新刊紹介:「前衛」2021年6月号(その1)

 「前衛」6月号について「興味のある内容」のうち「俺なりに何とか紹介できそうな内容」だけ簡単に触れます。「赤旗記事の紹介」でお茶を濁してる部分が多いです。
http://www.jcp.or.jp/web_book/cat458/cat/
◆増大する日米軍事同盟の危険性―安保法制施行5年(下)(山根隆志*1
(内容紹介)
 過去の(上)(新刊紹介:「前衛」2021年5月号 - bogus-simotukareのブログ)の続きです。
 新刊紹介:「前衛」2021年5月号 - bogus-simotukareのブログでは紹介しなかった赤旗記事の紹介で代替します。
参考
第1列島線 米軍ミサイル攻撃網/自衛隊動員が前提/対中国念頭に日米軍事同盟強化2021.5.5


◆異常な米軍機の低空飛行の実態と中止求める運動の発展(千坂純*2
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
米軍低空飛行に抗議決議/沖縄県議会が全会一致/日米地位協定抜本的改定も2021.2.17
低空飛行訓練 中止を/赤嶺議員 米との協議求める2021.2.18
主張/止まらぬ低空飛行/米軍の傍若無人をやめさせよ2021.2.20
米軍低空飛行に抗議を/都心上空ヘリ 宮本議員が追及/衆院予算委2021.3.3
低空飛行やめさせよ/米軍のルート変更 井上氏が批判/参院外防委2021.3.24
米軍低空飛行訓練中止を/井上議員 都心上空で横行2021.4.3
米軍訓練空域/都心上空 勝手に設定/塩川議員 主権侵害 政府は撤回させよ2021.4.20
都心での米軍ヘリ低空訓練/宮本氏「無法に抗議を」/衆院委2021.4.20
米軍ヘリ都心低空飛行 塩川氏/対処しない防衛省批判2021.4.26

主張/米軍低空飛行激化/無法行為の異常な急増許すな2021.5.4
 東京では、米軍ヘリが新宿駅周辺で、日本の航空法が禁止する人口密集地での高度300メートルを下回る飛行を繰り返していることが判明しています。米軍は日米地位協定に基づく特例法で航空法の適用が除外されているためです。
 日本の主権を侵害し、国民の命と暮らしを脅かす米軍機の低空飛行訓練をやめさせ、航空法の適用などのため地位協定を抜本的に改定することがいよいよ必要です。


◆沖縄 激化する米軍の訓練、危険な米軍基地の強化(渡久地修*3
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。
米海兵隊性暴力に抗議決議/沖縄県議会 全会一致で可決2021.2.25
人口密集地上空で重機関銃むき出し 沖縄県内/米海兵隊ツイート/批判相次ぎ削除2021.3.03
ミサイル部隊配備中止を/沖縄本島へ日米計画 穀田氏ただす/衆院外務委2021.4.25


◆「第二の辺野古」の様相を呈する馬毛島新基地計画(林竜二郎)
(内容紹介)
 地元住民の反対運動で「第二の辺野古」の様相を呈する馬毛島新基地計画について菅政権が批判されています。
 
参考
西之表市長に八板氏/馬毛島基地反対 島の民意/鹿児島・種子島2021.2.2
“反対の民意受け止めよ”/馬毛島基地 田村貴昭議員が断念迫る/衆院予算委2021.2.16
馬毛島訓練移転 回答せず/防衛省が市民の質問状に2021.2.22


霞が関を私物化し、政治を私した安倍・菅政権(下):官僚を「政権の奉仕者」へと変質させた内閣人事局批判(小松公生*4
(内容紹介)
 過去の(上)(新刊紹介:「前衛」2021年4月号 - bogus-simotukareのブログ)、(中)(新刊紹介:「前衛」2021年5月号 - bogus-simotukareのブログ)の続きですが、小生の無能のため詳細な紹介は省略します。


