今日の産経ニュース(12/1分)(追記・訂正あり)

■【主張】拉致と衆院選 各党体温が低すぎないか
http://www.sankei.com/column/news/141201/clm1412010003-n1.html
 もちろん「各党」の中には安倍自民も入っています。「拉致の安倍」「安倍さんでしか拉致は解決できない」と持ち上げ続けた産経も「安倍がまるきり巣くう会に冷たくなったこと」で態度が変わってきたようです。大体「拉致の扱いが自民も軽い、失望した(産経)」てのなら前回衆院選だって安倍が前面に押し出してたのはアベノミクスで拉致なんかろくな扱いじゃないんですが。

 次世代の党は政策実例に「全ての拉致被害者の早期救出」と掲げたが、具体策はなかった。

 産経の言う具体策って何なんですかね。「まさかとは思いますが」荒木が言う自衛隊の投入か。
 そんな物騒な事はさすがに極右政党・次世代だって書けないでしょうよ。


■在米の華僑系住民、抗日戦争勝利委員会を立ち上げ 戦後70年で 反日運動の活発化は必至 
http://www.sankei.com/world/news/141201/wor1412010002-n1.html
 何が問題なのかさっぱり分かりません。仮に「問題がある」としても産経がやることは「南京事件はなかった」などのデマ垂れ流しで華僑の日本批判の「火に油を注ぐ」んですから話になりません。黙ってろと言いたい。

 名誉議長にはアンナ・チェン・シェンノート(中国名・陳香梅)氏が就いた。1925年に北京で生まれ、通信社の記者だった22歳のとき、米空軍中将、クレア・リー・シェンノート氏(故人)と結婚。

 ウィキペディアに寄ればアンナ氏(陳香梅氏)の夫「クレア・リー・シェンノート氏」は「日中戦争時は中華民国空軍の訓練教官として蒋介石に招聘」され、日中戦争終了後は「国共内戦中華民国支援に動いた」というのだから、産経が言うのとは違いこの華僑運動、「大陸中国の紐付き」とはとても言えないでしょう。せいぜい「大陸中国関係者もコミットしてる」程度の話でしかないでしょう。まあ、「抗日戦争勝利」は大陸中国にとっても台湾にとっても「栄光」ですから中台が共闘することは不思議じゃありません。


■「無差別大量殺人を行う可能性が高い」オウム真理教の観察処分更新を請求 麻原死刑囚の三女を「現職役員」と認定
http://www.sankei.com/affairs/news/141201/afr1412010007-n1.html
 いい加減にして欲しいですね。地下鉄サリン(1995年)から20年近く経ってるわけですが、それまでに「無差別大量殺人」なんて何らなかったわけです。今のオウムをカルト教団と否定的に評価するとしても、そんな大量殺人の能力も意思もないことは公安調査庁にだって分かってるでしょう。「自分らの飯の種」を作るためにデマカセほざくのも大概にして欲しいもんです。
 法務省も「公安調査庁をスリム化*1」して「検察庁、法務局、人権擁護局、入管」といった別セクション*2公安調査庁の人員を移すということがどうしてできないんでしょうか。

 麻原彰晃(本名・松本智津夫)死刑囚(59)の三女(31)=ホーリーネーム(教団内名)「アーチャリー」=が教団の「現職役員」

 結局「オウム教祖の子」ということで「社会に受け入れてもらえなかった→教団に頼るしかなかった」ということじゃないんですかね。別に「だから役員でも仕方ない」とまでは言いませんが一方的に非難するのも酷な気がします。


■【フィギュア】エース真央不在で女子が低調 ファイナル14季ぶり逃す
http://www.sankei.com/sports/news/141201/spo1412010025-n1.html
 「若手の成長を期待したい」と言う言葉はあっても「浅田の復帰を期待したい」と言う言葉がない辺り、もはや「浅田の引退」は「公然の秘密」であり誰も「王様は裸だ!」と言い出せないだけなのでしょう。


■【経済裏読み】「鉄道外交」加速する中国、シルクロード構想へ野望膨らむ…「鉄道大国」日本との衝突は必至
http://www.sankei.com/west/news/141201/wst1412010003-n1.html
 産経らしい反中国記事です。中国が鉄道輸出して儲けることは別に悪いことではない。その場合、場所によっては日本と商戦することもあるでしょう。でそれも別に悪いことじゃない。

