「珍右翼が巣くう会」に突っ込む(2021年8/17分:荒木和博の巻)(副題:松本清張『凶器』『礼遇の資格』、ロアルド・ダール『おとなしい凶器』のネタばらしがあります)

北朝鮮の嘘、恫喝、悪口について(R3.8.17): 荒木和博BLOG
 7分20秒の動画です。動画説明文は

 令和3年8月17日火曜日のショートメッセージ(Vol.501)。基本的に北朝鮮の公式発表は全て嘘で、恫喝や悪口も空威張りみたいなのが少なくありません。それにどう対処するかというお話しです。

という酷い代物で見る気が失せます。実際見る価値はありません。動画で荒木が言ってることは説明文と大同小異ですので。
 何が酷いか。
 まず第一に「基本的に北朝鮮の公式発表は全て嘘」なんてのはただの偏見でしかない。まともな根拠を元に「こういう理由で北朝鮮の主張は嘘だと思う」というならともかく。
 しかも荒木の場合「北朝鮮は嘘しか言わないから交渉は成り立たない」と交渉否定論を始め「だから自衛隊特殊部隊で救出」と放言したり、「北朝鮮が嘘ばかりついてるのだから、俺たちが特定失踪者認定を間違ってもたいした問題じゃない」と自らのデマについて居直ったり、「北朝鮮相手には何だと、この野郎、馬鹿野郎で構わない」と言い出すのだから話になりません。
 「何だと、この野郎、馬鹿野郎」て「アウトレイジ」かよ、て話です。どこの世界にそんなバカな外交交渉があるのか。本気ならばバカだし、冗談でも笑えない。それにしてもこの「馬鹿野郎、この野郎」とは「中露など荒木が敵視する国すべて」に該当するのか、はたまた「大国・中露などにはそんなことはさすがに言えず、小国と馬鹿にしてる北朝鮮限定」か。どっちにしろ馬鹿げていますが。
 それはともかく、俺が拉致被害者家族だったら「18年経っても拉致が解決しないのに態度が未だにでかい、謙虚さのかけらもない」荒木ら救う会に対して「馬鹿野郎、この野郎」ですね。本当に荒木ら救う会の連中はハリセン - Wikipedia(漫才の突っ込みで使う)か警策 - Wikipedia(座禅で使う)か、鏡餅か、冷凍ラム肉*1か何かで殴り倒したい。
 もはや「北朝鮮に対する怒り」よりも「荒木ら救う会に対する怒り」の方が俺は大きい。よくもまあ横田早紀江ら家族会も荒木にへいこらして「荒木らを批判する蓮池透氏」を除名するなんてバカをやらかしたもんです。
 拉致解決のためには「荒木ら救う会と縁切り」し、蓮池氏と和解する必要があるでしょうが、もはや「それが家族会にできる」とは俺は思っていませんし、日本政府が「家族会を無視して蓮池氏や和田春樹氏、田中均氏ら交渉派と協力して拉致問題をやっていくこと」も正直「あまり期待してない」。もはや「拉致は解決しないだろう」と俺は諦めています。俺的には「拉致被害者家族は赤の他人」なのでそれで全く構わない。個人的には「家族会の妨害で日朝国交正常化が進展しないこと*2」が残念ですが。
 第二に「恫喝や悪口も空威張り」等と悪口することに拉致解決の意味で何の意味があるのか。何の意味もない。
 アンチ北朝鮮の荒木は「スカッとジャパン」かもしれませんが「北朝鮮に悪口して気持ちがスカッとした」なんてことは何一つ拉致の解決に関係ないわけです。むしろ「拉致解決に資する」のなら「北朝鮮リップサービス発言する」必要すらある。荒木の建前は「拉致の解決」であって「北朝鮮への悪口」ではないはずです(しかしその建前が勿論「嘘」だからこそ、こうした悪口になるわけですが)。
 むしろ「悪口が空威張り」というのは荒木ら救う会の方でしょう。荒木らが強がりを言おうとも「拉致は完全に風化」したし、北朝鮮も「当面は崩壊の兆しなどない」。
 それにしても荒木が「北朝鮮は都合が悪いときには恫喝したり悪口したりする」と言いだしたのには吹き出しました。
 「それ、お前ら救う会蓮池透氏や田中均氏への個人攻撃、悪口雑言の方だろ、自己紹介乙」ですね。
 もちろん、そうした個人攻撃、悪口雑言が「見るに堪えないから」こそ「荒木ら救う会」「救う会言いなりの家族会」から、多くの人々が距離を置き拉致は風化したわけですが。俺は「いわゆる拉致敗戦」について家族会には何一つ同情しません。横田滋が死んだときも「かわいそう」などという気持ちは全くわかず「これで滋を使った、救う会、家族会のお涙頂戴もなくなって良かった」「晩年は認知症も発症していたようだし、胃瘻するほど体長も弱っていたそうだし、死亡してむしろ幸せではないか(まあ肉親だと『脳死植物状態でも生きて欲しい』などという違った感想かもしれませんが、滋は『赤の他人』ですので)」と正直思いました。
 家族会からは「冷酷」「外道」「北朝鮮シンパ」等と罵倒されるかもしれませんが、俺はそういう価値観です。

