産経や自公の「軍事費増加」論を批判する(2022年6/8日分)

【主張】骨太方針と防衛費 早期に「2%以上」達成を - 産経ニュース
 三木政権以降、中曽根政権までの「GDP1%枠の記憶」はどこへ、という感がありますね。
 なお、防衛費1%枠 - Wikipediaにも書いてありますが、中曽根が1%枠を撤廃はした物の【1】ゴルバチョフ時代の米ソデタント、【2】土井たか子社会党の存在もあって実際には大幅な軍拡にはなりませんでした。

 抑止が破れて侵略されれば、国民の命が犠牲になり、財産が損なわれる。領土を失うかもしれない。防衛費などの多大な支出に迫られ、GDP比2%どころではなくなる。

 産経らしいですが「福祉や教育を犠牲にしてまで防衛費を大幅に増やす必要」がどこにあるのか。
 そもそもその理屈なら「福祉を犠牲にして病人が続出したら、かえって多大な支出に迫られる」「教育を犠牲にして有能な研究者が海外流出したら、国益が害される(つうか、既に中国の千人計画に応じた日本人研究者もいますが)」「今の少子化を放置したら労働力不足、年金の支え手不足などの大きな弊害を生む。子育て支援予算増額など少子化克服が急務」とでも何とでも言える。そんな抽象的な話でいいなら「国防費増額」に限らず「福祉」「教育」「子育て予算」いくらでも増額を主張できる。
 ウクライナ侵攻や北朝鮮のミサイル発射実験をネタに「日本侵攻の危機ガー」というのはデマでしかない。
 「ウクライナ戦争で苦戦するロシア」に日本侵攻する余裕などないし、「国連総会ロシア非難決議」「対ロシア経済制裁」を見て「対日侵攻したがる国」もまずない。北朝鮮のミサイル発射実験も「実験」でしかない。日本に先制ミサイル攻撃なんかするわけがない。
 そして現状でも日本の防衛費は「世界有数の支出」です。一方で『福祉や教育の予算』が日本は「G7諸国」「OECD諸国」などと比較すると「経済先進国とは思えない酷い代物」です。
 そもそもこの産経の理屈なら「朝鮮戦争が未だに正式には終戦してない状況(38度線は建前では国境ではなく停戦ライン、韓国も北朝鮮を建前上は国扱いしておらず正式国交がない)」で「世界有数の軍事大国・米国と形式上は戦争状態にある北朝鮮(米国も公式には北朝鮮打倒を放棄していないし、米朝国交もない、在韓米軍も建前では未だ国連軍)」が「ミサイル開発するのは国防上当然」でしょう。北朝鮮の「外国(米国、韓国)侵攻の脅威」は日本とは違い「未だ現実の物」ですが「ミサイル開発で国民生活を犠牲にしている」として産経は北朝鮮を批判するのだから呆れます。「日本の軍拡はきれいだが北朝鮮の軍拡は汚い」とでもいうのか*1
 軍拡の果てに「戦前日本が無謀な戦争で自滅した」「プーチンロシアが今無謀な戦争をしている」ように「軍拡すれば平和になる」つうほど話は単純ではない。
 それにしても「米国のせいだけではない」ですが、こうした「軍事費増額」を要請してるのは勿論「米国」でありその根拠は日米同盟(日米安保)です。
 「福祉や教育といった暮らしを守るためにも日米安保廃止が急務」というべきでしょう。そして「米国で軍事費を増やすことが困難になったから」といって「日本に押しつけようとするバイデン民主党政権」には怒りを禁じ得ません。勿論「トランプ共和党政権」も「同じ方向」なので、「国民生活を守るため」には「米国との対決」は不可避と言えるでしょう。そしてそうした「米国批判」といえば「日本共産党ぐらいしかない」という現状にはげんなりします。
 しかし「冷静に考えれば」、「ウクライナでのロシア軍苦戦」「対ロシア経済制裁」は「軍事的脅威が今の国際社会に少ないこと(ウクライナで苦戦するロシアはウクライナ以外にとっては脅威ではないし、ロシアの国際的苦境を見て戦争したがる国もまずない)」の証明でしょうが、日本に限らず世界的にも「火事場泥棒的」に軍事費増額を主張する政治家が少なくないことにはげんなりします。
 プーチンの弊害は「ウクライナ侵攻」は勿論当然ですが、それだけでなく「日本を含む世界の軍拡主張」を助長してしまったことだと思います。本来は「軍事費増額などプーチンと同じ路線だ。そんな路線は目指すべきではない」と拒否すべきでしょうに。「共産党の奮闘」を願ってはいますが、「岸田政権の軍事費増額主張を支持する世論が多い*2」ようだし、参院選結果が今から憂鬱です。


公明・山口代表、態度一変 防衛費増額に理解 - 産経ニュース
 いつもながらデタラメ極まりない「自称平和の党・公明」です。それとももう、その「自称」はやめたのか。

*1:こういうことを書くとid:kojitakenに『この人(ボーガス注:俺のこと)がもともと、北朝鮮を擁護したり(天皇制と共産党と山本太郎と - kojitakenの日記参照)』なんて言われるんでしょうか。kojitakenが「ボーガスの言葉など引用したくない」として具体例を何も挙げないので、kojitakenにとって「俺の文章」の何が「北朝鮮擁護」なのか全く分かりません。しかし、例えば今回のこの文章をいちいち『「北朝鮮の軍拡擁護」ではなく日本の軍拡は正当化し、北朝鮮の軍拡は非難する産経のデタラメさを批判してる』と断らなくてもまともな人間は「北朝鮮擁護とは思わない」と思うんですが違うのか?

*2:さすがに軍事費増額が今のような抽象論ではなく、現実化したら批判も出てくるのではないか、今は具体案が出てないから考えなしに「賛成」主張も多いのではないかと思いますが。