今日の産経ニュース(7/23分)(追記・訂正あり)

 最近、産経記事が俺的に豊作ですね。

ミャンマー、違法伐採で中国人153人に終身刑 中国は「適切な処理」要求
http://www.sankei.com/world/news/150723/wor1507230046-n1.html
 何が背景にあるのか分かりませんがまあ、一般論で言えば「違法伐採で終身刑」てのは「異常な重罪」ですよね。ウヨだと「反中国」ということで、こういう無茶苦茶な判決でも擁護したりしますが。


■中国国旗引き降ろしたチベット人らを逮捕 豪で抗議集会
http://www.sankei.com/world/news/150723/wor1507230025-n1.html
 チベットが平和主義だという「一部チベットキチガイ」の主張が嘘だと分かるナイスニュースです。ちなみに日本でも駐日中国大使館や領事館でこういうことやったら「住居不法侵入」「威力業務妨害」「外国国旗損壊」で逮捕でしょうね。


■【愛媛「正論」懇話会】世界で民主主義は機能せず、近代国家に限界…「日本人のモラル、再評価を」 近藤誠一*1・前文化庁長官
http://www.sankei.com/west/news/150723/wst1507230073-n1.html
 やれやれですね。文科省といえば「教科書問題」つうのがありますし最近は「世界遺産問題での韓国とのもめ事」もあったわけです。そう言うこの時期に「前文化庁長官」が産経のウヨ講演会に講師として登場する。
 「ああ、やっぱ文科省ってウヨの巣窟なのか?*2」と世間にアピールする効果は抜群でしょう。それが果たして文科省のため、日本の為になるのか。
 この近藤氏って人はどんだけ政治センスがないんですかね。まあ記事を読む限り「無茶苦茶右翼的なわけでもなく、日本文化万歳程度の内容」のようですが。


■【世界遺産登録】これでは慰安婦外交の二の舞ではないか! 「forced to work」は一般に「強制労働」と読む
http://www.sankei.com/premium/news/150723/prm1507230002-n1.html
 この件については
■Apes! Not Monkeys! はてな別館『じゃあいったい「強制労働」とはなにを意味するんだろう?(追記あり)』
http://d.hatena.ne.jp/Apeman/20150706/p1
も参照ください。
 慰安婦の二の舞も何も「軍艦島端島炭鉱)世界遺産登録」にあたって安倍政権や産経が「強制労働の事実を否定したがってる」のに唖然ですよねえ。だったら軍艦島なんか登録申請しなきゃいい。「韮山反射炉」とか強制労働のない場所だけ申請すればいい。
 慰安婦靖国だけでもうんざりなのに「強制労働否定までやらかして」勝手に「もめ事をでかくする」んだから本当にうんざりです。
 しかも「brought against their will and forced to work(意思に反して連行して働かせた)*3」と日本代表が演説したので「ああ、日本は韓国の言い分を認めたのか、いろいろともめたけど最後は円満解決して良かった」と「当事者の韓国も含めて関係各国、イコモス委員国が納得して全員一致で遺産登録を認めたら」後になって「brought against their will and forced to workは強制労働を意味しない」などと菅官房長官らが言い出して韓国を怒らせるんだから「アホと違うか」「意思に反する労働は強制労働だろ?」と思いますよねえ。
 ハングマンとか必殺仕事人とかに出てくる悪党を連想させる日本政府の酷い態度です。
 演説した最初からこういう詭弁をかますつもりだったのか、「日本国内のウヨ(例:産経)の反発」で詭弁をかます羽目になったのかはともかく「演説時から詭弁かます気だったのか」と非難されても文句は言えないでしょう。


■【主張】中国ガス田写真 「緊張の海」を示す証拠だ
http://www.sankei.com/column/news/150723/clm1507230003-n1.html
 こんなもんは産経の言い分と違って「集団的自衛権の正当化」には全くなりません。米軍が攻撃された訳じゃないし、そもそも「ガス田開発」は是非はともかく侵略ではないでしょう。

