新刊紹介:「前衛」2021年2月号(東京国際映画祭2020上映映画のネタバレが一部あります)

 「前衛」2月号について「興味のある内容」のうち「俺なりに何とか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れます。「赤旗記事の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
特集『福島原発事故から10年 エネルギー基本計画を問う』
原発の再稼働中止、「原発ゼロの日本」の実現へ:再生可能エネルギーへの転換をどうはかるか(笠井亮*1
◆「温室効果ガス排出実質ゼロ」へ再生可能エネルギーへの抜本的転換は急務(和田武*2
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

主張/エネルギー政策/大転換こそ未来への希望生む
主張/核のゴミ処分場/自治体への押し付けをやめよ
主張/温室ガス実質ゼロ/絵に描いた餅にしないために
主張/女川再稼働「同意」/安全と住民置き去り許されぬ
石炭・原発依存転換を/衆院環境委 田村貴昭議員が要求
主張/福島原発事故10年/原発ゼロへの扉をひらく年に


◆敵基地攻撃論と憲法平和主義(永山茂樹*3
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
主張/敵基地攻撃能力/“火事場泥棒”もはなはだしい
主張/敵基地攻撃の提言/憲法破壊の危険な暴走やめよ
敵基地攻撃能力の保有 憲法をじゅうりん/小池氏主張/NHK番組
主張/「敵基地攻撃」論/憲法も現実も無視した暴論だ
なんだっけ/「敵基地攻撃能力」の保有って?
主張/「敵基地攻撃」談話/辞任前に憲法破壊を促す異常
主張/敵基地攻撃能力/日本に戦火を招く危険許すな
主張/「敵基地攻撃」検討/際限ない危険な軍拡許されぬ
敵基地攻撃力 なし崩し保有 強まる/自衛隊の長射程ミサイル 計画次々


新自由主義パンデミックにどう向き合うのか(西谷修*4
(内容紹介)
 赤旗などの記事紹介で代替。
赤旗新型コロナが問う日本と世界/生きた人間社会考えず/東京外国語大学名誉教授 西谷修さん
世界は、「新世界」という新たな身分制社会になだれ込んでいる!(西谷 修) | 現代新書 | 講談社(1/4)


◆米の脅迫書簡が浮き彫りにする核兵器禁止条約の重み(坂口明*5
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
核禁条約発効 米妨害/批准国に撤回迫る書簡/“米政権パニック” 米紙報道


特集『菅政権の下で歪められる日銀・地銀』
◆菅政権に隷属する日本銀行:「カジノミクス」と地域金融のゆくえ(大門実紀史*6
◆加速する地方銀行再編成策の問題点について(鳥畑与一*7
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
「含み損2、3兆円」/日銀ETF買い入れ批判/参院委で大門氏
株価買い支えやめよ/清水氏 日銀の“爆買い”批判
主張/異次元緩和の継続/ゆがんだ金融政策は転換せよ
地銀の合併統合批判/大門氏 自主的判断尊重せよ
主張/菅政権の地銀再編/地域経済に不利益もたらすな


◆非正規格差を問う最高裁判決の到達点と課題(中村和雄*8
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

明暗分かれた非正規格差判決 個別判断も、にじむ経営配慮―最高裁:時事ドットコム
 最高裁で13日と15日、正社員と非正規社員の待遇格差をめぐる5件の訴訟の判決があった。退職金やボーナスを争った2件は、いずれも支給は認められず原告が敗訴。一方、扶養手当や有給休暇を求めた3件は、原告の全面勝訴になり、明暗が分かれた。
「希望も働く意欲も持てない。不公平感が募るばかり」。
 13日午後、最高裁で判決言い渡し後に、原告の女性は声を絞り出した。
 女性は東京メトロ子会社の駅売店契約社員として働き、退職金が支給されないのは労働契約法20条が禁止する「不合理な格差だ」と訴えていた。第3小法廷は、正社員は地域マネジャーも担うなど業務内容に違いがあることを重視し、請求を退けた。
 ボーナス不支給が争われ、同日判決が言い渡された大阪医科薬科大の元アルバイトが起こした訴訟でも、同小法廷は業務内容の違いを指摘し、支給を認めなかった。
 一方、原告が勝訴したのは15日の3件の訴訟。日本郵便契約社員らが扶養手当や年末年始勤務手当の支給、夏季・冬季休暇の付与などを求め、第1小法廷はいずれも「正社員と職務内容が違うことを考慮しても不合理」として手当支給や休暇付与を認めた。
 年末年始勤務手当は「多くの労働者が休日の期間、最繁忙期で郵便業務に従事する対価」、夏季・冬季休暇は「心身回復を図る目的」と述べ、契約社員にも当てはまるとした。
 5件の判決は個別事情を考慮した「事例判断」だが、結果が分かれた要因には手当の趣旨が明確だった一方、退職金やボーナスは支給目的が複合的なこともあると言えそうだ。
 また、退職金やボーナスは(ボーガス注:扶養手当、年末年始勤務手当に比べ)金額が大きく、企業経営に対し一定程度配慮した可能性もある。退職金支給が争われた訴訟の判決では、林景一裁判長が補足意見で「退職金制度の持続的運用には、原資を長期間積み立てるなどして用意する必要がある。使用者の裁量判断を尊重する余地は大きい」とあえて言及した。

 時事通信記事も指摘するように「判断理由が何かはともかく」、「退職金やボーナス」では格差について「不合理とまでは言えない」と判断される傾向がある一方、「扶養手当や有給休暇」については逆に「合理的とは言えない」と判断される傾向があるのかもしれません。
 なお、「最高裁判決」をどう理解するか(正確な理解自体が難しい場合が多い)、理解した上でどう対応するかはなかなか難しい問題です。
 労働者に有利な判決は十二分に活用するのは当然として、不利な判決について、「最高裁判決を不当判決として批判し是正を目指す」と言うのも一つの方法論ですが、1)最高裁判決を前提にした上で法改正で是正を目指す、2)最高裁判決を前提にした上で労使協定など、労使間の交渉で是正を目指すという方法論も勿論あり得ます。


◆進めよう! 本格的な少人数学級へ:非正規教員の正規化とともに(山﨑洋介*9
(内容紹介)
 副題にもあるように、単に少人数学級を実現するのでは無く「非正規教員の正規教員化」を求めていることが山崎論文の特徴と言えるでしょう。
 また今回の少人数学級は「35人(それ以前は40人)」ですが、多くの研究者は「国際的には30人学級が当然(国によっては20人学級もある)」ということで今回の35人学級は山崎論文においても「最終目標」とはされていません。

参考
みんなでつくりだした重要な前進 一刻も早く30人学級を/少人数学級で志位委員長
主張/少人数学級/中学高校含め本格的な実施を


特集『アイヌ民族の先住権を考える集い』
◆講演『日本におけるアイヌ民族の国家的位置』(榎森進*10
◆国会報告『論戦で明らかになった課題』(紙智子*11
(内容紹介)
 赤旗アイヌ先住権を考える/共産党北海道委が集いが報じた集会を「より詳細に報じた内容」になっています。
 ネット上の記事紹介で代替。なお、榎森講演は新刊紹介:「経済」2021年2月号 - bogus-simotukareのブログで紹介した榎森論文「アイヌ民族の先住権をめぐる歴史と現在」とは内容的に当然かなりかぶってはいます。

参考

アイヌ先住権を考える/共産党北海道委が集い
 日本共産党北海道委員会は19日、「アイヌ民族の先住権を考える集い」を札幌市で開きました。道内各地のアイヌ協会など関係者や研究者が駆け付け、先住権やアイヌ新法の課題について、熱心に話し合いました。
 平取(びらとり)町アイヌ協会の木村二三夫副会長、ラポロアイヌネイションの差間正樹名誉会長、静内アイヌ協会の葛野次雄会長が発言しました。
 「いわれなき屈辱を受けた歴史や、政府の誤った政策の害悪が、どれほど民族を傷つけてきたのか」と木村氏。「新法ができて1年たっても、アイヌへの差別の解消は置き去りにされたまま。理不尽さには声を上げていきたい」と述べました。
 東京大学北海道大学などが盗掘した遺骨問題にふれ、「大学側の謝罪とアイヌの意向に沿った解決が必要」と紙智子参院議員。国連の「先住民族の権利宣言」に照らして、どう具体化していくかが重要で「同化政策への謝罪と、生活や教育支援など、アイヌの人たちの意見を反映させるべきだ」と訴えました。
 紙氏は、日本共産党の先住民(アイヌ)の権利委員会責任者として「アイヌに関して新たな政策づくり、運動の発展に力を尽します」と表明しました。
 榎森進東北学院大学名誉教授は、江戸時代から明治初期に至る時期を中心に、アイヌ民族の国家的位置について解明しました。畠山和也*12衆院議員が司会・進行を務めました。

アイヌの権利とは何か テッサ・モーリス=スズキ、市川守弘著、北大開示文書研究会編 :東京新聞 TOKYO Web
 松村洋(音楽評論家)
 今年七月に開業した北海道白老町の国立アイヌ文化施設「民族共生象徴空間(ウポポイ)」では、アイヌの伝統的な歌や踊りを鑑賞できる。アイヌ歌謡に興味がある私には気になる場所だ。しかし、そこは本当にアイヌと和人(非アイヌの日本人)の共生実現に資する空間なのだろうか。
 本書で、テッサ・モーリス=スズキ*13は、ウポポイ建設に至る歴史をたどり、日本政府の姿勢を厳しく批判している。政府はアイヌ先住民族と認めたが、先住権(=自然資源などの利用に関する諸権利)は認めず、アイヌの集団が自律的に暮らす道を否定した。そのうえで伝統的な文化だけを切り取って巧妙なイメージ操作を施し、東京五輪に合わせて造られたウポポイで観光に利用するといったことでよいのか、と彼女は問う。挙げられているオーストラリアなどの事例と比べると、日本政府のごまかしは明白だ。
 さらに市川守弘は「先住民族の権利に関する国際連合宣言」と照らし合わせつつ、日本の法律の不備を明確に指摘している。本書の重要なテーマのひとつであるアイヌ遺骨問題の本質もよくわかる。
 ウポポイには、人類学者らが学術資料として収集し、大学などに保管していたアイヌの遺骨千二百体以上が納められた。収集された遺骨の大半は、アイヌに返されていない。これでは遺骨を墓から持ち去った学者の責任があいまいにされ、今後も先祖が研究資料にされかねない。浦幌アイヌ協会前会長の差間(さしま)正樹氏は、そんな危惧を表明している。エンチウ(=樺太アイヌ)の母を持つ楢木貴美子氏は「人は亡くなったら土に返してあげる」のが「人の道だと信じています」と語る。だが、政府はそういう優しい心の声を一向に聞こうとしない。
 モーリス=スズキは、まず「聞く」ことの大切さを説く。先住民族の体験談や意見や提言をマジョリティ側の人間がよく聞き、深く理解してこそ「和解」や「共生」が始まる、という指摘は重要だ。アイヌの主張に耳を傾けるのは、もちろん善意の行為などではなく、和人の義務であろう。
(2020年、かもがわ出版・2200円)

