日本政治雑感(2021年11/20日分)

11月16日(火) 『日刊ゲンダイ』に掲載されたコメント:五十嵐仁の転成仁語:SSブログ

〔以下のコメントは『日刊ゲンダイ』11月16日付に掲載されたものです。〕
 枝野も、辞任会見の質疑応答で野党共闘に関して「新代表にも同じ方向性を求めていくのか」と問われると、「戦略、戦術論としては、実態以上に(共産党と)近い関係と受け止められてしまった」とか言っていたが、それは共産に対して失礼ではないか。協力は欲しいが仲間と思われたくないというのは、あまりに都合が良すぎる。何様なのかという話だ。
 法大名誉教授の五十嵐仁氏*1政治学)が言う。
共産党のせいだと責任転嫁しているようでは、話になりません。現行の小選挙区制で自公に勝つには、候補者を一本化するしかない。共産党と共闘したから、甘利前幹事長や石原元幹事長に選挙区で勝つことができたのです。共闘を解消すれば、野党が乱立して自公を利するだけ。立憲がさらに議席を減らすのは自明です。実際、衆院選小選挙区では公示前の46から57に議席を増やしている。共闘の効果はあったのです。全体で14議席減の96議席に落ち込んだのは、比例代表で23議席も減らしたことが主因で、政党名を書いてもらえなかった立憲自身の問題です」
 (ボーガス注:自民、公明、読売、産経などが)ことさら野党共闘の失敗を喧伝するのは、解消してもらった方が今後の選挙が楽だからだ。
 「そういう共闘解消論に大メディアも加担している。野党も支持者もこれに惑わされないことです。立憲が見直すべきは共産よりむしろ連合との関係でしょう。連合の主体は大企業の労組ですから、コロナ禍にあえぐ一般庶民の気持ちは分からない。派遣や非正規労働者の待遇改善にも関心がありません。立憲は、連合の顔色をうかがわなくても勝てるように地方組織をしっかりつくって足腰を鍛えることに注力すべきです。労組に“おんぶに抱っこ”では、独自の政策を打ち出すこともできない。」
 野党第1党の座を守ることだけに汲々とすれば、かつての社会党の二の舞いになるだけ。
 公示前より減らしたといっても野党第1党である以上、新たな政治の希望を有権者に提示して欲しいし、そのためには野党共闘が欠かせない。

 全く同感ですね。
 「小選挙区で立民だけの力では当選は無理な選挙区が多い」のだから共産の力を借りるのは当然だし、その際に「右翼選挙民に『共産の仲間』と思われたくないから、共産党が一方的に候補を下ろしてくれ」とは何様のつもりなのか。それでは共産にメリットがないし、そもそもそれでは共産支持層は小選挙区において必ずしも立民系候補に投票しないでしょう(かつ共産が自主的に候補を下ろしただけでその種の右翼選挙民の多く(多くは自民支持層)は『立民は共産系』と悪口するでしょうし)。
 勿論、「比例での議席減」について「共産と共闘したから」と連合などが言ってることは俺も知っています。
 しかしまず第一に「比例で減らしたこと」を「共産との共闘が理由」とする連合の主張には何の根拠もない。何か因果関係が証明されたわけでは全くない。
 第二に、「維新の躍進」を考えれば、「共産との野党共闘をやめた」ところで「維新が獲得した票」を立民がとれた保証は全くないでしょう。まあ、立民が「維新化(第二自民党化)」すれば、「維新が獲得した票」の一部は「とれた」かもしれませんが、それでは野党共闘が完全に成立しなくなる(共産、社民、れいわ支持層が小選挙区で立民候補に投票しなくなる)上に、「市民連合」など「立民支持のリベラル層」は完全に立民から離れるため、「あるべき筋論」は無視して「立民の党勢拡大オンリー」で考えても自滅行為でしょう(立民が政策をネオリベ側に寄せていれば衆院選に負けなかったかどうかは大いに疑問 - kojitakenの日記参照)。


朝日がオピニオン面に維新躍進についての菅野(山尾)志桜里のインタビューを載せた模様 - kojitakenの日記
 kojitaken氏も呆れていますが、「ウヨの山尾」なんぞ持ち上げてるのだから、「朝日の右傾反動化」も行き着くところまで行き着いたと言うべきでしょう。ただし、1)「山尾を持ち上げるようなウヨ」は「朝日をサヨと敵視してる」「読売や産経に好意的」で朝日購読などしない一方、2)「朝日の従来の読者(左派やリベラルが多い)」は「山尾のようなウヨ」に批判的(つまりこういう愚行を朝日がしてると確実に朝日の読者が減る)なので全く馬鹿げていますが。朝日は「自分で自分の首を絞めてるようなもん」です。
 そもそも、「政治家とは別の道を目指すことにした」などと、山尾が言い訳しようとも「選挙民に総スカンを食らい政治家引退せざるを得なくなった(山尾自ら、自主的に政治家を引退したわけではない)」山尾ごときが立民批判することも、そんな山尾を朝日が持ち上げることも滑稽としか言い様がない。こうした「朝日の右傾反動化」も「維新の躍進」の助長条件ではあるでしょう。


◆維新批判ツイート

立川談四楼
日本維新の会、初当選議員の10月分の文通費を党に寄付させることに決定」だってさ。
 まさかそんなオチじゃねえよなと思ったが、恥も外聞もなく本当にやりやがった。「コロナ禍で困窮している人も多く」てなこと言ってたはずだが、(ボーガス注:福祉団体などではなく)党に入れたんじゃ単なる上納金じゃねえかよ。

 予想の範囲内ですが全くひどいもんです。マスコミも「どこが寄付なのか」と批判したらどうなのか。こんなんのどこが「身を切る改革」なのか。しかし「元自民議員・談志」の弟子なのに談四楼も随分とまともです(確か赤旗祭りの寄席にも出演経験があったと思う)。

*1:五十嵐氏ご本人も公にしていること(隠してはいないこと)なので指摘しておきますが、氏は『全国革新懇』代表呼びかけ人で、『共産党に近い立場の出版社』から『保守政治リストラ戦略』(1995年、新日本出版社)、『対決安倍政権』(2015年、学習の友社)、『打倒安倍政権』(2018年、学習の友社)という著書も出しており比較的「共産党寄りの方」ではあります。