◆「オトコ」目線のメディアと女性の働き方(谷岡理香*5
(内容紹介)
 赤旗などの記事紹介で代替。

「共同参画」2020年5月号 | 内閣府男女共同参画局
ジェンダー平等メディアの可能性
東京大学大学院情報学環教授 林香里*6
1.文系花形職業の現在
 文系花形就職先であるメディア企業は、いまのところ圧倒的に男性優位だ。業界労働組合の調査でも、管理職にずらりと男性が占めている。
(中略)
3.日本型年功序列・終身雇用制
 日本の場合、(中略)企業での職能訓練は社内教育が中心だ。企業の記者の場合、最初の数年は先輩について「鍛えられ」、そこで頭角を現した者が選抜されていく制度ができあがっている。ちなみに、多くの女性記者たちはこの「訓練」の時代に、社内と社外でセクハラ、あるいは性的暴行に遭っていることが、2020年に出版された『マスコミ・セクハラ白書』(文藝春秋)で明らかになった。また、こうした社内訓練は、普遍的な職能より、先輩から社風に合ったローカルな職業倫理を叩き込まれる。したがって、長い時間と膨大なリソースをかけるわりに、体得する知識は転職に役立つような汎用性が育たない。
 年功序列・終身雇用制度の残る社風では、長時間労働を厭わず、うまく社の空気を読める人が重用される。メディア企業の人事担当者たちは、このような人事評価制度を「男女分け隔てなく」適用する。不平等な制度を平等に適用することは、一層不平等を拡大させることに気づかない。
4.問われるジャーナリズムのあり方
 このような職場で働く女性は、まじめな社員ほど、職業倫理や企業文化を内在化させていく。これまで、多くの研究では、メディア企業に女性の頭数が増えたからといって、メディアの内容が女性の権利を守るものにはつながらないという結果が明らかになっているが、その理由はまさにこうした歴史によって説明できる。
 ならば、希望はないのか。
 そうではない。しかし、改革は難しいことも確かだ。日本のメディアは、いま話題の働き方改革の実行はもとより、これまでの「記者」や「報道」のあり方そのものを組み替える必要がある。

「メディア業界は女性役員増やせ」/労組会見「意思決定 男性に偏り」2021.2.10
 メディア関連の労働組合などの女性代表は9日、厚生労働省で会見し、東京五輪パラリンピック大会組織委員会森喜朗会長が女性の役員登用を否定する蔑視発言に抗議し、メディア業界で女性役員比率を引き上げるべきだと訴えました。


◆若者の「スマホ投資」と高校生への「投資教育」(丸井龍平)
(内容紹介)
 赤旗などの記事紹介で代替。

高校家庭科で「投資信託」 22年4月から授業: 日本経済新聞2019年11月12日
 2022年度から始まる高校の新学習指導要領は、家計管理などを教える家庭科の授業で「資産形成」の視点に触れるよう規定した。家庭科の先生が裁縫や調理実習に加え、株式や債券、投資信託など基本的な金融商品の特徴を教えることになる。教育現場では戸惑いも広がるなか、金融庁は「出張授業」や教材づくり、先生を対象にした投資イベントなどを通じて準備を後押ししていく。

投資リスク 教育必要/大門氏 金融庁教材は不十分2021.3.30
 日本共産党大門実紀史議員は23日の参院財政金融委員会で、急増する若者の投資と金融リテラシー(判断能力)を培う教育について質問しました。
 米国では若者の間で、スマホで手軽に投資できる証券会社の口座が急増。株価が乱高下するなど社会問題となっています。大門氏は、日本でもスマホ投資を始める若者が急増しているとのデータを示し、大手金融グループが若者をターゲットに勧誘にのりだしている実態を明らかにしました。
 大門氏は、金融庁が学校で「出張授業」を行う金融リテラシー教育について質問。「若者たちに身につけてもらいたいのは、投資は元本割れすることと、生活資金は入れてはいけないことだ」と強調し、金融庁作成のパンフレット教材では、その点の指摘が不十分だと述べました。金融庁の中島淳一総合政策局長は、「十分かどうか、指摘を踏まえて検討したい」と答弁し、麻生太郎金融担当相は「指摘の通り、投資にはリスクがある」と述べました。
 大門氏はまた、来年度から高校家庭科の授業で、初めて資産形成の視点が盛り込まれ、株・債券と並んで投資信託も取り上げられる問題について取り上げました。