「甘やかす」→「過保護」 アイヌ民族政策 自民・道見氏が訂正 他会派批判「変わっていない」:北海道新聞 どうしん電子版
 道議会環境生活委員会は10日、自民党・道民会議の道見泰憲氏(札幌市北区)が委員会でアイヌ民族政策に関し「甘やかしている」と発言したことを巡り、同氏の申し出を受け議事録を「過保護にしている」と訂正することを決めた。撤回を求めた議員は、発言の趣旨が変わっていないとして批判している。

国と北海道、アイヌ団体のサケ捕獲権は「法的根拠ない」と主張 先住権訴訟 - 毎日新聞
 北海道浦幌町アイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」がサケを捕獲することは先住民族に認められた先住権で、これを禁じる法や道規則が適用されない確認を国と道に求めた訴訟の第2回口頭弁論が17日、札幌地裁(高木勝己裁判長)であり、国と道は「法的な根拠がない」として請求棄却を求めた。
 閉廷後の集会で、原告側代理人の市川守弘*14弁護士は「(元々)権利があり、それを奪った根拠に正当性があるのかを問う裁判。まずは(権利を奪ったかどうか)事実の認否をすべきで、議論をずらそうとしている」と批判した。

アイヌ語話者数把握せず/紙議員への答弁書で政府
 日本共産党の紙智子参院議員が提出した「アイヌ語の話者を育てる支援策」に関する質問主意書について、政府は15日、答弁書を決定しました。
 アイヌ語ユネスコ国際連合教育科学文化機関)が公表している「消滅の危機にある言語」に含まれます。
 質問主意書は「アイヌ語は文字がないことからアイヌ語の話者を育てることが緊急の課題になっている」とし、▽話者が極めて少ないと認識しているか▽アイヌ語母語として語れる話者は何人いるか▽アイヌ語の授業を取り入れている学校数を把握しているか▽アイヌ語の話者を育てる国の政策、計画―を明らかにするよう要求。答弁書アイヌ語が「存続の危機にある」と認めたものの、「話者の人数は把握していない」「授業に取り入れている学校数は把握していない」などと回答。話者を育てる施策も「アイヌ民族文化団体を通じたアイヌ語の指導者や話者の育成に取り組んでいる」と述べるにとどまりました。
 答弁書を受け取った紙氏は、「アイヌ施策推進法ができたのに、国の政策は極めてお粗末だ。アイヌ語で日常生活できる人は、高齢者で10人を切っていると聞く。アイヌの伝統習俗を禁止し、民族固有の言語を奪った同化政策への謝罪がないことが対策の遅れにつながっている。具体化を求めたい」と語りました。


ジェンダー覚書―The personal is political『ジェンダー平等委員会連続講座の取り組み②』(飯田洋子*15
(内容紹介)

新刊紹介:「前衛」8月号(追記あり) - bogus-simotukareのブログ
浅井春夫 - Wikipedia*16氏による講演(テーマ:性教育
◆塚原久美氏*17による講演(テーマ:リプロダクティヴ・ライツ)

の続編です。
 今回は

◆池谷壽夫氏*18による講演(テーマ:男性のためのジェンダー入門)
◆蓑輪明子氏*19による講演(テーマ:女性の労働と貧困)

です。


◆論点『大井川の水と南アルプスの自然を守れ:リニア新幹線南アルプス・トンネル工事差し止め訴訟へ』(酒井政男)
(内容紹介)
 赤旗などの記事紹介で代替。
リニア工事差し止め提訴/静岡県内区間 住民ら「水利権侵害」

リニア工事 法廷に問う(4) 静岡の登山家・有元利通さん:中日新聞しずおかWeb
 リニア中央新幹線の沿線一都六県の住民ら七百八十一人が国の工事認可取り消しを求めた行政訴訟の中間判決で、東京地裁は一日、南アルプスの自然環境保護などを求め原告に加わった五百三十二人の訴えを却下した。原告の適格性を棄却された一人で、静岡リニア工事差し止め訴訟の会原告団副代表を務める日本山岳会静岡支部長の有元利通さん(71)=静岡市=は「水資源と南アの自然環境保護は一つの問題だ」と訴える。
 静岡の裁判に参加した理由も南アの自然環境の保護。「中下流域の水資源ばかりが注目されるが、その水はどこから来ているか。南アの自然が守られて初めて中下流域の水も守られる」
「東京都民は群馬県から利根川の水を、愛知県民は岐阜県から木曽川の水を、浜松の人も長野県から天竜川の水を引けるが、大井川流域は他から引けない。裁判ではそうした地理的な状況も発信していきたい」
 国への行政訴訟では利害関係がないと判断されたが、「では誰が国立公園やエコパークの自然を守っているのか」。静岡の民事訴訟では、南アの自然環境を享受する環境権も主要テーマで「南アを巡る議論は静岡が本丸」と期待する。

リニア工事 法廷に問う(5) 牧之原の茶農家・柴本俊史さん:中日新聞しずおかWeb
 原告団に参加した利水者十三人の中で最年少の柴本俊史(としふみ)さん(34)=牧之原市=は、大井川の流域五市(島田、掛川、牧之原、菊川、御前崎)にまたがる県内一の茶産地、牧之原台地で茶栽培に励む。
 「牧之原台地の水は先代達が勝ち取った水。減ったら、茶の値段を上げるしかない」と柴本さんは言う。
 福島第一原発事故が起き、影響が一時、遠く離れた牧之原の茶畑にも及んだ。雨雲が運んだ放射性物質を茶葉が吸水。検出された放射性物質は国の基準を上回った。「自信を持って育てたのに、自信を持って売ることができなかった」
 全て廃棄。前年実績がなく、被害額の計算は難しいと東京電力からの補償はなかった。
 だから、リニア工事は大井川の水量だけなく、水質への影響も気にかかる。訴訟に参加しようと思ったのは「不安が現実になってからじゃ、遅い」という原発事故の経験から。結婚した今年八月、挙式も控える中で決心した。
 「主張は通らないかもしれない。でも、将来影響が出て『おやじっちは何をしてたんだ』って子どもに言われたとき、『何もしてない』とは言いたくないから」 

静岡知事、リニアで首相に書簡 静岡工区の事業凍結訴え: 日本経済新聞
 静岡県川勝平太知事は4日の記者会見で、リニア中央新幹線の静岡工区の未着工問題を巡り菅義偉首相に書簡を送ったことを明らかにした。JR東海が同県で計画するトンネル工事について「南アルプスの自然を守り、住民の理解を得ることが明確になるまで事業凍結を宣言するのが望ましい」との考えを伝えたという。
 静岡工区はリニアの工事を始めたいJR東海と、南アルプスの生態系や大井川の流量に影響を及ぼすと懸念する県とで意見が対立している。調整役を買って出た国が昨年4月に有識者会議を設け、議論を重ねている。
 川勝知事は会見で「凍結を考える意思決定者の1人は国策と言われている以上、首相になる」と指摘した。「もう1人は環境相で自然環境保護に関連し工事の許認可権を持っている」とも語り、小泉進次郎環境相との会談にも意欲を示した。


◆暮らしの焦点『実効ある過労死等の労災基準の改正を』(岩橋祐治*20
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。

過労死の認定基準「まだ狭すぎる」 110番が30周年:朝日新聞デジタル編集委員・沢路毅彦)2018年6月25日
 過労死や過労自殺の問題に取り組む弁護士が遺族らの相談を電話で受ける「過労死110番」が始まって、今年で30周年を迎えた。相談をきっかけとした訴訟や過労死遺族の運動が原動力となり、過労死や過労自殺が労災として認められる道は少しずつ広げられてきた。ただ、弁護士らは「まだ狭すぎる」として認定基準の見直しを働きかけている。
 過労死の認定基準は、110番開始から約10年後の2001年に大きく見直された。それまで「病気の発症前1週間」という短期間の業務を中心に判断されていたのが、長期間の疲労の蓄積も重視されることになった。週あたりの法定労働時間(40時間)を超える時間外労働が発症直前1カ月に100時間超、2~6カ月の平均が80時間超というのがおおまかな判断基準となり、これが今の「過労死ライン」になっている。
 松丸弁護士は「認定基準があるかないかという中で、へこたれずに道を作ってきた。運動が行政の認定基準を変え、それを広げる判決を勝ち取り、さらに認定基準を変えるというプロセスだった」と振り返る。
 ただ、大きな見直しから時間がたち、裁判では認定基準を満たさなくても認められるケースが増えてきている。玉木一成弁護士は「今の基準では認定される範囲が狭すぎて、不適切な結果を招く」と指摘する。
 このため110番を実施する過労死弁護団は17年9月、認定基準改定を求める意見書の作成を決定。半年間の検討をへて5月下旬、基準を定めている厚生労働省に提出した。
 意見書のポイントは、過労死ラインの時間外労働時間を「65時間」に短くすることだ。「1日3時間程度の時間外労働をすると脳や心臓の病気との関連が強いという医学的な意見がある」として、月の平均勤務日数の21・7日で計算したという。
 また、過労自殺の認定基準ではパワーハラスメントの適正な評価を求めた。過労自殺は、長時間労働パワハラなどの職場で起こる出来事によってどれだけ心理的な負荷がかかっていたかで判断される。今はパワハラ心理的負荷が「強」と認定されるには、「人格・人間性を否定する言動」が「執拗」であることが条件だ。意見書ではこれを緩め、業務指導の範囲を逸脱した言動が続き、人間関係が悪化した場合も認めるべきだとしている。


