日本検察&「死刑愛好バカ」の下劣さに改めてうんざり(副題:今回は産経新聞がまともな記事)(追記あり)

【最初に追記】
 この拙記事で取り上げた事件については裁判員裁判というのも、重刑・厳刑のために導入されたわけではない(当たり前) - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)も論じていますので紹介しておきます。
【追記終わり】
争点判断が量刑に直結せず…「苦しい評議」で無期判決 - 産経ニュース

 横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で入院患者3人が殺害された点滴中毒死事件で、横浜地裁は9日、元看護師の久保木愛弓(あゆみ)被告(34)に完全責任能力があった*1と認めた上で、無期懲役を言い渡した。3人もの命が奪われ、被告の責任能力も認定されたケースでは異例の判断となった。
 判決では、発達障害の一種である自閉スペクトラム症の特性があった被告は臨機応変な対応を行うという看護師に必要な資質がなかったと指摘。「終末期医療を中心とする病院であれば自分でも務まる」と考え、旧大口病院に勤め始めたが、患者の家族から怒鳴られたことで強い恐怖を感じ、鬱状態になったとした。
 消毒液の混入を繰り返した理由については「一時的な不安の軽減を求めて、『担当する患者を消し去るしかない』と短絡的な発想に至った」と説明。こうした犯行動機の形成過程には「(ボーガス注:自閉スペクトラム症という)本人の努力ではいかんともしがたい事情が色濃く影響しており、被告のために酌むべき事情といえる」とした。また、公判の経過とともに被告が贖罪(しょくざい)の意思を深めたことも、量刑上重視すべきポイントに挙げた。被告は公判で、犯行当時は罪悪感や後悔の気持ちがなかったことなど、自分に不利な内容も素直に供述したと認定。「被告人質問では『償いの仕方が分からない』と述べていたが、最終陳述では『死んで償いたい』と述べるに至った」とし、更生の可能性があると評価した。
 判決について、甲南大法科大学院の渡辺修*2教授(刑事訴訟法)は「看護師としての専門知識を利用して計画的に殺害した残虐な犯行は死刑に値し、無期懲役とした点は異例だ」と指摘。一方で「(被告が抱えているような)障害を受け入れる社会的基盤が足りない点などを考慮しており、市民の良識を生かせる裁判員裁判ならではの死刑回避の手法を示したもので、画期的だ」と評した。
 神奈川大の白取祐司*3教授(刑事訴訟法)も「予想外の判決」としつつ、「被告の成育状況も含め、犯行に至る過程を相当重要視しているのが特徴的だ」と分析。裁判員裁判で丁寧な評議が行われた痕跡も読み取れるとし、「裁判所が、検察側と弁護側いずれの枠組みにも乗らずに結論を導く『第3の道』を取ったといえる」と話した。
 一方、犯罪被害者支援*4弁護士フォーラム事務局長の高橋正人弁護士は、「過去の量刑の相場から考えると、明らかに死刑が妥当な事例だ」と指摘、「看護師が人の命を奪ったことが社会に与えた影響も判決では触れられておらず、検証が不十分」とした。
 判決を受け、横浜地検の安藤浄人次席検事は「内容を精査し、適切に対応したい*5」とコメントした。

 「極刑大好き」産経なら「三人も殺して死刑でないのか」と悪口するかと思いきや、まともな記事です。
 「死刑愛好家のバカ・高橋」には「黙れ、クズ!」といつもながら呆れますが、「死刑愛好家のバカ・高橋」の発言よりも「判決に好意的な白取氏、渡辺氏のコメントをより多く書き」産経の記事がむしろ「明らかに無期刑に好意的」なのが興味深い(ちなみに白取祐司 - Wikipediaによれば白取氏には『盗聴立法批判:おびやかされる市民の自由』(1997年、共著、日本評論社)という著書があり、ウヨの産経とはだいぶ立場が違います)。発達障害自閉スペクトラム症*6)が事件の背景にあるからでしょうか?(つまり発達障害がなければ悪口していた可能性が高い:つうか発達障害がなければほぼ確実に死刑でしょうが)
 しかし、これ、「裁判員裁判」なんですが、検察が仮に公訴したら(控訴しても全く驚きませんが、検察を軽蔑はします)そんなことを言うのであれば、検察は今後裁判員裁判では、量刑不当の控訴はしないのかという話になる - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
検察は、裁判員裁判での量刑を最大限尊重するんじゃなかったっけ - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)
検察は、かつての主張を撤回したのかな - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)つう批判がもろに該当します。
 なお、上記のような意見は裁判員裁判の判決を、重罰(死刑)の正当化に利用しないでほしい - ライプツィヒの夏(別題:怠け者の美学)コメント欄にも投稿したのでご覧頂けると幸いです。


関電前会長ら不起訴 「捜査を尽くし、判断した」特捜部長 - 産経ニュース
 「安倍のモリカケ、桜」「甘利のUR疑惑」でろくに捜査しなかった連中が「努力した」といったところで「自民と親密な関西電力をかばっただけではないのか」でおよそ信用できませんね。例の「入管の虐待死疑惑(傷害致死などにあたる疑い濃厚)」についても遺族の告発をきちんと捜査するのかどうか。

*1:つまり心神耗弱が認められなかったと言うこと。

*2:著書『被疑者取調べの法的規制』(1992年、三省堂)、『聴覚障害者と刑事手続:公正な手話通訳と刑事弁護のために』(1992年、ぎょうせい)、『捜査と防御』(1995年、三省堂)、『刑事手続の最前線』(1996年、三省堂)、『刑事裁判と防御』(1998年、日本評論社)、『外国人と刑事手続:適正な通訳のために』(1998年、成文堂)、『司法通訳』(2000年、松柏社)など(渡辺顗修 - Wikipedia参照)

*3:北海道大学名誉教授。神奈川大学教授。著書『一事不再理の研究』(1986年、日本評論社)、『フランスの刑事司法』(2011年、 日本評論社)、『刑事訴訟法の理論と実務』(2012年、日本評論社)など(白取祐司 - Wikipedia参照)

*4:いい加減「死刑万歳」を「被害者支援」と強弁するのは辞めろと言いたい。そんなことより経済支援やメンタルヘルス支援でもしたらどうなのか。

*5:そこは「一般市民の量刑感覚を個々の裁判に反映させるという裁判員制度の趣旨を重要視し、控訴しない」と即答して欲しいですね(検察への嫌みのつもり)。どう見ても「控訴の可能性を残した発言」で本当に検察のデタラメさにうんざりします

*6:昔は自閉症と呼んでいましたが。