高世仁に悪口する(2024年8/11日分)

「占領軍によって日本は平和国家になった」は神話だった - 高世仁のジャーナルな日々

 「ウクライナが抵抗をやめないから犠牲が増えている。はやく降参すれば戦争は終る。占領されても戦争よりはいいはずだ」
 こう考える日本人が少なくない。

 いわゆる「停戦論」「終戦論」(注:高世の言う「降参」ではない)は是非はともかく「勝算の見えない戦争(2022年2月の開戦から既に2年が経過)を何時までも続けていていいのか?」という話であって、高世の言うような話では無いと思います。かつ日本において高世が言うほど「停戦論」「終戦論」の立場の日本人は多くはないでしょう。
 だからこそ自民党政権も停戦論、終戦論の立場ではないし、マスコミもそうした主張をまるで報じない。

 「米軍など連合国軍による占領で、(ボーガス注:戦後の戦犯裁判と憲法九条制定で?)日本は平和国家に生まれ変わった」とされているが、そんなのは「神話」だとずばり指摘するのは日本近現代史研究者の藤目ゆき*1大阪大学教授だ。7月30日の『朝日新聞』朝刊から紹介する。

 「そりゃそうだよ、(戦犯裁判や憲法九条の意義は否定しないが)A級戦犯賀屋興宣(戦前、第一次近衛、東条内閣蔵相。戦後、終身刑判決を受けるが後に仮釈放、公職追放も解除され政界復帰)が自民党政調会長(池田総裁時代)、池田内閣法相として復権する国なんだから。米国にとって都合が良ければ戦犯でも利用するのに何処が連合国(事実上、米国とイコール)によって平和国家(平和愛好国家?)に生まれ変わった、だよ」
 「そりゃそうだよ、政権与党(自民)の政治家が日中戦争、太平洋戦争を美化する右翼神社(靖国神社)に集団参拝してるし、それを米国も容認してるんだぜ(さすがに首相参拝だと米国も批判しますが)。何処が(以下略)」
 「そりゃそうだよ、自衛隊が直接戦闘してないとは言え、朝鮮戦争ベトナム戦争等では在日米軍基地から米軍が戦争に出撃していったんだぜ。何処が(以下略)」
 「未だ自衛隊が戦争したことは無いと言え、多額の軍事費を使い、世界有数の軍事力なんだぜ。何処が(以下略)」
等と思ったらそういう意味では無かったようです。どういう意味かは、あえて説明しませんが。
 なお、藤目氏に『「慰安婦」問題の本質』(2022年、白澤社:勿論、林博史*2『日本軍「慰安婦」問題の核心』(2015年、花伝社)、吉見義明*3従軍慰安婦』(1995年、岩波新書)、『日本軍「慰安婦」制度とは何か』(2010年、岩波ブックレット)、『買春する帝国: 日本軍「慰安婦」問題の基底』(2019年、岩波書店)等と同様「慰安婦は違法」の立場)という著書があること、一方、救う会のウヨ連中「西岡力救う会会長)」「島田洋一救う会副会長)」らが藤目氏と違い「慰安婦違法性否定論」の立場であることをどう思うか高世に聞いたらしどろもどろでしょう。
 また、藤目氏の著書『女性史からみた岩国米軍基地:広島湾の軍事化と性暴力』(2010年、ひろしま女性学研究所)でわかるように「本土の米軍基地でも米兵犯罪の被害があったこと」をどう思うか「沖縄基地・本土引き受け論」の高世に聞いたらしどもどろでしょう。いつもながら高世も呆れたバカです。
 というか高世が引用する藤目コメント自体が

 岩国基地山口県)や横田基地(東京都)周辺では軍用機の墜落事故が起き、住民が巻き添えになりました。

として「本土での過去の米軍基地被害」を指摘しているのですが。

 先の大戦(戦争の名称すら決められない日本)