メディア時評
◆新聞『求められる思い切った変革』(千谷四郎)
(内容紹介)
 黒川検事長(当時)と産経記者、朝日社員(元記者)の賭け麻雀問題を素材に「新聞業界における思い切った変革(取材相手との癒着、なれ合いの打破)」を求めている。

参考
労連声明:「賭け麻雀」を繰り返さないために | 新聞労連(日本新聞労働組合連合)

黒川氏と賭けマージャン「許しがたい」 新聞労連が声明:朝日新聞デジタル
 緊急事態宣言中に、産経新聞記者や朝日新聞社員が、東京高検の黒川弘務・前検事長=22日付で辞職=と賭けマージャンをしていた問題で、日本新聞労働組合連合は26日、「権力者と一緒になって違法行為を重ねていたことは、権力者を監視し、事実を社会に伝えていくというジャーナリズムの使命や精神に反するもので、許しがたい行為」との声明文を出した。
 当局との距離感を保ちながら、市民の疑問に応えられる取材・報道のあり方が強く求められていると指摘。この日、法務省内に「法務・検察行政刷新会議」が設置されることになったことに触れ、「公権力主導での取材規制に陥らないよう、報道機関が自らを律して改革をしなければならない」として、報道機関の幹部に具体的な行動を求めた。


◆テレビ『「まるでCMのような番組」問題』(沢木啓三)
(内容紹介)
 過去に紹介した

高世仁に突っ込む(2020年7/30日分) - bogus-simotukareのブログ
コロナ後のテレビ界はどうなるのか2 - 高世仁の「諸悪莫作」日記

 長野放送の『働き方改革から始まる未来』は、県内の社会保険労務士法人での働き方改革を紹介する内容で、同法人が県内の制作会社に制作を依頼し、完成素材を長野放送に納めた、いわゆる「持ち込み番組」だった。放送は同法人の1社提供で、合間にCMはなかった。BPOは、同法人とその事業内容のPR色が強いとして、検証委設立後初めて、広告をめぐる問題として放送倫理違反を認定した。
 このあと、琉球朝日放送の『島に"セブン-イレブン"がやって来た~沖縄進出の軌跡と挑戦~』と北日本放送の『人生100年時代を楽しもう! 自分に合った資産形成を考える』が、前者はセブンイレブンを、後者は地元の金融商品仲介会社をPRする要素が強すぎるとして「違反」の判定が下されいる。
 どうやって金を稼ぐかだけを追求すると、番組がどんどん貧弱に、そして危ういものにさえなる。

 よくもまあ、カネのために「救う会とつるんで、特定失踪者というデマの流布にも加担した奴」がこんなことがいえたもんです。まあ、それでも会社を倒産させた無能が高世ですが。
 なお、この長野放送琉球朝日放送北日本放送の件については以前、俺も拙記事新刊紹介:「前衛」4月号 - bogus-simotukareのブログで前衛2020年4月号のコラム

メディア時評
◆テレビ:「持ち込み番組」をめぐって(沢木啓三)

を紹介する形で触れています。
 ただし沢木コラムで批判されていたメインの問題はウヨ企業DHCが東京MXに持ち込んだ例の右翼番組『ニュース女子』です。またMXがいかにコンプライアンスがデタラメな会社かと言うことで別の持ち込み番組『欲望の塊』についても沢木コラムは触れていました。
【注:これは沢木氏の記事では無く高世の記事ですが。沢木氏の記事については新刊紹介:「前衛」4月号 - bogus-simotukareのブログを参照下さい】

の続編です。
 今回、沢木氏が問題にしているのは

番組内容が広告放送と誤解される問題について
2020年10月30日
放送倫理検証委員会
委員長 神田安積
1. はじめに
 委員会は、これまで、「長野放送働き方改革から始まる未来』に関する意見」(2019年10月7日付第30号。以下「決定第30号」という)及び「琉球朝日放送北日本放送の単発番組に関する意見」(2020年6月30日付第36号。以下「決定第36号」という)において、番組内容が広告放送と誤解されることに関する問題(以下「本問題」という)についての基本的な考え方を示してきた。
 そして、①秋田放送が制作し2019年10月26日に放送した30分のローカル単発番組『そこが知りたい!過払い金Q&A』(以下「本件番組①」という)及び②山口放送が制作し、秋田放送山口放送から購入して同年10月19日に放送し、また山口放送においても同年5月25日及び同月29日に放送した30分のローカル単発番組『“見ねれば*21”損!損?過払い金びっくり講座!PART2』(以下「本件番組②」という。以下、本件番組①・②を「本件番組」と総称する)について、2020年5月の委員会(第148回)以降計6回にわたり本問題に関する討議を重ねてきた。
 討議の過程においては、本件番組を両局から購入して放送した局があり、また、本件番組を1社提供した弁護士法人X法律事務所(以下「X法律事務所」という)が提供する類似した番組を制作放送した局またはその番組を購入して放送した局がいずれも相当数存在することが報告され、本件番組が内包する本問題が全国的な広がりを有し、日本民間放送連盟(民放連)加盟各社が直面している共通の課題であることを改めて認識するに至った。
 そこで、10月の委員会(第153回)において、民放連加盟各社及び民放連に対する要望を含めて、本問題に関する委員の総意を改めて示すことが適切であると考え、委員長談話として明らかにすることとした。また、本件番組については放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの指摘はできるものの、討議にて終了し、審議入りしないとの結論に至った。
(以下略)

です。
 沢木氏は

本件番組については放送倫理違反の疑いがあるのではないかとの指摘はできるものの、討議にて終了し、審議入りしないとの結論に至った。

について「BPOは考えが甘すぎるのでは無いか」「審議入りし、秋田放送山口放送を放送倫理違反として断罪すべきだったのではないか」と批判しています。
 というのも本件番組を1社提供した弁護士法人X法律事務所というのが「消費者被害を発生させたあげく経営破綻した東京ミネルヴァ法律事務所だから」です(そもそも、今後、被害者による民事賠償訴訟や刑事告発が予想されるミネルヴァについて今更「X事務所」などと匿名にする必要があると思えませんが)。
 「秋田放送山口放送はミネルヴァの犯罪に加担したあげく、ろくに反省もしてない。その上、秋田放送山口放送への断罪を求めるミネルヴァ被害者の審理要求をBPOは無視して放送局をかばった。BPOに存在価値があるのか。所詮、身内をかばうその程度の組織か」とミネルヴァ被害者に、あるいは過去に放送倫理違反行為を認定された長野放送琉球朝日放送北日本放送に「秋田放送山口放送と俺たちとどこが違うのかいってみろ!。明らかな犯罪企業ミネルヴァを持ち上げるような報道しても倫理違反が認定されないどころか、審議すらしないのに犯罪企業でもない企業(例:セブンイレブン)を持ち上げたら倫理違反ってどういうことや!」とBPOが悪口雑言、批判されても文句が言えないのでは無いか、というのが沢木氏のBPOへの批判です。

【参考:東京ミネルヴァ法律事務所】

東京ミネルヴァ法律事務所 - Wikipedia
 2012年4月に設立。
 全国ネットのCMで積極的な広告展開を行い、全国各地で出張無料相談会を開催することで実績を重ねて規模を拡大し、一定の知名度があった。
 しかし、2019年3月時点で31億8100万円へ赤字が拡大し、代表である川島浩弁護士が所属する第一東京弁護士会に対する会費が未納であった他、2020年6月ごろから連絡が取れないという苦情が第一東京弁護士会に寄せられていた。東京ミネルヴァ法律事務所は、2020年6月10日に総社員の同意により解散したと同時に、川島弁護士が預り金を流用していたことを告白。財産保全のため、第一東京弁護士会は同年6月24日に東京地方裁判所へ債権者破産を申し立て、同日に破産手続開始決定を受けた。負債総額は約51億円。第一東京弁護士会の寺前隆会長は、破産手続開始決定当日に談話を発表し、東京ミネルヴァ法律事務所並びに代表であった川島弁護士に対して、懲戒処分を始めとした厳正な対応を行うことを明らかにした。

被害対策弁護団を結成 流用疑惑の東京ミネルヴァ:時事ドットコム
 破産した「東京ミネルヴァ法律事務所」(東京都港区)が、回収した過払い金を依頼者に返還せず流用したとされる問題で、有志の弁護士らが31日、都内で記者会見を開き、被害対策弁護団を結成したと発表した。刑事告訴民事訴訟も視野に入れ、8月には無料で電話相談も行う。
 同事務所は過払い金返還請求訴訟を多数手掛け、テレビCMなどで知られていたが、6月24日に東京地裁から破産手続きの開始決定を受けた。負債総額は約51億円で、金融業者から回収した過払い金約31億円を広告費などに流用した疑いが持たれており、所属する第一東京弁護士会刑事告発を検討している。
 被害対策弁護団によると、同事務所が抱えていた依頼は約2万件に上るとされ、過払い金の多くが依頼者に返還されていないとみられる。新里宏二団長は「まずは被害実態を把握して、可能な救済を図っていきたい」と話した。


文化の話題
◆演劇『文化座の若手が充実している:文化座「しゃぼん玉」』(水村武)
(内容紹介)
 映画化もされた乃南アサの小説『しゃぼん玉』の舞台化の紹介。なお映画で市原悦子(1936年生まれ)が演じた老婆役は「劇団文化座」現代表である佐々木愛*22(1943年生まれ)が演じた。

参考

すさんだ心、出会いが救う 文化座「しゃぼん玉」、東京・両国で:朝日新聞デジタル
 自暴自棄になり、犯罪を繰り返していた青年が逃亡先の山奥の村で優しさに触れ、変貌する乃南アサ原作の小説「しゃぼん玉」を劇団文化座が舞台化、11月2~12日に上演する。斉藤祐一作、西川信廣演出。
 藤原章寛が青年の翔人を演じる。

