今日の産経ニュース(2020年7月3日分)

【風を読む】「専守防衛」は危うい本土決戦論 論説副委員長・榊原智 - 産経ニュース
 6月30日付の少し古い記事ですが、あまりにも珍論なので突っ込んでおきます。

・日清、日露戦争、シベリア出兵、日中戦争といった『専守防衛とは言えない戦争』を実行し、米国相手に真珠湾攻撃で開戦した「専守防衛国では無かった」戦前日本が、米国によって「本土決戦直前」に追い込まれたこと(結局、昭和天皇が無条件降伏)
・イランと戦争したり、クウェートに侵攻した過去がある「専守防衛国では無かった」フセインイラクが、イラクに侵攻した米国によって「本土決戦」に追い込まれたこと(フセイン政権が転覆し、フセイン自身も後に米国主導の軍事裁判で死刑判決)

で分かるように、「本土決戦になるかどうか」は専守防衛かどうかとは全く関係ありません。
 相手の軍事力が圧倒的で、自分の軍事力が弱ければ、そして相手側が自分を「本土決戦してでも完全に打倒する」と決意していれば、本土決戦に追い込まれうる。
 とはいえそこで「本土決戦を避けるために世界最強の軍事力を持てばいい」というのは現実的でも適切でも無いでしょう。
 そして、むしろ「専守防衛」であれば、戦前日本のように「自分から開戦する愚行」はあり得ないので「本土決戦の可能性が低くなる」。
 「日本が開戦しないのに向こうから攻めてくる」などということは国際的非難を考えればそうそうできることではない。
 そもそも「ある程度の軍事力」があれば「日本侵攻→日本での本土決戦」に限らず、そうそう簡単に「本土侵攻→本土決戦」など向こうも決意できません。仮に「本土決戦で相手を打倒できた」としてもその過程で出る大量の犠牲に対し「本土決戦の必要があるのか?」という批判が出て政権維持が危なくなることが容易に想定できるからです。
 米国ブッシュ子政権が「悪の枢軸」呼ばわりしながらも実際に本土決戦したのは「フセインイラク」のみで、イランや北朝鮮キューバに侵攻しないのもそういうことです。


【主張】感染再拡大 「緊急事態」視野に議論を - 産経ニュース
 一日の感染者が100人を超すという前例のない事態(一部のテレビ局では緊急速報も出たようです)になっても、口先で「深刻だ」というだけで、まともに動いてるようには見えない安倍政権や小池都知事には心底呆れます。経済への悪影響を考えれば、過去の緊急事態宣言のように「デパート、スーパー、映画館など一般商業施設全般にまでは営業自粛は求められない(と思ってるからこそ、安倍政権も小池もそのような動きに出ないのでしょう)」にしても、もはや主要な感染ルートと疑われる「キャバクラなど夜の歓楽街(新宿歌舞伎町など)限定」で、改めて「非常事態宣言発令」などによる営業自粛を求めるべきでは無いのか。
 しかし小池が新型コロナでここまで無能さをさらしても、「自公の支援で小池優位」なんですかね(げんなり)。そして、正直、このままでは「仮に小池が当選しても」コロナ蔓延による小池非難の高まりで早晩、辞任に追い込まれることすらあるのでは無いか。


【主張】ロシアの改憲 北方四島の返還遠のいた - 産経ニュース
 今回の改憲で更なるプーチン*1の長期政権が可能になりました。仮にプーチンがこの改憲を利用して「更なる長期政権を目指すことはしない(大統領を早晩引退する)」にしても「長期政権もやろうと思えば可能なこと」を利用して「自分の子飼い(メドベージェフ*2元首相など?)を次期大統領に据え、政治力の一定の維持を狙うこと」は間違いないでしょう。プーチンの政権基盤が強化されたことは確かです。
 しかし、「反プーチン派(日本での野党各党に当たる)が政権につけば」あるいは「プーチンが引退すれば、反プーチン派が政権につかなくても(日本で言えば第一次安倍政権崩壊後の福田政権、現安倍政権退陣後に予想される石破政権や岸田政権など)」北方領土返還の見込みが高まるというならともかく、そんな見込みは無いでしょう。ロシアにおいて「北方領土を返還してもいい」という政治勢力は超少数派でしょう。
 つまりはこの社説タイトル「ロシアの改憲 北方四島の返還遠のいた」は認識としておかしいと言うことです。

 プーチン政権が(ボーガス注:北方領土問題の)まともな交渉相手となり得ないのは、その強権的な政治手法に拍車がかかっているからだ。
 プーチン氏はこれまでも議会や司法といった民主主義の根幹を骨抜きにし、政敵排除で自らに権力を集中させてきた。

 認識としておかしいですね。「国内統治が強権的かどうか」と「外交交渉が成り立つかどうか」は全く別問題です。大体こんなことを言ったら「北朝鮮との拉致問題交渉」が成り立たないでしょうよ。まあ、産経らウヨは「北朝鮮と交渉する気は無い」のでしょうけど、それは事実上「拉致の解決を諦めること」と同じです。

*1:エリツィン政権大統領府第一副長官、連邦保安庁長官、第一副首相、首相を経て大統領

*2:大統領府第一副長官、長官、第一副首相、大統領(この時期、プーチンは首相兼与党「統一ロシア」党首)、首相など歴任