 「はあ?」ですね。
 自民党政権の「公式名称」はないのかもしれませんが、高世の言う「先の戦争」が「中国との戦争」であれ「米英との戦争」であれ

アジア・太平洋戦争(いわゆる太平洋戦争と恐らく同義だが、太平洋戦争が『インパール作戦(インドで英国軍と戦闘)』など太平洋と呼べない場所も戦場としたため『太平洋戦争』呼称は不適切と考える方がこう呼ぶ):刊行年順】
 吉田裕*4アジア・太平洋戦争』(2007年、岩波新書
 山中恒*5アジア・太平洋戦争史』(2015年、岩波現代文庫)
日中戦争:刊行年順】
 臼井勝美*6日中戦争(新版)』(2000年、中公新書)
 笠原十九司*7日中戦争全史 (上)(下)』(2017年、高文研)
 井上寿一*8日中戦争:前線と銃後』(2018年、講談社学術文庫)
【太平洋戦争:刊行年順】
 児島襄*9『太平洋戦争 (上)(下)』(1965年、中公新書)
 家永三郎*10『太平洋戦争』(2002年、岩波現代文庫)

等の呼び方は当然あります。
 「先の戦争」についての「様々な政府公式文書」だってそれらの用語のいずれかを使用してるのではないか。

*1:著書『性の歴史学公娼制度・堕胎罪体制から売春防止法優生保護法体制へ』(1997年、不二出版)、『占領軍被害の研究』(2021年、六花出版)等

*2:関東学院大学名誉教授。著書『沖縄戦と民衆』(2001年、大月書店)、『BC級戦犯裁判』(2005年、岩波新書)、『シンガポール華僑粛清』(2007年、高文研)、『戦犯裁判の研究』(2009年、勉誠出版)、『沖縄戦 強制された「集団自決」』(2009年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『沖縄戦が問うもの』(2010年、大月書店)、『米軍基地の歴史』(2011年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『裁かれた戦争犯罪:イギリスの対日戦犯裁判』(2014年、岩波人文書セレクション)、『暴力と差別としての米軍基地』(2014年、かもがわ出版)、『沖縄からの本土爆撃:米軍出撃基地の誕生』(2018年、吉川弘文館歴史文化ライブラリー)、『帝国主義国の軍隊と性:売春規制と軍用性的施設』(2021年、吉川弘文館)、『朝鮮戦争無差別爆撃の出撃基地・日本』(2023年、高文研)等。個人サイトWelcome to Hayashi Hirofumi'

*3:中央大学名誉教授。著書『毒ガス戦と日本軍』(2004年、岩波書店)、『焼跡からのデモクラシー:草の根の占領期体験』(2014年、岩波現代全書)、『草の根のファシズム:日本民衆の戦争体験』(2022年、岩波現代文庫)等

*4:一橋大学名誉教授。著書『天皇の軍隊と南京事件』(1985年、青木書店)、『昭和天皇終戦史』(1992年、岩波新書)、『現代歴史学と戦争責任』(1997年、青木書店)、『日本の軍隊:兵士たちの近代史』(2002年、岩波新書)、『日本人の戦争観』(2005年、岩波現代文庫)、『現代歴史学軍事史研究』(2012年、校倉書房)、『日本人の歴史認識東京裁判』(2019年、岩波ブックレット)、『兵士たちの戦後史』(2020年、岩波現代文庫)等

*5:著書『子どもが<少国民>といわれたころ:戦中教育の裏窓』(1982年、朝日選書)、『子どもたちの太平洋戦争』(1986年、岩波新書)、『ボクラ少国民と戦争応援歌』(1989年、朝日文庫)、『暮らしの中の太平洋戦争』(1989年、岩波新書)、『新聞は戦争を美化せよ!:戦時国家情報機構史』(2001年、小学館)、『すっきりわかる「靖国神社」問題』(2003年、小学館)、『戦争ができなかった日本:総力戦体制の内側』(2009年、角川oneテーマ21)、『戦時児童文学論』(2010年、大月書店)、『少国民戦争文化史』(2013年、辺境社)、『靖国の子:教科書・子どもの本にみる靖国神社』(2014年、大月書店)、『「靖国神社」問答』(2015年、小学館文庫)、『戦時下の絵本と教育勅語』(2017年、子どもの未来社)、『山中恒と読む修身教科書:戦時下の国体思想と現在』(2019年、子どもの未来社)等