文化座「しゃぼん玉」(依頼原稿): 梁塵日記
 直木賞作家・乃南アサのベストセラー小説を基に文学座の俳優でもある斉藤祐一が脚本を書き、西川信廣が演出した。
 親からの虐待というトラウマを抱え、幼少期から荒んだ生活をしてきた青年・伊豆見翔人(藤原章寛)。彼は女性や老人だけを狙った通り魔や強盗傷害を繰り返しながら全国を流浪していたが、ひょんなことからたどり着いたのが宮崎県の椎葉村
 早朝の村道でバイク事故でケガをしたスマ婆さん(佐々木愛)を助けたことがきっかけで、スマの家に居ついてしまう。スマは、彼の苗字を名前だと勘違いし、「いずみ」と呼んで彼を実の孫のようにかわいがる。隣家のシゲ爺(嵐圭史)もいずみを山菜取りに誘うなど厳しくも温かく見守る。いずみも祭りの準備を通して村の生活に溶け込んでいく…。
 ただただ漂って、どこかに落ち着こうとするとパチンと弾けて消えてしまうしゃぼん玉のようないずみが村の人々とのふれあいを通して魂を浄化させていく物語である。
 その核となるのは、スマ婆さんとの交流であるが、もう一人、彼にとって切ない試練となるのは、最近村に帰ってきた同世代の女性・黒木未知(小川沙織)への思慕。彼女が都会で受けた心の傷の原因が昔、いずみが逃亡中に起こした事件とよく似ているのだ。それを知ったいずみの苦悩。
 登場する人々は皆、善人であり物語は牧歌的でさえある。劇中唯一の悪人であるスマの不肖の息子・豊昭(津田二朗)でさえ心に傷を負い、やり切れない悲しみを抱えている。
 終幕、再び人生をやり直そうと決意するいずみの再生を祝うかのように舞台に舞う無数のしゃぼん玉。人の心を信じることを忘れかけている現代人に託す希望の象徴。それを体現し、毅然としたスマを演じた佐々木愛、そして藤原、小川の清新な演技が心に残る。演劇の一義である「人を信じる」という演劇の力を見せつけた舞台だった。

しゃぼん玉 (映画) - Wikipedia
 2017年公開の日本映画。
 直木賞作家・乃南アサの同名ベストセラー小説の映画化。テレビドラマ『相棒』の助監督を務めてきた東伸児が劇場映画初監督を務めた。また、2019年に死去した市原悦子の最後の出演映画となった。
◆あらすじ
 伊豆見翔人(林遣都*23)は親に見捨てられたことで自暴自棄になり、女性や老人ばかりを狙った通り魔や強盗傷害を繰り返し、当てのない逃亡生活を続けていた。
 ある日、宮崎県の山深くにある椎葉村に流れてきた彼は、怪我をして道端に倒れていた老婆スマ(市原悦子)を偶然助け、彼女の家に世話になることに。
 伊豆見は当初いつものように金を盗んですぐに逃げるつもりだったが、スマを始めとする村の人たちは皆伊豆見のことをスマの孫と勘違いして、あれこれ世話を焼いてきて、逃げられなくなる。さらに伊豆見は、山仕事や祭りの準備を手伝わされる破目に。
 しかし、そのうちに伊豆見の心境に変化が現れる。そんな中、ある事件をきっかけに10年ぶりに村に帰ってきた美知(藤井美菜)と知り合った伊豆見は、自分が犯してきた罪の重さを自覚するようになり、人生をやり直すことを決意する。

公式サイト映画『しゃぼん玉』


◆音楽『輝き増す大野和士の『独裁への警鐘』』(宮沢昭男)
(内容紹介)
 「都響スペシャル2020(12月5日)」の紹介。
 『独裁への警鐘』云々というのは演奏された楽曲の一つであるブリテン『ヴァイオリン協奏曲』が

ヴァイオリン協奏曲 (ブリテン) - Wikipedia
 1939年夏に、カナダのケベック州サン・ジョヴィットで書き上げられ、同地で完成された。作曲の動機については不明確だが、1939年のこの時期は
ナチス・ドイツによるチェコスロバキア解体 - Wikipediaで、チェコスロヴァキアが崩壊し、ドイツのポーランド侵攻に対して9月3日にはイギリスとフランスの対ドイツ宣戦によって第二次世界大戦が始まった時期でもある。恐らく戦火を避けながらも、反戦の意を表していると思われる。

と評価され、またブリテン自身もその他の作品についても

シンフォニア・ダ・レクイエム - Wikipedia
 1939年に日本政府の企画する皇紀2600年奉祝曲としてイギリス文化振興会から作品委嘱を受け、26歳のベンジャミン・ブリテンが作曲した交響曲
 通説では「日本政府の依嘱により、皇紀2600年奉祝曲として作曲されたが、皇室に対する非難を含むものと見なされたために、日本政府より却下された」とされている。

【聴きたい!】クラシック名盤 ブリテン:鎮魂交響曲 戦争とその後を予見? - 産経ニュース
 皇紀2600年(昭和15年)を記念して日本政府の依頼で作曲されたが、祝賀ムードにふさわしくないことなどで、祝賀演奏会での演奏は見送られた。不吉な開始部の「涙の日」、最後の審判の到来を告げる「怒りの日」、破滅後の救済を描く「永遠の安息を」という楽想は、せまり来る戦争とその後を予言したと映ったのかもしれない。

ブリテン:「シンフォニア・ダ・レクイエム」のディスコグラフィ - ★ブリテン/鎮魂交響曲[19CD]
 この曲の出自に関しましては、今さら筆を重ねることもないでしょう。
 我が国の「皇紀2600年(1940年)奉祝曲」として委嘱され、そのタイトルにより演奏を拒否された曲です。
 ブリテンが「レクイエム」の名を冠す曲を送付したことについては諸説あるようです。
 平和主義の立場からの皮肉とか、新作が間に合わなかったためとか。
 私、自虐史観を気取るつもりはありませんが、当時、ブリテンにとって日本がどのように見えていたのかを考慮すると、「未開の野蛮人」は言い過ぎにしてもせいぜい「文明後進国」くらいではなかっただろうかと思います。
 要は「レクイエム」などとは無縁の国であり、その何たるかなど解りもしまい、くらいの認識ではなかっただろうかと。
 そもそも、極東の地においてこの曲のスコアが精確に再現されようとは、期待してもいなかったのではないでしょうか。

戦争レクイエム - Wikipedia
 イギリスの作曲家ベンジャミン・ブリテンが1962年に発表した管弦楽付き合唱作品。第一次世界大戦に従軍し25歳の若さで戦死したイギリスの詩人ウィルフレッド・オーウェン1893年~1918年)による英語の詩が使われており、第二次世界大戦における全ての国の犠牲者を追悼するとともに、戦争の不合理さを告発し世界の平和を願う作品となっている。
◆作品に対する反響
 ブリテンと親交が深かったソ連ドミートリイ・ショスタコーヴィチは、1963年の夏にブリテンから送られた楽譜と録音により『戦争レクイエム』を知り、「人間精神の偉大な作品」の一つであると感嘆したが、他の作曲家による「死」を扱った作品と同様、最後は浄化されるような雰囲気で美しく終わってしまうことには納得がいかなかった。ショスタコーヴィチが1969年に作曲した交響曲第14番は、彼の「死は誰にでも訪れるものであり、感傷を交えないで描かれるべき」という考えを具現化したものであり、作品はブリテンに献呈された。これは『戦争レクイエム』に対する回答でもあり、ショスタコーヴィチは作品を通してブリテンとの対話を試みたのである。
 『戦争レクイエム』は作品の性格上、平和を祈念する行事などに合わせて演奏されることもある。1962年11月18日の西ドイツ初演はベルリンでの第一次世界大戦終結記念日に、1965年2月13日の東ドイツ初演はドレスデン爆撃の20周年に合わせて行われている。日本では、原爆投下の40周年にあたる1985年に小澤征爾が広島で演奏しているほか、東京大空襲で被害が大きかった東京都墨田区においては、1997年にすみだトリフォニーホール杮落とし公演でムスティスラフ・ロストロポーヴィチ指揮、新日本フィルハーモニー交響楽団による演奏が行われている。

と評価されているから、そのように宮沢氏が「大野の指揮」を評価しているようですが、小生もこの辺りは「無知」なので何とも評価できません。

参考

都響スペシャル 大野和士指揮 悲劇的序曲、ブリテンVn協奏曲、ドボ8 | クラシックなまいにち
 2曲目はこの日の目当てであったブリテンのヴァイオリン協奏曲。久しぶり(18年ぶり!)に聴く渡辺玲子の音色、叙情的なこの曲に相応しい音色。渡辺玲子といえば、かつてシノーポリ指揮シュターツカペレ・ドレスデンとベルクの協奏曲を録音していたが、最近在京オケの演奏会で名前を聞かなくなっていたので、こうして実演を聴けるのはうれしい。
 後半はドヴォルザークの8番。こちらは非常に素晴らしい演奏だった!
 出版されたのがイギリスだっただけでかつて「イギリス」という名で呼ばれていたこの曲、まるでイギリスらしくない、ボヘミアの田舎の音楽である。
 しかし大野のアプローチは、この作品をあくまでも正統派のシンフォニーと位置付けているように聞こえる。土俗的なフレーズが野暮に聞こえることがないのだ。
 オーケストラは抜群に上手い。ホルンの首席、先週の沼尻指揮によるときと同じく見たことのない人だったのだが、この人のホルンが非常に上手い。ドボ8、ホルンとフルートで決まると言っても過言ではないくらい、ホルンは大事なセクションなのだ(フルートの柳原さんも見事だった)。ネットで調べたらこのホルン奏者は庄司雄大さん。都響のホルン首席は現在ひとりしかいないので、首席になるのかな?クラリネット首席は東響の吉野さん。


◆映画『コロナ禍の中の東京国際映画祭』(児玉由紀恵)
(内容紹介)
 「勿論他にも上映映画はありますが」、以下の上映映画が紹介されています。
 『1)日本映画「私をくいとめて」』を除けば全て海外映画、しかも海外映画の多くはどうやら「社会派映画らしい」と言う点は前衛らしいと言うべきでしょうか?
1)日本映画「私をくいとめて」
 綿矢りさの同名小説の映画化。東京国際映画祭で「TOKYOプレミア2020」観客賞/東京都知事賞を受賞。NHKあまちゃん」で売れっ子になりながらも「干されてる」のか、「彼女自身が映画や舞台などの方面に力を入れてる」のかはともかく、何故か最近、テレビドラマではまるで見なくなった「のん(旧名・能年玲奈)」主演で話題。公式サイト映画『私をくいとめて』|大ヒット上映中!

