【産経抄】6月23日(追記・訂正あり)

 今日の産経抄はいつも通りの民主叩き。いや、小沢叩きといった方が良いか。今民主は「脱小沢」をアピールしようとしているので小沢叩きしても、あまり意味はないと思うのですが。共産みたいに「消費税増税は公約違反」とか政策批判すればいいのに?。
 まあ、産経抄に正直そう言うことは期待していませんが。

 亡くなってから17年もたつというのに、出版界ではちょっとした「角さんブーム」が起きている。週刊誌が小沢一郎民主党前幹事長の“失脚”にひっかけて田中角栄元首相の特集を組めば、月刊誌「新潮45」は生前の演説をCDにして付録につけた。

・大体、週刊誌1誌と月刊誌「新潮45」だけでブームと言えるんでしょうか?
・それとその週刊誌は週刊新潮ではないでしょうね?
・もし週刊新潮だとしたら「新潮社」でのブームに過ぎないのではないですか?
・しかも「小沢氏失脚に引っかけて」と言うのはブームと言えるんですか?

 ロッキード裁判が進行中だった昭和50年代後半の演説を1時間10分にまとめたものだが、故郷・新潟を中心に売れているという。演説では中国共産党の本質を「これは便宜共産主義です」と言い当て、「公明党は危急存亡の時は、自民党と一緒になる」と未来の自公連立を予測している。そうした先見性以上に聞きどころは、独特のだみ声で繰り出される角栄節だ。

・小学校卒でありながら、東大卒の元大蔵官僚・福田赳夫に勝った「角さん」はスゴイ人だと思います(なお、ここでいう「スゴイ」とは私のような凡人には出来ない才能と努力の持ち主だという意味で別に角さんを政治家として評価しているわけではありません)
・角さん以前に戦後誕生した首相で角さんのようなノンエリートと言えるのは石橋湛山(ジャーナリスト出身)と片山哲(弁護士出身、社会党)だけでしょう(その彼らとて角さんと比べたら大卒という立派なエリートですし、彼らは戦後政界入りした角さんと違って戦前から政界ないしその周辺で活躍していました)。
残りは
鳩山一郎:東大卒の二世政治家。父・和夫は衆議院議長をつとめた名士。
幣原、吉田、芦田、岸、池田、佐藤:全員、東大卒のエリート官僚出身、ですから。まさに角さん恐るべしです。今太閤と騒がれたのも分かる気がします。
 角さん以後の首相も、
エリート官僚出身:福田赳夫、大平、宮沢
世襲議員:羽田、橋本、小渕、小泉、福田、安倍、麻生、鳩山
角さんや我々一般人に比べたらずっとエリート:竹下(代々続く造り酒屋)、細川(先祖が熊本藩主)
ですから、やはりノンエリートは首相になるのは難しいようですな。それ以外のノンエリート総理は鈴木(大平の急死で就任)、宇野(リクルート事件で有力幹部が疑惑まみれのため棚ぼた)、海部(宇野のスキャンダル辞任で就任)、森(小渕の急死で就任)と就任の経緯が何だかな?(はっきり言えばこの人、幸運だよな、普通なら、首相になれないだろと言う就任経緯)、という人が多いし(以上はウィキペディアを参照)。
・長たらしい文になりましたが、要するに角さんがスゴイ人であることは私も認めます。しかし産経抄が紹介するこれらの発言について言えば別にスゴイ発言とも思いません。
 「これは便宜共産主義です」
 文革を起こした毛沢東はともかく、「黒猫・白猫論」(黒猫でも白猫でも鼠を捕るのがよい猫)のトウ小平を「便宜共産主義」と理解するのは別に不思議なことではありません。経済が高成長したのは最近のこととは言え、「角さん」生存の頃から中国はトウの指導の下「改革・開放」政策を進めてきました。
 NHK好きの癖に「大地の子」を見たことがないのですか?
 「公明党は危急存亡の時は、自民党と一緒になる」
 単に当時から公明党自民党が裏ではズブズブの関係にあったと言うだけでしょう。そういうのは先見の明とは言いません。
 それをよく示すのが「二階堂進擁立工作への公明党の関与」や「いわゆる創価学会言論・出版妨害事件への角さんの関与」(公明の依頼で角さんは藤原弘達に圧力をかけている)でしょう。
・どうせ角さんをほめるのなら、「日中国交正常化」を取り上げればいいのに。取り上げない理由は何となく分かりますが。
・「聞きどころは、独特のだみ声で繰り出される角栄節」って、浪花節や黒田節みたいな扱いはねえ(苦笑)。政治家の演説で一番大事なのは中身であって、節じゃないと思うんですが。


 以下面倒なので、引用はしませんが、角さんは立派だった、それに比べて小沢は、という文章には呆れかえってしまいました。
 角さんがロッキード事件で無罪を唱え裁判をひっくり返そうとしたこと、そのために「目白の闇将軍」となったことを産経は知らないんですか?。(しかもさんざん無罪だと主張していた角さんですが、私の記憶が確かならば、被告人が法廷で意見を述べることが出来るときには何も言わなかったため、立花隆から「なぜ何も言わない」とさんざん非難されているのですが?)
 当時から「非党員が自民党を事実上支配するなんて異常だ」(角さんは世論の批判から表向きは自民を離党したので)と言われていたのですが?。 

【追記】
「本日の産経SHOWと阿久根政界NOW:角影政権」(http://d.hatena.ne.jp/slapnuts2004/20100623/p1)にコメント。

 ライバルの福田赳夫氏は国府寄りでしたから、角さんが中共との関係改善に努めたのは不思議でもなんでもありません。

 既に角さんの前任者、佐藤栄作首相の時に「中国の国連加盟」「ニクソンの中国訪問」(いわゆるニクソンショック。正式に樹立したのはカーター時代のようですが事実上ニクソン訪問で、国交樹立は既定路線となります)が実現しています。佐藤時代から日本には中国との国交樹立しか道は残っていませんでした。欧米が中国と国交樹立しても俺は樹立しないという態度はさすがに取れないでしょうから。むしろ何故佐藤時代に国交が回復できなかったのかの方が私には謎です。
その意味では角さん以外の誰が総理になっても「中共との関係改善に努め」ざるを得なかったでしょう。実際、日中平和友好条約は福田内閣時代に成立しています。