◆暮らしの焦点『身近に広がるキャッシュレス決済と法改正』(村高芳樹)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

キャッシュレス決済 中小企業へ「十分な対応」/清水議員追及 政府が事務連絡2019.11.10
 財務省中小企業庁は9日までに、キャッシュレス決済を導入した中小企業が、現金が手元に入るまでに時間がかかり、必要な現金が不足する問題で、「実情に応じた十分な対応」を求める事務連絡を出しました。5日、日本共産党清水忠史議員が衆院財務金融委員会でこの問題を取り上げ、松本洋平経済産業副大臣は「倒産することがないよう、貸付制度を活用して中小企業を手助けする」と答弁していました。

主張/銀行口座不正出金/推進一辺倒の電子決済の危険2020.9.25
 ドコモ口座などの電子決済サービスを通じて銀行預金が不正に引き出される事件が拡大しています。実行した人物はもちろん摘発されなければなりません。悪用を許した電子決済サービス事業者と銀行の責任も免れません。安倍晋三前政権は電子決済を活用した「キャッシュレス」の旗を振ってきました。推進一辺倒で、個人情報の保護など安全対策がおろそかになっていたのではないか。徹底した検証が求められます。

主張/賃金デジタル払い/安全性ない制度の導入やめよ2021.4.13
 菅義偉政権が賃金を電子マネーで支払える仕組みづくりを進めています。銀行を介さずに「○○ペイ」などのデジタル送金サービスを通じて賃金を受け取れるように規制緩和するといいます。電子マネーを扱う「資金移動業者」には銀行業のような厳しい規制がなく、破綻した場合、賃金が保全されるかも定かではありません。労働組合は反対しています。安全が保障されず、労働者が望まない制度を導入すべきではありません。


◆論点『容量市場:時代に逆行する電力新市場』(桃井貴子*7
(内容紹介)
 ネット上の記事紹介で代替。
新電力と再生可能エネルギーを潰す「容量市場」は撤廃すべきだ!(週プレNEWS) - Yahoo!ニュース

原発と石炭火力を温存する容量市場の問題(桃井貴子) | 一般社団法人環境金融研究機構2021.3.4
 2020年に導入された「容量市場」は、導入前から、再生可能エネルギーの主力電源化に逆行するのではないか、原発・石炭火力など旧型発電設備を温存するだけではないか、国民負担が増えるのではないかといった問題が指摘されていたが、同年9月のオークション結果によって、その問題が現実のものであることが明らかになった。
◆「容量市場」よりも先に対処すべきことがあるのでは?
 そもそも、容量市場を導入する前に、電力の安定供給を確保するための政策として対応すべきことがある。連系線の有効活用だ。
 さらに、新設電源の建設計画を将来の容量確保に際して組み込む必要もある。現状で、大量の発電設備新規建設計画がある。これらを考えると、直ちに容量市場を導入する必要性は全くないだろう。
 まさに容量市場は、原発・火力・大規模水力といった既存電力の既存設備を温存するために、国が「補助金」を給付するのと同じ仕組みなのだ。反対に、そうした “安定電源”を持たない再エネ新電力にとっては過重な負担となる。
 こうしたことから、2020年9月28日、再エネや地域新電力を中心とする22社は、「このままでは、電力自由化・電力システム改革のあり方を歪めかねない」として、梶山経産相と小泉環境相宛に容量市場の見直しと運用のあり方に関する要望書を提出した。この制度によって、再エネを重視する新電力は淘汰され、再エネの普及拡大を阻害することになりかねない。