政府はプラットホーム建設の動きを積極的に公表せず、今月6日になって認めたが、その時点でも詳細な説明は控えた。

 要するに安倍ですら「日本政府が下手に中国批判する→自民党反中国派や反中国メディア(例:産経)が中国を糞味噌に批判する→日中交渉がしづらくなる」ことを恐れてるわけです。


■【阿比留瑠比の極言御免】安保法案賛成派は「悪」なのか SNSにあふれる根拠のない断言
http://www.sankei.com/premium/news/150723/prm1507230007-n1.html

 タレントで「ウルトラマンダイナ」の主演も務めたつるの剛士氏が、15日付の自身のツイッターでつぶやいた安全保障関連法案に関する発言が「炎上」している。問題とされたのは、以下の内容だ。
 「『反対反対』ばかりで『賛成』の意見や声も聞きたいなぁって報道やニュース観ていていつも思う。賛成派だって反対派だって平和への想い、戦争反対の想いは同じ」

 炎上させることがいいとは言いませんがつるの発言は事実に反してますからね。
 「反対ばかりで賛成の声も聞きたい」というほどニュースに反対の声はあふれてるのか。そんなことないでしょう。産経や読売なんか露骨に法案賛成派の訳です。かつ、つるのはツイッターやってるわけですからネット検索すれば賛成の声なんかいくらでも聞けるわけです。
 つるのの発言は「アホか」「賛成派が迫害されてるようにせこい印象操作してるか」どっちかでしかないわけです。批判されて当然でしょう。

 国会周辺を歩くと、安保関連法案反対派のこんな演説を聞くことがある。
安倍晋三首相は、軍需産業と結託して戦争を起こすことでカネもうけをたくらんでいる」

 まあ、安倍は「武器輸出三原則」を事実上なくして「基本武器輸出OK」にしましたしその可能性は否定できないでしょう。そして、戦争を起こすことで金儲けを企んでるかどうかはともかく「日本が輸出した武器が戦争を助長すること」へのためらいは安倍にも産経・阿比留にも「日本軍需産業」にもないでしょう。


■【拉致再調査】またも報告延期通告 被害者家族の思いに政府は応えることができるのか
http://www.sankei.com/premium/news/150723/prm1507230003-n1.html
 いつもの産経の制裁論です。制裁してどうするのか。拉致解決という意味では何の意味もないことは既に「小泉訪朝語の10年を超える制裁」で明白なわけです。中露が公然と経済支援してるんだから日本の制裁が効くわけがない。


■【正論】「特殊な国」からの脱皮を目指せ 防衛大学校名誉教授・佐瀬昌盛
http://www.sankei.com/column/news/150723/clm1507230001-n1.html
 「集団的自衛権行使ができない特殊な国から脱皮するためには、今回の安保法案が必要なんだ、憲法学者の批判など知ったことか」という産経らしい異常きわまりない暴論です。
 1)「なぜ集団的自衛権が行使できない国であってはいけないのか」
 2)「戦後七〇年間ずっと行使できなかったわけだがそれで不都合があったのか。それとも今まで不都合はなかったが今後不都合があるのか」
 3)「仮に不都合があるとしても憲法学者のほとんどが違憲立法と言っている以上、明文改憲に踏み切るべきではないのか?。立憲主義無視などまともな行為なのか?。もし明文改憲を国民に問うて支持が得られなければ『改憲が必要だと思っていたが実はそうではないのかも知れない』『改憲は必要だがそれを国民に伝えられなかった自分らの力不足』などと言う態度を取るのが民主主義ではないのか?。安倍政権のしていることは民主主義否定ではないのか」といった当然すぎる程当然の疑問はガン無視です。
 特に「今回、特に問題とされてるのは3)」で保守派、右派の中には「明文改憲で信を問えよ」と言う人間もいるのですがね。
 たとえば小林節慶應大名誉教授なんかはそうでしょう。彼は確か「限定条件つき」でしたが集団的自衛権そのものには反対してなかったかと思います。彼が問題にしているのはもっぱら3)のわけです。

