高世仁に突っ込む(2020年8/18日分)

「焼き場に立つ少年」が訴えるもの - 高世仁の「諸悪莫作」日記

 きょう、内閣府が今年第2四半期(4~6月)の国内総生産GDP)速報値を発表した。年率換算で27.8%減少という衝撃的な数字だった。リーマン・ショック後の09年1~3月期の年率17.8%減を超える戦後最大の落ち込みとなった。
 米国は32.9%減で、統計の記録を開始した1947年以来最大の減少率となった。英国は20.4%減、フランスが13.8%減、ドイツは10.1%減。
 米国と日本がひどい。
 一方、中国は3.2%のプラスと一人勝ち。ついに第2四半期のGDPで米国を抜いた。年間で米国を上回るのももうすぐだろう。

 日本の場合は消費税10%増税の影響などもあるでしょうが、もちろん欧米日の減少原因はコロナですね。ドイツ、フランスが比較的減少が小さいのは要するにこの両国は米英日に比べればコロナ対策で成功してるのでしょう。
 一方、浅井基文氏も中国の徹底したコロナ対策|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページなどで指摘していますが、この数値からも「武漢市当局の不適切な対応により、武漢でコロナが蔓延し、中国各地に拡大した初期はともかく、その後の巻き返しによって」中国がコロナ対策に成功してることがうかがえます。香港問題などの「政治的活動の自由」の問題はさておき、コロナ対策からは習近平政権の「(経済や福利厚生分野での)政治的有能性」が読み取れます。まあ、香港問題だって「手法の是非」はともかく「国家安全維持法の制定」で民主派運動押さえ込みをしかけることはある意味「有能」ではあるでしょう。

 コロナ禍は、パワーバランスを大きく変えるかもしれない。

 いや「米国の酷いコロナ対応とそれに比べたら非常にまともな中国の対応(まあ米国と比べたらほとんどの国の対応はまともですが)」が「米中の経済活動に大きな影響を与えたこと」は事実でしょうが、基本的にコロナが無くてもいずれ中国のGDPは米国を抜いたでしょう。そう言う意味では「コロナ禍は、パワーバランスを大きく変えるかもしれない」なんてことはない。
 むしろそういうことより「このままトランプが大統領だとコロナ禍が深刻になって米国の経済力にダメージだし、米国の国際的イメージも最悪」と言う意味で「パワーバランスを大きく変えるかもしれない(米国の国際的地位の低下)」かもしれないですね(もちろん米国の地位低下は当然には『中国の地位向上』をもたらしません)。
 そう言う意味では米国が国際的地位を上げたいなら「トランプ再選は絶対不可」です。まあ、それ以前にトランプ再選だとコロナ禍がどんどん深刻になるだけでしょうが。ただ「トランプ再選の可能性は低いとみられる」ものの「対立候補バイデンが高齢であること」「民主党支持層はともかく未だに共和党支持層はコロナ失政でもトランプ批判がそれほど強くないこと(トランプの「中国が悪い」「他国と比べて米国の対応は特に悪くない」「民主党政権でも事態は大して変わらなかったろう」だのの言い逃れを容認)」「バイデンの方が支持率でトランプをリードしているが圧倒的な差には至ってないこと」などから「絶対にあり得ない」と断言まではできないのがトランプ批判派にとってつらいところです。
 トランプが当選した4年前だって多くは「さすがにヒラリーが勝つだろう」と見ていたのにトランプ当選ですからねえ。

 そんな勢いを増す中国にどう向き合うか。コラム「高世仁のニュース・パンフォーカス」6回目【高世仁のニュース・パンフォーカス】強大化する中国にどう向き合うか | つなぎ | 新聞新発見メディアを公開しましたので、関心のある方はどうぞお読みください。 

 後で【高世仁のニュース・パンフォーカス】強大化する中国にどう向き合うか | つなぎ | 新聞新発見メディアにコメントしますが、「関心のある方はどうぞお読みください」で済ませてしまう辺り、高世は
1)中国問題には正直なところそれほど興味もない
2)コラム「高世仁のニュース・パンフォーカス」についてそれほどやる気も無い
んでしょうか。

 この夏の戦争特番の中で印象に残った一つに、8月8日の ETV特集「“焼き場に立つ少年”をさがして」がある。
(中略)
 なお、NHK長崎は去年夏にも同名の番組を作っている。
 その時は、少年や撮影場所を特定したのだが、のちに取材に協力した人たちから「不適切報道」などと抗議を受けている。かなり強引なつくりをしたようだ。少年はこの人だと特定した人物は別人と判明したという。
https://www.vidro.gr.jp/wp-content/uploads/2019/08/c06351757f3044e5ff1ed8f8da500642.pdf
2019年9月8日_【要請書】NHK長崎放送局作成の「『焼き場に立つ少年』をさがして」に関する要請
 今回はもっぱら、オダネルの写真からの謎解きと、孤児になった子どもたちの境遇、思いを考えるつくりになっている。批判を踏まえてか、撮影された場所も特定していない。

