今日の産経&中国ニュース(2019年7月12、13日分)

【昭和天皇の87年】東京裁判がでっち上げた「レイプ・オブ・南京」 - 産経ニュース
 この産経記事「東京裁判での捏造」がデマであることは南京事件−日中戦争 小さな資料集
日本人の著作に見る「南京事件」
軍人の発言に見る「南京事件」
文化人と「南京事件」 石川達三、大宅壮一、西條八十、火野葦平
郷土部隊戦史に見る南京事件
松本重治氏の証言
日高信六郎氏の証言
などで明白です。
 南京での捕虜殺害や略奪、強姦などの違法行為はリアルタイムで欧米に認識されていました。「情報統制されていた国内の日本人」は「終戦後の東京裁判」などで南京事件を知らされるまでは知りませんでしたが(勿論現地の日本人や、現地から報告をうけている政府中央はある程度分かっていました)。
 そして「南京事件など日本の問題点を知らされない」その結果、国内の日本人は「なにゆえに欧米が日本批判を強めるのか」が適切に理解できず、いたずらに被害者感情と欧米への敵意を募らせて「真珠湾攻撃」へ突き進むわけです。

 日本兵により「殺害された一般人と捕虜の総数は、二十万以上」と認定している。被告席に座る元中支那方面軍司令官、松井石根は仰天したことだろう。
 結論からいえば、この判決はでっち上げである。

 むしろこの産経記事こそがデマカセです。「殺害された一般人と捕虜の総数は、二十万以上」かどうかはともかく「総数で10万を超える虐殺があったであろうこと」はむしろ通説的見解(笠原十九司氏、本多勝一氏など)です。松井も従って「産経が言うような意味」では何一つ驚きはしなかったでしょう。
 「他にも存命の現地軍幹部はいるのになぜ自分(事件当時、中支那方面軍司令官)と谷寿夫(事件当時、熊本第6師団長)だけが裁かれるのだろう。存命の人間では、自分と谷だけが南京事件についてそんなに責任があると中国に思われてるのか。はたまた政治的な忖度*1が何かあるのか」つう意外性は感じたかもしれませんが。
 なお、ウィキペディア「谷寿夫」によれば「松井*2(中支那方面軍司令官)」「谷(熊本第6師団師団長)」「朝香宮*3上海派遣軍司令官)」以外では

・中支那方面軍参謀副長:武藤章*4
上海派遣軍参謀長:飯沼守*5
上海派遣軍参謀副長:上村利道*6
・金沢第9師団長:吉住良輔
・金沢第9師団参謀長:中川広*7
・京都第16師団参謀長:中沢三夫*8
・第10軍参謀長:田辺盛武*9
・熊本第6師団参謀長:下野一霍*10
・宇都宮第114師団長 末松茂治
・宇都宮第114師団参謀長:磯田三郎*11
・久留米第18師団長:牛島貞雄*12

南京事件当時の「東京裁判当時存命の主な現地軍幹部」です。
 武藤(事件当時、中支那方面軍参謀副長)は南京事件では起訴されませんでしたが「東条内閣時代の陸軍省軍務局長として太平洋戦争開戦に関与したこと」「第14方面軍(フィリピン)参謀長時代のマニラ虐殺事件」によって訴追され死刑判決が出ます(後に武藤は、東条元首相らとともに靖国に合祀)。
 田辺(事件当時、第10軍参謀長)は南京事件では起訴されませんでしたが、第25軍(スマトラ島)司令官として、訴追され死刑判決を受けます。
 一方

・中支那方面軍参謀長:塚田攻  
・京都第16師団長:中島今朝吾
・第10軍司令官:柳川平助*13

が「東京裁判当時は既に死亡している主な現地軍幹部」です。

 歩兵第6旅団は南京城内の掃討にあたり、隷下の部隊にこう命じている。
 一、軍司令官の注意事項を一兵に至るまで徹底させた後、掃討を実施せよ
 一、青壮年はすべて敗残兵または便衣兵とみなし、すべてこれを逮捕監禁せよ。
 こうした命令により苛烈な便衣兵狩りが実施され、一般市民が巻き添えになった可能性も高いことは既述の通りだ。摘発された敗残兵の一部は市民の前で処断(殺害)され、それが虐殺と受け止められたなら弁明はすまい。

