田畑光永らの反中国に呆れる(2023年4月17日)

リベラル21 「マクロン主演!」のウクライナ和平への道(田畑光永

 私は11日の本欄に掲載した「『米中対決』から『米の孤立化』へ 習近平、狙いはマクロン取り込み」という一篇*1で、仏マクロン大統領が5~7日の中国訪問の後、「台湾問題でヨーロッパは米中の対立に巻き込まれるべきでない」と発言したことについて、これはおそらくウクライナ戦争発生以来、「中ロ・対・米(=西側世界)」という対立図式が定着しつつある*2状況の中で、中国が「中国と欧州」を一極とすべく動き出した、つまり米欧間を引き離して新しい図式を生み出そうという努力の現れではないか、と書いた。

 マクロンを「中国の走狗」と描き出そうとする田畑らには心底呆れます。
 マクロンの立場は「米国とも中国とも仲良くやっていきたい」「そのためにはフランスは勿論欧州は台湾問題から距離を置くべきだ(米国からも中国からも距離を置き、中立の態度を取るべきだ)」という指摘にすぎません。
 むしろ正論ではないのか。
 台湾問題が下手にこじれれば「中台の軍事衝突の危険性」もゼロではないのに自称「護憲・軍縮・共生」のリベラル21がマクロン非難とは意味が分かりません。「岸田の反中国路線を支持する自民党の走狗=リベラル21」ではないのか、と問いただしたくなります。

 フォンデアライエン*3委員長が個別会談で、「台湾海峡の安定が何より重要だ。平和と現状維持がわれわれの明確な関心事だ。緊張が生じた場合は対話を通じて解決するのが重要だ」と、武力行使の可能性を否定しない中国側に釘をさすような発言をしたと言われる。

 こうしたフォンデアライエンの主張は
1)馬英九政権時代はそれなりの中台友好関係が成立していた
2)蔡英文が独立を企んでるのではないかと疑われる行為をし、それをバイデン政権も容認していると見なされる行為(ペロシ下院議長の訪台など)をすることで中台関係が緊張した(先に仕掛けてきたのは台湾や米国)
3)蔡英文が「中国の面子を潰すような行為」を続けない限り、中国も対話に応じる姿勢を一応見せている
4)「武力行使の可能性」とは「台湾が独立宣言したとき」のみであり、原則は平和統一。そうした「武力行使の可能性」も鄧小平時代からの路線であり、習近平になって何かが変わったわけではない
と言う意味で「非常に不適切」でしょう。
 なお、今日の中国ニュース(2023年4月7日分) - bogus-simotukareのブログで紹介しましたが、フォンデアライエンは「習主席とゼレンスキー大統領の会談を希望する」と述べており、田畑が描き出すほど「反中国」ではない。

 7日になると、調子ががらりと変わる。フランスに「和平案を出してくれ、中国が支持するから」と、ウクライナをめぐる国際会議が開かれることを予期し、そこで両国が主導権を握って事態を動かそうという戦略を持ちかけているのである。しかも「建設的な役割を果たしたい」と言いつつ、出されるべき提案の内容には一言も触れていない。言うなれば、どんな案でもいいから出してくれ*4、そして両国主導で事態の解決、停戦を目指し、戦後の主導権を両国で握ろうという思い切った提案である。

 習発言を「そのように解釈しようとすれば不可能ではない」程度の話を「断定的事実」にするのだから田畑のあほさには呆れます。そもそも習発言のどこに「国際会議」なんて話があるのか。田畑は「書かれてない文脈を読んだ」と強弁するのでしょうが「無根拠な想像」でしかない。
 というか、7日の習発言について言えば「フランスが有益な提言をすれば支持する用意がある」程度の「社交辞令」「リップサービス」ではないか。
 6日の発言「欧州が建設的な役割を果たすことを歓迎する」とそれほどの「実質的違い」があるとは俺は思いません。
 勿論「ウクライナ戦争解決につながる提案」があれば中国にとっても嬉しいでしょうが、田畑が想像するほど「フランスの能動的な動き」を期待してるかどうか。
 「マクロン訪中において、ウクライナ問題について全く触れないわけにもいかない(それではマクロンがフランス国民から批判されかねない)」「その場合は『マクロンの奮闘に期待する』と持ち上げるくらいのことはしよう」と言う程度の習発言にすぎないかもしれない。
 そして、さすがに提案について習氏も「何でもいい」とは思ってないでしょう。
 特に田畑文章で呆れるのは戦後の主導権を両国で握ろうですね。
 ウクライナを「大国・米英独」が軍事支援し、また「ロシアという大国」が戦争当事者のこの戦争でいかに「フランスと中国が大国」とはいえ「米英独露」を無視して「勝手に主導権が取れる」と思うほど習氏も脳天気ではないでしょう。