【参考:松本清張『礼遇の資格』】

“礼遇の資格”凶器のバゲットは資格不足? - 歩く・見る・食べる・そして少し考える・・・
 前回の松本清張の続き、新潮文庫の「巨人の磯」の話しです。残り三編は、「礼遇の資格」「内なる線影」「理外の理」「東経139度線」です。
 それで、「礼遇の資格」なのですが、(中略)主人公は“丈が小さく肩が落ち、顔も身体も細く、薄い眉にリスのような眼、ちんまりした鼻、締まりのない口もと、貧弱な顎”と云う身体的理由で、能力があるのに“礼遇”されること無く、冷遇されたのでした。
 それで、冷遇と云っても、現役時代は都市銀行の“副頭取”で、退職後は国際協力銀行の“副総裁”をやったり、銀行協議会の“副会長”をやったりする方なのです。
 その冷遇の男ですが、妻が亡くなり、57歳のときに26歳の水商売の女と再婚するのです。31歳の差です。ここから不幸が始まるのです。痴情のもつれによる殺人、良くある話しなのです。もつれて殺されるのは、とばっちりに近いアメリカ青年のハンソン君なのですが。
 今回は、若い奥さんが結婚前の愛人と、ずっと関係を持つ、世間ではありそうな話しですが、殺人にまで行き着くことは、そうそう無いのです。
 冷遇された男は、フランスパンの、あのバゲットを凶器に使用するのですが、いくら日にち経って堅くなったとしても、冷遇された男が剣道2段であったとしても、バゲットで気絶させる*3のは、どうも、いまいち、納得できませんでした。
 30年前に書かれた文庫の解説では、凶器のバケットが奇抜だと賞賛しているのです。30年前にバケットが一般的ではなかった所為もあるのかとは思います。
 でも、拘るようですが、バゲットは堅くても、とても軽いので、衝撃力が不足です。精々、頭にコブができるか、切れて多少出血する程度だと思います。仮死状態に至るほど致命的なダメージを与えるのは、剣道二段の腕を持ってしても無理がある、と思います。
 その辺を考えて、清張先生も、バケットで頭を一撃されるアメリカ人教師を、「髪の色、眼の色を別にすれば、小柄で東洋人だと思われる」体格に設定しているのでしょう。死体の移動運搬の問題もありますが。

【参考:ロアルド・ダール松本清張

#014■第7回「読書会」ロアルド・ダール 『あなたに似た人』: 人事の名著を読む会/読書会から一部紹介
「おとなしい凶器」"Lamb to the Slaughter"
 夫を殺した妻は、凶器の仔羊の冷凍腿肉を解凍して調理し、それを刑事たちにふるまい、刑事たちは何も知らずに殺人の凶器となった証拠を食べてしまう。
 松本清張の短編手『黒い画集』('60年/カッパ・ノベルズ)の中に「凶器」という作品があって、殺人の容疑者は同じく女性で、結局、警察は犯人を挙げることは出来ず、女性からぜんざいをふるまわれて帰ってしまうのですが、実は凶器はカチンカチンの「なまこ餅」で、それを刑事たちが女性からぜんざいをふるまわれて食べてしまったという話があり、松本清張自身が「ダールの短篇などに感心し、あの味を日本的なものに移せないかと考えた」(渡辺剣次編『13の凶器―推理ベスト・コレクション』('76年/講談社))と創作の動機を明かしています。