 「受け止める」も何もこうした「自称便衣兵狩り」が虐殺以外の何物でもなかったことは
東中野氏「再現南京戦」(8) 国際法論争1
東中野氏「再現南京戦」(9) 国際法論争2
で明白です。
 そもそも産経の引用文ですら

青壮年はすべて敗残兵または便衣兵とみなし、すべてこれを逮捕監禁せよ。

です。これを「問題だと思わないバカ」が産経のようです。
 「非常事態なので、青壮年(つまり、兵隊になることが出来る年代の男性)は(敗残兵、便衣兵と疑う具体的証拠がなくても)全部敗残兵、便衣兵扱いで逮捕してかまわない」て、そんな無茶苦茶な話がどこにあるのか。
 ウイグルチベットでテロがあったとして中国政府が「(テロリストと疑う具体的証拠がなくても)青壮年はすべてテロリストとみなし、すべてこれを逮捕監禁してかまわない。今は非常事態だからだ」と言う命令を出したらそれを産経は「非常時だから仕方がない」「中国は間違ったことは言ってない」で容認するのか。
 これで「違法虐殺が起きなかったら」その方が不思議です。
 大体「弁明はすまい」どころか「アレは便衣兵狩りで違法虐殺じゃない」と言い訳しまくってるのが産経らウヨです。
 そもそも「便衣に着替えた兵」の多くは「軍服を着てると日本兵に虐殺される」と思って着替えたのであり、「ゲリラ兵」という意味での便衣兵など存在しません。そして実際日本軍は「中国軍捕虜を虐殺してる(これも勿論南京事件の一部です)」ので「軍服を着てると虐殺される」と言う認識は全く正しかったわけです。

 2万人以上が強姦されたとか、多数の婦女が殺されて死体は切断されたとか、ありえない話である。

 「ありえない」とは言い切れないでしょうが強姦の数は「殺人以上に把握が困難」であり「強姦の数」にこだわってる人間はまずいないでしょう。そしてならば「2万件の強姦は認めないが、多数の強姦があったこと自体は認めるのか」といったらそうではないのだから産経には心底呆れます。

 火のない所に煙を立てたのは誰か。
 一人は、南京安全区国際委員会の委員長だったジョン・ラーベだろう。

 ラーベ日記(邦訳)が講談社から出版されたこと、「南京安全区国際委員会の委員長」ということで彼が比較的有名なのでやり玉に挙がるわけです。無名なら産経も批判しないでしょう。
 ただしリアルタイムではむしろ、「メディアにつてのない彼」よりも「NYタイムズのダーディン」「AP通信のティンパリー」など、メディア記者の報道の方がよほど欧米の世論に影響を与えたでしょう。もちろん産経は彼らメディア記者もデマ報道と誹謗するわけですが。
 もちろん、ラーベにとってそんなデマを流す動機はどこにも存在しません。
 なお、ラーベについては
ラーベは武器商人か?
ラーベが報告する「犠牲者数」
ラーベ12月9日射撃音
12月13日、ラーベの行動
平気で嘘をつく人?
ラーベ日記は三等史料か?
を紹介しておきます。

 ラーベは「局部に竹をつっこまれた女の人の死体をそこらじゅうで見かける。吐き気がして息苦しくなる」とも書く。同年7月の通州事件で中国人保安隊は同様の残虐行為をしたが、日本人にはとても真似の出来ない行為だ。

 何を根拠にまねできないというのかまるきり意味不明です。大体産経は何が言いたいのか。ラーベが嘘をついてるというのか。
 はたまた「そんなことをやるのは日本人じゃなくて中国人だ」といいたいのか。