 オーストラリアのブリスベンで11月15、16日に開催された20カ国・地域(G20)首脳会議。
(中略)
 2年後の2016年G20*3の開催地。選ばれたのは初開催となる中国だった。
(中略)
 実は、開催国には日本も手を挙げていた。だが、G20の事情に詳しい国際金融筋は「各国の後押しは少なく、中国を支持する声が大半だった」と指摘する。

 まあ、何故「日本が中国に敗れた」のかについては「事情が分からない」のでコメントしません。
 この記事で分かることは
1)産経が言うほど安倍外交が成功してるわけでもなく
2)産経が言うほど中国が孤立してるわけでもなく
3)そうした事情は産経記者ですら「それなりにまともな記者」なら、このように認めざるを得ないことだ、ということでしょう。


■「日韓首脳会談の早期実現を」 経団連と韓国経済団体が共同声明
http://www.sankei.com/economy/news/141201/ecn1412010022-n1.html
 「経団連にはもっと早くそうした動きをして欲しかった」とは思いますが悪いことではありません。そして島田洋一のようなウヨは経団連に悪口雑言吐くのでしょう。


■【菅原文太さん死去】高倉健さんに続き昭和の名優がまた…狂犬のように怒りをぶちまけ 粗野でお茶目な「トラック野郎」も…
http://www.sankei.com/entertainments/news/141201/ent1412010009-n1.html
 「幸福の黄色いハンカチ」「鉄道員(ぽっぽや)」「あなたへ」などが追悼放送された高倉健のようにまた「仁義なき戦い」「トラック野郎」が追悼放送されるんでしょうか。高倉健同様「一つの時代を築いた名優」がなくなることは複雑な思いがしますね。

仁義なき戦い」シリーズで、東映の任侠(にんきょう)・やくざ路線の看板スターとなった。それ以前の東映鶴田浩二さんや高倉さんら、着流しスタイルの任侠映画が主流だったが、菅原さんの活力ある“与太者”が主人公の実録タッチが主流になっていく。

 ということで「仁義なき戦いの成功→任侠映画の衰退」が「高倉健の新路線開拓」につながったわけで「仁義なき」がなければその後の高倉健はなかったかもしれません。 

【追記その1】
 「匿名さん」が菅原氏のリベラル性についてコメントしていますが実は意外にも産経もその点について簡単に触れた記事を書いています。

■『【菅原文太さん死去】「仁義なき 脱原発?」 凶暴なアウトローは実は超リベラルだった… ドスを効かせて「平和」説く』

http://www.sankei.com/entertainments/news/141201/ent1412010013-n2.html
 転移性肝がんのため28日に死去した俳優の菅原文太さんは、「仁義なき戦い」シリーズなど数多くの映画に出演し、日本の映画界に大きな足跡を残したが、そのアウトローな役柄と違って、思想的には超リベラルだった。
(中略)
 被災地に近い仙台市出身ということもあり、平成23年3月の東京電力・福島第1原発事故以後、「脱原発」の姿勢を明確にした。
(中略)
 脱原発の立場で講演会活動などを積極的に続けた。24年12月の衆院選を前に嘉田由紀子・前滋賀県知事が小沢氏*4らと結成した「日本未来の党」の賛同者にも名を連ねた。
 また、この(注:24年12月の)衆院選では、福岡1区で出馬し、落選した民主党松本龍*5の個人演説会で応援演説。「憲法を変えるとか、国防軍を作るなんて言っている敵の自民党に投票したらダメだよ。松本龍を男にしなきゃいかん」とドスを効かせて「平和」を訴えた。
 今年2月の都知事選でも、「脱原発」を掲げた元首相の細川護煕氏を支持し、浅草や銀座などで街頭演説に立った。「敵の陣営は『仁義なき戦い』だが、あれは俺の専売特許だ。われわれは『仁義ある戦い』をしている」などと「文太節」を披露し、脱原発派の喝采を浴びた。