 なお、『「不適切報道」などと抗議』ですが

https://www.vidro.gr.jp/wp-content/uploads/2019/08/c06351757f3044e5ff1ed8f8da500642.pdf
被爆地点について
 番組では少年は爆心地から 1.5Km の銭座町被爆したのではないかと推測している。しかし、残念ながらそれを証明するものは村岡さんの証言以外にはない。
 番組では吉岡栄二郎氏の「『焼き場に立つ少年』は何処へ」をもとに、少年は旧戸石村の上戸明宏ではないかと推測している。
 しかし、爆心地から 10Km 離れた戸石村の少年が銭座町被爆したのは不自然であり、それを説明する合理的理由はみつかっていない。
 吉岡氏は出版の1年半後に再度戸石村を訪れている。その模様が公明新聞に述べられている(別紙1)。このことは NHK へ情報提供した。記事によれば、原爆投下時、少年は弟を背負い牧島の見える港近くの浜辺にいた。今回の戸石住民の聞き取りでこれを裏付ける証言は得られなかったが、戸石の住民なのだから戸石の浜辺で被爆したというのは自然である。
 銭座町被爆したか、戸石の浜辺で被爆したか、両者とも決定的な証拠がないのであれば、両論併記で放映すべきだと NHK へ提言したが、戸石の浜辺で被爆したという吉岡氏の情報は放送されなかった。
 戸石の明宏少年が長崎市街に行っていた理由について、明宏少年の小学校の同級生の里輝男さんはインタビューで「親子、長崎のほうに左官で、仕事でいきよらした」と述べているが、映像の字幕は「親子で長崎(中心部)のほうに左官の仕事で引っ越した」となっている。
 引っ越していれば銭座町被爆してもおかしくない。ところが「いきよらした」は方言で「行っていた」の意味で、正しくは「親子で長崎(中心部)のほうに左官の仕事で行っていた」となる。
 「行っていた」と「引っ越した」では意味がまるで違う。これは明らかに誤った報道である。
 8 月 3 日の再放送では「親子で長崎(中心部)のほうに左官の仕事で行った」と訂正されていたが、訂正した説明はなかった。
◆写真のカラー化と目の出血の跡
 番組では写真のカラー化に際し、写真を拡大してみつかった右目の黒目の傍らのグレイの部分を齋藤紀先生に照会している。齋藤先生はグレイの部分は出血の跡でではないかとの見解を述べ、同時に鼻栓が映っている可能性も指摘した。齋藤先生は被爆者の出血傾向についての一般論を解説しているのに、ナレーションはそれを少年の個別事例として解説している。
 番組では、カラー化された目の映像を背景に「体中が出血しやすくなっていたと、考えられるからです」とナレーションで解説しているが、これは誤りである。白目(眼球結膜)の出血は健常人でも普通に見られる所見であり、白目に出血があるかといって体中が出血しやすくなっていたとはならない。齋藤先生もそのようには述べていない。
 爆心地から 1.5Km の同心円と同心円上の銭座町を指して、「少年は 1.5Kmのこの銭座町被爆したということは言えませんか?」のアナウンサーのやりとりは、「少年の目の出血、鼻栓は放射線による血小板減少である」→「血小板減少は1グレイ以上でおこる」→「1グレイは爆心地から 1.5Km に相当する」→「よって、少年は銭座町被爆した」と風が吹けば桶屋が儲かる的な無理な論理立てになっている。冷静に考えれば、(ボーガス注:目の出血、鼻栓だけでは被爆したと断定できないし、被爆したと仮定しても、爆心地から1.5㎞の地点は銭座町だけではないのだから)目の出血、鼻栓だけから少年が銭座町被爆したことにならないのは自明のことである。
 これに続く「とはいえ、この少年が被ばくした可能性が高まったことは確かです」も事実に反する。目の出血の跡、鼻栓があるからといって、この少年が被曝した可能性が高まることはない。
◆吉岡栄二郎氏の「『焼き場の少年』は何処へ」
 番組は随所に「吉岡栄二郎氏の『焼き場の少年』は何処へ」(以下、本)の情報を用いているが、出典を明らかにしていない。
 村岡さんが戸石の里輝男さんに会いに行くシーンで、本の表紙が映るが、「村岡さんが調査のたよりにしている本」「少年の足取りや撮影地について調査した内容をまとめたものです」としか解説しておらず説明が不十分である。
 番組は写真のカラー化により目の出血の跡が判明し、それにより出血傾向と放射線障害の可能性があることを初めて発見したかのように報道している。しかし、目の出血の跡や鼻栓によらずとも、少年にはもっとはっきりした出血の兆候があったのである。オダネル氏は「唇をきつく噛みしめていたため血がにじんでいた」と振り返っている。吉岡氏はこの点を重視し、本の中で「この段階で、私には少年と幼子の足に見られる浮腫に併せ、少年の鼻に診られる血の凝結と滲んだ唇の血液は被爆後ニヶ月頃に多く見られた放射線被爆を原因として起きた血小板の減少による症状、いわゆる〈血小板減少症〉による口腔粘膜症の出血ではないだろうかと思えた」と述べている。NHKが写真のカラー化を行う前に吉岡氏は既に同様の考察を本の中で述べているのである。しかし、番組ではこの部分は引用していない。吉岡氏はその疑問を血液内科専門医に問いかけ「粘膜出血は確かに急性放射線障害、すなわち骨髄障害による血小板減少で起こる可能性があると思いますが、この少年がそうかを断定することはできないでしょう」と正確な回答を得ている。
◆長田小学校の卒業名簿
 番組は長田小学校の卒業名簿に似た名前の「中村明廣」があったことより、村岡さんがあった少年、戸石の上戸明宏がこの「中村明廣」である可能性を示唆して終わっている。しかし、「明宏」と「明廣」で漢字が違う。なにより「上戸」と「中村」で苗字が違う。NHKによれば「中村明廣」が「上戸明宏」と同一人物である可能性について事実確認はとっていないとのことであった。名前が似ているだけで、事実確認もせずに、あたかも同一人物の可能性があるかのように放映することは不適切である。