ジェンダー覚書『グローバル・ジェンダー・ギャップ指数120位からの展望』(飯田洋子*8
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

政治分野 引き上げを/小池氏 ジェンダーギャップ指数で2021.4.1
 小池氏は、日本の順位が前回の121位から120位になったとしつつ「政治分野は逆に順位を下げている。とくに衆院議員、閣僚の中での女性比率が低いことが原因になっている。日本の政治の問題であり、政府と各政党の責任が問われる数字ではないか」と指摘しました。その上で、「政府には、閣僚も含めて政策決定部門での女性比率を引き上げる真剣な努力を求めたい。同時に、政党としても議員の中での女性比率を高めるために、なお一層の努力をしていかなければいけない」と述べました。

女性参政権行使75年/ジェンダー平等 格差解消は急務/政治分野の立ち遅れ深刻2021.4.10
 今回、男女平等度トップ3となったアイスランドフィンランドノルウェーの首相は、いずれも女性です。


文化の話題
◆美術『大震災10年を見つめる展覧会』(武居利史)
(内容紹介)
 水戸芸術館現代美術ギャラリー『3.11とアーティスト:10年目の想像』の紹介。
参考

震災と向き合うアーティストが表現 被災地の10年 茨城で展覧会 | 東日本大震災 | NHKニュース2021年2月21日
 現代美術家の「小森はるか+瀬尾夏美*9」の2人は、震災後、活動拠点を岩手県陸前高田市に移し、文字や映像、絵で記録を続けています。
 作品では、被災地の変わりゆく風景や人々の暮らしの営みを記録した映像と、その時々に感じたことばを時系列に並べ、さらに震災から20年後の町を舞台に創作した物語を文章とイラストで壁一面に表現しています。
 画家の加茂昂さんの作品は、福島県の帰還困難区域の境界線に設置された立ち入り禁止の看板を描き、看板を覆う植物を絵の具を盛りつけて立体的に描くことで、時間がたっても変わらない看板と自然の中で成長する植物を対比させ、10年の歳月を表現しています。

震災10年を絵画に 水戸芸術館「3.11とアーティスト」展: 日本経済新聞2021年3月16日
 東日本大震災が起きた翌2012年に「3.11とアーティスト:進行形の記録」展を開いた水戸芸術館で「3.11とアーティスト:10年目の想像」展が開催中だ(5月9日まで*10)。
 今回の会場で特に印象に残ったのが「絵画」作品の存在だ。
 1982年生まれの加茂昂が描いたのは原発事故で帰還困難区域となった福島・双葉郡の風景だ。光に満たされたのどかな景色に引かれて近寄ると、画中に「この先 帰還困難区域 立ち入り禁止」の看板。草むらの一部などには異様なまでに絵の具が盛り上げられている。
 「眠って堆積しているものの断片を思い返して掘り返す」。
 1991年生まれの佐竹真紀子は、木製パネルにアクリル絵の具を塗り重ね、彫刻刀で彫る自らの手法をこう表現する。
 ほかに小森はるか+瀬尾夏美、高嶺格*11、ニシコ、藤井光、Don't Follow the Windが出品。

藤井光さん 原発事故と差別をテーマに映像作品: 日本経済新聞2021年4月14日
 東日本大震災を振り返る「3.11とアーティスト 10年目の想像」展(水戸芸術館で開催中)に、福島の原発事故と差別をテーマにした新作「あかい線に分けられたクラス」を出品した。1960年代、米国の小学校教師が授業で人種差別について考えようと、クラス内で児童たちに差別を実体験させた。この伝説の授業をもとに「3.11版」を制作、映像化した作品だ。
 水戸の小学校で4年生を住む地域により「圏内」「圏外」に分け、学校生活を再現した。圏内の子は外の水飲み場の使用禁止。圏外の子とも遊べない。「○○さんは圏内だから遅い」。俳優演じる教師が圏内の子の遅刻の理由を決めつける。
 子供の表情や声色はどこまでが芝居で、真実なのか。時折、スタッフが映り込んだり、藤井が指示する声が入ったりして虚構と現実の境はさらにあいまいになる。
「観客もただ傍観者ではいられない。差別の構造をつくっている主体は誰なのか、展示空間で考えてもらう状況をつくる」。
 映像インスタレーションという自作の手法をそう説明する。