 進歩的知識人の発言が重視されているのがそれです。

やれやれです。憲法学者の大半が「安倍法案は違憲だ(あるいは違憲の疑いが濃い)」としていることのどこが

進歩的知識人(いわゆる左派やリベラル保守のこと)の発言が重視されている

のか。小林節氏なんか「進歩的知識人」の範疇に入る人間じゃないし当人も「俺はそんなんじゃねえ」「レッテルはりするな」と怒り出すでしょうよ。

 過般の衆議院で3人の憲法学者安倍晋三政権の望む「集団的自衛権の限定行使」は憲法違反だと述べ、「護憲」派は鬼の首でも取ったような興奮ぶりです。
 しかし、これはおかしくないでしょうか。
 17世紀の昔、ガリレオ・ガリレイは「地動説」を唱え、「天動説」を自明としたカトリック教会の怒りを買いました。しかし、結局正しかったのは、「それでも地球は動く」と呟(つぶや)いたガリレイです。

 「俺は少数派だが、ガリレイだって当時は少数派だったじゃないか」というのは歴史修正主義連中(例:ホロコースト否定論、南京事件否定論)、エセ科学連中(例:ホメオパシー)がよく言う物言いです。場合によってはガリレイ以外の学者(ガリレイ同様地動説を唱えたコペルニクスとか)が出ることもありますが。産経もついにそこまでいったかと思うと呆れます。
 むしろ「宗教権威カトリックガリレイを屈服させたように」、政治権威である安倍政権が学問側を屈服させようとしてるのが今回の事態です。
 安倍政権の暴挙に「それでも政府法案は違憲だ」と言っている憲法学者こそがガリレイの訳です。
 「スターリン体制下におけるルイセンコ学説=安倍支持のウヨ憲法学者」でしょう。
 まあ、法律学というのはかなり価値観が影響する学問とは言え、安倍のやり口は「価値観は多様」ですむ代物じゃありません。当初安倍も「解釈改憲」など口にしてなかったわけです。そこには「アベノミクス人気で明文改憲も可能」「無茶な解釈改憲は避けたい」と言う読みがあったのでしょうが、そううまくいきそうにない、でも集団的自衛権は早く行使したいと考えて今回の暴挙「無茶な解釈改憲」に至ったわけです。

何が真理かは多数決では決まりません。

 おっしゃるとおり「素人の単純多数決」で専門的問題を決定するのは危険きわまりない。
 そこで専門家の出番となるわけですが「専門家の多数決では決まらない」と言い出すのだから唖然です。インチキ医療をして医療従事者の大半から非難されてる人間(例:近藤誠)が「何が真理かは多数決では決まりません、医療従事者の多くが私を非難しようと私は真理です」と言うレベルの詭弁です。
 ならこの集団的自衛権問題では何が真理か、何を基準に真理を決めるかといえば「俺(安倍政権と俺達安倍支持者)がルールブックだ、俺が真理だ」「俺を信じろ」だから話になりません。それ客観性のかけらもないじゃないですか。それこそこんな馬鹿な事を言ってる人間が全国紙の紙面に登場することこそが「特殊な国」「異常な国」であり脱皮すべき事でしょう。

政府答弁ですが、外相と防衛相は「リスク」の増大を否定しました*4。そうでしょうか。常識で考えて、海外派遣の範囲も役割も拡大するので、「リスク」は増えます。なぜそう答弁しないのでしょう。不幸にして自衛官から死者が出る場合、政治家として責任を取る*5となぜ言えないのでしょう。