2019年9月8日_【要請書】NHK長崎放送局作成の「『焼き場に立つ少年』をさがして」に関する要請
 長崎協会は今年6月から、長崎放送局からの要請があり、少年の素性や撮影場所に関する情報について取材を受け、その後も調査に協力してきました。
 しかし、報道された内容は、吉岡栄二郎氏の著書「『焼き場に立つ少年』は、何処へ*1」に依拠するところが多いにもかかわらず出典の説明が不十分だったため、視聴者に誤解を与えかねないものでした。
 取材に協力した長崎協会は、7月26日に不適切な部分が散見されたため、「要望書」を提出されました。NHK長崎放送局からは、8月8日に回答が寄せられました。
 番組では少年の被爆地点の候補としての「戸石村の牧島の見える港近くの浜辺」は理由もなくカットされました。戸石村は爆心地から10km離れた地点で、少年の被爆地点が戸石村とすると、少年と弟は残留放射線により被爆したことになります。おそらく残留放射線による被爆では被爆者とは認めないという国の方針に配慮したものと思われますが、都合のよい情報は採用し、都合の悪い情報はカットするのはよくないと思います。
 また、7月の放送の中で、少年の被爆した場所に関して重要な住民の証言のシーンでは、住民が話している会話とは異なる「親子で長崎(中心部)のほうに左官の仕事で引っ越した」という字幕が流れていました。この点については、長崎放送局からの回答で、字幕の間違いは聞き間違いとの説明がされましたが、地元長崎で通常は「長崎に行きよらした(行っていた)」を「長崎へ引っ越した」とは聞き間違えたりしないのではないかとのことでした。なお、長崎協会より、この点での訂正を求めていたところ、8月3日の再放送では字幕は「親子で長崎(中心部)のほうに左官の仕事で行っていた」と修正されていましたが、番組内で修正のご説明はありませんでした。
 また、写真のカラー化のシーンで「体中が出血しやすくなっていたと、考えられるからです」と断定的に表現しています。しかし、目に出血の跡の可能性があるからといって、「体中が出血しやすくなっていた」とはいえません。番組内の医師が指摘したのは一般的な出血の可能性です。鼻栓と目に出血の跡の可能性があるからといって少年が銭座町被爆したとはいえません。さらに、少年の鼻にあるのは鼻栓と断定された訳でもありません。断定できることと断定できないことの峻別を間違えると結論も違ってきます。
 また、「上戸明宏」と長田小学校の卒業名簿の「中村明廣」が同一人物であることは証明されていないのに関わらず、名前が似ているということだけで裏付けもとらずに劇的シーンとして放映するのはいかがなものでしょうか。視聴者は「同一人物」であると勘違いするのではないでしょうか。事実、その後の聞き取り調査で「中村明廣」と「上戸明宏」は別人であると判明しました。