◆写真:「フィルム」から「デジタル」へ:JPS(日本写真家協会)、『日本の現代写真:1985~2015』を出版(関次男)
(内容紹介)
 写真集『日本の現代写真:1985~2015』の紹介。
参考

日本の写真表現を歴史にする:日本写真家協会「日本の現代写真1985-2015」展レヴュー | ARTICLES | IMA ONLINE2021.4.13
 展覧会「日本の現代写真1985-2015」が東京都写真美術館で開催されている。日本写真家協会JPS)が主催する本展は、152人の日本人写真家の代表作を一堂に会し、1985年から2015年の30年間における現代写真の概況を紹介する展示となっているのが見どころだ。
本展は、対象とする1985〜2015年の30年間を第1期(1985年~1994年)、第2期(1995年~2004年)、第3期(2005年~2015年)の3パートに分類。各期をそれぞれ「グラフジャーナリズムの隆盛期」「デジタル写真の黎明期」「デジタルカメラの普及期」と特徴付けている。
 出展写真家を選出したのは、飯沢耕太郎*12上野修金子隆一、鳥原学*13、関次和子、多田亜生ら評論家や学芸員6名。加えて、監修・田沼武能野町和嘉*14、松本徳彦らJPS会員15名で構成された編集委員会が加わった。
 2019年度の木村伊兵衛写真賞を受賞した横田大輔ら1980年代生まれの写真家から、田沼武能芳賀日出男*15など戦後写真の黎明期を知る世代まで、年齢層の幅は広い。森山大道*16細江英公など、この30年のあいだに国際的な評価を確立した写真家も選出されている。他方、国内において7年にわたる巡回展で延べ100万人を動員した篠山紀信、1986年に日本人で初めて『ナショナルジオグラフィック』の表紙を飾り、2010年代以降ネコを題材にしたテレビや映画で耳目を集めた岩合光昭などは、大衆への影響力や人気という点でも特筆すべき成果を残している。
 また参加作家152名中、女性は20名。石内都オノデラユキ蜷川実花*17志賀理江子長島有里枝*18など、2010年代以降、公立美術館で大規模な個展を開催した彼女らの活躍は記憶に新しい。また、大石芳野*19や林典子*20らフォトジャーナリズムの分野で顕著な活躍を見せた写真家も紹介されている。
 本展の趣旨と意義について、JPS副会長の松本徳彦は次のように語る。
JPSが誕生したのは、戦後間もない1950年でした。2020年創立70周年の節目を迎えるにあたり、写真史『日本の現代写真1985-2015』の編纂事業を企画し、3年を経て開催することができました。本展は創立70周年を記念する催しであると同時に、本書が総括した30年の日本写真史を展覧会として通覧するものです。
 JPSは1968年の「写真100年 日本人による写真表現の歴史」展をはじめ、写真家たちの活動を「日本の写真表現史」として体系化する展覧会をこれまでに3回開催してきました。それぞれの展覧会は、写真史『日本写真史1840-1945』『日本現代写真史1945-1970』『日本現代写真史1945-95』(いずれも平凡社刊)となり、今回の「日本の現代写真1985-2015」(クレヴィス社発行)は4回目の写真史編纂事業ということになります。
 写真家自身が編纂する歴史は世界的に見ても類例がないものです。また、ここ30年ほどの間に日本写真史を銘打つ書籍は増えましたが、1968年の『日本写真史1840-1945』は、その先駆的なものと位置付けることができるでしょう。
 本展では写真の発展を通覧すると同時に、激動する日本の世相、人の暮らしの変化を振り返ることができます。写真表現の変化は社会の動向の表れでもある。世代やジャンルを超えた幅広い視野でそれらをとらえ、可能な限り網羅的に日本の写真を紹介することが本展の目指すところです。」
 本展が対象とする1985年から2015年までの30年は、写真家にとってどのような時代だったのか。JPS会長の野町和嘉は次のように振り返る。
「フィルムからデジタルヘと表現手段が変化したことで、写真を取り巻く環境が劇的に変化しました。本展は、そのような変化を経験した30年を総括した展示ということになります。写真の主流がデジタルへと移行していく中で、写真の社会的な位置付けが大きく変わりました。
 まず世の中に存在する写真の総量が増え、それが場合によっては、一枚の写真の価値を相対的に下げることにもなりました。写真家の存在意義が問われる時代になったと言えるでしょう。そして、プリントや印刷物からパソコンやスマートフォンへと媒体が変化していったことは、写真家の活動に大きく影響しました。もちろん写真を見る人の経験も変質したはずです。こうした動向は、2005年から2015年にかけて特に顕著だったように思います。」