【私をくいとめて】| 第33回東京国際映画祭(2020)
 おひとりさまの生活に慣れきり、脳内に相談役Aが爆誕した31歳みつ子と年下男子による、あと10センチ近づけないふたりを描いた共感度100%の崖っぷちロマンス。

2)イラン映画「ノーチョイス」

【ノー・チョイス】| 第33回東京国際映画祭(2020)
 愛する男に利用されお金のために代理出産をさせられる16歳のホームレス少女。彼女を救済しようと人権派の女性弁護士が行動を開始するが大きな壁が立ち塞がる。イラン社会の裏面を描き出した衝撃の問題作。

3)イラン映画「ティティ」

【ティティ】| 第33回東京国際映画祭(2020)
 入院中のエリート物理学者と病室清掃員のロマ(ジプシー)の女性が心を通わせていく。注目の女性監督パナハンデは“Nahid”(2015年)でカンヌ「ある視点」新人賞、続く『二階堂家物語』(2018年)は奈良ロケ作。

4)イラン映画「悪は存在せず」

【悪は存在せず】| 第33回東京国際映画祭(2020)
 イランの死刑制度にまつわる4つのエピソードから、人間の尊厳を問う本年度屈指の話題作。穏やかな日常とドラマティックな展開の対比が素晴らしい。ベルリン映画祭では、イラン政府と対立したモハマッド・ラスロフ監督が不在の受賞式となった。

5)英国映画「バイク泥棒」

【バイク泥棒】| 第33回東京国際映画祭(2020)
 ロンドンで暮らすルーマニア移民の男はデリバリー業で家族を支えているが、生活が苦しさを増すなか、命の綱であるバイクを盗まれてしまう。現代の移民の苦境が切迫感を伴って伝わるスリリングな人間ドラマ。

 「自転車泥棒 (映画) - Wikipediaかよ?」と思うのは俺だけではないでしょう。
 実際

【TIFF】バイク泥棒(TOKYOプレミア2020)
◆藤澤貞彦/自転車泥棒度:★★★★☆
 満足に英語を話すことさえできないルーマニアからの移住労働者(ピザの配達人)にとって、(中略)お店から借りたバイクを盗まれるということは、職を失うだけでなく、家を失い、英国に居られなくなることに繋がるというその過酷。盗まれたらもはや人のものを盗むことにしか活路を見出せない。そこまで追いつめられる姿に、往年の名作『自転車泥棒』を思い浮かべてしまったのだが、それはイタリアの戦後混乱期のこと。現代の英国で、再びこんな作品が作られるとは。英国では今、移住労働者への風当たりが強い。さらに今年*24末には英国はEU離脱の移行期間が終了する。彼らの未来は映画以上に暗くなるかもしれないのだ。世界はどこに向かっているのだろう。

と言う指摘もあります。いや実際に「元ネタは自転車泥棒」かもしれませんが。
6)イスラエル映画「オマールの父」

【オマールの父】| 第33回東京国際映画祭(2020)
 イスラエル側で手術の甲斐なく死んだわが子を抱いてチェックポイントに向かうパレスチナ人の父親が、イスラエル人の妊婦と出会って二人旅に。普段なら接することのない男女が織りなすふれあいの物語。

7)ロシア映画「親愛なる同志たちへ」

【親愛なる同志たちへ】| 第33回東京国際映画祭(2020)
 1962年、ソ連南部の町ノボチェルカッスクにおいて労働者の不満が溜まっていた。公務員の女性は娘のデモ参加に反対するが…。ソ連時代最大級の労働者蜂起の顛末を、母娘の物語を交えて名匠監督が鮮やかに活写する。

【参考:イラン映画『ノーチョイス』】

【MOVIEブログ】2020東京国際映画祭作品紹介 「Tokyoプレミア2020」アジア映画 | cinemacafe.net
・今年のアジア映画の選定で大変だったのは、中東勢がこの数年来の勢いを持続して充実しており、全てを選べないことに苦しんだことです。イラン映画特集が簡単に組めてしまうほどイラン映画は秀作揃いだったし、イスラエル映画も同様です。
・『ノー・チョイス』は好調イランの1本。
・ストリートの少女が代理出産を強いられている。少女のバックには、代理出産を商売にしている組織が存在するらしい。ソーシャルワーカーの女性は少女を救い出そうとする。そこに、少女を診察した産婦人科医の存在が絡んでくる。少女がどうしたいのか、いまひとつ意思がはっきりしない。果たして3人の女性の選択は?
・イラン社会における女性の地位の低さを告発する作品はこれまでも少なからず作られてきましたが(国内では上映禁止となるケースも少なくない)、『ノー・チョイス』はその決定版かもしれません。
産婦人科医を演じるのは、イランの名優ファテメ・モタメダリア。度々来日もされているので、少しでも中東の映画に関心がある人にはお馴染みの存在でしょう。彼女の存在も、やはり見どころのひとつです。
・そして最後に受けるインパクトはもう、ご覚悟下さい。

第33回東京国際映画祭 TOKYOプレミア2020『ノー・チョイス』 | himawari's diary
 ホームレスの少女ガルバハールは11歳のときから妊娠・出産をして子どもを売って生きてきた。
 16歳になった今好きな男に利用されて再び代理出産を請け負うがいつの間にか避妊手術をされていて妊娠できない体になっていることが検査で判明する。
 人権派の女性弁護士サラがガルバハールを助けようと調査をすると私財を投じてホームレス救済をしている優秀な女性医師ペンダーが疑わしい人物だと気づく。
 しかし、そんなサラの前にはさまざまな障害が立ちはだかる。
 イランという国の貧富の差や闇を描いた社会派の作品です。
 ホームレスの少女ガルバハールはずっと子どもを売って生活してきたなんてあまりにも辛すぎる話です。
 もはや16歳の若く元気な輝きはなく生活に疲れた大人のようです(3枚目の写真の女性がガルバハールです)。
 今回のこの仕事さえこなせば愛する男と一緒に家を借りて住むことができると一筋の光を見いだしたのですが妊娠できない体になっていたという…。
 事故で病院に運ばれた際にホームレス生活から救済したいという思いでペンダー医師が不妊手術を施しました。
 ガルバハールはまさに「ノー・チョイス」で施術されてしまったのです。
 結果的にガルバハールは生活を変えられたわけではなかったです。
 長い髪の毛と引き換えに得たお金をポケットに入れて公園に向かいそこで寝るのでした。
 私財を投げうって治療をするなどホームレス救済活動をして尊敬されているペンダー医師ですが本人に告げずに一方的に施術をしたことに対しては正義かどうか疑問ですよね。
 イランという国でそれを人権侵害として訴えようとするサラ弁護士の勇気はかなりのものだと思います。
 立ちはだかる大きな壁は崩すことができるのかサスペンスのようにハラハラしました。
 それと、お金のためにサラの気持ちを利用する男にはかなりの不快感を感じました。
 社会の闇が深いことを象徴するかのように登場人物の顔にはほとんど笑顔がなかったです。
 ガルバハールに唯一16歳らしい無邪気な笑顔が見えたのはサラ弁護士にレストランで食事をごちそうしてもらったときでした。切ないですね。
 フィクションとはいえ限りなく現実に近いと思いますがホームレスの多さにも愕然としました。
 彼らは折り重なるようにして路上や「ホテル」と呼ばれる廃バスの中で寝ています。
 イランに限らずこのような状況下にある人々は世界中にたくさんいると思います。
 こういう作品を通じて世の中がよくなっていくひとつのきっかけになることを祈るばかりです。

【参考:イラン映画『ティティ』】

【MOVIEブログ】2020東京国際映画祭作品紹介 「Tokyoプレミア2020」アジア映画 | cinemacafe.net
・今年のアジア映画の選定で大変だったのは、中東勢がこの数年来の勢いを持続して充実しており、全てを選べないことに苦しんだことです。イラン映画特集が簡単に組めてしまうほどイラン映画は秀作揃いだったし、イスラエル映画も同様です。
・『ティティ』もイラン映画です。
・超インテリの男性学者と、社会的地位の低いロマの女性という、「出会うはずのないふたり」が出会った際に起きるドラマ*25を描きます。おそらくは、社会的地位として、男性学者はヒエラルキーのトップに近く、その地位に合った尊大さを備えている。一方のロマの女性は、ろくな住まいもなく、そして仲間うちでも少し変人だと思われていて、このコンビが作り出す空気の温かい(とは限らないのですが)味わいが映画の見どころのひとつです。
 イランにおけるロマの人々の暮らしを映画で見た記憶があまりないのですが(イランにもロマのコミュニティーがあること自体、知っていたとは言えない)彼らの文化がイランにおいてどのような位置にあるのかを垣間見ることができる刺激もあります。
・映画祭で紹介するイランの映画としてはメイン・ストリームに近く、中東の作品にあまり馴染みの無い方にもお勧めしたい1本です。

