中国政府を「戦争狂」扱いする「リベラル21&阿部治平」に呆れる(2021年12/29分)

リベラル21 日本政界は台湾有事を避ける努力を!(阿部治平)

 安倍政権がかつて憲法の改定も経ずに憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を容認したという経緯があるから、中国側が安倍発言を、台湾有事に自衛隊の参戦ありと受け止めたとするなら、それはごく自然の成り行きである。
 高市氏の発言にいたっては、とうてい与党幹部の言とは思えない。ことさらに中国と対決しようとするもので、対中国臨戦体制をつくれというに等しい。だが、外交は勇ましければそれでよいというものではない。
 日本政府は、極右勢力やアメリカなどから腰抜けといわれようがなんであろうが、新疆の人権問題に関する「中国非難決議」や、北京オリンピック後を考えない「外交的ボイコット」などをやってはならない。
 いまのところ「外交的ボイコット」をやるといっているのは、アメリカ・カナダ・オーストラリア・イギリスなどの英語圏4ヶ国だけである。あと数ヶ国がこれに加わるとしても、地球上の大多数の国家がそっぽを向く可能性がある。だとすれば、それは中国の人権問題の解決には何の役にも立たないし、北京オリンピックは「外交的ボイコット」に関係なく進行するであろう。

 「ダライラマ万歳」阿部なら「外交ボイコットや中国非難決議に賛成」と思っていたので意外です。もしかしたら「アンチ日本共産党日本共産党は外交ボイコットや中国非難決議に肯定的)」の立場から「共産党逆張りしてるだけ」かもしれませんが。
 「外交ボイコットや中国非難決議に反対」については俺も同意見ですが「賛同できない別の部分が多すぎる」ので批判します。
 なお、日本は現時点では「非難決議は今後の検討課題として先送り」「北京五輪開会式に政府高官(岸田首相、スポーツ関連の政府高官である堀内五輪担当相、末松文科相、室伏スポーツ庁長官など)は出席しないが橋本東京五輪組織委員会会長が出席。外交ボイコットという表現はしない」と言うことで落ち着きました。
 米国には「橋本氏は政府高官ではない」、中国には「今は政府高官ではないが、元・政府高官(元・五輪担当相)だ。外交ボイコットという表現も避けた」で「米中双方の顔」を立てようとしているわけです。

 中国には損得勘定を度外視した台湾統一への強い願望が存在することを、我々日本人は忘れてはならない。

 阿部のバカさには呆れますね。もちろん「台湾統一への強い願望」はあるでしょうが、中国には損得勘定はあるでしょう。中国が「台湾が独立宣言やそれに準じる行為(国連への加盟申請)(以下、面倒なので全て独立宣言と書きますが)をしないのに、予想される国際的批判(欧米の経済制裁など)や台湾の軍事的抵抗(当然ながら台湾とてそれなりの軍事力は有しています)を無視して軍事侵攻すること」はまず考えられません。
 中国は蔡英文を「独立を画策している」と疑って反発しているものの現状ではさすがに「独立宣言を認定して軍事侵攻すること」には無理がある。
 いわゆる「断交ドミノ(最近もニカラグアが台湾と断交し、中国と国交樹立)」にしても「武力侵攻は不可→武力侵攻に代わる対抗措置」と言う認識で行われている。
 ただし「台湾が独立宣言すれば」侵攻することは十分あり得ます。常日頃「独立宣言したら軍事侵攻もあり得る」と言っているのに何もしなければ中国のメンツが潰れ「損得勘定に反する」からです。
 とはいえ台湾が仮に独立宣言した場合も「軍事侵攻の大義名分が出来た」と喜んで即侵攻するかと言ったらそうはならないでしょう。
 「戦争による中国の物的、人的被害」「欧米が台湾を支援するかもしれないリスク」を考えたらまずは「リミット(期限)を定めた上での宣言撤回を台湾に要求し、報復として経済制裁、またいざとなったら軍事侵攻する気があることのアピールとして軍事動員」といったところでしょう。勿論それでも台湾が宣言撤回しなければ「軍事侵攻の可能性は十分ある」でしょう。ただしこの場合「台湾が独立宣言して何が悪い」という立場に立たない限り非難されるべきは台湾でしょう。そして俺は「台湾が独立宣言して何が悪い」という立場ではない。というか台湾独立支持は「日本も含めて」多くの中国と国交を持つ国が「国交樹立の前提」としている「一つの中国」に反しますが。