 まあ、その通りですし、そう言う嘘をつくから「説明が不十分だ」と認識されて「理解が進まず」法案反対派も増え安倍内閣支持率も下がるわけです。しかし、だからといって「安倍は嘘つきだ、法制定それ自体には反対じゃないがそんな嘘つきなやり方での法制定には俺は反対だ」「嘘をつくくらいなら法など制定しなくていい」と言えないあたりが産経や佐瀬のどーしよーもないところです。
 とにかく法制定はしたいので安倍政権が嘘をついても構わない。
 でも「嘘をついたら危険なところへの派兵が難しくなる(派兵したら嘘つきになるから)」、だから「リスキーだが国益上仕方がないんだ、危険な所にも派兵するんだ」とこの国会で安倍政権にはっきり言って欲しい。でもはっきり言ったら国民の反発で法制定が難しくなるだろうし、そう言うこと安倍は言いそうにないし、ということで「安倍政権にはっきりとリスクについて語れと要求するか、法制定を最優先して嘘を野放しにするか」というハムレット状態になるわけです(結局嘘を野放しにするのでしょうが)。
 でも最初に「安倍政権は嘘つきだ」と言ってしまった時点で「産経や佐瀬がリスク論で安倍政権批判を控えたら」それは安倍政権の嘘の黙認だと自白していることになるわけです。

次に野党。「リスク」問題での拙劣な政府答弁に浮かれたのか、この弱点を攻めまくりました。

 野党が批判したのは「リスク論だけではない」ですがそれはさておき。
 「拙劣」じゃなくて「明らかな嘘」ですね。そして政府がモロバレの嘘をつけば「嘘じゃないか」と野党が攻撃するのはこの件に限らず何だって当たり前です。

 「リスク・ゼロ」にする絶対的な方法があります。自衛隊をわが国領域外に一切出さないことです。それなら、自衛隊の国内殉職者は出しても海外で自衛官が「戦死」するはずはありません。ただし、それでは「鎖国的」安保政策と言うべきでしょう。国民が、野党諸賢自身がそれを望みますか。

 やれやれですね。これで反論したつもりなんでしょうか。
 安倍が集団的自衛権の説明に「家の火事」のたとえをしたのをまねして「自衛隊の海外派兵=雪山登山」とでもしてみましょう。
 佐瀬の言ってる事は今まで「日本はいろいろな雪山登山(PKOでの自衛隊海外派兵)をしてきた、今回、新たな雪山登山(集団的自衛権での自衛隊海外派兵)をして何が悪いのか。野党は雪山登山それ自体を否定するのか」というようなもんです。
 先ず第一に佐瀬は故意に無視してるのでしょうが、民主党はともかく共産党は「雪山登山」それ自体に反対の立場です。そう言う党にとっては「雪山登山に反対なのか」と聞かれれば「反対ですが、何か?」という話でしかない。
 第二に「過去の雪山登山」と「今回の雪山登山」では危険度が大分違うわけです。「日本アルプスを登れれば、エベレストも登れるはずだ」なんてことはおそらくないでしょう。雪山にもレベルの差がある(雪山登山素人なのでまるきり無知ですが)。そう言うことをまるきり無視した暴論が佐瀬の物言いの訳です。
 

*1:外務省広報文化交流部長、ユネスコ日本代表、デンマーク大使、文化庁長官など歴任

*2:ただググったところ近藤氏の本籍(?)は外務省のようですが。

*3:against their will(意思に反して)を産経がガン無視するデタラメさはさすが産経です

*4:安倍も否定してるのですが安倍の名前を出さない辺りは産経らしい配慮でしょうか。外相と防衛相を任命してるのが安倍である以上無意味な配慮ですが。

*5:産経的にどうすれば責任を取ったことになるのかよく分かりません。首相や防衛相の引責辞任か、遺族への経済支援なのか、自衛官靖国合祀か、はたまた「早急な自衛隊の撤退」なのか。まあ、たぶん産経のことですから「米軍が撤退しない限り」何があろうと自衛隊撤退論は唱えないでしょうが。