 ラーベは、一般市民への虐殺現場を一件も見ていない。すべて中国人からの伝聞である。

 おいおいですね。そもそもさすがの日本軍も外人がいる前で犯行に及ぶほど傍若無人ではないでしょう。また、この産経の物言いでは「殺人現場から逃走する犯人」を目撃しても「直接の犯行現場(ナイフで刺す、バットで殴る、手ぬぐいで首をしめるなど)を目撃しなければ」犯人かわからないというとんでもない話になるでしょう。
 そして「伝聞証言だから信用できない」つうなら安明進のめぐみさん拉致証言も「先輩の工作員から聞いた」と言う伝聞証言であり、安自身がめぐみさんを拉致したわけではないのですが。
 都合のいいときは「伝聞証言(安証言)」でも利用し、都合の悪いときは「伝聞証言(ラーベ証言)」と言うだけで否定するのだから産経もいい度胸です。
 しかも「ならば中国人被害者自身(例:夏淑琴氏など)の証言なら信用するのか」と言えばそれも否定するのだから、話になりません(夏氏に対する誹謗とそれに対する批判としては例えば夏淑琴さん事件 SAPIO編夏淑琴さん事件 東中野修道氏「徹底検証」編参照)。

 もっとも、日本軍の不法行為が皆無だったわけではない。一部で日本兵による掠奪や放火事件なども確認され、処罰されたとの記録もある。甚だしきは翌年1月に発覚した“事件”だ。上海派遣軍参謀長の飯沼守が日記にこう書き残している。
「米人経営ノ農具店ニ二十四日夜十一時頃日本兵来リ、留守番ヲ銃剣ニテ脅シ女二人ヲ強姦、訴ヘニ依リ其強姦サレタリト云フ家ヲ確メタルトコロ、○○中隊長及兵十数名ノ宿泊セル所ナルヲ以テ其家屋内ヲ調査セントシタルニ、○○ハ兵ヲ武装集合セシメ逆ニ米人ヲ殴打シ追ヒ出セリ。」

 何でこの件が問題になって処罰されたかといえば、もちろん「相手が米国人」だからです。
 「米国人経営の店に押し入って泥棒や(従業員の?)女*14を強姦したあげく、抗議した米国人を殴って店から叩きだした」なんてやらかせば確実に米国から抗議が来るし、それを無理に隠蔽しようとするほど日本軍も無謀ではなかったのでしょう。つうか米国人相手でこれです。中国人相手ならもっと酷かったんじゃないかということは容易に想像できます。
 まあ、産経ですら「否定しきれない」と思う部分は渋々認めるわけです。もちろん処罰された事件は「全体のごく一部」です。
 「見ろ、日本軍がちゃんと軍人の犯罪を取り締まってるんだ、だから南京事件なんかない」といえる話では全くない。
 また「個人的な犯罪」ではない、組織的犯行である「捕虜虐殺」や「自称・便衣兵狩り」にいたってはそもそも不祥事の認識がないわけです。
 「捕虜にやるだけの食料がないが、解放したらまた兵隊として活動するかもしれない。後腐れなく殺してしまおう」「民間人を巻き添えで犠牲にしてもかまわないから兵隊の疑いがある奴は後腐れなく(以下略)」と言うとんでもない理由で「捕虜虐殺」や「自称・便衣兵狩り」という組織的な虐殺は実行されました。もはや「中国人に対する差別意識」がそこまで酷かったということでしょう。

 東京裁判がでっち上げた猟奇的強姦殺人

 そもそも産経ほど「猟奇的殺人」に対するこだわりは誰もないでしょう。
 「猟奇的でなければ殺人していいわけではない」からです。まあ、現地において「殺人」があり、その犯行方法が「猟奇的」であるならば「日本軍の犯行」以外ではあり得ないのですが、「猟奇的な犯行は話を誇張してるかもしれない」と産経が言うなら「単なる強姦殺人」と言うことでも俺的にはかまいません。しかし産経はもちろん「単なる強姦殺人」だって認めない、いやそれどころか「殺人のつかない強姦」だって認めないのだから話になりません。南京において強姦殺人や強姦が全然なかったなんて事実はありません。

 中国系アメリカ人女性作家のアイリス・チャンは1997(平成9)年に刊行した「ザ・レイプ・オブ・南京」の序文に、こう書いている。

 ばかばかしいですね。南京事件は別に「アイリス・チャン」によって世界に広まったわけではありません。既に書きましたが「NYタイムズのダーディン」「AP通信のティンパリー」など当時の欧米メディア記者によってリアルタイムで報道されていました。
 そして、欧米はともかく日本においては、笠原十九司南京事件』(1997年、岩波新書)、『南京難民区の百日:虐殺を見た外国人』(2005年、岩波現代文庫)、『増補・南京事件論争史』(2018年、平凡社ライブラリー)、清水潔『「南京事件」を調査せよ』(2017年、文春文庫)、秦郁彦南京事件(増補版)』(2007年、中公新書)など、チャン以外の著書もあるわけです。
 チャンの本に問題があろうとそれは「彼女の南京事件認識に問題がある」と言う話に過ぎず、「南京事件がなかった」と言う話ではありません。