 おそらくマクロンは不意打ちを食らって驚いたはずだ。

 というのも田畑の「勝手な想像」にすぎません。普通に考えて「訪中前にある程度の話はされてる」でしょう。
 というか「うがった見方」をすれば、むしろマクロンの方から「ウクライナ戦争解決でマクロン氏の奮闘を期待する、などと言ってもらえないか」と中国に持ちかけた話かもしれない。

 米の政治家*5が台湾に立ち寄る*6、あるいは台湾の総統が米に立ち寄って政治家*7と話す、この程度のことで大がかりに軍を動員して、ミサイルを発射するといった中国の態度はどういう理屈をつけようとも大国の軍事力をかさに、威嚇でものごとを自分の思う通りにしたいという傲慢でしかない

 やれやれですね。問題はそれらは「台湾独立ムード醸成」を狙った「蔡英文の政治工作」ではないのか、「一つの中国」という「米中間の国際公約」に反するのではないか、と言う話なのですが。
 そうした問題に触れずして「中国のみに悪口雑言」とは「田畑の反中国」には心底呆れます。
 まさかとは思いますが田畑やリベラル21は「台湾独立」を支持する気なのか?。
 なお、以上は田畑記事に投稿しますが掲載拒否でしょう。よくもまあそんな連中がリベラルを自称できたもんです。
 田畑やリベラル21の態度(批判コメントの掲載拒否)こそどういう理屈をつけようとも、ものごとを自分の思う通りにしたいという傲慢でしかないでしょう。

*1:この田畑の反中国記事については拙記事今日の中国ニュース(2023年4月7日分) - bogus-simotukareのブログで批判しました。

*2:国益判断」から、米国がそのような「図式にしたがっていること(そしてそのような図式が米国の同盟国・日本においてかなりの支持者がいること)」は事実でしょうが、そのような図式はとても「現実に合致している」とは言えません。中国は「しがらみや国益」からロシアに融和的であるにすぎませんし、そうした「しがらみや国益」からロシアに融和的な国の中には「NATO加盟国のトルコ(当然、親米国家)」等「親米国家」もあるからです。

*3:メルケル内閣厚労相、国防相などを経てEU委員長

*4:勿論【1】提案内容について具体的に言うとマクロンの自由度が制約され、また何をマクロンが言っても「中国の走狗扱い」されかねないからあえて言わなかった(但し水面下では、提案についての中国の要望を伝えている)、【2】社交辞令にすぎない(実はそれほど期待してない)ので言わなかったと言う理解も十分可能でしょう。田畑の主張は「あり得る可能性のワンオブゼム」でしかない。

*5:ペロシ下院議長(当時)と明確に書かない辺りが実に田畑らしい。なお、下院議長は大統領、副大統領がともに執務不能になった場合は「大統領に就任する要職」であり中国が反発するのも当然の大物政治家です。なお、「フランクリン・ルーズベルト(在職中の病死:トルーマン副大統領の昇格)」「ケネディ(在職中の暗殺:ジョンソン副大統領の昇格)」「ニクソンウォーターゲートによる辞任:フォード副大統領の昇格)」等、大統領の執務不能による「副大統領の大統領就任」は前例がありますが、「下院議長の大統領就任」はまだ例がない。

*6:勿論蔡英文と会談しており単に「立ち寄った」わけではない。

*7:マッカーシー下院議長と明確に書かない辺りが(以下略)。