◆映画:生き延びることを訴え続けた沖縄県知事:映画『生きろ 島田叡:戦中最後の沖縄県知事』(伴毅)
(内容紹介)
 伴氏の紹介を読んでいて非常に残念なのは島田知事の限界をも論じられているかに注目したい(沖縄戦時の知事である島田叡についてのドキュメント映画が公開) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)(2021.3.15)が問題とする「島田の限界」について触れた部分が無いことですね。
 これが
1)映画それ自体に島田の限界を論じた部分がないのか
2)映画には(必要充分かどうかはともかく)そうした部分があるが、伴氏が触れずにネグってしまったのかは俺も映画を見ていないので分かりません。
 ただしもし1)であるのならばやはり島田知事の限界をも論じられているかに注目したい(沖縄戦時の知事である島田叡についてのドキュメント映画が公開) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)島田知事の限界をも論じられているかに注目したい(沖縄戦時の知事である島田叡についてのドキュメント映画が公開) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)が紹介する林博史氏のような厳しい評価にならざるを得ないでしょう。

【参考:映画『生きろ 島田叡:戦中最後の沖縄県知事』】

玉砕主義に抗い、県民の命を守ろうとした知事を描く『生きろ 島田叡(あきら)―戦中最後の沖縄県知事』監督インタビュー(HARBOR BUSINESS Online) - Yahoo!ニュース2021.4.11
 監督を務めたTBS報道局の佐古忠彦さん*21に製作の背景や沖縄に寄せる思いなどについてお話を聞きました。
◆佐古
 島田は、県知事として「軍と上手くやる」ということも大きな任務として着任しました。途中で軍のやり方はおかしいと思うようになりますが、軍部の意向にあからさまに反することは住民のためにもならない。軍は「軍官民共生共死」大方針を掲げている。しかし、行政官として住民第一主義の信念のもと、住民を守らねばならない。その狭間でかなり苦悩したと思います。
 最後は命令に反する形で県庁の解散を宣言しますが、自分は司令官の元へ行くんですね。そこには、抗うが、自らの責任の取り方として組織に忠実な部分も見える。そして、「生きろ」と周囲に希望を与えるが、自分は絶望の中で消息を絶っていく。
 こうして比べてみると、(ボーガス注:米軍に抵抗した瀬長)亀次郎と(ボーガス注:日本軍に協力した)島田の生き方は違うようにみえる。でも、最後まで住民の側に立とうとし、無私を貫いたという点では共通するものがあったと思います。
◆インタビュアー
 島田は沖縄戦の組織的な戦闘が終結した直後、自ら消息を絶っています。取材を終えた今、彼をそれほどまでに追い詰めたものは何だったと感じていますか。
◆佐古
 「葉隠」を持参していたとのことだったので、最後は武士道の精神だったのかもしれません。あるいは、(ボーガス注:島田が生前語ったという)「(ボーガス注:沖縄県民の命を守る上で)これほど役に立たなかった人はいないだろう」という言葉の通り(ボーガス注:生きて帰ることは出来ないという自責の念)なのかもしれません。