 南京占領後に伝聞と誇張に基づく「虐殺」が一人歩きし、海外紙が書き立てたことで軍司令官の松井は窮地に立たされた。外務省と陸軍中央は軍紀が乱れていると判断。松井は昭和13年2月に職務を解任される。

 もし事実無根なら日本政府は、南京事件を理由に日本を非難する欧米の政府やメディア(「NYタイムズのダーディン」「AP通信のティンパリー」など)に抗議したでしょう。松井も解任はされなかった。
 日本政府が「日本国内に事件報道が来ることを情報統制で阻止しただけ」で、欧米の政府やマスコミにはろくに抗議せず、松井も解任されたこと*15自体が「南京事件が存在したこと」「それを日本政府も認識していたこと」の傍証です。
 「松井を解任しなければ国際社会の日本批判を助長する」と危惧したからこそ日本政府、軍は松井を解任しました。

 何よりやり切れないのは、南京占領で終わると思っていた戦争が、終わらなかったことだ。その責任は松井にではなく、首相の近衛文麿にあった。

 もちろん「戦争が終わらなかった理由」は松井にもあります。
 彼が南京事件を引き起こしたこと*16で、「欧米の日本批判」や「中国人の反日感情」は更に激化し、蒋介石の抗日意欲を強めたからです。


【昭和天皇の87年】検証「南京大虐殺」 中国兵1万6千人はなぜ殺害されたのか - 産経ニュース
 今回、産経がかましてる南京事件否定デマは「幕府山事件」という虐殺事件の否定です。
 この「幕府山事件」否定デマに対する批判については東中野氏「再現南京戦」(5) 「幕府山事件」(1)東中野氏「再現南京戦」(6) 「幕府山事件」(2)東中野氏「再現南京戦」(7)を紹介しておきます(あとでこれらの批判を元に産経記事には簡単に突っ込みますが)。なお、東中野氏「再現南京戦」(5) 「幕府山事件」(1)の執筆は(2008.1.20)です。つまり既に論破された手垢のついたデマを垂れ流して恥じないのが産経です。
1)極度の不勉強か
2)故意のデマ垂れ流しか
おそらく2)でしょうが全くふざけた話です。産経は「オレオレ詐欺の詐欺師」と同じで「だませる人間だけをだまそうとしてる」にすぎず、まともな議論をする気はないわけです。
 なお、記事批判サイトとして東中野氏「再現南京戦」(5) 「幕府山事件」(1)が掲載されている南京事件−日中戦争 小さな資料集を紹介しておきます。量、質共にかなり充実していますので、このサイトの南京事件関係記事を読めば「ほとんどの南京事件否定論のウソ」は見抜けるでしょう。勿論この産経記事もその一つです。

 南京が陥落した1937(昭和12)年12月13日の翌日、南京城の北方、幕府山の砲台を占領した第103旅団長の山田栴二(せんじ)は驚いた。大量の中国軍将兵らが白旗を掲げて投降してきたからだ。その数、およそ1万4000人。
 上級司令部に連絡すると「皆殺セトノコトナリ」である。山田はますます困惑した。
 陸軍中央や中支那方面軍の方針は明確でなく、投降兵の処置は事実上、現場指揮官の裁量に委ねられた。
 別の地域で第66連隊は、投降した1600人余を処断(殺害)した*17。第38連隊は、約7200人を収容所に入れた。第45連隊は、約5500人を武装解除のうえ全員解放した。
 山田はどうしたか。
 旧防衛庁・防衛研修所編集の公刊戦史によれば、「皆殺セ」の指示には従わなかったようだ。まず非戦闘員とみられる約6000人を解放、約8000人を臨時の収容所に入れた。だが、収容所の火災で半数が逃亡する。やむなく山田は残り約4000人を揚子江の対岸に逃そうとしたが、移動中に投降兵らがパニック状態となり、危険を感じた日本兵が機関銃を乱射、約1000人が死亡し、残りは逃亡した。