文化や階級差だけでなく男と女の間には普遍的な溝がある『ティティ』公式インタビュー:アイダ・パナハンデ監督|第33回東京国際映画祭(2020)
 病院で清掃人として働く傍ら、代理母となって不妊夫婦の出産を請け負っているティティ。ロマ出身の彼女は脳腫瘍で入院してきた物理学者と出会い、人間的に共感するが…。『NAHID(ナヒード)』(2016年)、『二階堂家物語』(2018年)で知られるパナハンデ監督の長編第5作は、出自の違う男女の愛の物語。
【インタビュー】
◆インタビュアー
 監督はこれまで法や伝統に縛られた女性を描いてきましたが、今回は出自の違う男女の出会いを描いています。
◆アイダ・パナハンデ監督(以下、パナハンデ監督):
 主人公を代理母にしてこれまで通り女性の人権の問題を扱っていますが、本作では、異なる文化背景を持つ男女が愛を育むことは可能なのかという問題をテーマにしています。人間の孤独、突き詰めれば愛の不可能性に迫りたかったのです。
◆インタビュアー
 ティティの可愛らしい無垢な性格に魅せられました。
◆パナハンデ監督
 私が映画史上いちばん好きな登場人物はフェデリコ・フェリーニ監督の『』(54)のジェルソミーナで、彼女に近いイメージ──孤独だけど自由な性格にしたくて…。
◆インタビュアー
 確かに『道』の影響を感じました。ティティの人物像だけでなく、物語や三輪自動車が登場するところも。
◆パナハンデ監督:
 フェリーニ監督の影響が強く感じられるのは当然です。私はもうすぐ40歳になりますが、この歳になると、昔観た作品でも違った部分に興味を持つことが往々にしてあって、最近、特に心惹かれてきたのがフェリーニ監督だったからです。
 イラン映画が社会派の作品ばかりなのに私たちはうんざりしていて、せめて自分たちが作る映画はそうじゃないものにしたい。それで、神秘的な傾向を彼女に持たせることにしたんです。ずっと好きな世界だったので、これからも神秘を映画に取り入れていきたいです。
◆インタビュアー
 お好きな日本映画は?
◆パナハンデ監督:
 (ボーガス注:溝口健二監督の)『雨月物語』(1953年)と『西鶴一代女』(1952年)、それから(ボーガス注:小林正樹監督の)『怪談』(1965年)です。昔の日本の映画監督たちは、寓話や神話の世界を単純に自分たちの作品に入れ込む術を知っていて、私はその作風に感動してきました。
 わけても溝口健二小林正樹小津安二郎黒澤明といった黄金時代の日本映画の監督たちは大好きです。イランにも寓話や神話がたくさんあるので、そうした世界に自分でも本格的に挑戦してみたいと思います。
◆インタビュアー
 物理学者とミュージシャンという、好対照なふたりの男性が登場してティティの感情を左右しますが、彼らの身勝手さは溝口が映画で描いてきた物じゃないかと思いました。
◆パナハンデ監督:
 まさにその通りです(笑)。これを言うと気を悪くするかもしれませんが、アジアの国はどこも男社会であり、男たちは身勝手です。『二階堂家物語』を撮るために日本に行った時も、これだけ発展した国でさえそうした文化習慣が残っていることに吃驚しました。
 イランや日本の文化に男性中心主義は深く根を降ろしていて、将来も治りそうにない。
 でも、そのことを非難したくて本作を作った訳ではなく、これはある種の愛を語りたくて作った作品です。男と女の間には溝がある。それは文化であったり階級差であったりしますが、普遍性があって乗り越えられない。それこそが伝えたかったことです。
◆インタビュアー
 最後のティティの告白は涙を誘います。
◆パナハンデ監督:
 ティティはすべてを失う代わりに大きな教訓を得ます。それは「知識」です。これはヴァージニア・ウルフの言葉ですが、素晴らしい物語を書く女性には、自分だけの部屋が必要になる。
 物理学者とティティの恋の行方はこれからご覧になる方もいらっしゃるのでここで語れません*26が、彼は知らぬ間にひとつの教訓を彼女に授けます。子供も超能力も男性も貴方の役に立たない。自立するには自分の家を作るしかないことを。
◆インタビュアー
 『二階堂家物語』の加藤雅也さんは監督から厳しい駄目出しをもらい、演技観が変わったと仰っていましたが、本作でも厳しい指導をされたのですか。
◆パナハンデ監督:
 なぜか、私は厳しい監督だという噂が日本で流れているみたいで、誰が言い出したのかわからないんですが(笑)。
 本作で主要人物を演じてくれた3人──エルナズ・シャケルデューストさん(ティティ役)、パルサ・ピルーズファルさん(物理学者役。TOKYOプレミア2020で上映されるもう1本のイラン映画『ノー・チョイス』にも出演)、ホウタン・シャキバさん(婚約者役)はいずれも大ベテランであり、スーパースターと呼んでいい方々ですが、幸いにも皆それぞれの役を気に入ってくれて、入魂の演技を披露してくれました。

【参考:イラン映画『悪は存在せず』】

【MOVIEブログ】2020東京国際映画祭 Day10 | cinemacafe.net
 21時45分から、最後の「TIFFトークサロン」で、「ワールドフォーカス部門」で上映したイラン映画『悪は存在せず』のモハマッド・ラスロフ監督をお迎えする!
 最後にして、最重要トークになったかもしれない。というのも、ご存じの通り、ラスロフ監督はイラン国内での活動の苦境が伝えられて久しい。表現活動が政府方針に抵触し、国外に出ることが出来ず、『悪は存在せず』はベルリンのコンペに選ばれたものの、監督はベルリン入りすることは出来なかった。それどころか、自宅軟禁が続いているらしいとか、さらには拘束されて投獄が迫っているという報せも入り、本当に世界中が心配している存在なのだ。監督欠席のまま、大好評を博した『悪は存在せず』がベルリンでグランプリを受賞したのは、周知の通り。
 『悪は存在せず』をベルリンで見た僕は、これはグランプリだろうと予想したし、東京に招待したいと即座に思った。そして実際に作品を東京で上映できることにはなった。しかし、オンラインと言えど、監督と話が出来るとは考えなかった。そもそもトークを打診することすら憚られたし、上映できるだけでもよしとしようと思っていたのだ。
 すると、作品の権利元の会社から「監督はトークする気まんまんでいる」と連絡が来るではないか。なんと! ならば、ということで「TIFFトークサロン」のスケジュールに落とし込み、最終日の最終回という時間で決定し、本日を迎えた。
 さて、監督がアクセスしてくれるとして、現在の立場について質問するのは、やはりやめておこうと判断する。イラン当局がモニタリングしている可能性を軽く考えてはいけないだろうし、監督に迷惑はかけたくない。今はどういう状態なのか?、刑務所入りは免れそうなのか?ということを知りたくないと言えば嘘になるけれど、そんなこと話したところで監督には一文の得にもならないし、監督であれば作品の話をするのが一番嬉しいはずだと考え、作品以外の話は一切しないことにした。以上は、全て僕の勝手な判断であり、現状について質問したら喜んで答えてくれたのかもしれないけど、まあそれは分からない。ともかく余計なことは何も聞かないことにした。
 死刑制度を映画の主題に取り上げた背景、四つのエピソードからなる短編連作とした理由、各エピソードをいかに関連づけたか、トーンの違いの意図、エピソードのひとつのタイトルにもなっている有名な歌の意図、なぜ登場人物が顔をごしごし洗うシーンが各エピソードにあるのか(この質問のおかげで一気に場が和らいだ。質問送って下さった方、ありがとうございます!)、郊外の風景はキアロスタミ的であるかどうか、死刑執行官は怪物であるかどうか、徴兵の青年兵が死刑の執行を任じられることは実際に多いのか、そういった兵に精神的ケアが施されることはないのか、役者はどうやって選んだのか、ヘヴィーな主題に役者はどうやって挑んだか、そもそも監督は役とどのように接するのか…。
 いやあ、濃かった。これは重要な資料になったのではないだろうか。『悪は存在せず』、とても「面白く」、重要な作品であるので、日本公開が決まりますように。
 最後に、視聴者からの質問に僕の思いも重ねて尋ねてみる。
 「映画製作を目指している若者にメッセージを頂けますか?。勇気と不屈の映画作家として、世界中から尊敬を集めるラスロフ監督からのメッセージほど貴重なものはありません」とお願いすると、意外に答えは短かった。
 「人それぞれなので、一般的なことは言えません。しかし、私は毎回異なるアプローチで作品を作っています。新しいことに挑戦することを恐れないように、ということは言えるかもしれません」。

ベルリン映画祭で最高賞 イラン作品の裏のテーマは?|NIKKEI STYLE
『そこに悪はない』は、死刑に関わる人間模様を4つの物語で描く。表のテーマは死刑反対だが、裏に“上から与えられた命令に黙って従うな、反抗しろ”というメッセージが隠されている。テーマは重いが語り口が平易で、ラスロフの作品で最も楽しめた。

Topics:ベルリン映画祭を振り返って 社会派健在、存在感示す 金熊賞監督、スマホ越し「出席」 - 毎日新聞
 会見は、ラスロフ監督が不在のなかで行われた。異例の会見になった理由は、イラン政府が「作品が反体制的だ」としてラスロフ監督の出国を禁じているためだ。映画に出演した娘のバラン・ラスロフが授賞式と会見に代理出席したが、会場から「監督の言葉が聞きたい」との声が上がり、イランからスマートフォンを通して「出席」した。