『エラリィ・クイーンズ・ミステリ・マガジン』1956年11月号(2014-12-12)から一部紹介
 渡辺剣次*4は、『ミステリイ・カクテル*5』(講談社文庫)の凶器名鑑の項で、「「凶器トリック」のリストで、落とすことができない作品にロアルド・ダールの「おとなしい凶器」(一九五三)がある。この作品は、トリックだけぬき出して説明するには、あまりにも美事な小説なので、内容にはふれないことにする。着想もいいが、小説としての出来栄えが抜群である」とコメントし、自身が編んだアンソロジー、『13の凶器*6』(講談社)のうちの一篇に、松本清張「凶器」を選んで、「ダールの短篇などに感心し、あの味を日本的なものに移せないかと考えた」という、松本の創作の動機を引用しています。

*1:以前、松本清張の短編作品『凶器』『礼遇の資格』を読んでたら「凶器:正月の鏡餅で殴り殺す(殺害後、餅料理にして凶器消滅)」「礼遇の資格:乾燥させて堅くなったフランスパンで殴って気絶させてから柔道の絞め技で絞め殺す(殺害後、食べることで凶器消滅)」つう話が出てきました。なお、「凶器」は「消えた凶器が何か」がメイントリックなので完全にネタばらしですがご容赦下さい(一方、「礼遇の資格」はいわゆる倒叙ミステリなので、犯行トリックは最初から読者に明かされます)。ちなみに『凶器』『礼遇の資格』の元ネタとされる海外ミステリがロアルド・ダールの『おとなしい凶器』でこれは『冷凍ラム肉で殴り殺す(その後やはり料理して凶器消滅)』つう話です。あと、テレ朝の『相棒』では『冷凍イカで刺殺(その後やはり料理して凶器消滅)』つうのがあったかと思います(ネットでググればこれらの作品についての記事はいろいろとヒットします)。まあ、どれ一つとして現実的ではありませんが。実際、『礼遇の資格(一応、計画的犯行)』を除いて、全作品において、犯行は計画的ではなく『被害者の言動に憤激してかっとなって、その場にあったものを凶器に使用した』などの「衝動的」な代物です。

*2:というと「家族会の悪口」が予想されますが、正直、俺も「未来が予言できる神様ではない」ので「断言はしません」が今の制裁路線を続けるくらいなら「日朝国交正常化」を進めた方が拉致解決にむしろ資するのではないか(つまり『国交正常化による拉致交渉進展』という賭けをする意味はある)と思っています。とはいえ、正直、俺的には「拉致が解決しなくても一向に構わない。むしろ日朝国交正常化で朝鮮半島の緊張が緩和され、日本人妻の帰国や、北朝鮮に埋葬されたいわゆる残留邦人の墓参や遺骨回収、日本企業の北朝鮮進出などができれば御の字」ですが。俺は拉致問題をそれほど重要視していません。なぜなら繰り返しますが「拉致被害者家族は赤の他人」だし、「もはや生きてる拉致被害者はほとんどいないだろう」と思っているからです。「拉致被害者家族に対して冷酷だ」と言われようが俺はそういう価値観です。むしろ「日本人妻や残留邦人遺族の思い」を踏みつけにしてる家族会の方が「よほど冷酷で自分勝手」ではないのか。しかもその「冷酷で自分勝手」で拉致が解決するならまだ理解できますが「解決しない」のだから家族会の愚劣さには呆れます。

*3:で、その後柔道の絞め技で絞め殺すわけです。清張も「フランスパンで殴り殺す」というのはかなり無理があると思ったようです。

*4:1919~1976年。1947年の探偵作家クラブ(現・日本推理作家協会)発足時に書記長となり、会報の編集に携わる。映画「死の十字路」(1956年、江戸川乱歩原作、井上梅次監督て完全にテレ朝『美女シリーズ』ですが)ほかのシナリオを手掛けたほか、NHKテレビのクイズ番組「私だけが知っている」の台本も数多く執筆(会員名簿 渡辺剣次|日本推理作家協会参照)。

*5:1985年刊行

*6:ググったところ、清張『凶器』以外の収録作品は『夢遊病者の死』(江戸川乱歩)、『ネクタイ難』(堀辰雄)、『デパートの絞刑史』(大阪圭吉)、『点眼器殺人事件』(海野十三)、『鉄管』(大下宇陀児)、『債権』(木々高太郎)、『密室殺人』(妹尾アキ夫)、『涅槃雪』(大坪砂男)、『窓』(氷川瓏)、『氷山』(狩久)、『九雷渓』(陳舜臣)、『剣の欛』(都筑道夫