 東中野氏「再現南京戦」(5) 「幕府山事件」(1)東中野氏「再現南京戦」(6) 「幕府山事件」(2)東中野氏「再現南京戦」(7)を読めば分かりますが、幕府山事件についての「非戦闘員とみられる約6000人を解放」「収容所の火災で8000人の半数(4000人)が逃亡」「結果、殺害されたのは1000人」などというのは違法殺害数を減らすためのウソであり、実際にはそのようなことは全て実際には何一つなく「投降した捕虜全て(14000人)を違法殺害した」つうのが通説です。
 ただここで産経は「うかつ者」というべきか、「正直者」というべきか、南京事件否定論にとって都合の悪いことを平然と書いています。
 それは

・上級司令部に連絡すると「皆殺セトノコトナリ」である。

つう記載です。つまり仮に「非戦闘員とみられる約6000人を解放」などが、事実としてもそれは旅団長の山田が「皆殺害せよ」という上の命令を無視したからであって、上の命令に忠実に従っていれば「捕虜全ての虐殺」が起こったと言うことです(ただし既に指摘しましたが、通説では上級司令部の指示通りに山田によって虐殺が行われたのであり、「6000人を解放」などは違法殺害数を減らすためのウソです)。

 南京城内では、軍服を脱ぎ捨てて安全区に潜り込んだ便衣兵らの摘発が問題となった。治安を早急に回復したい日本軍は、青壮年の男を次々に連行、便衣兵とみなせば処断した。その識別方法は▽靴ずれがあるか▽面タコがあるか▽目付きが鋭いか-など相当いい加減で、多数の一般市民が犠牲になった可能性は否めない。
 ある部隊の一等兵が日記に書く。
「十二月十六日 
(中略)真実は判らないが、哀れな犠牲者が多少含まれているとしても、致し方のないことだ」
 便衣兵や投降兵らの処断が問題視された様子はない。誰も「虐殺」とは考えなかったからだろう。
 だからといって、明らかに戦意を喪失し、武器も放棄した投降兵らの大量殺害が、正当化されていいとは思わない。(ボーガス注:いい加減な識別方法によって)多数の一般市民が巻き添えになった可能性も高いのだ。

 産経は「うかつ者」というべきか、「正直者」というべきか、

・その識別方法は相当いい加減で、多数の一般市民が犠牲になった可能性は否めない。
・多数の一般市民が巻き添えになった可能性も高いのだ。
・「真実は判らないが、哀れな犠牲者が多少含まれているとしても、致し方のないことだ」

南京事件否定論にとって都合の悪いことを平然と書いています。どうみてもこれでは「兵隊でない人間を殺害した違法殺害の疑い(しかもそうした事態が起こっても戦争だから仕方がないと日本軍は思っていた疑い)」は免れないでしょう。これで「南京事件はなかった」といえる産経の神経は常軌を逸しています。
 「不適切な敗残兵処刑で市民に巻き添えがあったとしても悪意はなかった、だから虐殺じゃない」といいたいのかもしれませんがそれ、世間に通用する言い訳じゃないでしょう。「南京事件を否定したいのか、否定したくないのか」産経も混乱してるようにしか見えません。

 従軍記者として南京攻略戦を取材した東京朝日新聞の足立和雄は、南京陥落翌日の12月14日、日本兵塹壕の前に中国兵を並ばせ、助命を乞う妻子らが泣き叫ぶ目の前で、次々に銃殺していった現場を目撃している。
 足立は、それを「虐殺」とは呼ばないが、戦後にこう述懐する。
 「中国の婦女子の見ている前で、一人でも二人でも市民の見ている前でやった。これでは日本は支那に勝てないと思いました。支那人の怨(うら)みをかったし、道義的にもう何もいえないと思いました」
 もしも現場が中国の南京ではなく日本の東京で、日本人が同じことをされたら、戦争だから仕方がないと割り切れるだろうか。

