「朝鮮半島有事での在韓邦人救出」を云々するシノドスに呆れる

朝鮮半島有事と在韓邦人保護問題――日本政府は自国民を救えるのか / 松浦正伸 / 朝鮮半島の外交・安全保障論 | SYNODOS -シノドス-2021.03.22
 朝鮮半島有事(それも北朝鮮の侵攻による有事*1)など当面予想し得ないので「お前はアホか?(横山ホットブラザーズ風に)」「あんたバカ?(エヴァンゲリヲン風に)」「味噌汁で顔を洗って出直してこい」「おととい来やがれ」な記事です。
 さて、この記事が何を言い出すかと言えば「自衛隊で在韓邦人を救出するための日韓防衛協力の必要性」だそうです。
 まあ、確かに「北朝鮮有事に在韓邦人を救出する」としたら「韓国軍や在韓米軍では対応困難」なら「自衛隊以外に使える日本の組織はない」でしょう(米国などだと民間軍事会社という手段もありえますが)。
 そして、その場合、まさか「韓国の同意もなしに、自衛隊が勝手に上陸*2」つうわけにもいかないので「事前のいろいろな防衛協力」は当然必要でしょう。
 とはいえ、これまた「お前はアホか?(横山ホットブラザーズ風に)」「あんたバカ?(エヴァンゲリヲン風に)」な記事です。
 まず第一に「朝鮮半島有事」自体考えづらいですが、仮にそうなったとしても「韓国軍や在韓米軍では対応困難」で自衛隊が出撃するという事態が考えづらい。産経や安倍などウヨ連中ですら現在、そうした朝鮮半島有事を口実にした九条改憲を「ほとんど口にしない」有様です(むしろ九条改憲では尖閣有事がネタにされることの方が多いし、九条改憲よりも「コロナを口実にした緊急事態宣言改憲」などの方が最近は多いかもしれない)。北朝鮮危機なんて今やウヨマスコミですらほとんど口にされない。
 今騒がれる危機は「国内ではコロナ問題、国外ではウヨの『尖閣ガー(中国批判)』」でしょうか。
 第二に「ホワイト国除外」「フッ化水素水輸出禁輸」で日韓関係が悪化する中「日韓防衛協力」など「成り立つ前提があるのか?」つう話です。現状において「日本にあそこまで馬鹿にされて何で邦人救出なんか日本と議論するのか」という批判を浴びてまで、文政権がそうした方向に動くことは期待できない。
 そうした話を成り立たせるには「ホワイト国除外」「フッ化水素水輸出禁輸」を今すぐ辞めるべきです。
 しかし菅政権は辞めない。つまりは「朝鮮半島有事の可能性」なんか菅政権は認識してないと言うことです(もちろんこれは菅政権の前の安倍政権も同じですが)。認識していて「アレ」だったら異常の極みですからね。もちろん、文在寅政権の方もそんな認識をしてないでしょうが。
 菅政権はそういう「北朝鮮有事の認識」をしてないからああいうことをする*3し、文在寅政権も「そういう事態が起こる」と認識してないので「有事の時の在韓邦人救出について論じよう」なんて言わない。まあ、仮に文政権がそういったところで「そのような認識をしてない」菅政権は「邦人救出を口実に韓国政府がすり寄ってきた、ホワイト国除外などが効いてる(あるいは検察と文政権の対立などによる文政権支持率低下が効いてる)」としか認識せず、「慰安婦像を撤去しろ、話はそれからだ」などと突っぱねることしかしないでしょうが。
 しかも「菅政権は無法を辞めろ、日韓友好に務めろ」とこの記事が「和田春樹氏のようなこと」を言えば「まだいい」。
 ウヨの決まり文句「(日韓基本条約などで)もう終わった問題なのに韓国政府(文在寅政権)が蒸し返した」「韓国政府は態度が非建設的だ」などをこのウヨ記事も放言し、日韓間の対立の原因を全て韓国側に責任転嫁するから恐れ入ります(このウヨ記事の嫌韓国部分の具体的な引用は省略しますが)。
 「韓国の対日世論の厳しさ」の一因を「韓国の経済大国化(日本にへいこらする必要が無い)」「韓国にとっての日本市場の重要性の低下(貿易額はむしろ対中貿易の方が多い)」とこのウヨ記事が指摘するのは確かにその通りですが「安倍政権になってから、公然と慰安婦や徴用工の違法性を否認するような無茶苦茶な自民党政権の言動が強まったこと」を無視するのはあまりにも酷すぎる。自民党政権時代ではあっても「安倍ほど極右ではなかった」橋本*4や小渕*5などではこんな事態にはなってないわけですから。
 荻上チキが