 「原発推進賛成」「国防軍賛成」の産経なのでさすがに褒めてはいませんが罵倒しないだけまあ、マシでしょう。なお、脱原発派でも「未来の党」を評価しない小生としては菅原氏については「総論賛成、各論反対*6」ですね。


【追記その2】
 他にも産経、毎日の菅原氏紹介記事を見てみましょう。安倍が首相というおぞましい時代においては非常にまともな人を失ったという気がしますね。
産経新聞菅原文太さん死去】震災支援にも尽力

http://www.sankei.com/entertainments/news/141201/ent1412010022-n1.html
 仙台市出身の菅原文太さんは、平成23年3月11日に発生した東日本大震災で甚大な被害を受けた岩手、宮城、福島3県の被災地への支援にも取り組んでいた。
 同年6月には、福島県南相馬市の住民約60人が身を寄せる宮城県丸森町の避難所を訪問。菅原さんを案内した同町企画財政課の粟野由三(よしみつ)課長(59)は「子供連れの避難者に『身を寄せる場所はあるんですか』『怖かったでしょう』などと優しく声をかけていました。映画やCMで見る姿そのもの。避難者の方々は、自然体で優しく力強い言葉に励まされ、その日の避難所は笑顔と笑い声に包まれていました」と振り返った。
 被災地の現状を目の当たりにした菅原さんは東京に戻ると、被災者の長期避難や移住を支援するイベントに福島県郡山市出身の俳優、西田敏行さんらと出席。「公営の農場などに農家が移住することはできないか」などと訴えていた。

毎日新聞菅原文太さん死去:在日韓国人に「故郷の家」 建設に尽力』

http://mainichi.jp/select/news/20141202k0000m040133000c.html
 俳優の菅原文太さんが死去した。菅原さんは約30年前、在日韓国人のための老人ホームを大阪に建てる運動に協力した。菅原さんの呼びかけで1億円を超える寄付が集まり、1989年、堺市南区に施設「故郷の家」が建設された。
 きっかけは、施設を運営する社会福祉法人「こころの家族」理事長、尹基(ユンギ)さん(72)の新聞投稿だ。高齢の在日韓国人孤独死を取り上げて施設の建設を呼びかけると、菅原さんから連絡があった。そして、東京のホテルで会った尹さんに「福祉の事は分からないが、難しいことをやらせてほしい」と募金の呼びかけ人を買って出た。
 この法人の記念誌への寄稿文で菅原さんは、新聞を読んだ妻から「あなたの顔と名前で何か手伝えることがあるならやりなさい」と言われて協力することにしたと明かしている。そして「日本人から寄付しようという申し出がないので非常に残念。募金は小さなともし火からスタートさせて、いずれオリンピックの赤々と燃える火のようなところに持って行ければいいなと期待している」と記した。同じ施設はその後、神戸や京都にもできた。
 菅原さんは86年、尹さんの両親が運営していた韓国の孤児院「共生園」も訪れ、子ども2人の里親となり、入学資金の提供や毎月の仕送りで支援した。尹さんは「文太さんのエネルギーと情熱で多くの人が助けられた。もっと長生きしてほしかった」と突然の悲報に肩を落とした。


