「金正恩の北朝鮮 〜“先鋭化”の実態を追う〜」:分析不足。悪い意味で興味深い番組: 白頭の革命精神な日記
NHKスペシャル12月11日づけ「金正恩の北朝鮮 ~“先鋭化”の実態を追う~」について取り上げます。
Stephen Biegun元「北朝鮮」担当特別代表が登場。朝米交渉でアメリカがリビア方式を提案したことをBiegun氏は証言しました。
これに対して共和国側*1の反応なるものとして、続いて「脱北」した元外交官の証言インタビューが取り上げられました。それによると警戒感を強めた元帥様*2はリビア方式の徹底的な調査を命令。「リビア方式とは、非核化と引き換えにアメリカが体制保障・経済制裁解除をするというものだが、リビアのカダフィ*3大佐は最終的に殺された」という、皆がよく知っている結果をレポートしたとのことでした。この先の経緯は、我々も報道事実としてよく知っていることです。共和国はヨンビョン核施設の閉鎖を申し出るも、アメリカはそれでは不十分と応じ交渉は平行線を辿りついには決裂してしまいました。
カダフィ大佐の最期は、リビア方式が罠であることを疑ってかかるのにはあまりにも説得力のある証拠です。
共和国そして元帥様がリビア方式の非核化を呑まないのは、当然といえば当然の成り行きであると考えられます。
ということで核廃棄を米国が北朝鮮に呑ませるには「カダフィのような末路はない」と体制保障することが必要でしょう。
「他の点はともかく」この点においては俺も白頭氏と全く同意見です。
なお、白頭氏はカダフィ(リビア)しか紹介していませんが「グレナダ左翼政権」「パナマ・ノリエガ政権」「アフガン・タリバン政権」「イラク・フセイン政権」など米国による政権転覆の例は多々あります(フセインはカダフィ同様に殺害された)。
北朝鮮が米国を信用せずうかつに(?)核廃棄しないのは当然の話です。俺も北朝鮮と同じ立場なら保身のために当然そうします。
それは先鋭化でも何でも無い。むしろウクライナ戦争や北朝鮮のミサイル実験を口実にした「岸田の防衛費倍増論」の方がよほど「先鋭化」でしょう。
あるいは北朝鮮との交渉を事実上否定し、いたずらに北朝鮮を敵視する日本(政府やメディアなど)の方がよほど「先鋭化」でしょう(白頭氏も「日本での北朝鮮敵視」について同様の指摘をしていますが)。
というと家族会、巣くう会、拉致議連、あるいは高世仁やid:kojitaken、id:noharraには俺は「北朝鮮シンパ認定される」のでしょうが。勿論俺は自分がそのような代物だとは全く思ってませんが。
俺の認識では「俺の主張」は
【1】ダッカ事件で人質解放のために「超法規的措置(赤軍派への身代金支払いと赤軍派メンバーの釈放)」と言うバーター取引をした福田赳夫首相を誰も「赤軍シンパ」と呼ばない
【2】ロシアに身柄拘束されたバスケ選手解放とのバーター取引で「ロシアの武器商人」を解放したバイデン大統領を誰も「プーチンシンパ」と呼ばない
のと同じ話です。俺の主張は福田やバイデン同様に「バーター取引以外に拉致被害者帰国や核廃棄の実現に手が無いと思うからそうすべきだ」と言うだけの話でしかない。
まあ、俺に対して(赤軍派やロシア、北朝鮮に対して)「弱腰」「へたれ」「軟弱」「腰抜け」等というなら、賛同はしないし不愉快ではあるモノの「価値観の違い」として我慢してもいいですが、id:kojitaken、id:noharraのような「北朝鮮のシンパ」呼ばわりには当然反対、抗議します。
なお、ジェンダー平等を導くチュチェ思想: 白頭の革命精神な日記(2021.4.3)、社会政治的生命を持たない哀れな「個人」、過剰な価値観相対化に毒された哀れな「愚人」、そんな人も愛するのがチュチェ思想: 白頭の革命精神な日記(2021.8.21)、米中対立や米ロ対立の枠組み・SDGsキャンペーンにおける社会主義思想の発展と、チュチェ思想の役割: 白頭の革命精神な日記(2021.11.27)、マルクス主義が忘却され観念論的な社会歴史観が蘇生しつつある中においてチュチェ思想の独自性が生きてくる: 白頭の革命精神な日記(2021.12.25)、啓蒙主義的個人主義とチュチェ思想との決定的な違い: 白頭の革命精神な日記(2022.10.19)などで「チュチェ主義支持*4」を表明し、今回の記事でも「元帥様」という「北朝鮮シンパ」を疑わせる表現を使用する白頭氏ですが「核、ミサイル問題での北朝鮮の態度は合理的」「核、ミサイル廃棄はバーター取引以外に手はない」「ウクライナ問題で手一杯の米国には北朝鮮の核、ミサイル開発を止めるすべがない」と言う点については俺も同意見です。
これは「北朝鮮シンパだから」云々ではなく「客観的事実」ではないか。