 これが実現できれば、習近平氏は毛沢東並みの歴史的英雄になれるのである。

 別に「これ=台湾統一」が実現できなくても習近平氏は「建国の父・毛沢東」や「改革開放の父にして、香港返還を実現した鄧小平」並みではないにせよ「AIIB実現(2015年)」「一帯一路(海外への積極的な経済進出)」「北京冬季五輪(2022年開催予定)」などで現時点で既に「歴史的英雄」でしょう。「台湾が独立宣言もしないのに武力侵攻」などするわけがない。そんなリスクを冒す必要はどこにも無い。
 「百歩譲って」台湾侵攻の可能性があるとしたら「台湾が軍事力を大幅に削減し、中国の軍事侵攻が容易にできるとき」だけでしょうが、それはさすがに当面はないでしょう。

 中国の台湾武力侵攻の回避が日本の安全にとって外交上の最優先課題であるならば、中国に武力侵攻の方針をあきらめさせ、平和的統一(「和平解放」)の道に立ちかえるよう説得することが一番である。

 何でこう阿部とリベラル21は現状認識がゆがんでるのか、中国政府を「戦争狂」扱いする気かと呆れます。
 台湾の緊張を高めてるのは蔡英文の反中国姿勢(あるいは『民主主義サミット開催&中国は招待せず台湾は招待』などで蔡を応援していると疑われるバイデン政権の態度)であって、習近平のせいではないでしょう。馬英九政権時代(当時も中国国家主席習近平氏)はこんなことは無かった。
 そもそも習近平は「和平解放方針」を捨てていない。蔡英文が「独立を画策している」との認識の元「以前から警告してるように独立宣言なんかしたら武力侵攻もあり得る」と蔡を牽制してるだけです。
 以前から「和平解放方針が原則(ただし例外として独立宣言した場合は武力侵攻もあり得る)」と言う路線であり、それは習近平政権でも変更はない。「蔡は独立を画策している」という認識のもと「武力侵攻もあり得る」というテイストが強調されてるに過ぎません。
 「平和統一の道に立ち返れ」と阿部に言われても「方針は以前から変わっていませんが?。変わったのはむしろ台湾当局ですが?(中国にある程度融和的な馬英九→反中国の蔡英文)」と中国は呆れるだけでしょう。総統選で蔡英文が落選しなかったことが実に悔やまれます。
 俺と同様にこうした立場に立って蔡やバイデンを批判する*1浅井基文ブログの
台湾統一問題:武力統一か平和統一か|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ
「デモクラシー・サミット」への台湾招請|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページ
中国共産党の「一国二制」と香港・台湾
でも読んで考えを改めろと「反中国分子の阿部」には言いたい。実際、以上の文章と同様のコメントを阿部記事に投稿しましたがどうせ掲載拒否でしょう。
 阿部のような輩は「浅井先生や俺」に限らず「馬政権時代はここまで中台関係は悪くなかった。蔡英文と彼女を助長するバイデンが悪い」という批判については「中国シンパ」と敵視するだけなのでしょう。
 それでいて「日本政界は台湾有事を避ける努力を!」というのだから俺的には「はあ?」ですね。
 「日本の説得(阿部の場合中国のみ説得で、台湾は説得対象ではないようですが)」も何も「蔡英文やバイデンが今の反中国態度を改めれば」事態は解決する話です。台湾有事を避ける努力を求めるのならそれは日本政界よりもまず「蔡英文とバイデン」に求めるべきです。
 もちろん中国における岸田政権批判の強まり|コラム|21世紀の日本と国際社会 浅井基文のページが批判するように岸田が「蔡英文やバイデンに同調するかのような反中国態度」で日中関係を悪化させてることは事実ですが。

*1:というか俺の認識は浅井先生の記事にかなり影響されていますが。