[850]モハマド・ラスロフ監督 金熊賞受賞後にイランで実刑判決 | IndieTokyo
 イランの映画監督モハマド・ラスロフの『There Is No Evil』(ボーガス注:英題。東京国際映画祭2020年での邦題は『悪は存在せず』)は、独裁政権下での個人の自由をテーマにした4つの物語からなる長編作品だ。今作は2月28日にベルリン国際映画祭で上映され、金熊賞を受賞したが、ラスロフはイランからの出国禁止により映画祭に出席することができず、ハンブルクに住む娘が代理で賞を受け取る形となった。
 しかし3月4日、映画祭で金熊賞を受賞したばかりのラスロフがイラン政府から1年の実刑判決を受け、収監命令が下されたと発表があった。弁護士によればこの判決は、彼が過去に制作した3作品が反体制的なプロパガンダにあたるとして下されたものだ。
 ラスロフはこれまで幾度となくイラン政府と衝突してきた。2011年には同じく監督のジャファル・パナヒと共に、許可なく映画を撮影したとして逮捕されている。二人は6年の懲役を言い渡され、反体制のプロパガンダを含む映画を以後20年間製作することを禁じられた。2013年には、『Manuscripts Don’t Burn』がカンヌで上映された後、出国禁止や映画制作の禁止を言い渡されている。 2017年にはカンヌで『A Man of Integrity』が「ある視点」部門で受賞したが、その後帰国するとパスポートを押収され、それ以後再び出国禁止となっていた。そして 2019年7月には、「国家の安全を脅かす」「イスラム政府への反体制的なプロパガンダ」として告発されていた。しかしその判決は、今回ラスロフが金熊賞を受賞して初めて言い渡されることになった。これは、包み隠さず自らの主張を表現する映画製作者等や反体制のアーティストを沈黙させるためにイラン政府がしばしば用いる脅迫の手口だという。
独裁政権下での映画製作
「なぜこの国に戻って来るんだ?とみんなが私に聞くのです。でも私には簡単なことです。ここが私の故郷ですから」とラスロフは言う。
「自分の国を去ることを考えたことはありません。」
 今回の実刑判決が報じられる以前、ベルリン国際映画祭での『There Is No Evil』の上映に伴い、ラスロフはSkypeでThe Hollywood Reporter(THR)のインタビューに答えていた。以下、THRの記事を引用する。
 ラスロフは映画制作禁止命令を受けていたため、ラスロフの代わりに友人が映画の撮影許可を取ることになった。
「私の名前はどこにも書かれていませんでした。」
「4つの短編映画を計画し、それぞれに監督がいて、それぞれに制作チームがあって、別々の映画のようにしました。政府は短編映画にはあまり注意を払わないので、この方が物事を進めやすいのです。」
  テヘラン空港など公共の場での撮影の際は、ラスロフは自宅に待機し、助監督にあらかじめ作成した撮影リストを送った。
 「私が自由を感じられたのは、街以外で撮影するときだけでした。そこでは、実際にその場で俳優たちと直接仕事することができました。」
 映画を構成する4つの物語は、あるひとつの主題をめぐって展開する。どうすれば個人が、たとえ専制政治のもとであっても、道徳的勇気を示すことができるのか?。4つの物語全てが、イランの死刑制をめぐる問題と、反体制派や政敵を殺害することが政府によって認められているという現実を直接的に批判する。
 『There Is No Evil』では以前の作品よりもより直接的に政権批判をしているとラスロフはいう。彼はこれまでもほとんどの作品で政治弾圧によるイラン人の苦しみを描いてきたが、それらはほとんどが、イラン映画には典型的な遠回しで寓話的な姿勢であった。 「この寓話的なスタイルは、何世紀にも遡る私たちの文化、詩、芸術に根付いているもので、そこでは物事を直接言わない傾向にあるんです。」と監督は説明する。
「しかし私はこの慣習を捨て去ろうと思いました。なぜなら、この寓話的な美学が服従の一形態として、政府からの弾圧を受け入れる方法になってきたと考えているからです。」
「私たちの国のような威圧的な政府は、日々人々にプレッシャーをかけています。私たちは小さな犠牲、うそや偽善にその都度屈していかねばならないのです。」
「たいていの場合は、それが不当であるかなんて考えずにじっと耐えるでしょう。 しかし、このシステムがどんなふうに機能しているのかを示すと一度心に決めたなら、あなたがそれに対してどのように反応し、抵抗し、拒むことができるのかということも示す必要があります。」
 ラスロフは、この映画がベルリンでどのような評価を受けたとしても、彼をとりまく状況が悪化することを理解していた。
「支払うべき代償があるでしょう。」
「それでも私は正々堂々と声をあげると決めました—その結果がどのようなものであろうとも」
 彼の願いは、この映画を観たイランの人々が、たとえ最悪な状況であっても、命の危険があっても、必ず「No」と言う道があると理解することである。(現在ラスロフの映画は全てイランでの上映が禁じられており、密かに出回っているDVDを除いては鑑賞することができない。) ラスロフは、彼の現政権に対する考えをイランに住む多くの人々と共有できると信じている。また彼は、最近の大衆の反政府的な抗議にも勇気づけられているという。
「いまだかつてなかったことです」
 彼は言う。
「初めて、イランに住む多くの人々が持っている怒りが現れてきている。これは政府であっても無視できないでしょう。」(以上、THRのインタビュー記事より引用)
◆映画大国イランにおける映画製作
「人々がモハマド・ラスロフの映画に強く惹かれるのにはある理由がある。それは、この映画が彼自身の経験を反映したものだからだ。」
 プロデューサーのカーヴェ・ファーナムはDeutsche Welle (DW)に語った。彼の実刑判決により、ファーナムの発言がより重みをもつこととなった。プロデューサー・ファーナムのインタビューから、現在のイランの国内状況が見えてくる。(以下DWの記事より引用)
 イランからドバイに移り住み映画製作会社を所有するファーナムは、過去にラスロフと共に映画を製作し、「(今後も)さらに多くの映画を作る予定だ」という。この「違法な」映画製作に参加することで生じる問題を認識しながら、彼にもまた、それに立ち向かう用意がある。
「私たちは、これ(映画製作)が私たちに課せられている義務だと考えています。アーティストは、自分の身を削りながらも、周囲で起こっている事象を社会にフィードバックすべきです。」
「そしてもし私たちが、独立した映画が生き続けることを望み、独立した思考が生き続けることを望むなら、その結果を覚悟する他ないのです。」
 彼は、ラスロフやジャファル・パナヒといった、すでに高い評価を受けている監督が弾圧されれば、世界から注目を浴びると指摘する。
 「私たちが心配しているのは、若い同僚、まだ無名のインディペンデントでやっている映画作家です。」
 インディペンデント映画の製作者は、検閲や制約、迫害以外の面でも、国に立ち向かわなくてはならないとファーナムは言う。国が所有する制作会社、イラン映画協会(IOC)の支援を受けている映画は、(基本的には政府のプロパガンダ映画だが)、 豊富な資金援助だけでない無制約な支援を受けている。 独立映画会社が撮影のために道路を閉鎖することが不可能なのに対し、「彼らは簡単に一つのプロジェクトのために、ヘリコプター2台を使って広場を封鎖する」。当然のことながら、「多くの人々か彼らと共に仕事を始めている」という。
 ラスロフは、この国には(政府に立ち向かう)勇気が足りないと感じているが、プロデューサーのファーナムは、人々が様々な取り組みによってインディペンデント映画製作者の権利を取り戻そうとしていることについて、前向きに言及した。2019年11月には、キアヌーシュ・アヤリの『The Paternal House』が公開1週間後に上映禁止になったことを受け、200人以上のイランの映画関係者が国家による検閲に反対し、表現の自由を求める公開書簡に署名した。
 『There Is No Evil』の作中で主人公たちが死刑と関わるうえで抱える道徳的なジレンマは、ある特定の時代にのみを念頭においているわけではない。しかしプロデューサーによると、1988年に始まった相次ぐ政治犯の処刑が、明らかにこの映画に影響を与えているという。当時、数知れない人々が処刑された。国際人権NGOアムネスティ・インターナショナルの記録では、 5か月間に及ぶ粛清で4500人近い囚人が姿を消したというが、ある推定ではその数は30,000にまで登る。
 それは今日でもなお続いている。先月2月18日のアムネスティによる報告には「不当な裁判により数多くの人々が処刑された」と記されている。昨年処刑された人々の中には、犯行時に未成年だった人々も多く含まれる。さらにイランのイスラム法の下では、同性愛も死によって償うべき犯罪とされている。イランの人権機関によれば、その処刑方法はクレーンから囚人を吊るすというものである。(以上、DWからの引用)
◆イラン政府の判決にヨーロッパの映画業界が抗議
 3月9日、 ヨーロッパ・フィルムアカデミー、ドイツ、イタリアのフィルムアカデミー、さらにベルリン、カンヌ、ロッテルダムハンブルクアムステルダムなどを含む映画祭が声明を出し、この判決への抗議と、ラスロフを取り巻く状況への懸念を表明した。
「私たちの仲間であるモハマド・ラスロフは、彼がいなければ我々がほとんど知ることがなかったであろう現実を伝え続けてきたアーティストだ。」
 ヨーロッパ・フィルムアカデミーのトップであるヴィム・ヴェンダースは声明の中で述べた。
「彼が金熊賞を受賞した『There Is No Evil』は、人々が決して強いられてはいけないような、そんな極限状況にある人々を、深い慈悲をもって描いている。私たちにはモハマド・ラスロフのような声が必要だ、人間の権利、自由、尊厳を守ろうとする声が。」

【参考:英国映画「バイク泥棒」】

スリリングな人間ドラマ!映画『バイク泥棒』【感想】第33回東京国際映画祭 | 映画ログプラス
映画『バイク泥棒』感想
※この感想には一部ネタバレが含まれます。鑑賞前の方はご注意ください。
 ロンドンで暮らすルーマニア移民の男はデリバリー業で家族を支えているが、生活が苦しさを増すなか、命の綱であるバイクを盗まれてしまう。生活にはなくてはならないバイクを盗まれてしまったことで、困難に直面するルーマニア移民の物語となっている。
 物語の前半は主人公とその家族の説明となっていて、バイクが盗まれてしまってからは一瞬で人生の危機に陥ってしまう。必死でバイクを探すも広いロンドンの中からバイクを見つけることは困難であり、このままでは仕事を失ってしまうという主人公の焦りや危機感が表情からはものすごく伝わってくる。
 家族にもバイクが盗まれたことを言えない中、困難は立て続けにやってくる。お掃除のお手伝いさんをしていた妻は子連れNGであるにも関わらず、子連れであったことが雇い主に見つかってしまう。次々と追い込まれていく主人公の姿は、まさにスリリングな人間ドラマだと言える。
 困難が連続する主人公は冷静な判断ができなくなり、最後にはやはり、、と思う行動*27をとってしまう。家族のために決断をせざるおえない主人公(父親)の心理描写に引き込まれる。