【その3】

http://miyearnzzlabo.com/archives/21459
町山智浩が語る おすすめ菅原文太主演映画・ドラマ 4作品
町山智浩
 菅原文太さんが亡くなったことで、いろんなところに追悼記事とか出てると思うんですけど。僕、気になったのは間違っているやつがあるんですよ。
 『菅原文太さんは任侠映画で人気を博し』とか書いてあるのがあるんですよ。任侠映画じゃないです!文太さんの出てた映画は。任侠否定映画ですよ。任侠っていうのは『仁義のある男』って書くんですね。漢字がね。でも、それは高倉健さんが出てた映画なんですよ。それは仁義を重んじて、礼儀を重んじる男が筋を通そうとするっていう話なんですね。で、はっきり言うとそういう任侠道っていうものを非常に賛美したものなんですよ。美しく、美しく。
 ところが菅原文太さんが出てた映画っていうのはそうじゃなくて、『そんなもの、嘘っぱちだよ!』っていう映画なんですよ。『任侠なんて、嘘っぱちだよ!所詮、暴力団じゃねーか!』っていう映画なんですよ。
 実録ヤクザ映画路線と言われてるんですけども。まあ、深作欣二監督が確立した世界ですが。具体的にどういったものなのか?っていうと、いちばんわかりやすい例としてストーリーを言いますと、菅原文太さんが1972年に出たですね、『人斬り与太 狂犬三兄弟』というすごいタイトルの映画があります。
 菅原文太さんは狂犬三兄弟の中の兄貴分なんですけども。まあ、ヤクザのチンピラで。自分の入っている組と対立する組のですね、親分だかその幹部を暗殺します。命令されて。で、刑務所に入るわけですね。で、出てきたら出世していると思っているわけですよ。自分が。
 したら、誰も迎えに来ないんですよ。出所してみても。で、出世もなにもなくなっていて。それで『どうしたんですか?』って組に帰って聞くと、『いや、お前が殺した、取った、狙った相手の組とは手打ちしたから』って言われちゃうんですよ。
 『仲良くなっちゃったから、お前の存在自体困るんだよ』って言われちゃうんですよ。要するに仁義だと思って、親分のためにやったわけですよね。組のために。組のために命をかけてヒットマンになって突撃していったにもかかわらず、刑務所を出てみたら、『俺たち仲良くなっちゃったから』って言われちゃうんですよ。
赤江珠緒
 あー。用なしだと。
町山智浩
 で、具体的には、『お前、本当にいると困るから、殺すから』って言われて、処分されていくっていう話なんですよ。
 だから任侠映画じゃなくて、任侠否定映画なんですね。『仁義なき戦い』の1作目はほとんど同じ話ですよね。いま言った話と。ヒットマンとして命をかけて敵の幹部を撃ってですね、殺して刑務所から出てくると、自分は利用されていたってことがわかるっていう話なんですよ。で、上の方のやつらっていうのは、その親分っていうのは結局、ヤクザ世界に入っていても、実社会とあんまり変わらないんですね。要するに保身とお金のことしか考えてなくて。部下っていうのはただの道具だと思っていると。
赤江珠緒
 あー。駒としか見ていない。
町山智浩
 将棋の駒でしかないんですね。歩でしかないんですよ。っていう話が『仁義なき戦い』なんですよ。だからこのタイトル自体で勘違いする人も多いんですけど、菅原文太さんは仁義を信じてるんですよ。この映画、『仁義なき戦い』シリーズで。
 ほとんど唯一、仁義を通そうとする人なんですけど。他が全部仁義なんか無視して、自分の保身と金儲けと出世のことしか考えてないんです。周りは。全部ヤクザは。で、その中でもう苦しんで苦しんで、きりきり舞いしていく男の辛さを描いたのが『仁義なき戦い』シリーズなんですよ。
 これは辛い話なんですよ。見ていて。だからなぜ『仁義なき戦い』シリーズがあれだけ当たったか?っていうと、菅原文太さんがかっこいいっていうよりは、むしろほとんどの中間管理職の人たちの立場を代表しているようなものですよ。
 非常にリアルだったと思いますよ。サラリーマンにとって。
赤江珠緒
 じゃあひとつの歯車として、組織の中で使い捨てられるっていう、そういう理不尽さみたいな。
町山智浩
 そういう話なんですよ。だからリアルだった。だからヤクザ映画っていうのは、要するにヤクザが暴力をふるうだけの映画だろ?って思ったらとんでもない間違いで。非常に普遍的なテーマ、誰にでも当てはまるようなことを描いてたんですよ。『仁義なき戦い』っていうのは。で、いくつかの構造があって。表面的には広島で実際にあった暴力団抗争をモデルにしているんですけども。その奥にもうひとつ、サブテキストと言われるものがあるんですね。奥の意味が。
 で、特にそれがはっきりとするのは『仁義なき戦い』の3作目でですね、1973年の『代理戦争』っていう映画なんですよ。で、これ映画のいちばん頭でですね、こういう話が出てくるんです。日米安保条約の話が出てくるんですよ。で、1970年ぐらいに安保条約に反対してすごい学生運動があって、それが負けて。安保反対の運動が負けた後なんですけども。この映画が作られたのは。