だそうです。

【参考:焼き場に立つ少年】

「千の言葉よりも多くを語る」教皇が配布指示 写真「焼き場に立つ少年」に注目、長崎で調査続く - 産経ニュース
 ローマ教皇(法王)フランシスコ(82)が24日、長崎市の爆心地公園を訪れた。今回の訪問で、1枚の写真「焼き場に立つ少年」に注目が集まった。教皇はこの写真をカードに印刷し、「戦争がもたらすもの」との言葉を添えて世界に広めるよう呼び掛けた。
 教皇と長年文通を続ける長崎市イエズス会修道士、アントニオ・ガルシア氏(90)は数年前、偶然目にした少年の写真を手紙に同封。それがきっかけになったか定かではないが、教皇は2017年末に写真を印刷したカードの配布を教会関係者に指示した。教皇は「このような写真は千の言葉よりも多くを語る。だから分かち合いたいと思った」と述べたという。今回の訪問にあわせ爆心地公園(長崎市)には写真のパネルが設置された。

ローマ教皇が配布「焼き場に立つ少年」 撮影者が遺した言葉:イザ!
 ローマ・カトリック教会のフランシスコ教皇の来日に伴って注目を浴びたのが「焼き場に立つ少年」と題された1枚の写真。長崎市に寄贈され、いまも原爆資料館に展示されているこの写真を撮影したのは米軍の従軍カメラマンだったジョー・オダネル氏である。
 フランシスコ教皇は2017年の年末、自らの署名と「戦争がもたらすもの」というメッセージを添えて、同写真を教会関係者に配布するよう指示した。どんな言葉よりも雄弁なこの写真を皆で分かち合いたいと思ったのだという。カード裏面には「この少年は、血がにじむほど唇をかみしめて、やり場のない悲しみをあらわしています」という説明が付された。
 11月24日、長崎市の爆心地公園でスピーチを行った教皇は、ジョー・オダネル氏の息子のタイグ・オダネル氏(50)と対面した。タイグ氏が「父の写真を使っていただき、誠にありがとうございます」と伝えると教皇は「使わせていただきありがとう」と語り、タイグ氏に記念のメダルを手渡した。

【参考終わり】

 最後に【高世仁のニュース・パンフォーカス】強大化する中国にどう向き合うか | つなぎ | 新聞新発見メディアにコメントしておきます。

 中国は孤立しているのでしょうか。
 いいえ。残念ながら、中国の香港に対する措置は、多くの国々から「支持」されているのです。
 国安法採択直前の6月30日、スイス・ジュネーブで開催された第44回国連人権理事会で、日本など27カ国が国安法に反対する共同声明を発表しました。
 ところが、その倍近い53カ国が国安法施行に賛成する共同声明に署名したのです。国の数からいえば、中国の圧勝でした。

日本の国益をどう守る? 中国が影響力を増す世界、 53カ国が香港国安法を支持(LIMO) - Yahoo!ニュースによれば

◆反対27カ国
 オーストラリア、オーストリアベリーズ、カナダ、デンマークエストニアフィンランド、フランス、アイスランドアイルランド、ドイツ、ラトビアリヒテンシュタインリトアニアルクセンブルグマーシャル諸島、オランダ、ニュージーランドノルウェーパラオスロバキアスウェーデン、スイス、イギリス
◆支持53カ国(当事国である中国を含む)
 中国、アンティグア・バーブーダバーレーンベラルーシブルンジカンボジアカメルーン中央アフリカ共和国コモロコンゴ共和国キューバジブチ、ドミニカ、エジプト、赤道ギニアエリトリアガボンガンビアギニアギニアビサウ、イラン、イラククウェートラオスレバノンレソトモーリタニア、モロッコモザンビークミャンマー、ネパール、ニカラグアニジェール北朝鮮オマーンパキスタンパレスチナパプアニューギニアサウジアラビアシエラレオネソマリア南スーダンスリランカスーダンスリナム、シリア、タジキスタントーゴUAEベネズエラ、イエメン、ザンビアジンバブエ

だそうです。
 まあ、国際的には中国レベルの「人権侵害」は珍しくないですからねえ。「自分が泥棒」なのに「他人(中国)の泥棒」を責める人間はあまり居ないでしょう。ましてや相手は「世界に冠たる経済大国」です。恩を売って不利益は無い。

 人権理事会で中国を擁護した国々をみると、カンボジアスリランカミャンマーなど中国が推進する巨大経済圏構想「一帯一路」による多額の援助を受けている国が目立ちます。また中国が早くからインフラ整備などで援助してきたアフリカ諸国も強い支持基盤になっています。

