもしれない)』と。そう思われることが日中双方に得だと思うか」

 これは「単なる交渉トークではなく福田氏の本心ではないか」と俺は思います。
 問題はこのあたり産経や安倍がどう考えてるのかと言う事。彼らだと「戦争になっても構わない」と思ってそうで恐ろしい。

 (注:福田氏と習氏の会談には)会談には、谷内正太郎*1国家安全保障局長が同席していた。
(中略)
 日中首脳会談の実現に意欲をみせる安倍首相は、福田氏の「好意」に感謝した。同時に、福田氏が安易にすり寄る恐れがあると警戒したとみられる。その際、首相から谷内氏の同行を求めた。谷内氏はいわば、安倍首相の「名代」として同席したのだ。

 「同じ派閥の先輩なのに全然信用してねえのかよ」と思う一方で「本当はこれ逆じゃねーの?」て気もします。福田氏から、「安倍君に頼まれたから中国に行くが、建前では安倍君の依頼はないし、当然僕は建前では政府特使じゃない。アレは国会議員を引退した福田が勝手にやったことだ、政府は関知しないと安倍君に後ではしご外されても困る、誰か安倍君の名代的人間を連れて行きたい」「そもそも安倍君の名代的人間がいないと習主席が僕にあってくれないかも知れない」と言われて安倍が渋々谷内氏を同行させたんじゃないか。むしろ福田氏の方が「安倍君はウヨ支持者にへつらって僕を裏切るかも知れない」と「安倍を信用してない」んじゃないか。
 まあ、そうだとしてもそんな事書いたら安倍の面子が潰れるから産経は絶対にそうは書かないでしょうが。

そもそも、なぜ福田氏だったのか。

と産経が書いたので
「安倍の取り巻き連中(稲田政務調査会長、下村文科相など)は反中国極右で中国にパイプがない。自民党親中派とされる人間(河野洋平*2野中広務*3など)には安倍がパイプがない(安倍が頼んでも断られる可能性大)」
「結局、安倍には使える中国とのパイプが福田氏以外にない」
ということを産経はこの後書くのかなと思いました
 しかしこの後の文章は

 (注:福田氏は)経済成長する中国と、経済規模で中国に追い抜かれた日本が「資源戦争」に入ったらどうする−という危惧(きぐ)を抱いているとされ、「欧米から『日中は明日にでも戦争になる』と思われている」というのは、実は福田氏自身の思いでもあるといえる。

と「福田氏の日中友好関係への熱い思い」しか書かないので思わず吹き出しました。
 いや「事実上の政府特使」でしょ?。安倍が頼んだんでしょ?。福田氏が勝手に安倍の元に押しかけて「訪中させてくれ」と頼み込んだとでも言う気?
 そんなに「安倍には福田氏しか中国とのパイプがない」と言う事実をはっきりした形では書きたくないんでしょうか。


■【衆院選】景気てこ入れ争点に 首相、経済対策指示へ
http://www.sankei.com/economy/news/141118/ecn1411180010-n1.html

 政府は、来月*4に決定する経済対策で、低所得者向けの現金給付や住宅ローンの金利優遇、高速道路料金のETC割引延長などを検討している。個人消費の底上げや、円安による燃料費上昇の影響を受けやすい地方に配慮したメニューが中心になるもようだ。

