今日の産経ニュース(4/9分)(追記・訂正あり)

■【アジアインフラ投資銀】「借りた金は返すのが当たり前。こっちは税金を預かっている」麻生*1財務相、AIIB不参加理由を激白
http://www.sankei.com/economy/news/150409/ecn1504090042-n1.html
 「麻生ってバカ?」と思いますね。いや実際バカなんでしょうけど。「AIIBには分からないところが多いから出資した金が返ってくるか分からない*2ので不安だ」てそりゃ分からないところが多いのは当然でしょうよ。
 細かいところはこれから詰めてくんだから。「細かいところが決まってなくて不安だ」「いったん入ると出づらい」レベルで「不参加」ならTPP交渉だって不参加であるべきでしょう(日本政府は参加してるわけですが)。
 「いやいろいろリスクはあっても、入ることには意味があると思う、入った上で中から変えていけばいい(TPP)」というなら何でその理屈がAIIBに適用されないのか。結局「中国の経済大国化を望まない反中国」「AIIBに現時点では消極的な米国への遠慮」てだけでしょうに。


■「古代史でも日本が歪曲」韓国首相、中学校教科書の「任那(みまな)日本府」記述を批判
http://www.sankei.com/world/news/150409/wor1504090037-n1.html
 教科書記述も問題でしょうがもっと問題なのは「文化庁が所蔵品の記述を三国時代から任那時代にかえた」てことでしょうね。大体「いわゆる任那日本府説」は「戦前日本によって朝鮮植民地支配の正当化根拠にされた」と言う歴史があり、また今の日本歴史学会では「戦前のような形の任那日本府*3は既に廃棄された*4」ことを考えれば、今は極右安倍政権ですし「任那記述には黒い意思がある」と韓国側に疑われても仕方がないでしょう。日本の韓国・朝鮮史研究者も積極的にこの件で安倍批判すべきでしょう。

参考

http://www.chosunonline.com/site/data/html_dir/2015/04/09/2015040902588.html
中央日報三国時代文化財を「任那時代」と表記 修正要請方針=韓国』
 韓国政府は日本の文化庁が韓国文化財の一部を「任那時代」のものと説明していることについて抗議し、修正を求めることを検討している。韓国文化財庁傘下の国外所在文化財財団への取材で9日、分かった。
 日本が4〜6世紀、朝鮮半島の南部を支配したとする「任那日本府説」は日本の多数の学者らも根拠がないとの見解を示している。

http://japanese.donga.com/srv/service.php3?biid=2015041047008
東亜日報『オピニオン:植民史観の象徴「任那日本府」』
任那日本府説」とは、4〜6世紀に倭が韓半島南部の任那金官伽倻)に統治機構を設置して治めたという学説だ。8世紀の日本の歴史書日本書紀」によると、神功皇后が369年に任那を占領して実質統治し、562年に新羅によって滅亡したということだ。京城帝国大学歴史学者、末松保和*5が主張し、植民地支配の歴史的正当性を与える役割をした。
日本書紀に「任那」という言葉が200回ほど登場することから、伽倻に倭が一定の勢力を形成していたことを否定することは難しい。問題はその性格だ。韓日の学者は、任那日本府を「伽倻に居住する倭の居留民団代表」だとか「大和政権との貿易と交流を仲介する機構」と見る。存在期間も200年ではなく15〜30年。「金伽倻」という別名を持つ伽倻専門の弘益(ホンイク)大学の金泰植(キム・テシク)教授は、「伽倻国の特殊な外務官署と見る。明らかな点は、血統がどこであれ任那日本府が倭ではなく、阿羅伽倻王のために働いたということだ」と指摘した。
◆韓日歴史共同研究委員会は、2年6ヵ月間研究を行い、2010年に発表した最終報告書で、韓半島に外国の領土が存在したとか、外国が韓半島で大々的な軍事活動を展開したという任那日本府説を再検討・訂正する必要があり、任那日本府という用語も不適切だということで意見が一致した。韓日間の歴史に対する認識の隔たりにもかかわらず、この部分だけは合意したわけだ。
◆日本が東京国立博物館所蔵の三国時代の23の遺物のうち「単龍文環頭大刀残欠」など8つの出土地域の表記を「韓国昌寧」から「任那」に変えたとあるメディアが報道すると、日本文化庁が「1936年に重要文化財に指定した当時から『任那』と書いてきた」と説明した。それならば幸いだが、安倍晋三首相の歪んだ歴史認識が古代史まで拡大するのではないかという憂慮が残る。「任那」とは、古代日本が韓半島の南部、特に現在の晋州を呼んだ名称だが、韓国では植民史観の象徴と記憶されていることを日本は知らなければならない。