 まあ、そうなんですけど、カネだけが理由じゃありませんね。
 スリランカはともかく、高世が名前を挙げたカンボジアは「フン・セン首相」が1985年から現在まで続く、約35年にも及ぶ長期政権を続け、最近では最大野党カンボジア救国党 - Wikipediaを強権発動で党解散、活動禁止にしています。
 ミャンマーは長い間、軍事独裁が続き、最近、民政移管したとは言え、未だに軍部の力は強いし、「ロヒンギャ問題」という人権問題もある。
 これはカンボジアミャンマー以外の支持表明した国も同様でしょう。
 つまり「下手に中国批判すると自分も人権問題で非難されかねない」という立場にあるわけでそれを無視してはいけません。

 中国の影響力拡大を見過ごすことができないのは、世界に独裁政治を広げているからです。

 おいおいですね。別に広げては居ない。例えばカンボジアのフンセンが首相になったのは1985年です。中国が経済大国になる、ずっと前です。
 あるいは
1)旧東欧の共産党一党独裁国家
2)スペインのフランコ、台湾の蒋介石、韓国の朴正熙全斗煥、フィリピンのマルコス、インドネシアスハルト、チリのピノチェトなどの右派独裁
は中国のせいなのか。
 言うまでも無いですが1)を支援したのは旧ソ連ですし、2)を支援したのは米国です。中国は関係ない。
 世界に存在する独裁的国家の内「世界中が批判してるが中国だけが擁護してる国」なんてもんはどこにもないでしょう。
 例えば「反体制派ジャーナリスト暗殺疑惑」が浮上してもサウジの皇太子(第一副首相、国防相、経済開発評議会議長を兼務)が政治的に無傷でいられる(刑事訴追どころか、何の役職も辞任しない)のは何故か。石油利権とか「サウジ国内の米軍基地」とかでサウジを重要視する欧米諸国などが皇太子の居直りを容認してるからです。高世の「中国ガー、世界に独裁を広げて」なんてのはデマも甚だしい。
 まあ中国もサウジ批判などはしてないですが。
 中国の人権問題を批判するとしたらそれは「中国国民の人権を侵害してるから」、ただそれだけでしかありません。
 「プラハの春を軍で打倒する(ソ連)」、「ピノチェトクーデターをCIAが支援する(米国)」とかその類のことを中国は外国相手にやっていない。旧ソ連や米国の方がよほど「世界に独裁政治を広げている」。

 カンボジアではここ数年、急速に独裁化が進んでいます。

 だからそれ「中国だけのせいですか?」て話です。
 もちろん中国はカンボジアを支援しています。しかし欧米や日本だってカンボジアに対する態度は、例えば「アパルトヘイト時代南ア」「北朝鮮」なんぞに比べたら大甘です。中国だけ非難してすむ話では無い。

 例えば、韓国でさえ、国連人権理事会での国安法に反対する共同声明には「諸般の状況を考慮して」(カン外相)署名しませんでした。

 何が「でさえ」なんだかさっぱりわかりません。
1)発展途上国とは言えない経済大国「韓国」でさえ、なのか、はたまた
2)キューバラオスベトナムのような共産国であるどころか、逆に、共産国北朝鮮」と朝鮮戦争で激突し、反共を国是とし、反共治安立法「国家保安法」がある反共国家「韓国」でさえ、なのか?

 それぞれの政府に頼るのではなく、一市民として中国に物申す姿勢を持ちたいものです。
 アウトドア用品で知られる「パタゴニア(PATAGONIA)」は、中国による新疆ウイグル自治区への人権侵害が文化的大虐殺*2にあたるとして、当該地域からの素材調達をやめることを明らかにしました。中国産コットンの80%以上が新疆ウイグル自治区で生産されていますが、「パタゴニア」は抗議の意味を込めて調達先を変えるというのです。
 これは一つの興味深い「人権活動」です。私たちは、消費者としての立場から、こうした動きを支援*3できます。
 中国にどう向き合うべきか。
 この問いが世界に突きつけられるなか、同じ地球に生きる市民として、具体的な行動を考えていきたいと思います。