荻上チキ(2018年3月30日)
【報告】今月末をもって、シノドス編集長ほか関連職を辞任することにいたしました。2008年から10年間、「アカデミックジャーナリズム」の名のもと、専門知に基づいた発信の場を作ってきました。今後は、同代表の芹沢が編集長を務めます。これからのシノドスの活動も見守って下さい。(続)
 プラットフォームの基礎を確立できたと感じたこと。僕自身が多忙化し、また病気にもなったことから、企画編集や新規事業など業務に関わることが困難になっていたこと。10年というひとつの節目であることなど、理由は色々ですが、いちど役割をおり、新たな活動を模索したいと思っております(続)

としてシノドスを去って*6からのシノドスは何というか「こういうウヨ記事を載せるようになったか」感がありますね。

*1:国力差を考えればそんなことは北朝鮮にとって自滅行為であり、北朝鮮からやるわけもない(例えばもはや韓国(人)にとっては、北朝鮮は「脅威」「打倒の対象」よりもメロドラマのネタ程度のものなのだろう(たぶん日本も同じ 関川某も自分の書いたことを撤回しろとおもう) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)参照)。もちろん朝鮮戦争時と違い、その場合、中露はためらいなく北朝鮮を見すてるでしょう。あえて言えば「米韓軍の北朝鮮侵攻」の方がまだ可能性があるでしょうが、これまた1)自国民(在韓米軍、韓国軍の兵士、在韓米国人や韓国人市民)の犠牲や韓国からの外資撤退、外国人観光客減少のおそれ、2)「中国やロシアの北朝鮮支援」による米韓と中露による戦争の恐れ(北朝鮮からの侵攻なら両国は北朝鮮を見すてるでしょうが、米韓からの侵攻なら『北朝鮮の友好国としての面子』からその逆になるかと思います)、3)アフガン、イラク、シリア化の恐れ(政権転覆には成功したが内戦状態で収拾が付かなくなり大量の難民も発生)、4)アフガンやイラク、シリアの軍事作戦も収拾してない今、米国はそんなことはやりたくないだろう、5)新型コロナ問題やトランプ派によるヘイトクライムの問題が米国にとって深刻で現在対応中、などを考えればあり得ないでしょうね。

*2:もちろん植民地支配による反日感情の問題もありますが、そんなもんなくても勝手に自衛隊が上陸できるわけもない。

*3:まあ、北朝鮮有事の可能性に関係なくあんな馬鹿なことは辞めるべきですが

*4:大平内閣厚生相、中曽根内閣運輸相、自民党幹事長(宇野総裁時代)、海部内閣蔵相、自民党政調会長(河野総裁時代)、村山内閣通産相などを経て首相。首相退任後も森内閣で行革等担当相

*5:竹下内閣官房長官自民党副総裁(河野総裁時代)、橋本内閣外相などを経て首相

*6:きれい事しか言っていませんが、正直、荻上シノドスを去った大きな理由は「他のメンバーとの考え」の違いが大きすぎて「シノドスに失望したから」でしょうね。まあただ「彼も大人」なのでそういうことをはっきり言わないだけで。彼が去ってからのシノドスは世間から話題にされることも大いに減った気がします。シノドス残留組は絶対に認めたくないことでしょうが。