 どうも微妙ですね。「島田の限界を論じた部分」は映画にはあるのかもしれませんが「かなり甘い評価」のように見えますね。


◆スポーツ最前線『今夏の東京五輪、揺らぐ政権、医療体制確保の目途立たず』(和泉民郎)
(内容紹介)
 医療崩壊の危険性を理由に「延期するにせよ中止にするにせよ」今年の開催は無理だと主張しています。
参考
赤旗
五輪とコロナ対策――両立しないことはいよいよ明瞭/開催国政府として直ちに中止の決断を/志位委員長が会見2021.5.7
“パンデミック中に五輪は不合理”/米ワシントン・ポストがコラム2021.5.7
「五輪無理」 内外で噴出/「一大感染イベントになりかねない」2021.5.9


メディア時評
◆新聞:日米首脳会談をどう論じたか(千谷四郎)
(内容紹介)
 予想が付くでしょうが政権寄りの保守紙(産経、日経、読売)が、ただただ「日米友好万歳」したのに対し、政権に批判的な朝日、毎日、東京が
1)このコロナ禍にテレビ会議や電話会議ではなくわざわざ米国まで行く必要があったのか
2)しかも「台湾海峡」云々で日中友好関係に障害を作り出したあげく、「台湾有事で集団的自衛権発動(自衛隊、米軍、台湾軍の共同軍事作戦)」の危険性まで浮上したことを取り上げた上で、前者を批判し、後者を評価しています。
参考
赤旗
日本国民に危険と負担をもたらす軍事同盟強化の道に反対する/日米首脳会談について 志位委員長談話2021.4.18
主張/日米首脳会談/軍拡に突き進む約束許せない2021.4.18
浅井基文ブログ『「プレゼント」(訪米第1号)に対する高すぎる「お返し」(対中対決戦略全面加担):アーミテージ報告のシナリオどおりに展開する日米関係』2021.4.27


◆テレビ:外国人株主比率問題が問うもの(沢木啓三)
(内容紹介)
 赤旗の記事紹介で代替。

フジ外資規制違反 第三者調査を否定/本村氏質問に総務省2021.4.7
 日本共産党の本村伸子議員は6日の衆院総務委員会で、フジテレビなどを傘下におく持ち株会社フジ・メディア・ホールディングス」(フジHD)が2012~14年に、放送法外資規制に違反していた疑いについて取り上げ、第三者による徹底調査と、フジHDの金光修社長、日枝久取締役相談役の招致を求めました。
 本村氏は「(ボーガス注:東北新社やNTTの接待疑惑で)総務省は放送業者との癒着が懸念されている」と述べ、第三者による調査を重ねて迫りました。

民主主義ゆるがす問題/フジHD外資規制違反 本村氏が追及/衆院総務委2021.4.14
 本村氏は、外資規制違反が判明した際、すぐにその事実を発表しなかった理由を追及。参考人として出席したフジ・メディアHDの金光修社長は「株主、投資家の保護をしなければならないので(認定が)取り消しになるのか、ならないのか、その判断を総務省に聞くことを最優先させた」と答えました。
 また、本村氏は、武田良太総務相が1981年の「内閣法制局見解」を根拠に、2014年当時、総務省への報告時に外資規制をクリアしていれば認定取り消しの処分はしないと判断したことを正しかったとしていることについて追及。法制局見解の現物や出された背景について調べて国会に報告するよう求めました。
 総務省の吉田博史情報流通行政局長は「(法制局見解については)非開示情報の有無を確認中」「(見解が出された)事情は確認できていない」などと言い逃れました。
 本村氏は、法制局見解だと「(外資規制違反を)黙っていた方が得をすることになる」と批判し、対応の是正を求めました。武田総務相は「外資規制の抜本的な見直しについて、法改正も視野に迅速に検討する」と答えました。