 「パタゴニアウイグル」でググったら以下の記事がヒットしたので紹介しておきます。

「パタゴニア」が新疆ウイグル自治区からの素材調達をストップ | WWD JAPAN.com
パタゴニア(PATAGONIA)は、中国による新疆ウイグル自治区への人権侵害が文化的大虐殺にあたるとして、当該地域からの素材調達をやめることを明らかにした。
パタゴニアのキャラ・チャコン(Cara Chacon)ソーシャル/エンバイロメンタル・レスポンシビリティ担当副社長は、「パタゴニアは公正労働協会(Fair Labor Association)のガイダンスに従って新疆ウイグル自治区から撤退し、人権侵害のない、環境負荷を限りなく削減した形で製品を作っていく」との声明を発表した。
・米ワシントンD.C.戦略国際問題研究所(Center for Strategic & International Studies)によると、中国産コットンの80%以上が新疆ウイグル自治区で生産されている。現在中国による繊維原料、糸、生地、衣服などの生産量は世界一で、専門家は新疆ウイグル自治区で生産された糸がバングラデシュカンボジアといった国々に輸出され、(中略)世界に流通しているコットン製品の5分の1に新疆ウイグル自治区原産の繊維や糸が含まれているという。

 まあ、そういうことをやりたい人はやればいいでしょう。中国に限らないんですけど、今風に言えば「労働条件とか環境保護とか」に配慮した「フェアトレード(公正貿易)」「エシカル消費(倫理的消費)」という奴です。
 「スタバのフェアトレードコーヒー」なんかが割と有名でしょう。俺個人は参加する気は無いですが。
 そういえば、「本当かどうか知りませんが」櫻井よしこや楊海英が

「異形の大国“中国”が企てる“少数民族”大抹殺」 | 櫻井よしこ オフィシャルサイト
・たとえば、日本の大手ビール会社の一つは中国の生産建設兵団からホップ*4を輸入してます。
・ホップを輸入することは、日本のお金を中国に渡して、ウイグル人らの弾圧に手を貸しているのと同じです。たぶん、このビール会社の担当者はそこまではわかっていないと思いますが
・軍の農場で、建設兵団がホップを作り、それを日本企業が買い、代金は中国の軍事費の一部になる。日本のビール会社が中国軍を支えているのです。
・(ボーガス注:日本の)財界が利益のためにどんな相手とでも商売するのが悔しいです。

基本的人権の理念を捨て、習近平を国賓に迎える安倍政権 | 楊海英 | コラム | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
・去る(ボーガス注:2019年)12月9日の記者会見で、来春に予定する中国の習近平*5(シー・チンピン)国家主席の「国賓」としての来日に方針変更はない、との決意を新たにした。
・安倍首相を転向させたのは、いまだに「エコノミック・アニマル」の境地から脱出できていない経済界だろう。世界を代表するソニーとシャープは中国にウイグル人を監視する顔認証システムの部品を輸出してきた。無印良品ユニクロの製品には新疆ウイグル自治区で生産されていた綿花が利用されていた。
 日本の大手飲料メーカー*6はビールの原料であるホップを同自治区で栽培していた。日本人が日常的に使う多くの製品にも、強制収容施設内に閉じ込められ、無理やり働かされたウイグル人の血と涙が染み込んでいる。

として、「日本の大手ビールメーカー*7が調達してるホップは新疆ウイグル産だ」なんて言ってたこともありましたっけ。
 さて、中国を手厳しく批判する高世ですが、「拓殖大教授」でどう見ても中国シンパではない「富坂聰」は意外なことに、高世や日本ウヨ、山尾志桜里や志位・日本共産党委員長ほど一方的に中国非難などしません。

コラム | 拓殖大学海外事情研究所
◆香港問題を考える(2020年8月)富坂聰*8
 これを受けていま日本では、香港問題で「政府がきちんともの申せ」との声が高まっています。しかし私は、この問題への対応はむしろ慎重であるべきだと考えます。
 理由は複数ありますが、まず国安法が香港基本法に照らして不備がないこと。そして香港自身の民意が定まっていない――およそ4割が北京を支持――こと。さらに民主化運動の熱狂の後に混乱が予測――アラブの春などの例など枚挙にいとまがない――されることなどがありますが、なかでも気になるのはデモの目的が曖昧である点です。言い換えれば、何を以って勝利とするのか、という問題です。
 実は今回の国安法の強引な施行は、ある意味香港の活動家自身が「藪を突いて蛇を出す」結果だったからです。
 北京が国安法導入を急いだのは、昨夏の反逃亡犯条例のデモがきっかけです。
(中略)
 言論の自由、民主主義と聞けば反射的に声を上げたがる日本人ですが、例えばインドのカシミール地方の自治権はく奪や、反政府の発信をするジャーリストを逮捕し続けるフィリピンやタイの行為には無反応です。ロヒンギャの労働者を違法に酷使しているとの疑惑がある(ボーガス注:ミャンマーの)水産物も輸入し続けています。より身近な問題では「現代の奴隷」と海外から批判された研修制度も放置してきた日本人が香港で積極的なのは、中国嫌いだからでしょう。
 本当に香港を応援するのなら、こんな感情を排し香港人がきちんと権利を獲得できるよう助言することではないでしょうか。
 それは反逃犯条例デモを当初のように整然と抑制されたなかで行うことでした。非暴力は当然ですが、目的を条例撤回に絞り、決して香港独立や反中国に拡大しないよう助言することは最も効果的な応援になったはずです。
 思い出されるのはビデオ出演したチョウさん*9と共演したテレビ番組です。司会者が、デモが暴力的になった点を質すと、彼女は「われわれの声が届かないから仕方がない」と答えたのです。直後のCM中、解説者は「いま、武装闘争を肯定した?。まずいな」と漏らし、スタジオは気まずい沈黙に包まれました。
 地下鉄を止めたり空港を占拠したり道路を寸断し反対派の店を襲撃する暴力は、どんな理由があっても許されません。それさえ指摘できない自省の沈黙でした。
 歴史の「もし」は無意味でしょうが、整然としたデモを続けていたら結果はちがっていたのではないでしょうか。事実、香港はこれまで何度も北京から譲歩を取り付けてきたのですから。

