今日の産経ニュース(2021年3月18日分)

【阿比留瑠比の極言御免】今こそ立ち上がるべき教科書議連 - 産経ニュース

 来月から使われる山川出版社の中学歴史教科書の中に、史実にはない戦後の造語である「従軍慰安婦」という言葉が登場する。

 と言う阿比留ですが、そうした検定を容認したのは「安倍首相(当時)、萩生田文科相」であることをどう考えてるのか。
 あるいは「つくる会教科書の検定不合格」をどう考えてるのか。
 これが民主党政権なら糞味噌でしょうが明らかに腰が引けています。
 なお、以前も指摘しましたが仮に「従軍慰安婦」が戦後の造語であろうともそんなことは何ら問題ではない。
 その阿比留の物言いなら例えば「弥生土器」はどうなるのか。「弥生町から見つかったから」弥生土器のわけですが、もちろん弥生土器がつくられた時代に「弥生町」は存在しません。


「回答する立場にない」 渡辺さん所属の吉本興業 - 産経ニュース
 要するに「何ら問題ない」と言えば「女性差別を容認するのか」と批判される恐れがある。一方で「文春が批判したように問題があると思う」と批判すれば五輪組織委員会や「組織委員会のメンバー」が恨みに思って報復するかもしれない。「沈黙が金」ということでしょう。
 しかし、今日のTBSラジオ森本毅郎スタンバイ』でリスナーの投稿で「女性差別云々、渡辺さんに失礼云々以前に、『(東日本大震災からの)東北復興五輪』じゃなかったのか。何で演出の中に、東北復興という話が出てこないのか。東北復興なんて本心では全く考えてないから、こういうことになる。東北の人々に失礼だ」というものがありましたが、全く同感ですね。


自民、下村氏4月の首相訪米受けた衆院解散「可能性としてある」 - 産経ニュース
 まともな人間なら「コロナが終息してない今の時点でそんなことを言えば『コロナ対策に政府は本気ではない』とか『コロナなんて何ら怖くない。風邪と一緒』などの誤解を招く。現時点では解散云々など述べられる状況ではない」と言うでしょうにどれほど非常識なのか。


改憲で緊急事態条項創設を 下村氏、新型コロナ対応 - 産経ニュース
 緊急事態宣言すら「経済的ダメージ」が怖くて3/21に発動を解除するというのに「緊急事態宣言よりハードルの高い緊急事態条項」をコロナ対策云々というのだから呆れて二の句が継げませんね。


【主張】皇位継承の会議 正統守る安定策の検討を - 産経ニュース
 いつもの「女帝反対」「終戦直後、臣籍降下した元皇族を復帰させれば良い」という与太です。


【主張】同性婚否定「違憲」 婚姻制度理解せず不当だ - 産経ニュース

 札幌地裁は賠償請求を棄却しながらも、同性婚を認めないのは法の下の平等を定めた憲法14条に反すると「違憲」判断を示した。
 婚姻制度は男女を前提とし、社会の根幹を成す。それを覆す不当な判断だと言わざるを得ない。婚姻制度は、男女の夫婦が子供を産み育てながら共同生活を送る関係に法的保護を与える目的がある。社会の自然な考え方だ。

 産経なら予想の範囲内ですが絶句ですね。何でそんなに同性婚合法化を嫌うのか。

 一方で、札幌地裁は、憲法24条の「婚姻は両性の合意のみに基づく」との条文について、「異性婚について定めたものであり、同性婚について定めるものではないと解するのが相当である」として、原告側の主張を退けた。
 それでは憲法24条は、14条違反ということになる。

 「24条の両性は同性も含む(異性とは書いてないので)」と言う説もありますがそれはさておき。
 「24条の両性は異性限定」とは決して「同性婚は24条違反、24条は同性婚を否定している(産経などウヨ)」と言う話ではない。
 「24条は同性婚については何も定めてない」とも理解できるわけです(外国人地方参政権についての最高裁判例なども「国民の参政権のみ定めがある→外国人の参政権を全面禁止しているのでは無く、地方参政権については立法府の自由裁量」という似たような理解です)。
 その上で「同性婚に付いて24条には定めがないこと」は「同性婚については憲法は完全な立法裁量なのかどうか(立法府の自由な判断に任されてるのかどうか)」について「14条を根拠に完全な立法裁量とは言えない」としたのが今回の判決です。今回の地裁判決の24条解釈は「是非はともかく」論理的矛盾はどこにもない。


【産経抄】3月18日 - 産経ニュース

・昨日の札幌地裁の判決には驚いた。国が同性婚を認めていないのは、憲法に違反するというのだ。
・妻と不倫した女性に夫が損害賠償を請求できるか。東京地裁は先月、同性同士の性的行為も不貞行為に当たるとして女性に賠償を命じる、これまたびっくり仰天の判決を言い渡している。2つの判決は、整合性が取れているといえば、その通りだが。