*6:1924~2021年。筑波大学名誉教授。著書『日中外交史:北伐の時代』(1971年、塙新書)、『日本と中国:大正時代』(1972年、原書房)、『満州事変』(1974年、中公新書→2020年、講談社学術文庫)、『中国をめぐる近代日本の外交』(1983年、筑摩書房)、『満洲国と国際連盟』(1995年、吉川弘文館)等

*7:都留文科大学名誉教授。著書『アジアの中の日本軍』(1994年、大月書店)、『日中全面戦争と海軍:パナイ号事件の真相』(1997年、青木書店)、『南京事件』(1997年、岩波新書)、『南京事件三光作戦』(1999年、大月書店)、『南京事件と日本人』(2002年、柏書房)、『南京難民区の百日:虐殺を見た外国人』(2005年、岩波現代文庫)、『南京事件論争史』(2007年、平凡社新書→増補版、2018年、平凡社ライブラリー)、『「百人斬り競争」と南京事件』(2008年、大月書店)、『日本軍の治安戦』(2010年、岩波書店→2023年、岩波現代文庫)、『第一次世界大戦期の中国民族運動』(2014年、汲古書院)、『海軍の日中戦争:アジア太平洋戦争への自滅のシナリオ』(2015年、平凡社)、『憲法九条と幣原喜重郎日本国憲法の原点の解明』(2020年、大月書店)、『通州事件』(2022年、高文研)、『憲法九条論争』(2023年、平凡社新書)等

*8:学習院大学教授。著書『アジア主義を問いなおす』(2006年、ちくま新書→増補版、2016年、ちくま学芸文庫)、『昭和史の逆説』(2008年、新潮新書)、『吉田茂と昭和史』(2009年、講談社現代新書)、『山県有朋と明治国家』(2010年、NHKブックス)、『戦前昭和の社会 1926-1945』(2011年、講談社現代新書)、『戦前日本の「グローバリズム」:一九三〇年代の教訓』(2011年、新潮選書)、『戦前昭和の国家構想』(2012年、講談社選書メチエ)、『政友会と民政党』(2012年、中公新書)、『理想だらけの戦時下日本』(2013年、ちくま新書)、『第一次世界大戦と日本』(2014年、講談社現代新書)、『終戦後史1945-1955』(2015年、講談社選書メチエ)、『昭和の戦争:日記で読む戦前日本』(2016年、講談社現代新書)、『教養としての「昭和史」集中講義』(2016年、SB新書)、『戦争調査会』(2017年、講談社現代新書)、『機密費外交:なぜ日中戦争は避けられなかったのか』(2018年、講談社現代新書)、『論点別昭和史:戦争への道』(2019年、講談社現代新書)、『はじめての昭和史』(2020年、ちくまプリマー新書)、『広田弘毅』(2021年、ミネルヴァ日本評伝選)、『戦争と嘘:満州事変から日本の敗戦まで』(2023年、ワニブックスPLUS新書)等

*9:1927~2001年。著書『東京裁判 (上)(下)』 (1971年、中公新書)、『史説山下奉文』(1979年、文春文庫)、『史録日本国憲法』(1986年、文春文庫)、『天皇と戦争責任』(1991年、文春文庫)、『平和の失速:大正時代とシベリア出兵』(1995年、文春文庫)等

*10:1913~2002年。東京教育大学名誉教授。著書『戦争責任』(2002年、岩波現代文庫)、『一歴史学者の歩み』(2003年、岩波現代文庫)等