 赤字強調は俺がしましたが

香港:デモ隊の暴力をどう見るか2 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 倉田徹さん*10(立教大教授)は、香港のデモ隊は単なる暴徒ではなく、冷静に効果を計算し、香港人の支持を得ているという。

香港―抵抗と暴力 - 高世仁の「諸悪莫作」日記
 13日、東京外大で『香港危機に終わりはあるのか?』というシンポジウムがあり取材してきた。
 香港政治が専門の倉田徹さん(立教大教授)が編著の『香港危機の深層』(東京外語大出版会)という本の出版記念の催しだ。
(中略)
 周庭さんは、(中略)「平和的なデモだけでは政府を変えられない。急進的な手段で「逃亡犯条例」改正を撤回することができた」とも語った。
 本の執筆者の一人で香港の若者たちの動向に詳しい伯川星矢さんが、周庭さんを補足する。
「人々の声に耳を傾けようとしない政府には、いくら100万人超が集まっても平和的な運動では効き目がない。条例改正を撤回したのは、空港を2回占拠した結果だった。つまり実力行使が効果があった。暴力ではなく抵抗だといいたい」

などという「暴力デモ肯定派(周庭など)の発言」を好意的に紹介し、暴力デモを平然と肯定してきた高世は、こうした富坂の指摘「暴力デモは国家安全維持法制定を招く失策では無かったか?」にどう思うのか?。
 『富坂は中国を免罪している!』と非難ですかね?。
 で最後に高世のプロフィール欄にコメント。

 早稲田大学大学院法学研究科博士課程修了。通信社特派員として東南アジアに10年間駐在。1998年にはテレビ番組制作会社「ジン・ネット」を設立。

 「早稲田大学」「ジンネット」の名前は書いても、そんなに「日本電波ニュース」の名前を書きたくないのか。何か恨みでもあるのか。

  2020年2月「ジン・ネット」を閉めてフリーランスとして活動中。

 今気づいたんですが高世のプロフィール紹介が「涙ぐましい」ですね。
 「経営が破綻」「倒産」「破産」ではなく「閉める」だそうです。

 著作に『拉致―北朝鮮の国家犯罪*11』(講談社)、『チェルノブイリの今―フクシマへの教訓』(DVD出版、旬報社)など。

 著作の内

◆『金正日「闇ドル帝国」の壊死』(2006年、光文社)
◆『神社は警告する:古代から伝わる津波のメッセージ』(共著、2012年、講談社、詳しくは『神社は警告する』が出ました! - 高世仁の「諸悪莫作」日記参照)
◆『あきらめるのは早すぎる 大森雅美の目からウロコの事業再生術』(大森雅美*12との共著、2012年、旬報社、詳しくはタコ社長よ、あきらめるのは早すぎる! - 高世仁の「諸悪莫作」日記参照)
◆『イスラム国とは何か』(常岡浩介*13との共著、2015年、旬報社、詳しくは「イスラム国とは何か」が1月に出版 - 高世仁の「諸悪莫作」日記「イスラム国とは何か」10日発売です - 高世仁の「諸悪莫作」日記「イスラム国とは何か」中東本で5位に - 高世仁の「諸悪莫作」日記参照)
◆『自由に生きていいんだよ・ お金にしばられずに生きる"奇跡の村"へようこそ』(森本喜久男*14との共著、2017年、旬報社、詳しくは「自由に生きていいんだよ」 - 高世仁の「諸悪莫作」日記参照)