 いやいや同性婚の件はともかく「同性相手の浮気は『民法上の不貞』ではない」「不貞扱いするのは同性婚の肯定だ!。許せない」「びっくり仰天した!」て産経の脳みそは大丈夫なんでしょうか。
 夫(男性)が「妻の同性相手の浮気」について「妻の不貞で傷ついた。賠償金を求める」で妻が「同性相手の浮気は民法上の不貞じゃない。民法上の不貞は異性限定だ。だから賠償義務はない」。
 これで妻の言い分を採用して、不貞を認めなかったらそれこそ「男性(勿論、異性愛者)が踏んだり蹴ったり」と言う理解は産経には無いのか。
 なお、「同性愛」を差別してないと言う意味では「ある種の共通点がある」とはいえ「同性婚を認めるか」と「同性相手の浮気を民法上の不貞と認め離婚理由として認めるか、また賠償金請求を認めるか」は問題の性格が違う。「同性相手の浮気を不貞と認めれば、同性婚を認めないとおかしい」と言う論理展開にないので話をぐちゃぐちゃにする産経はおかしい。
 「同性婚は認めないが、同性相手の浮気は不貞だと思う。相手が同性だろうと何だろうと、配偶者の裏切りで心が傷ついたことに変わりは無い」と言う人間は多いかと思います。

▼札幌地裁は、同性同士の結婚が認められないのは、法の下の平等を定めた憲法14条に反すると判断した。では憲法24条はどうなるのか。
「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し、夫婦が同等の権利を有することを基本として、相互の協力により、維持されなければならない」。
▼「両性」と「夫婦」が「男女」を意味するのは明白である。憲法同性婚を禁止している。同性婚を可能にするために、憲法改正を求めていくという主張なら、筋が通っている。

と言う産経の主張「24条=同性婚禁止」が「独自の24条解釈にすぎず通説でも判例でも無いこと」については上に書きましたので繰り返しません。
 それにしても「同性婚を認めるための憲法改正などする気もない」くせに「『同性婚の合法化には改憲が必要(24条は同性婚を禁止している)』を口実に九条改憲を出来れば御の字。改憲に左派やリベラル保守が反対すれば『左派やリベラル保守改憲に反対するから同性婚が合法化できない』と居直れば良い」とはどれほどクズなのか。「拉致解決には九条改憲して自衛隊北朝鮮に投入することが必要」「(コロナや震災を口実に)緊急事態条項改憲ガー」「憲法第1条の世襲には『女性天皇』は含まれない。女性天皇を認めるには改憲が必要」「外国人地方参政権容認には改憲が必要」などまさに「改憲のため(あるいは自分の導入したくない制度の否定のため)なら屁理屈をこねること」に全く躊躇しない産経ら改憲ウヨです。
 まあ、例えば「24条限定(あるいは1条限定)」で「同性婚(あるいは女性天皇制)について産経のような言いがかりを完全になくすため」だけの改憲なら左派やリベラル保守も賛同するでしょうが、そういう「まともな行為」を産経らウヨがするわけもない。
 しかし今日の産経ニュース(2021年3月16日分) - bogus-simotukareのブログで紹介した産経記事<独自>同性との不倫も「不貞行為」 妻の相手に賠償命令(1/2ページ) - 産経ニュースは「普通の記事だった」のにこの産経抄は実に酷い。

 最近の国会で、丸川珠代男女共同参画担当相が選択的夫婦別姓に反対していた*1とつるし上げにあっていた。男女平等と夫婦別姓は別の問題*2である。同じように、同性婚に消極的な意見を口にすれば、差別だと糾弾される日が来る*3のが恐ろしい。

 おいおいですね。夫婦別姓同性婚と「性関係の差別問題」と言う点では共通点があるとは言え、直接の関係はない。
 「同じ民族問題」というだけで「アイヌ(日本)」「チベットウイグル(中国)」「スコットランド北アイルランド(英国)」などの問題をごちゃごちゃにするような無茶苦茶でしょう。
 そして「夫婦別姓反対の人間が男女共同参画担当相でいいのか」「男女平等をモットーとする五輪の担当相で良いのか。森会長が女性差別暴言で『五輪精神に反する』と批判されて辞任した後でそんなんでいいのか」と言う批判のどこが「つるし上げ」なのか。丸川が「男女共同参画担当相、五輪担当相」にならなければ誰も批判しない話ですし。

*1:と言うより問題は反対していたことよりも地方議員に対して「別姓容認の地方議会決議案に賛成するな」と「国会議員の立場で地方議員に圧力をかけていたこと」なのですが。「圧力をかけること」と「単に反対意見を表明すること」は意味が違います。

*2:まあ産経的にはそうなんでしょう。国連『女性差別撤廃委員会』や日弁連からは「男女平等の観点から別姓を導入すべきだ」とダメ出しが何度も入っていますが。

*3:つうか同性婚否定のどこが「差別でない」んですかね。産経らの同性婚否定論って差別以外の何物でも無いでしょうに。典型的には「新潮45」が廃刊になった「杉田水脈の例の暴言」ですが。