「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2021年5/17分:荒木和博の巻)

韓国5.16軍事革命から60年と1日(R3.5.17): 荒木和博BLOG

 令和3年5月17日月曜日のショートメッセージ。昨日は朴正煕将軍らによる韓国クーデターから60年の日でした。それにあたって考えてみたことをお話ししました。

 「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2021年5/15分:荒木和博の巻) - bogus-simotukareのブログで触れましたが、西鉄の話(R3.5.16): 荒木和博BLOGで荒木が予告していた『朴の礼賛話』です。
 7分45秒程度の動画です。タイトルからして「唖然」ですね。まさか今時「朴正熙の軍事クーデター」を「軍事革命(まあ、朴の側はそう自称したわけですが)」よばわりですか(呆)。
 そもそも「拉致被害者の救出」と「朴正熙礼賛」と何の関係があるのか。何の関係もない。
 それどころか、今の文在寅政権は「朴の政敵だった金大中大統領の流れをくむ政権」で「朴に批判的」なのだからこんなことを言えば「拉致問題で文政権の協力が得られなくなる恐れ」があります(これについては例えば韓国と良好な関係を保てないで、拉致問題解決や対北朝鮮対応などできるわけもない - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)参照)。
 まあ、荒木ら救う会の場合「河野談話も徴用工判決も間違ってる」「ホワイト国除外もフッ化水素水禁輸も正しい」「『文政権は北朝鮮の手先』呼ばわり」で、自分たちの方から文政権を積極的に敵視してるので「それ以前の話」ですが。
 それにしても荒木が「朴の軍事クーデターから昭和維新(クーデター未遂事件である226事件など)を連想しました!。朴は自分の政治を維新体制といった。朴は『明治維新のような近代化を目指す』としたが、(根拠はないが)同じ軍人として朴は226の軍人たちに共感するところがあったのでは無いか。ただし、日本国内において、自民党支持層ですら通常、226なんか支持しない*1ので、さすがにそうは言えないから『明治維新』云々としか言わなかったのでは無いか*2
 「朴正熙は今のままでは『北朝鮮の脅威ガー』『今の政治家はダメだ』と思った。226の軍人たちも『ソ連の脅威ガー』『今の政治家は』(以下略)」
 で荒木は「朴礼賛」です。ここでの226持ち出しは「226批判」という文脈では明らかに『勿論ない』。
 さすがに荒木は「226事件斎藤実内大臣高橋是清蔵相、渡辺錠太郎陸軍教育総監を暗殺)」を全面正当化しないとはいえ、「226事件を起こした青年将校の思いには共感する」つうんだから「こんな非常識男が救う会幹部か」と言う意味で背筋が寒いですね。まあ以前、荒木は動画において「三島由紀夫の例のテロ」も「九条改憲という志には共感する」とか抜かしてた記憶がありますが。
 安倍ですら荒木のような「226賛美、三島賛美」などしないでしょうに(呆)。
 それにしても「朴正熙(成功したものの、クーデターが失敗していれば恐らく死刑)、226事件青年将校(実際に銃殺刑)や三島(実際に自決)のように命を賭ける覚悟が大事だ(荒木)」て「はあ?」ですね。
1)命を賭ければ正しいというわけではない(『命を賭ける』云々つうなら、例えば『テルアビブ空港乱射事件(1972年)の実行犯・奥平剛士、安田安之(現場で死亡。死因については空港警備隊との銃撃戦で射殺されたとも、自決したとも言われ詳しくは分かっていない)』などの極左過激派だって命は賭けていたでしょう)という意味でも
2)荒木がどう見ても救う会運動に命を賭けてるとは思えない(まあ、そもそも日本国内において北朝鮮に悪口したところで命の危険性なんか何一つありませんが)という意味でも
3)こんなことを言えば極右以外は荒木にドン引きなのに、非常識にも荒木はそうは思ってないらしいと言う意味でも
荒木には心底呆れますね。家族会も良くこんな非常識男にへいこらし、一方で蓮池透氏を家族会から不当にも除名したもんです(呆)。
 しかも動画の中で「北朝鮮拉致問題のこと)や中国に舐められて良いのか!(日本人の身柄拘束や尖閣問題のこと)」て「お前、中国云々って、それ拉致問題と関係ないやろ」「むしろ下手に中国非難なんかしたら拉致の解決に逆行するやろ(例えば拉致問題に対応するのに、中国と仲良くしていて損はない - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)参照)」て話です。なんで拉致問題について「語ってるはずの動画」で唐突に中国非難するのか。 

【参考:昭和維新

青年日本の歌 - Wikipedia
 1930年代に作られた歌である。昭和維新の歌とも呼ばれる。
 作者は後に五・一五事件や三無事件に関与した右翼・三上卓(当時、海軍中尉)。

 なお、昭和維新ググる

【刊行年順】
橋川文三*3昭和維新試論』(1993年、朝日選書→2013年、講談社学術文庫)
◆高橋正衛*4二・二六事件:「昭和維新」の思想と行動』(1994年、中公新書)
◆工藤美代子*5昭和維新の朝(あした):二・二六事件を生きた将軍と娘』(2008年、日本経済新聞出版社→2010年、ちくま文庫)
 Amazonレビューに寄れば