は「など」で片付けられてるわけです。「絶版で入手不可能」なのか。あるいは「紹介したくない黒歴史」なのか(苦笑)。まあ「神社本」なんて「著者の高世すら本気とは思えない」「神社本庁の組織購入狙い*15」としか思えない「非常識な神社万歳」のエセ科学本以外の何物でも無いし、『あきらめるのは早すぎる』て既に高世は会社を倒産させて「あきらめた」し、常岡との関係もおそらく今は「良くない」のでしょう。何せ高世は脱原発派なのにツイッターで「原発はCO2削減に効果がある、脱原発は無責任だ」と公言してるのが常岡ですからねえ。しかも「高世との共著」以降は「無能で無気力らしい」常岡には何ら目立った「ライターとしての活動実績」が無い。 

*1:2017年、長崎新聞社

*2:「文化的大虐殺」とは要するに「アイヌ同化」のような同化政策のことです(中国は「同化政策などしていない」と否定していますが)。

*3:高世の言う「消費者としての支援」とは、つまりは「パタゴニア」のような「ウイグル産コットンは使わない」と表明する企業から購入する一方で、1)「ウイグル産コットン」を使用していることを認めている企業や、2)「ウイグル産コットン」を使用しているかどうか明確にしない企業からは購入しないという話です。

*4:ビールの原料の一つ。当初、ホップは原料で無かったが「保存性が高まること」「独特の苦みや香りが出ること」から原料として定着した(ホップ - Wikipedia参照)。

*5:福州市党委員会書記、福建省長、浙江省党委員会書記、上海市党委員会書記、国家副主席、党中央軍事委員会副主席、国家中央軍事委員会副主席などを経て党総書記、国家主席党中央軍事委員会主席、国家中央軍事委員会主席

*6:ソニー、シャープ、無印良品ユニクロは名前を出しながら、ここだけ具体的企業名が出てこないのが実に不可思議です。大体「大手飲料メーカー」て(苦笑)。「大手ビールメーカー」でいいでしょうに。まあ、アサヒ(系列会社のニッカウヰスキーアサヒ飲料を含む)もキリン(系列会社のキリンビバレッジ、メルシャンを含む)もサッポロ(系列会社のポッカサッポロフード&ビバレッジを含む)もサントリー(系列会社のサントリーフーズを含む)も「カルピスや三ツ矢サイダーなど(アサヒ)」、「キリンレモン午後の紅茶など(キリン)」、「ポッカコーヒーやリボンシトロンなど(サッポロ)」、「伊右衛門(緑茶)やC.C.レモンなど(サントリー)」とビール以外の飲料も売ってますけど。

*7:アサヒ、キリン、サッポロ、サントリーの大手四社のどこかでしょうが、よしこや楊が実名出さないので本当かどうかが疑わしい。大体「大手四社全てが新疆ウイグルからホップ調達」ならともかくそうでないなら、よしこや楊の物言いは「新疆ウイグルから調達してないメーカー」にとっては迷惑極まりない「風説の流布」でしかない。

*8:著書『ルポ 中国「欲望大国」』(2008年、小学館101新書)、『中国の地下経済』(2010年、文春新書)、『日本に群がる! 中国マネーの正体』(2011年、PHPビジネス新書)、『中国人民解放軍の内幕』(2012年、文春新書)、『中国の破壊力と日本人の覚悟』(2013年、朝日新書)、『習近平と中国の終焉』(2013年、角川SSC新書)、『中国の論点』(2014年、角川oneテーマ21)、『習近平の闘い:中国共産党の転換期』(2015年、角川新書)、『中国・無秩序の末路:報道で読み解く大国の難題』(2015年、角川oneテーマ21)、『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(2015年、PHP新書)、『風水師が食い尽くす中国共産党』(2016年、角川新書)など

*9:アグネス・チョウ(周庭)のこと

*10:著書『中国返還後の香港』(2009年、名古屋大学出版会)、『香港』(共著、2015年、岩波新書)、『香港危機の深層』(編著、2019年、東京外語大出版会)など

*11:2002年刊行

*12:著書『銀行から融資を受ける前に読む 資金繰り表を活用した事業再生術』(2015年、旬報社)、『〈増補版〉使える! 資金繰り表の作り方』(2020年、旬報社

*13:著書『ロシア 語られない戦争:チェチェンゲリラ従軍記』(2011年、アスキー新書)など

*14:著書『カンボジア絹絣の世界』(2008年、NHKブックス)、『カンボジアに村をつくった日本人』(2015年、白水社

*15:どれほど購入されたのか知りませんが