任那日本府(ウィキペ参照)
 第二次世界大戦前の日本における伽耶地方の研究においては、『日本書紀』に現れる任那日本府倭国朝鮮半島南部を支配するために設置した出先機関であると史書どおり解釈したものであった。
 しかし1970年代以降洛東江流域の旧伽耶地域の発掘調査が飛躍的に進み、文献史料の少ない伽耶史を研究するための材料が豊富になってくるとともに既存の保守的な解釈を捨て新たな歴史解釈を提唱する者が現れた。
 井上秀雄*6は、任那日本府は『日本書紀』が引用する『百済本紀』における呼称であり、『百済本紀』とは百済王朝が倭国ヤマト王権)に迎合的に書いた史書で、従来の研究はこの史書の成立事情を考慮してこなかったと批判し、任那日本府について朝鮮総督府のようなものが想定されることが多いが、実態は、半島南部の倭人の政治集団とみている。
 請田正幸は「日本府」とは政治的な機関・機構ではなく、使者の意味であり、実体は倭王権が派遣した単なる使者であるとし、吉田晶*7は、倭国が国を形づくる上で畿内勢力が朝鮮諸国の発達した文化を独り占めすることが要だったと主張、「日本府」の実態を倭王権から派遣される府卿と加羅諸国の首長層もしくは上級貴族から成り立ち、外交を始めとする重要な事柄を論議する会議だと主張している。
 吉田孝*8は、「任那」とは、高句麗新羅に対抗するために百済倭国と結んだ任那加羅金官加羅)を盟主とする小国連合であり、任那倭国の軍事力を勢力拡大に利用するために倭国に設置させた軍事を主とする外交機関を後世「任那日本府」と呼んだとみる。
 日本の文部科学省は、2002年に「新しい歴史教科書をつくる会」による歴史教科書の「倭(日本)は加羅任那)を根拠地として百済をたすけ、高句麗に対抗」との記述に検定意見をつけて「近年は任那の恒常的統治機構の存在は支持されていない」と述べている。

 要するに東亜日報やウィキペ「任那日本府」が指摘するように「任那日本府大和朝廷の朝鮮統治機構」と見なす説はもはや時代錯誤だと言う事です。


■『首相「新教育基本法にのっとり実施されるべきではないか」 国立大の国旗掲揚や国歌斉唱』
http://www.sankei.com/politics/news/150409/plt1504090012-n1.html
 やれやれですね。新教育基本法に対する懸念「国歌斉唱の強要」をこうまで露骨に公言するとはさすが非常識極右の安倍です(質問者が次世代の松沢と言う事はさすがの自民も自分からはこういう質問をすることは躊躇してるのでしょうか)。
 基本法改正当時「そういうことはない」と言っていたはずなんですがね。もちろんこういう安倍の発言に公明党が抗議しないのもいつもの風景です。しかし「小中高校」ならまだしも大学相手にこういう事言うとはいい度胸してます。そのうち「国益に反する研究はするな」とでも言い出す気でしょうか。
 「税金で賄われてるから国に従え(安倍)*9」てそれ言ったら「私学助成受けてる私学」も同じ事になりますし、大体「入学金、授業料などの自己収入も国立大にはある」わけで「税金全額で賄われてる」わけでもない。「入学金、授業料払ってる生徒の保護者にはそういうのに否定的な人もいる」事を考えればむしろ「斉唱すべきでない」でしょう。