 仮に合法殺害*18だとしても「公開処刑」をやったのは人道的な意味でも「中国人の反感を買って戦争が長引いた」と言う意味でもさすがにまずかったんじゃないか、東京朝日の足立記者の意見には同感だと言い出す産経です。
 「南京事件を否定したいのか、否定したくないのか」産経も混乱してるようにしか見えません。多分この記事の書き手「社会部編集委員・川瀬弘至」は阿比留のような厚顔無恥なデマ路線(モロバレのデマでも日本軍に全く非はなかったと居直る)に暴走することが出来ず「日本軍にも非はあった、全く無実ではないと、所々、本当のことを書きながら、誠実な記者を演出して、うまく虐殺派を丸め込んで南京での日本軍を可能な限り免罪しよう」としているのでしょうがかえって墓穴を掘ってるように見えます。

(※1) 南京城外の幕府山で大量の投降兵に遭遇した第103旅団の処置(いわゆる幕府山事件)は、「南京大虐殺」論争の最大の争点とされる。昭和天皇が生きた激動の87年をノンフィクションでたどる本連載の趣旨からは若干外れるが、この論争には、戦後報道の在り方をめぐるさまざまな問題*19が含まれているため、別項として後述する

 「幕府山事件なんか『昭和天皇の87年』に関係ないヤン。何脱線してるの?」つう予想される批判に苦しい言い訳をする産経です。

(※2)虐殺肯定派は投降兵らを捕虜とみなし、否定派は、当時は戦闘中であり投降受け入れを拒否できるので、捕虜ではないとしている。

 否定派の主張は勿論詭弁です。つうか「捕虜なんか受け入れたくねえんだ。捕虜にやる食糧がないからな。だから投降受け入れを拒否してぶっ殺して何が悪い。投降受け入れを拒否したんだから捕虜じゃねえし、だから殺しても捕虜虐殺じゃねえんだ」つうのは法的にどうこう*20以前に、常識で考えて「正気の沙汰ではない」ですよね。それじゃ「投降先が捕虜を受け入れてくれる温情あふれる立派な軍隊」でない限り、捕虜なんかあり得ないじゃないですか。
 そして当時の日本軍が米軍などに同じことをされて殺害されても産経はかまわないのか。
 あるいは中国人民解放軍が「ダライ一味のゲリラ兵」に同じ事をやって殺害しても産経は容認するのか。

なお、便衣兵の処断は合法だが、裁判など厳正な識別を行わない処断は違法であるとの説も有力である

 これについては
東中野氏「再現南京戦」(8) 国際法論争1
東中野氏「再現南京戦」(9) 国際法論争2を紹介しておきます。有力も何も「裁判なしでの処刑」なんか合法なわけがないつうのが勿論通説です。当たり前でしょう。現地軍幹部の「便衣兵らしいから殺そう」という一存で、裁判などの法的手続きもせずに殺害が合法になるような野蛮な話がどこにあるのか。

(※3) 処断数については諸説あるが、ここでは、日中両軍の戦闘詳報や陣中日誌などをもとに両軍の兵力、推定戦死者数、推定捕虜数などを算出し、処断数を約1万6000人とした南京戦史編集委員会の分析によった

 全部で捕虜殺害(産経のいう処断)が16000人というのは南京事件の犠牲者数が紹介する捕虜殺害推定数「約4万人(秦郁彦)」「約8万人(笠原十九司氏)」と比べれば過小評価ですが、それにしたって「16000人の捕虜殺害」を「虐殺ではない」とはとてもいえないでしょう。実際、偕行社「南京戦史」は「1万6000人の殺害」を違法行為(捕虜)であったと評価し「南京事件否定説はもはや成り立たない」との見解を示しました。「偕行社「南京戦史」の16000人殺害説」を支持しながら「虐殺でない」とは産経は強弁にもほどがあります。

(※4)
 松井石根の専属副官、角良晴の証言によれば、第6師団から大量の投降兵らの扱いについて問い合わせがあった際、上海派遣軍情報参謀の長勇*21が「ヤッチマエ」と処断*22を指示した。それを聞いた松井が長を呼び、強く「解放」を命じたという。だが、その命令が隷下の部隊に伝わった形跡はなく、長は「解りました」と返答したものの、松井がいなくなると再び「ヤッチマエ」と指示したという