 既にネット上で批判がありますが、「現金給付*5」「ETC割引*6」て典型的なばらまきじゃないですか。
 こんな一時的ばらまき(しかも額が小さい)が景気対策になるとはとても思えませんし、これてアベノミクスの否定でしょう。「こういうばらまきをしなくても景気が良くなる」というのがアベノミクスの触れ込みだったわけです。安倍も「経済統計データの予想以上の悪さ」からアベノミクスの失敗を自覚してること、その失敗をごまかす為にはなりふり構わなくなってることがわかります(すぐにパニクる安倍の精神的弱さも考慮する必要がありますが。祖父・岸信介だったらもっと泰然自若としてこういうことはしないかもしれません)。なお、「解散するにせよしないにせよ消費税8%増税をまず止めたら?」「止めて経済状況が良くなれば安倍にもメリットじゃん」と思う方もいるでしょうが、アベノミクスについての安倍の考えは「景気を良くしたいからアベノミクス、そのためにはいったん上げた消費税も下げる事も躊躇しない」ではなく「消費税増税したい→そのためには景気をよくしないと」「いったんあげた消費税は何があっても下げたくない、俺の面子もつぶれるし、政財官界の増税*7とガチバトルしたら政権が持たない」が安倍だから「5%に戻す」なんて考えは最初か選択肢にありません。
 俺の願望込みですがid:kojitaken氏エントリ『「日本経済の予想外のリセッション入り」by ブルームバーグ』(http://d.hatena.ne.jp/kojitaken/20141118/1416238372)が指摘する予想外の「景気後退(リセッション)」が安倍が解散を急ぐ理由ですが「予想外の景気後退期に解散とはおかしいではないか」と野党も批判するでしょうから「下野はないにせよ」安倍が思うほど自民に有利な選挙かどうか。選挙結果によっては「安倍おろし」が起こる可能性もあるのではないか。
 まあ、安倍に「そこまでの悲劇」がなくても「安倍支持の最大の理由だったアベノミクスが明らかに崩壊し」、それにかわる人気取り政策がない今、長期的には「安倍には下がり目しかない」でしょう。
 ともかくまずはこの選挙で野党側がどれほど自民の議席を減らし躍進できるかが焦点でしょう。とはいえ、俺は「民主党、維新、次世代」なんてもんは評価してないので俺にとっては結局の所「共産がどれだけ伸びるかが焦点」になるわけですが。 


■【産経抄】沖縄危機 11月18日
http://www.sankei.com/column/news/141118/clm1411180004-n1.html

翁長氏に名誉市民の称号を授与した中国福建省省都福州市*8は、習近平国家主席のお膝元*9でもある。翁長氏の背後には、習氏の影が見え隠れする。中国共産党の機関紙はかつて、琉球諸島の帰属は未解決との論文を掲載した*10。翁長沖縄県知事は、中国の支援を受けて独立を果たし、日米両国政府に「米軍撤退」を要求するのではないか。

 言ってる事が非常識過ぎて絶句ですね。翁長氏に名誉毀損で訴えられても文句言えないでしょう。産経だと「ではないか、と疑問形にした、断言してない」と強弁しそうですが。何で元自民党県議で、県財界の一部の支援も受けた翁長氏がそんな事をすると思うのか。いやそれ以前に、社民党共産党だってそんな立場じゃないし、大田昌秀氏など過去の革新知事だってそんなことはやっていません(当たり前ですが)。
 そうそう簡単に独立なんかできるわけがないでしょう。そして中国に沖縄独立を支持して何のメリットがあるのか(もちろん中国以外の欧米諸国なども沖縄独立を支持するような状況になれば話は別で中国も沖縄独立を支持するでしょうが、その場合、中国の支持だけ問題視するのもおかしいでしょう)。もちろんそんな事は産経も分かった上でデマ中傷でしょうが非常識にも程があります。

*1:外務事務次官(第一次安倍内閣当時)、第二次安倍内閣内閣官房参与を歴任。

*2:中曽根内閣科学技術庁長官、宮沢内閣官房長官、村山、小渕、森内閣外相、衆院議長など歴任

*3:村山内閣自治相・国家公安委員長小渕内閣官房長官自民党幹事長(森総裁時代)など歴任

*4:解散前の決定ではない辺りが卑怯なところです。「俺を敗北させたらこの景気対策がぽしゃるぞ」と恫喝する一方で当然ながらこの「現金給付などの案」が実施される保障はどこにもないわけです。法案提出どころか閣議決定すらしてないわけですから。

*5:小渕内閣麻生内閣の商品券給付を思い出させます

*6:高速道路利用者しか恩恵のない政策です

*7:谷垣幹事長、財務省経団連増税派です。つうか増税をスムーズに進めるために谷垣氏を幹事長にしたんでしょうけど

*8:福州市は翁長氏が市長だった那覇市とは友好都市関係にあります。その関係の名誉市民であり、産経の言うような変な話では全くありません。

*9:習氏には福州市党委員会書記、福建省長を務めた経歴があります。とはいえ今の習氏に「福州市は習氏のお膝元」と言えるほどの影響力があるかは知りません。

*10:こんなんで「中国は沖縄の日本帰属を認めてない」と言えるなら「田母神の存在」を理由に「日本は張作霖暗殺を日本軍の犯行と認めてない」「航空自衛隊幹部(当時)の田母神氏がコミンテルンの犯行だと言っているから」と言えてしまいます。おそらくは「田母神みたいなアホのアホ文章が載った」てだけでしょう。それはそれで問題ですが「田母神の主張を日本政府公式見解扱いできない」のと同様、こんなもんは中国政府の公式見解扱いなんかできません。