 松沢氏が示した文科省の資料によると、直近の卒業式で国歌斉唱を実施したのは国立86大学のうち14大学にとどまった。

 むしろやってる大学があることの方が驚きです。どういう経緯か分かりませんが。


■日中議会交流、3年ぶりに再開 「歴史」「尖閣」「中国軍事費」で応酬
http://www.sankei.com/politics/news/150409/plt1504090024-n1.html

 衆院と中国の全国人民代表大会全人代=国会)代表者による「日中議会交流委員会」が9日、国会内で開かれた。議会交流委は、日本政府が平成24年9月に尖閣諸島沖縄県石垣市)を国有化したのを機に途絶えており、約3年ぶりの再開となった。
 衆院側団長の林幹雄*10議院運営委員長は冒頭、「日中は互いに重要な隣国。議会交流は、両国関係を進展させる上で大変有意義だ」と述べ、再開を評価。
(中略)
 これに先立ち、町村信孝*11衆院議長と山崎正昭*12参院議長は、それぞれ吉氏と会談し、日中両国の関係改善に向け、議会交流を進めていくことで一致した。

 まあ、産経の希望とは違い、自民党は中国と「極端に敵対すること」はさすがにできないのでしょう。
 「でも歴史問題や尖閣や、中国の軍事費の増大で自民党は言うべき事は言った」という産経ですが、まあ、産経だって自分の主張が「泣き言」であることは内心では自覚してるでしょう。

*1:橋本内閣経済企画庁長官、森内閣経済財政担当相、小泉内閣総務相、第一次安倍内閣外相、自民党幹事長(福田総裁時代)などを経て現在財務相

*2:つうか記事を読む限り「杜撰融資でかえってこないに決まってる」と麻生が決めつけてる節があって「おいおい、そこまで言ったら参加申請しづらいだろうが、参加する意思は完全にゼロかよ?」と首をひねります。

*3:「日本(大和朝廷)が朝鮮の一部を支配、統治するための機関」と言う説は既に定説ではありません。

*4:産経は「任那は実在した」と話のすり替えを謀っていますが、韓国が問題にしてるのはそういうことではありません。「任那日本府大和朝廷による朝鮮の統治機関かどうか」が問題になっているのです(そして統治機関説は今では通説ではない)。つうか話のすり替えをしてる時点で産経が「嘘つきであること」は明白です。

*5:著書『新羅史の諸問題』(1954年、平凡社東洋文庫)、『任那興亡史(増訂版)』(1956年、吉川弘文館)など

*6:著書『古代朝鮮』(2004年、講談社学術文庫)など

*7:著書『卑弥呼の時代』(1995年、新日本新書)、『倭王権の時代』(1998年、新日本新書)、『七支刀の謎を解く:四世紀後半の百済と倭』(2001年、新日本出版社)、『古代日本の国家形成』(2005年、新日本出版社)など

*8:著書『古代国家の歩み』(1992年、小学館ライブラリー)、『日本の誕生』(1997年、岩波新書)、『飛鳥・奈良時代』(1999年、岩波ジュニア新書)など

*9:この理屈だと「私立ならともかく」国立大について、中国、北朝鮮だのが国家統制を強めても批判出来ませんがそんな論理一貫性はどこにもなく中国、北朝鮮だのの批判を始めるのが安倍や産経ら日本ウヨです。

*10:福田、麻生内閣国家公安委員長

*11:森内閣文科相、小泉、第1次安倍内閣外相、福田内閣官房長官など歴任

*12:小泉内閣官房副長官