 「南京事件否定論」産経が何でこの話を持ち出すのかよく分かりません。
 「捕虜虐殺が仮にあったとしても悪いのは松井の意思を無視した、長勇ら部下であり、松井ではない。松井は死刑になるべきではなかった(あるいはそもそも起訴すべきでなかった?)」と言いたいのかもしれませんが、角証言は嘘ではなく、この長発言が角のいうように実際にあったとするならば*23
1)この長発言が元で(全部ではなく一部に過ぎないとしても)捕虜虐殺が起こった
2)長発言は直接には捕虜虐殺に関係ないが、長以外にも「捕虜なんか後腐れなく殺せばいい」というこの種の物騒な連中がゴロゴロしていたのが現地軍であり、その結果、捕虜虐殺が起こった
としか理解できないでしょう。そしてまさか産経も長の「ヤッチマエ」発言を「法的、政治的、道義的に何ら問題なかった」とはさすがにいわないでしょう。
 しかも「ヤッチマエ」と長が放言したという「第6師団」は「南京軍事法廷で死刑になった谷寿夫が師団長だった師団」です。
 「谷が死刑になったのも仕方ないんじゃないか」つう話です。
 何というか「松井さえ免罪できればいい」として産経は論理整合性を全く考えてないんじゃないか。
 ちなみに、長については

■長勇(ウィキペディア参照)
・寝言をいう癖があった。寝ながら「母ちゃん痛い!」と幼少時に実母に折檻されている夢をみて叫んだり、「突撃!」「この分らず屋が!」と大きな声で怒鳴る事もあり、部下から「寝ても起きてもうるさい人」と陰口を叩かれていたといわれる。
・1944年、沖縄県に配備された兵による強姦事件が発生した際、県当局の抗議に対し、第32軍参謀長の長は「こうした騒ぎが起きるのは慰安所がないからである」として、慰安所の設置を提案した。しかし当時の沖縄県知事・泉守紀が「ここは満洲や南方ではない。そのような施設を作ることはできない」と拒否したことで泉との関係が最悪になったと言われる。

と言う逸話があります。


首相、地上イージス配備めぐり謝罪 - 産経ニュース
 参院選中だからでしょうか、安倍がわびるとは珍しいこともあったもんです。
 しかし「配備を白紙撤回する」といったわけでもないし、「防衛省の不適切な対応を、国のトップとしてお詫びする(わびたくないけど国のトップだから)」というのだから完全に他人事です。それほど評価できる話ではないでしょう。


「四の五の言う必要なし」台湾・蔡総統、中国に異例の反論 - 産経ニュース
 やれやれですね。蔡英文ってのはバカなんでしょうか。中国に媚びろは言いません。
 しかし「わが台湾が米国から武器を買おうが、中国に批判されるいわれはない。台湾の自由だ」などというのは挑発行為以外の何物でもないでしょう。そんなことをすれば「バチカンや南米諸国などが台湾と断交、中国と国交樹立」したあげく「我が国がどこの国と国交を結ぼうと我が国の自由だ。台湾の蔡英文に批判されるいわれはない(中国)」と「倍返し」されるのが落ちでしょう。


【産経抄】7月13日 - 産経ニュース

 7日には、東京都中野区で安倍晋三首相の街頭演説への妨害活動をスマートフォンで撮影しようとした女性を、「安倍辞めろ」などと騒いでいた一団が取り囲み、スマホを取り上げて地面にたたきつけて破壊した*24
 日本の官憲は、声の大きい左派に対して腰が引けている。もっと厳格に法を執行すべきである。

 むしろ街宣右翼の無法の方(現場に警官がいてもろくに取り締まらない)が野放しだと思いますが。産経は一体どういう脳みそをしているのか。いつもながら呆れます。


【主張】有志連合への参加 国益重んじ旗幟を鮮明に - 産経ニュース

 旗幟(きし)を鮮明にすることが必要である。安倍晋三首相は国家安全保障会議(NSC)を開き、国益を踏まえ、同盟国米国の提案に賛意を示してもらいたい。参院選の最中だからといって後手に回ってはいけない。海上自衛隊護衛艦や哨戒機などの派遣が検討対象となろう。