*1:日本共産党政治・外交委員会責任者。著書『イラク戦争の出撃拠点:在日米軍と「思いやり予算」の検証』(共著、2003年、新日本出版社

*2:日本平和委員会事務局長

*3:沖縄県議(日本共産党

*4:日本共産党政治・外交委員会副責任者。著書『原発にしがみつく人びとの群れ』(2012年、新日本出版社)、『カジノ狂騒曲』(共著、2014年、新日本出版社)、『政党助成金に群がる政治家たち』(2015年、新日本出版社

*5:東海大学教授。著書『テレビ報道職のワーク・ライフ・アンバランス:13局男女30人の聞き取り調査』(編著、2013年、大月書店)

*6:著書『「冬ソナ」にハマった私たち:純愛、涙、マスコミ…そして韓国』(2005年、文春新書)、『メディア不信:何が問われているのか』(2017年、岩波新書)など

*7:気候ネットワーク東京事務所長

*8:共産党ジェンダー平等委員会事務局次長

*9:著書『あわいゆくころ:陸前高田、震災後を生きる』(2019年、晶文社)、『二重のまち/交代地のうた』(2021年、書肆侃侃房)

*10:前衛6月号は5月8日発売なので、つまりはこの記事を読んでからでは美術展鑑賞は殆ど無理なわけです。

*11:著書『在日の恋人』(2008年、河出書房新社)(高嶺格 - Wikipedia参照)

*12:著書『写真美術館へようこそ』(1996年、講談社現代新書)、『日本写真史を歩く』(1999年、ちくま学芸文庫)、『写真とことば:写真家二十五人、かく語りき』(2003年、集英社新書)、『増補 都市の視線:日本の写真 1920─30年代』(2005年、平凡社ライブラリー)、『写真を愉しむ』(2007年、岩波新書)、『増補 戦後写真史ノート』(2008年、岩波現代文庫)など

*13:著書『日本写真史(上)(下)』(2013年、中公新書)、『写真のなかの「わたし」:ポートレイトの歴史を読む』(2016年、ちくまプリマー新書)など

*14:著書『サハラ縦走』(1993年、岩波同時代ライブラリー)、『長征:毛沢東の歩いた道』(1995年、講談社文庫)、『写文集ナイル』(1997年、講談社文庫)、『カラー版メッカ:聖地の素顔』(2002年、岩波新書)、『祈りの回廊』(2004年、小学館文庫)など

*15:著書『写真で辿る折口信夫の古代』(2017年、角川ソフィア文庫)、『日本の民俗 暮らしと生業』、『日本の民俗 祭りと芸能』(以上、2019年、角川ソフィア文庫)、『神さまたちの季節』、『秘境旅行』(以上、2020年、角川ソフィア文庫)など

*16:著書『犬の記憶』(2001年、河出文庫)、『遠野物語』(2007年、光文社文庫)、『森山大道 路上スナップのススメ』(共著、2010年、光文社新書)など

*17:著書『蜷川実花になるまで』(2016年、文春文庫)など

*18:著書『背中の記憶』(2015年、講談社文庫)など

*19:著書『女の国になったカンボジア』(1984年、講談社文庫)、『ベトナムは、いま:十年後のベトナム戦争』(1985年、講談社文庫)、『闘った人びと:ベトナム戦争を過ぎて』(1988年、講談社文庫)、『沖縄 若夏の記憶』(2016年、岩波現代文庫)など

*20:著書『フォト・ドキュメンタリー人間の尊厳:いま、この世界の片隅で』(2014年、岩波新書)、『フォト・ドキュメンタリー朝鮮に渡った「日本人妻」:60年の記憶』(2019年、岩波新書)など

*21:監督作品として、映画『米軍が最も恐れた男 その名は、カメジロー』(2017年)、『米軍が最も恐れた男 カメジロー不屈の生涯』(2019年)、『生きろ 島田叡:戦中最後の沖縄県知事』(2021年)(佐古忠彦 - Wikipedia参照)