 著名な女流歌人齋藤史が1994年、宮中歌会始に召人として召されたことは、大きな話題になった。というのも、その父である陸軍少将・齋藤瀏*6は、昭和天皇を激怒させた2・26事件を主導した青年将校たち*7の、有力な支援者だったからである。

ということで「226事件」を中心に置いた斎藤親子の評伝のようです。
 ちなみに明仁氏がどういう思惑だったのかは分かりませんが

斎藤史 - Wikipedia
1997年、宮中歌会始、召人。 明仁天皇に「お父上は瀏さん、でしたね」と語りかけられる。

だそうですので「父親と226の関わり」は明仁氏も理解してたわけです。なお「俺の勝手な憶測」ですが、「親と子は別人格」とはいえ昭和天皇生前なら、「齋藤瀏の娘なんかに会いたくない!(昭和天皇)」ということで彼女は絶対に宮中に呼ばれなかったでしょう。
◆小山俊樹*8五・一五事件:海軍青年将校たちの「昭和維新」』(2020年、中公新書)

等といった本がヒットします。 
 まあ、明治維新において「桜田門外の変大老井伊直弼暗殺)」「坂下門外の変(老中・安藤信正襲撃)」などのテロ行為が行われたのと同様に、昭和維新の連中も「幕末の志士気取り」で、515事件(犬養首相暗殺)、226事件などのテロ行為に走ったわけです。

*1:大阪維新だってさすがに「明治維新への共感」は口にしても「昭和維新への共感」は口にしないでしょう。

*2:つまり荒木の「朴は226昭和維新への共感ガー」は全くの根拠レスです(そのように評価できる朴発言があるわけでは無い)。ここで明らかになってるのは「朴の226昭和維新への傾倒」ではなく「私(荒木)の大好きな朴は226昭和維新の軍人たちに共感していたはずだ、共感してたと思いたい。維新体制とは、明治維新だけでなく昭和維新への共感の意味も込められていたに違いない」という「荒木の226昭和維新への傾倒」です。

*3:1922~1983年。明治大学教授。著書『日本浪曼派批判序説』(1998年、講談社文芸文庫)、『黄禍物語』(2000年、岩波現代文庫)、『西郷隆盛紀行』(2014年、文春学藝ライブラリー)、『ナショナリズム:その神話と論理』(2015年、ちくま学芸文庫)、『幕末明治人物誌』(2017年、中公文庫)など(橋川文三 - Wikipedia参照)。

*4:1923~1999年。1946年みすず書房の創立に参加。1963年から企画、刊行した「現代史資料」(みすず書房)は、1965年に菊池寛賞を受賞した。著書『昭和の軍閥』(1969年、中公新書→2003年、講談社学術文庫)など(高橋正衛 - Wikipedia参照)。

*5:新しい歴史教科書をつくる会」副会長や国家基本問題研究所評議員を務めていたプロ右翼。近年は夫・加藤康男とともに「張作霖暗殺コミンテルン陰謀論(加藤『謎解き「張作霖爆殺事件」』(2011年、PHP新書))」「関東大震災での朝鮮人虐殺否定論(工藤『関東大震災朝鮮人虐殺」の真実』(2009年、産経新聞出版)、加藤『関東大震災朝鮮人虐殺」はなかった! 』(2014年、ワック文庫))」の垂れ流しで悪名高い。著書『旅人たちのバンクーバー:わが青春の田村俊子』(1991年、集英社文庫)、『一人さみしき双葉山』(1991年、ちくま文庫)、『香淳皇后と激動の昭和』(2006年、中公文庫)、『スパイと言われた外交官:ハーバート・ノーマンの生涯』(2007年、ちくま文庫)、『大東亜戦争の指揮官たち』(2007年、ワック文庫)、『母宮貞明皇后とその時代:三笠宮両殿下が語る思い出』(2010年、中公文庫)、『山本五十六の生涯』(2011年、幻冬舎文庫)、『悪名の棺:笹川良一伝』(2013年、幻冬舎文庫)、『絢爛たる醜聞:岸信介伝』(2014年、幻冬舎文庫)、『サザエさん長谷川町子』(2020年、幻冬舎新書)、『愛して生きて:宇野千代伝』(2020年、中公文庫)など(工藤美代子 - Wikipedia参照)。

*6:1936年、二・二六事件で反乱軍を援助したとして禁固5年の刑となり、入獄。官位勲功を剥奪される。1938年に出獄した後は、歌人として『短歌人』を創刊、主宰。1942年に発表された愛国百人一首の選定委員の一人として名を連ねている。(斎藤瀏 - Wikipedia参照)

*7:斎藤瀏 - Wikipediaによれば栗原安秀(後に銃殺刑)と特に親しかったそうです。

*8:1976年生まれ。帝京大学教授。著書『憲政常道と政党政治:近代日本二大政党制の構想と挫折』(2012年、思文閣出版)、『評伝・森恪』(2017年、ウェッジ)など(小山俊樹 (歴史学者) - Wikipedia参照)