 で、この中で日米安全保障条約っていうのはいったい何か?っていう話がいちばん最初に出てくるんですよ。『仁義なき戦い 代理戦争』は。で、その頃、戦後の世界っていうのはアメリカの下にいる国と、ソ連の下にいる共産国との2つに大きく分かれたっていう話が出てくるんですね。で、ソ連アメリカは直接は戦争しないわけですよ。そのかわり、自分の下にいる国同士を戦わせていたんだっていう話になるんですね。
 東西冷戦の話です。だから南北朝鮮だったり、南北ベトナムだったり、東西ドイツだったりするわけですね。いくつかの国が2つにわけられて。ソ連アメリカ側に。それで対立するっていうことがあったんだと。時にはベトナムとか朝鮮みたいに殺し合いまでさせられていたと。同じ民族同士で。それが代理戦争なんだと。米ソ代理戦争なんですっていう説明が入るんですよ。最初に。
 そこから実際の広島の暴力団抗争の話になるんですね。1960年代はじめの。それはその、大阪の非常に大きな組織だった山口組と、もうひとつの山口組と対立する組がありまして。その2つが広島で別々のヤクザグループを互いにバックアップして代理戦争させていたっていう実話が描かれるんですよ。だから、これは実際のヤクザの代理戦争であるとともに、その当時の冷戦の代理戦争も同時に描くっていうすごいことをやってるんですよ!
赤江珠緒
 なるほどー!規模は違えど、構造は一緒なわけですね。
町山智浩
 一緒なんですよ。非常に政治的な内容になってるんですね。で、その中で要するにどうやって生きのびるか?生きのびるためには大きな力の下につくしかないわけですよ。ところがでも、大きな力の下につくと、ついたでまた戦争をさせられるわけですよ。そのジレンマみたいなものが描かれていて。当時の日本とか世界の多くの国が置かれていた状況っていうものを、ヤクザの抗争に象徴させていた映画なんです。
 だから非常に深いんですよ。で、『仁義なき戦い』シリーズっていうのがすごく深いのは、とにかく何度も何度も広島の原爆ドームが映るんですね。で、結局これはなにを言おうとしてるのか?仁義なき戦いっていうのはなにを言おうとしてるのか?ってことを広島の原爆ドームに代表させているわけですけれども。要するにヤクザの人たちは、自分たちの抗争のことを『戦争』って呼ぶんですよ。
 で、ヤクザのその構成員たち。実際に戦わされる構成員たちは『兵隊』って呼ばれてるんですよ。戦争の話なんですよ。これ、実際に。
 で、要するに戦争っていうのは第二次世界大戦があったわけですけれども。その時に日本人たちの多くが『鬼畜米英、アメリカ人を殺せ!』って言われて。で、『一億玉砕、アメリカ人を殺して自分も死ぬんだ!』って言われて、逆らっちゃいけないと。それで特攻隊とかをやらされてたわけですけれども。終わってみたら、どうなったか?アメリカの下につきましたよ。日本は。ねえ、おんなじじゃないですか。さっきの話と。
 で、『アメリカをやっつけて、お前も死ね!』って言われた人たちは、じゃあ何のために死んだのか?ぜんぜんわからないっていう話が仁義なき戦いなんですよ。しかも、それをやらせた、トップにいた戦争の親玉たちっていうのは、自分たちは絶対に戦争に行かない。で、この仁義なき戦いシリーズの山守組の山守組長っていうのは金子信雄が演じてるんですけども。実在の人物なんですけども。モデルは。最後まで死ななくて、『仁義なき戦い』の公開時も生きてたんですよ。ほとんどが死んだのに。関係者が。
 いちばん悪いやつは、全く暴力もふるわずに生き残ってるんですよ。だから、おんなじなんですよ。で、こういうことを言うんですね。金子信雄扮する山守組長っていうのは。『僕は暴力嫌いなんだよね。僕は1回も人を殺したりしたことないし』って言うんですよ。自分の配下の兵隊たちにはもう、大量に殺させて。殺しあわせているのに。
赤江珠緒
 腹立ちますね。
町山智浩
 でも、政治家って全員そうでしょ?人殺しした政治家っていないわけですよ。戦場に行った政治家っていないんだけども、実際に戦争を起こすのは政治家ですよ。で、その間に挟まれるのが、若くて死んでいく兵隊たちと、悪い親分たちの間に挟まれるのが菅原文太さんなんですよ。っていう映画なんですよ。
赤江珠緒
 この映画は、その3作目でね、代理戦争っていうのがテーマで出てきてますけれども。もう最初から、そういった社会的なことを盛り込んでいこうとして作られた映画だったんですか?
町山智浩