 安倍も参院選中にはそんなことは言わないでしょうね。


【海外事件簿】豪メルボルンで相次ぐ女性殺害 背景に後絶たぬ「女性への暴力」(1/2ページ) - 産経ニュース

・豪公共放送ABCや英BBC放送などによると、5月25日朝、ビクトリア州メルボルンの中心部にあるロイヤルパークで、散歩中の市民が女性の遺体を発見し、警察に通報した。女性はコートニー・ヘロンさん(25)。地元警察はホームレスの男、ヘンリー・ハモンド容疑者(27)を逮捕した。
・地元メディアによると、ヘロンさんは特定の住所がなく、友人などの家を転々として寝泊まりする「カウチ・サーフィン」生活をしていたという。
 ホームレス女性は特に暴行被害に遭うリスクが高いと指摘されることから、州政府は22年までに公営住宅1000戸を建設するなどの対策を講じる構えだ。

 被害者の方もホームレスに近い生活をしていたようでなんとも哀れな話です。

*1:皇族である上海派遣軍司令官・朝香宮が訴追されなかったことは明らかに政治的配慮です。武藤(事件当時、中支那方面軍参謀副長)と 田辺(事件当時、第10軍参謀長)ば別の件で訴追されて死刑になっていますが、その他についてはよく分かりません。

*2:台湾軍司令官、上海派遣軍司令官、中支那方面軍司令官など歴任

*3:近衛師団長、上海派遣軍司令官など歴任

*4:支那方面軍参謀副長、北支那方面軍参謀副長、陸軍省軍務局長、近衛師団長、第14方面軍(フィリピン)参謀長など歴任。

*5:上海派遣軍参謀長、陸軍省人事局長など歴任

*6:上海派遣軍参謀副長、第3軍(満州)参謀長、第5軍(満州)司令官など歴任

*7:金沢第9師団参謀長、台湾第48師団長など歴任

*8:京都第16師団参謀長、満州第1師団長、鹿児島第40軍司令官など歴任

*9:第10軍参謀長、北支那方面軍参謀長、参謀次長、第25軍(スマトラ島)司令官など歴任

*10:熊本第6師団参謀長、第58師団長(中国漢口)など歴任

*11:宇都宮第114師団参謀長、第22師団長など歴任

*12:第19師団長(満州)、第18師団長(久留米)を歴任

*13:陸軍次官、台湾軍司令官、第二次近衛内閣司法大臣など歴任

*14:産経紹介の文章では「強姦被害にあった女性」が中国人か米国人か分かりませんが、米国人であるなら、米国の抗議は相当強い物になったでしょう。

*15:なお「国内での南京事件報道を禁止した」日本政府は松井の解任を国内においては「通常の人事異動にすぎない」かのように発表しました。南京事件の存在を隠蔽していた以上、そう発表するしかなかったわけです。

*16:「不良兵士の個人的犯行」はともかく「捕虜虐殺」「なんちゃって便衣兵狩りによる虐殺」は軍の組織的犯行なので現地軍最高司令官・松井の責任は免れません。

*17:産経がなぜか躊躇なく「第66連隊は、投降した1600人余を処断(殺害)した」と書いているのには驚きます。どう見てもこれは違法殺害でしょうに。

*18:勿論違法殺害ですが

*19:まあ「様々な問題」て、マジレスすれば「産経のようなデマメディアが詭弁で違法性を否定しようとした」てことですが。

*20:勿論違法行為ですが。

*21:沖縄戦で第32軍参謀長。第32軍司令官の牛島満大将とともに自決。

*22:はっきり「殺害」と書かず「処断」とぼかすのが産経らしい。

*23:角に対して「ありもしないデマを飛ばしてる」「中国を利している」と非難しない産経の書きぶりはどう見ても「実際にあった」と見ているとしか思えませんが。

*24:こういうのは「もみ合ってる途中で女性がスマホを落としただけでたたきつけて壊したりしていない(この場合もちろん器物損壊ではありません)」など、お互い言い分が違いますし、現場に警官がいる例はまずないでしょう。結局「下手に逮捕するとかえって選挙の公正を害する疑いがある」で「相手が重傷を負ってるようなよほど酷いケース」でない限り、うやむやになることが多いでしょう。少なくとも左翼云々つう話ではない。