【参考:イスラエル映画「オマールの父」】

【MOVIEブログ】2020東京国際映画祭作品紹介 「Tokyoプレミア2020」アジア映画 | cinemacafe.net
・今年のアジア映画の選定で大変だったのは、中東勢がこの数年来の勢いを持続して充実しており、全てを選べないことに苦しんだことです。イラン映画特集が簡単に組めてしまうほどイラン映画は秀作揃いだったし、イスラエル映画も同様です。
・『オマールの父』はイスラエルの作品。東京国際映画祭では、『ガザを飛ぶブタ』(2010年)、『もうひとりの息子』(2012年)、『テルアビブ・オン・ファイア』(2018年)など、イスラエルパレスチナとの困難な関係を背景にした作品を上映してきました。いずれも語り口とアイディアが秀逸な作品ばかりで、ドラマを楽しむ中で事態の深刻さも感じさせる巧みさを備えていましたが、『オマールの父』もまさにそんな1本です。
 新生児のオマールの心臓手術が失敗し、主人公の男は息子を失ってしまう。彼はパレスチナ人で、イスラエル側の病院で遺体を引き取るが、パレスチナ居住区になかなか戻れない。遺体を抱えて途方に暮れる。やがて一人のイスラエル女性と知り合う…。
 男の悲しみと焦りが、女性の不安定な身の上と共振し合い、ふたりが行動を共にする過程が、何というか、温かくて気持ちがいいドラマです。もちろん、パレスチナ人とイスラエル人の確執とは無縁でいられないし、それは個人のレベルでも社会のレベルでも描かれ、緊迫感となってドラマに厚みを与えていきます。やりきれない悲しみと、そこはかとない温かみと、緊張感。ああ、いい映画だなあ、と思わずつぶやいてしまうような、そんな鑑賞後感を僕は抱きました。
 主人公役には、これまた傑作の『パラダイス・ナウ』(2005年)と『テルアビブ・オン・ファイア』に主演していたカイス・ナシェフ。モジャモジャ頭に困ったような顔を浮かべている長身の姿が印象的な彼は、『テルアビブ・オン・ファイア』の演技がヴェネチア映画祭で受賞に繋がりましたが、今作でも実に絶妙です。

【参考:ロシア映画「親愛なる同志たちへ」】

【MOVIEブログ】2020東京国際映画祭作品紹介 「ワールドフォーカス」欧米映画 | cinemacafe.net
 『親愛なる同志たちへ』はロシアのアンドレイ・コンチャロフスキー監督の新作です。
 1962年、ソ連南部のノボチェルカッスクという町で、ストライキの機運が高まってくる。物資が不足し、人々は不安を抱えて暮らしている。共産党員で役所に勤める女性のリューダは、物資を入手する列に並ばなくて済むような特権を享受しているが、町の不穏な空気の高まりは感じている。リューダの娘はストライキ実行側にシンパシーを寄せており、そんな娘にリューダは警告するが…。
 ソ連時代に実際に起きた最大級のストライキ事件の映画化ですが、この事件自体は隠ぺいされ、ソ連解体後の90年代になるまでその実態が知られることはなかったとのことです。事件の調査を命じられた担当官が、この映画の脚本に参加しており、かなり事実に忠実な作品であると言えそうです。
 コンチャロフスキーはそこに母と娘の物語を織り込み、見事な歴史ドラマを完成させています。事態の深刻化と、母の公私に及ぶ不安とがシンクロして肥大化していく様は、熟練の演出によって手に汗を握る展開へとなだれ込んでいきます。共産党の会議の場など、当時のフィルムを流しているのではないかと思わせるくらいに真に迫る美術と撮影が冴え、サスペンスとドラマを盛り上げる演出は、まさに圧巻の一言。
 1960年代から活動している御年83歳のコンチャロフスキー監督は、現在絶好調であると言えるのではないでしょうか。内容やスタイルを変えながら、精力的に作品を発表しています。大自然を主役に据えた『白夜と配達人』(2014)とナチズムを扱った『パラダイス』(2016)で連続してヴェネチアの監督賞を受賞したかと思えば、前作『Sin』(2019)では、ミケランジェロを主人公にルネサンス期を描く「イタリア映画」を作って驚かせてくれました。間髪置かずに発表された本作もヴェネチアで賞賛され、見事審査員特別賞を受賞しています。これだけ活躍している80代の監督を僕は他に知りません。
 ヒロインを演じるユリア・ヴィソツカヤさんが実に見事です、コンチャロフスキー監督とは実生活では夫婦であり、監督の芸術上のパートナーであると言えるでしょう。
 第2次大戦を戦ったソ連の兵士に対する敬意、そして労働者の幸福を踏みにじった共産党に対する憎悪など、様々なコンチャロフスキー監督の祖国に対する思いが込められ、それが鮮やかな社会サスペンスドラマへと昇華している結果を見るにつけ、優れた芸術家による創作が達した高みに、感嘆の念を禁じ得ません。

ノヴォチェルカッスク - Wikipedia
 1962年6月には食糧不足や労働条件の悪さに端を発した市民の暴動が起こった。機関車工場でのストライキに始まり、労働者らがフルシチョフ書記長の肖像を焼いて賃金や配給の増加を求め、翌日には工場から市街地へと蜂起が拡大し、市党委員会などへ市民が乱入する騒ぎになった。これはソ連で起こった最大級の労働者蜂起であった。しかし、ソ連軍によりデモ隊に対する射撃が行われるなど乱暴に鎮圧され多数の死者を出した(ノヴォチェルカッスク虐殺)。

ソ連の血の日曜日:1962年のノヴォチェルカスク虐殺事件 - ロシア・ビヨンド
 死者26人、負傷者数十人、処刑者7人、投獄者数百人。1962年、ロシア南部の町ノヴォチェルカスクで、非武装の労働者らの抗議活動がソビエト軍によって暴力的に鎮圧された。この事件はソ連が崩壊するまで数十年間隠蔽されていた。

*1:衆院議員。日本共産党国際委員会副責任者(党常任幹部会委員兼務)。著書『政治は温暖化に何をすべきか』(2008年、新日本出版社

*2:著書『飛躍するドイツの再生可能エネルギー』(2008年、世界思想社)、『脱原発再生可能エネルギー中心の社会へ』(2011年、あけび書房)、『市民・地域主導の再生可能エネルギー普及戦略』(2013年、かもがわ出版)、『再生可能エネルギー100%時代の到来』(2016年、あけび書房)など

*3:東海大学教授

*4:東京外国語大学名誉教授。立教大学特任教授。著書『不死のワンダーランド:戦争の世紀を超えて』(1996年、講談社学術文庫)、『戦争論』(1998年、講談社学術文庫)、『夜の鼓動にふれる:戦争論講義』(2015年、ちくま学芸文庫)、『アメリカ 異形の制度空間』(2016年、講談社選書メチエ)、『戦争とは何だろうか』(2016年、ちくまプリマー新書)、『私たちはどんな世界を生きているか』(2020年、講談社現代新書)など

*5:著書『国連その原点と現実』(1995年、新日本出版社

*6:参院議員。日本共産党中央委員。著書著書『「属国ニッポン」経済版』(2003年、新日本出版社)、『新自由主義の犯罪:「属国ニッポン」経済版〈2〉』(2007年、新日本出版社)、『ルールある経済って、なに?:社会的公正(ソーシャル・ジャスティス)と日本国憲法』(2010年、新日本出版社)、『カジノミクス』(2018年、新日本出版社

*7:静岡大学教授。著書『略奪的金融の暴走』(2009年、学習の友社)、『カジノ幻想』(2015年、ベスト新書) など

*8:著書『「非正規」をなくす方法:雇用、賃金、公契約』(共著、2011年、新日本出版社)、『「ニッポン」の働き方を変える』(2016年、かもがわ出版

*9:著書『本当の30人学級は実現したのか?』(2010年、自治体研究社)、『いま学校に必要なのは人と予算:少人数学級を考える』(2017年、新日本出版社

*10:東北学院大学名誉教授。著書『北海道近世史の研究<増補改訂>』(1997年、北海道出版企画センター)、『アイヌ民族の歴史』(2007年、草風館)など

*11:参院議員。日本共産党農林・漁民局長(党常任幹部会委員、「先住民(アイヌ)の権利委員会」責任者、国民運動委員会副責任者兼務)

*12:日本共産党中央委員

*13:著書『愛国心を考える』(2007年、岩波ブックレット)、『北朝鮮へのエクソダス:「帰国事業」の影をたどる』(2011年、朝日文庫)、『北朝鮮で考えたこと』(2012年、集英社新書)、『批判的想像力のために:グローバル化時代の日本』(2013年、平凡社ライブラリー)、『過去は死なない:メディア・記憶・歴史』(2014年、岩波現代文庫)など

*14:著書『アイヌの法的地位と国の不正義』(2019年、寿郎社

*15:日本共産党ジェンダー平等委員会事務局次長

*16:立教大学教授。性教育関係の著書に『性をはぐくむ』(1993年、あゆみ出版)、『子ども虐待と性教育』(1995年、大修館書店)、『セクシュアル・ライツ入門』(2000年、十月舎)、『子どもの性的発達論「入門」 』(2005年、十月舎)など

*17:著書『中絶技術とリプロダクティヴ・ライツ』(2014年、勁草書房

*18:日本福祉大学名誉教授。了徳寺大学教授。個人サイト池谷壽夫。著書『セクシュアリティ性教育』(1993年、青木書店)、『<教育>からの離脱』(2000年、青木書店)、『ドイツにおける男子援助活動の研究:その歴史・理論と課題』(2009年、大月書店)、『男性問題から見る現代日本社会』(編著、2016年、はるか書房)、『東ドイツ「性」教育史』(2017年、かもがわ出版)、『教科書にみる世界の性教育』(編著、2018年、かもがわ出版)など

*19:名城大学准教授

*20:著書『生協労働者のためのやさしい賃金論』(1992年、学習の友社)、『労働運動入門』(2020年、学習の友社)

*21:「言うまでも無いこと」ではありますが、「見ねれば(「見なければ」の山口方言?)」は明らかに「ミネルヴァ」に引っかけただじゃれですね。

*22:劇団文化座の主宰者・佐佐木隆を父に、文化座創立メンバーで女優の鈴木光枝を母とする。1962年(昭和37年)に同劇団研究生となる。1987年(昭和62年)文化座代表に就任(佐々木愛 (女優) - Wikipedia参照)。

*23:2007年、映画『バッテリー』の主演で俳優デビュー。同作品での演技が評価され日本アカデミー賞新人賞、キネマ旬報新人賞などその年の多くの新人賞を受賞(林遣都 - Wikipedia参照)。

*24:2020年のこと

*25:というと設定自体は『マイフェアレディ』(男性大学教授と花売り娘)、『ローマの休日』(王女と男性新聞記者)など、過去にも多々例がある設定ではありますね。

*26:とはいえこの語り口ではどう見てもハッピーエンドではなさそうですが。

*27:映画『自転車泥棒』と同じパターン(盗んで手に入れようとする)ですかね?