 これはもう、深作欣二監督と脚本の笠原さんがもうそういうことで。笠原さんはその戦前に対してのすごい思いがあって。深作欣二さんは戦争が終わった時にまだ子どもだったんですけども、それまで『アメリカは敵だ!』って言っていた大人たちがコロッとアメリカ側に寝返るのを見て、『なんだ、これは!?』と思ったみたいですね。『なんてインチキなんだ、大人は!』って思った気持ちがずっと深作欣二さんの映画には、ずっとあるんですね。だからその、仁義なき戦いシリーズっていうか菅原文太さんの映画のほとんど象徴的なのは、任侠映画っていうのは敵の悪いボスをやっつける話ですよね。大抵ね。
 ところが文太さんの映画の敵っていうのは自分の組の組長なんですよ。最大の敵は自分の組の組長で、しかも倒せないんですよ。最後まで。どんなことがあっても。だからこれ、『組のために死んでくれるか?』とか言われるんですけど、これ、『国のために死んでくれるか?』って言われて死んでいったんですよね。戦争では。
赤江珠緒
 そうですね。
町山智浩
 だから、戦争中の日本っていうのはヤクザの組とまったく同じ心理状態だったと思うんですよ。そういう映画なんですよ。
 だからね、ものすごく深いだけじゃなくて、菅原文太さんっていう人を象徴してるものっていうのはそういう中で翻弄される庶民でもあるんですね。ヤクザでありながら。で、そういうキャラクターがどんどん強くなっていくんですよ。菅原文太さんは映画人生を通して。
 その後、『トラック野郎』に行くじゃないですか。菅原文太さんは。あっちはコメディーなんですけど、でもね、文太さんのキャラクターっていうのはおんなじなんですよ。たとえばね、トラック野郎の7作目でね、『突撃一番星』っていうのがあるんですね。これ、文太さん扮する桃次郎が怪我人を病院に運ぼうとするんですけど。その病院がどこも面倒くさがって、治療拒否をするんですね。で、文太さんが怒ってですね。『この医者どもの親分はどいつだ!?』って言うんですよ。
 すると、『それは日本医師会会長じゃないですか?』って言われて、『わかった。そいつの家に行く!』っつって。その当時の日本医師会の会長の家に行って、そいつをぶん殴るんですよ。武見会長を。文太さんが。で、その武見会長を演じてるのが(注:『仁義なき戦い』で山守組長を演じた)金子信雄さんなんですよ!
 おんなじじゃん!っていうね。
 そういうところがね、よかったですね。で、要するに金子信雄扮する山守親分を、何度も菅原文太さんは『あいつがいちばん悪いんだ!』って言って拳銃を持って突きつけてですね、『山守の親分、弾はまだ残っちょるがよ』って言うんですけど、結局撃てないんですよ。そこもなんかね、すごく現実的なんですよ。いちばん悪いやつは最後まで生きていて、討てないんですよ。
 で、文太さんは最後まで、戦っても勝てない敵と戦い続けるっていう役をやっていて。実は文太さんの映画でいちばん文太さんに近いのは、映画じゃなくて『獅子の時代』っていうNHK大河ドラマなんですよ。
 文太さんは『朝日ソーラーじゃけん』とか言ってたから、広島の人だと思っている人が多いんですよ。
 でもあの人、本当は仙台出身なんですよ。『獅子の時代』だけでは、本当に彼は東北弁でしゃべるんですよ。東北出身者として。で、『獅子の時代』って山田太一さんが書いた話で。大河ドラマって政治家とか軍人ばっかり主人公で、歴史の勝者ばっかりじゃないか。負けた側の、勝てなかった庶民の話もやりたいってことで始めたのが『獅子の時代』で。これは菅原文太さんがですね、会津藩の武士なんですね。
 で、会津藩っていうのは会津戦争でもって明治政府に弾圧されるんですけども。で、その中で会津藩の人が『やっぱり自決しよう』って日本人の悪い癖で言うんですけど。『そうじゃない!死んだらダメだ!生きて、戦い続けるんだ!』って文太さんは言うんですけども。その言った通りに明治政府のいろんな庶民に対する弾圧と徹底的に戦っていくっていう話なんですよ。文太さんが。
赤江珠緒
 はー!いや、でもこうやって聞くと一貫されてますね。文太さんのその、たしかに。
山里亮太
 上の人と戦う。
町山智浩
 そう。で、最後はその明治政府による自由民権運動の弾圧の中で、彼が戦っていくところで獅子の時代は終わるんですけど。最後のナレーションは『彼の死体は見つからなかった』っていうナレーションなんですよ。『その後、いろんな形で政府による庶民の弾圧があった。それに対して庶民が抵抗して戦うと、その場で銑次を見たというものがいるという。どこに行っても庶民が戦う時には彼がいる』っていうナレーションで終わるんですよ。
赤江珠緒
 へー!文太さん、そのままの人生ですね。
町山智浩
 つまり、彼はものすごい権力に対して戦い続ける男の象徴として描かれてるんですね。『獅子の時代』では。だから本当にそういう人だったんで。だから亡くなるまでもですね、平和憲法を守る会とかで発言したりですね。原発問題についても言ってますし、特定秘密保護法にも反対する集会とかでも発言しててですね。本当にそういう人だったんですね。
赤江珠緒
 なるほど。本当、反骨の人だったんですね。
町山智浩
 徹底して戦い続けた人ですね。

