高世仁に悪口する(2024年8/16日分)

朝ドラの「敗戦責任」について - 高世仁のジャーナルな日々

 メディア史家の佐藤卓己*1上智大教授)は、8月15日をピークとする日本メディアの戦争・平和報道「8月ジャーナリズム」は、他者の存在と降伏の事実を忘却*2したものだと指摘する。
「日本が連合国にポツダム宣言受諾を伝えたのは8月14日ですが、15日はどの戦線でも戦闘が続いていました」
「『終戦』は相手国のある外交事項です。降伏文書に署名した9月2日が国際法上の終戦日」
「8・15終戦記念日は、周辺国との歴史的対話を困難にしてきました。」

 「ちょっと言ってる意味が分からない(サンドイッチマンの富沢)」ですね。
 「終戦記念日を何時にするか(玉音放送の8/15か降伏文書調印の9/2か、高世や佐藤氏は9/2にしたいようですが)」の是非はともかく、そんなことは「周辺諸国(中国、韓国等)」にとっては「日本が勝手にすればいいこと(周辺諸国)」でしょう。少なくともそんなことは「周辺国との歴史的対話」が困難か容易かとは全く関係ない。
 問題は
・あの戦争を反省してるといいながら
1)あの戦争を美化する「つくる会教科書」を検定合格させる
2)「A級戦犯昭和殉難者として合祀する(但し、裁判中病死した人物(松岡元外相など)、服役中病死した人物(東郷元外相など)、死刑になった人物(東条元首相など)限定で、後に鳩山内閣外相として復権した重光葵(東条内閣外相)、池田内閣法相として復権した賀屋興宣(東条内閣蔵相)など、釈放された人物は除く)」など、あの戦争を美化する靖国神社に自民などの右派政治家が「国内外の批判を無視」して多数参拝する
3)サンフランシスコ市に設置された少女像を理由にサンフランシスコ市との姉妹都市協定を破棄する大阪市
4)あの戦争を正当化する右翼の櫻井よしこ(国家基本問題研究所理事長)をこともあろうに中教審委員に任命する第二次安倍内閣
など「反省が口先だけのいい加減な物としか思えない」政治家(自民党政権大阪維新など)の態度とそれを容認する「日本人多数派の態度」です。
 2)についていえば「靖国戦没者追悼施設だ」というのは以前も書きましたが「戦没者でない吉田松陰安政の大獄で死刑)が祀られてる」「戦没者である土方歳三箱館戦争で戦死)が祀られてない」ので大嘘ですが、仮にそうでも「だから戦犯を合祀して何が悪い(とはいえ、そもそも「靖国に合祀された戦犯」は死刑になった東条元首相にせよ、服役中に病死した東郷元外相にせよ、裁判中に病死した松岡元外相にせよ、戦没者ではないのですが)」「内政干渉するな」なんてことをやって周辺諸国とまともに対話できるわけがないでしょう。
 また8月に戦争報道が多い理由の一つは確かに「8/15の玉音放送」ですが他にも「8/6の広島原爆投下」「8/8のソ連参戦」「8/9の長崎原爆投下」

日本本土空襲 - Wikipedia
8月1日
 水戸空襲(茨城県)、八王子空襲(東京都)、長岡空襲(新潟県
8月2日
 富山大空襲
8月5日
 前橋空襲(群馬県)、佐賀空襲、今治空襲(愛媛県
8月7日
 豊川空襲(愛知県)
8月8日
 福山大空襲 (広島県
8月9日
 大湊空襲(青森県
8月10日
 花巻空襲(岩手県)、熊本空襲
8月11日
 久留米空襲(福岡県)、加治木空襲(鹿児島県)
8月12日
 阿久根空襲(鹿児島県)
8月13日
 長野空襲
8月14日
 岩国空襲、 光市空襲(以上、広島県)、熊谷空襲(埼玉県)、伊勢崎空襲(群馬県)、小田原空襲(神奈川県)、土崎空襲(秋田県

など「8月にあった空襲(当然ながら玉音放送後は空襲はない)」等「8月に集中した戦争被害」もあります。
 「8/15のポツダム宣言受諾公表を重視するから、8月に戦争ジャーナリズムが多い」なんて主張はそもそも「事実として間違っています」。

*1:京都大学名誉教授。上智大学教授。著書『メディア社会』(2006年、岩波新書)、『輿論と世論』(2008年、新潮社)、『大衆宣伝の神話(増補版)』、『八月十五日の神話(増補版)』(以上、2014年、ちくま学芸文庫)、『青年の主張』(2017年、河出ブックス)、『テレビ的教養』(2019年、岩波現代文庫)、『流言のメディア史』(2019年、岩波新書)、『『キング』の時代』(2020年、岩波現代文庫)、『負け組のメディア史:天下無敵・野依秀市伝』(2021年、岩波現代文庫)、『あいまいさに耐える:ネガティブ・リテラシーのすすめ』(2024年、岩波新書)、『言論統制:情報官・鈴木庫三と教育の国防国家(増補版)』(2024年、中公新書) 等

*2:9/2の降伏文書調印を軽視してるとは言えるでしょうが、「他者の存在と降伏の事実を忘却」とはいえないでしょう。「ポツダム宣言受諾公表(8/15)」はまさに「降伏の事実」そのものだからです。