http://d.hatena.ne.jp/vanacoral/20141201
■vanacoralの日記『菅原文太氏、逝去』
 本日、映画俳優の菅原文太氏が亡くなられた事が報じられました。
 生前は小沢一郎寄りだったり、都知事選で細川護煕の側についたりしたのには(注:小沢や細川を評価出来ない人間として)正直閉口しましたが、この間の沖縄県知事選で翁長雄志候補を支持して下さったのは本当に有難い限りです。
(中略)
 沖縄のために、本当にありがとうございました、とヤマトの人間ながら感謝の念を述べざるをえません。
 この点、辺野古にも行かず、チャンネル桜に擦り寄り、結果知事選で1万票も獲得できず、今度の衆院選ではオール沖縄破りの下地幹郎*7(沖縄1区*8。維新)を支持する喜納昌吉を支持した三宅洋平とどうしても対比させざるをえません。
(中略)
 こんな三宅洋平に対して緑の党衆院選に擁立をもちかけたとの事(11月14日付東京新聞より)ですが、これ以上彼を政治に関わらせるべきではありません。

*1:個人的には廃止すべきだと思う

*2:まあ、引き取ってくれるなら法務省限定ではなく、公安調査庁から公安警察や外務省の情報収集部署への異動でもいいんですが

*3:G8加盟国(米国、カナダ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、日本、ロシア)、EU、中国、韓国、インド、インドネシア、トルコ、サウジアラビア、メキシコ、ブラジル、アルゼンチン、南アフリカ、オーストラリア

*4:中曽根内閣自治相・国家公安委員長自民党幹事長(海部総裁時代)、新生党代表幹事、新進党代表、自由党党首、民主党幹事長などを経て現在、生活の党代表

*5:菅内閣環境相(防災担当相兼務)

*6:正確には各論一部反対、一部賛成ですね。「匿名さん」ご紹介の、菅原氏の翁長氏支持演説にはもちろん菅原氏に感謝しています。

*7:小渕内閣沖縄開発政務次官小泉内閣経産大臣政務官、野田内閣防災等担当相を歴任

*8:沖縄1区は現職の赤嶺政賢氏(共産党)を翁長陣営の教頭候補として擁立することが決定している。なお2区は照屋寛徳氏(現職、社民党)、3区は玉城デニー氏(現職、生活の党)、4区は仲里利信氏の擁立が同様に決まっている。